時には目食耳視も悪くない。

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【動画紹介】ヒトコトリのコトノハ vol.38

2024年01月12日 | 動画紹介
☆本記事は、Youtubeチャンネル『本の林 honnohayashi』に投稿された動画を紹介するものです。
 ご興味を持たれた方は是非、動画の方もチェックしてみて下さいね!


 ●本日のコトノハ●
  どんな色が見えるかというと、まさに音色という言葉があてはまる。
  比較的はっきりしているのはチェロで、その重厚な音色には深い緑や紫が見える。トランペットの明るい音には明るい黄色、
  やわらかいフルートはパステル調の色である。ピアノの音は白だそうである。
  ドならドできまった色があるかというと、そおうでもない。ドミソの和音は長調で明るいが、ラドミは短調で暗い。
  これは分散和音でも同じである。つまり旋律によるのであるが、とくにバイオリンの旋律が豊かな色彩を生む。

 『色彩の心理学』金子隆芳(1990)岩波書店より


 音や音楽を聞いて思い起こされるものは人それぞれにあると思います。
 例えば、多感な十代の頃によく聞いていた曲や、よく行っていた店で耳にしたお魚コーナーのBGMなどは、今になって聞くと懐かしさが感じられると同時に、その頃の記憶がよみがえったりもします。

 私について言えば、子供の頃はゲーム禁止の家庭に育ったので、あまりピンと来ないのですが、とても流行したゲームの音楽や効果音などは、それらのゲームで遊んだことがある人にとっては、子供時代の楽しい思い出を懐かしむきっかけになるようです。
 音を聞いて、単純に特定の色を思い浮かべたことがあるかと問われると、私の答えは「いいえ」です。

 私の場合、その音に感じるのは「質感」のようなものかもしれません。
 感覚的なことを言葉にするのは難しいのですが、分かりやすいところから言うと、「滑らかな」音とか「ガサガサした」音、また「温もりのある」音とか「冷たい厳しさ」のある音などです。
 硬いのか柔らかいのか、鋭いのか丸みを帯びているのか、輝かしい華々しさとか、陰鬱な閉塞感といった音の性質を主に感じ取っています。

 強いて、色を付けるとすれば、一つの音に対して一色ではないと感じています。
 これは、バイオリンという楽器の特徴かもしれませんが、弓先から弓元まで1ストローク動かす中で、音の響きが絶えず変化しているのを聞き逃さないようにしています。
 つまり、音が鳴っている間中、様々な色に変わり続ける生き物のようにさえ思えるのです。
 まるで、水の流れが地形に合わせて変わっていくように。あるいは、吹く風が強く吹き付けるかと思えば、時にはそよそよと吹き過ぎていくように。

 余談ですが、学生の時に授業の中で、ピアノの教授が私の歌の伴奏をして下さったことがありました。
 それは日本歌曲で、詩人の幼い頃の思い出を歌うものだったのですが、ピアノから醸し出される音の響きや性格によって、その詩の一場面がそっくりそのまま再現描写されたようで、思わず詩人の記憶を自分が追体験しているような感覚になりました。
 ピアノの場合、バイオリンほど楽器の個体差が少ないと言われていますが、同じ曲でも弾き手の表現力によってずい分違って聞こえるものだと妙に納得したものです。
 この教授のピアノ以上に私の心を掴んで離さないピアニストは、今もいないに等しいというくらい、強烈な印象を受けた経験でした。

 バイオリンについて言えば、名バイオリニストと呼ばれる人の演奏は、一瞬たりとも同じ色に留まることなく、極彩色が自由自在に展開されていく様はまさに圧巻です。
 とはいえ、私の場合、音によって色が想起されることはあまりなく、響きの持つ温度であったり、躍動感を聞き取ることの方が多いです。
 それは、そのまま人の感情であり、気持ちの強さ、繊細さを表現するものでもあると思っています。

 いずれにしろ、人が楽器を鳴らした時、生き生きとしたもの、生命力のようなものが生まれ、それを聞いている人に何かを伝え(訴え)ます。
 それが「音」であり、「音楽」であるのでしょう。



ヒトコトリのコトノハ vol.38


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