時には目食耳視も悪くない。

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死語という死語。

2020年04月13日 | 本の林
 「昔の物は古臭くてダサイ。新しいものよりも劣っていてダメな物だ。」という考えが、最近は当然のように通用しているような気がします。

 スマートフォンが開発される前に主流だった携帯電話を「ガラケー」と呼んだりしますが、この造語に使われている「ガラパゴス」は、言うまでもなく、有名なイギリスの生物学者チャールズ・ダーウィン(1809-1882)が進化論を提唱するヒントの一つとなったガラパゴス諸島のことです。

 この島々は、歴史的に大陸と地続きになったことがないため、固有の生物が多く生息している場所です。
 また、哺乳類と両生類が存在せず、地球上の他の地域とは一線を画す、特異な生態系を有しています。

 ですから、本来、「ガラパゴス」という言葉から連想されるものは、「特異な」とか、「他に例のない」、「特徴的な」というニュアンスであるべきだと私は考えます。
 ところが、最近、巷で見られる使われ方は、「物の考え方が古い」、「原始的で不便」といったことを言うためのような印象を受けます。

 言葉は、使う人によって時代ごとに様々に形を変えますし、まるで、生き物のように、絶えず新しいものが生まれては消えて行きます。

 私が子供の頃は、派手な化粧をして、色鮮やかでデザインが際立った服装をしている人のことを「けばけばしい」なんて言いましたが、最近、この言葉を耳にすることはほとんどありません。
 人によっては「死語」だと言うかもしれません。

 私にとって、「死語」とは、誰も使わない、意味すらも忘れ去られてしまった言葉を指します。
 誰かがふと口にした言葉について、「それは死語だ」と言うのは、間違った指摘だと思います。

 なぜなら、その言葉を口にした人はもちろん、死語だと指摘した人も、その言葉が古いものだと知っているからです。
 真の死語は、誰も使ったりしません。
 (もっとも、今の若い人にとっては「死語」という言葉自体が死語の可能性がありますが。。。)

 いずれにしろ、こんなことはどうでもいいと思う人がほとんどでしょうし(特に今は、、、)、こういうことに引っかかっている人間なんて、それこそ「ガラパゴス的発想」なんて、よく分からないレッテルを貼られてしまうでしょう。

 とにかく、元来ある言葉の意味や背景をよく知らずに、勝手な使われ方をする最近の新造語を耳にすると、とてもがっかりします。
 そして、新製品が開発される度に、それまであったものが否定されて、急に無価値なものとされてしまう風潮が、アラフォーの私には面白くないですし、それらの商品を手に入れようと湧きたっている世間に馴染めず、冷めた気持ちになってしまいます。

 新しい物についていけずに置いていかれる人をオジサンとかオバサンなどと言う人がいますが、新しい物の中には、正直、ついていく価値のない物もあります。
 新商品を売るために、企業がPRする文言や戦略に踊らされ過ぎな印象も受けます。

 そして、そのような流れに熱狂的に同調できない人たちは、「ガラパゴス」だとか「化石」と揶揄され、「ダメなもの」扱いをされてしまうのです。

 しかし、そんなふうに、勝手に他人を古臭いダメ人間認定をするような人は、遅かれ早かれ、彼らと同じ考えを持った新しい世代の人たちから、また違った新しい言葉の使い方で馬鹿にされるようになることでしょう。
 因果応報です。


 《音楽美入門》山根銀二(1950 岩波書店)は、70年前に出版された音楽美学の本です。
 著者は、本書冒頭において、「できるだけ平易な表現を使うようにつとめた」と記しており、音楽初心者でも興味深く読むことができる本です。

 今年が生誕250年にあたるベートーヴェンの生涯や音楽についても知ることができます。
 70年前に使われていた言葉も、こうして読んでみると、簡潔かつ的確で、機能的だと思えました。
 電子書籍で最新の本をサクサク読むのもよいけれど、たまには古い本を手にしてみてはいかがでしょうか。

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