時には目食耳視も悪くない。

読んだ本、観た映画、聴いた音楽、ふと思ったこと、ありふれた日常・・・

音楽で身につけるバランス感覚。

2020年05月04日 | 本の林
 古代ギリシャでは、優れた人間の育成に音楽は必要不可欠な教科だと考えられていたそうです。

 現代社会において、音楽が日常生活の中から消え去るということは、非現実的であると思いますが、そのように人が音楽を身近に感じているにもかかわらず、一方では音楽に携わる人たちは平常時でさえ、経済的な問題を抱えたり、音楽を仕事にしていない一般の人から偏見を持たれたり、理解をされない場合が多いという現実があります。

 今回のコロナ禍をきっかけに、経済力についての世間の考え方が変わっていくといいなと思います。
 努力をしているにもかかわらず、お金を稼げない人はダメな人間だというのならば、災害や感染症が原因で経済が崩壊した社会に生きる人間は全員ダメだということになります。

 非常時は話が別だと主張されるかもしれませんが、沢山の人たちが仕事の疲れを癒したり、気持ちを切り換えたりする時に聞く音楽を提供している音楽業界の人たちは、毎月、定額の報酬をもらえるわけではなく、言ってみれば常に職探しをし、時には無報酬での労働を求められ、いくつもの職場を渡り歩かなければいけないという、日頃から軽い非常時にあるようなものだと思います。

 などと、音楽業界の過酷さについて言及すると、「好きで選んだ仕事なのだから自己責任でしょ」と言われてしまうのが、今の日本の現実です。

 まあ、なんと言われようと、人が生活の中に音楽を必要としているという事実に変わりはありません。



 話をギリシャ時代に戻しますと、当時は「調和」という概念が貴ばれていたようです。
 そして、調和のとれた人物の育成に、音楽は欠かせないものと考えられていました。

 なぜならば、音楽にはバランス感覚を培う要素が多く備わっているからです。
 音楽の三大要素のリズム、メロディー、ハーモニーは自分が出す音の大きさや長さを整えたり、音の高さをそろえたりと、全体のバランスを考える力をつけるのに適していると言えます。

 将来、お子さんをミュージシャンにするかどうかということは別にして、小学校に通う前の時期に、こういった音によるバランス感覚の習得をすることは、音楽以外の日常生活に必要な空間認知力や集中力を身につけることに役立ちますので、大いにお勧めしたいことの一つです。

 リトミックというのは、音楽の三大要素の一つ、リズムを主体とした音感教育の一種です。
 音楽教室の講師という立場から言えば、リトミックは小さなお子さんが実際に楽器を習い始める前に経験しておくと良い、教育システムだと思います。

 今回、雑談動画【本の林】で取り上げました《リトミックってなあに―リズムの良い子に育てよう》岩崎光弘(1993 ドレミ楽譜出版)には、リトミックがどのように生まれ、どんなものなのか、なぜ幼児教育に必要なのかということが分かりやすく解説されています。
 リトミックの実際の現場の声も知ることができます。

 小さなお子さんがいらっしゃる方、またそのような年頃の生徒さんと接する機会のある音楽教育関係の方にオススメの一冊です。

 ※雑談動画【本の林】第二十一冊を再生するには、コチラをクリックするか、「本の林」で動画検索をお願いします。


 


コメントを投稿