参議院選挙は、私も予想した通り、与党の圧勝でした。
いや、予想したのはもっと圧倒的な与党、というより改憲勢力の大勝利だったのですが…
護憲勢力も、まずまず頑張りましたね。
でも、これで改憲=現在の自民党改憲草案に、ほぼ沿った形での改憲が加速することでしょう。
現在の自民党改憲草案に沿った形での改憲であれば、私は大反対です。
まず、憲法条文を語る「主語主体」が、現行憲法では「われら」「国民」ひとりひとりであるのに対して…
自民党改憲草案では、国民の負託による「国家」が「主語主体」であると読める部分が多いです。
ベースの部分で、近代立憲主義=憲法は国民が国家権力に対して縛りをかけるもの、という視点が欠落している。
つまり「最初から全部書き直し!」というような内容のものです。
改憲草案が、根本的に全部書き直されて、それがきちんと立憲主義に立脚し、なおかつ妥当な内容であれば…
個人的には「何が何でも憲法を書き変えるのはまかりならん」などというつもりは毛頭ありません。
憲法は「バイブル」ではないし、時代とともに変えたほうが良いものだからです。
ただ、今の草案をたたき台にするのなら、絶対に反対です。
世の中では9条がどうのという話をよくしますが、それより私が一番危惧するのは…
改憲草案の9章、第98条および99条。
緊急事態条項です。
詳しく述べると長くなるので、興味がある方はまず「憲法 緊急事態条項 危険」などのキーワードで…
ググって調べてみてください。それだけで納得するのではなく、関連書籍を探して読むことをお勧めします。
まあ、これが付いた憲法が発布されれば、事と次第によっては…
3年後に国政選挙があるかどうかさえ、保証はなくなりますよ。
最悪、今回の参院選があなたにとって、候補者名や政党名を書く、最後の選挙になってしまうことだって…
あり得ないことではなくなります。
そう簡単に「緊急事態」なんて起きない、と思いますか?
この自然災害大国にあっては、緊急事態に相当することなんて、毎年に近くあるじゃないですか。
中国、ロシアの脅威だって、マスコミの報道の仕方や、政府の解釈次第で「緊急事態」に認定できる。
ちなみに緊急事態の発令というのは内閣が恣意的に行えて、国会の承認は「事後」で良いものです。
そしてこれを解除するかどうかは、100日ごとに閣議で検討し、国会の承認を得るとなっていますが…
その時の国会で与党が圧倒的に強い(現在のように)場合、国会の承認など簡単なことです。
そして、発令中は内閣が、法律と同じ効力を持つ政令を出せます。三権分立のうち立法府は機能を停止し…
法改正は、事実上内閣のお手盛り同然になるのです。
またこの間、政府が国民全体の「生命、身体、及び財産に関わる」事情があると判断した場合…
個人の人権(生命、財産が守られる保証、居住地、職業、思想信条や言論の自由など)を制限できる可能性があります。
こうした人権をなるべく守るように、政府は「最大限の努力」をするだけでいいのです。
どんなことが「最大限の努力」か……それは、政府が考える事です。
そして、何人も政府の指示することには従わなくてはなりません(どんなに嫌なことでも)。
またこの期間、衆議院は凍結され、両院の任期等に「特例を設けることが出来る」となっています。
結果「緊急事態」が半永久的に続くことだって、あり得るのです。
どうですか?もうこれだけで「不安」になるでしょう?
何よりも、読んでみることをまずお勧めします。
改憲草案本文に関しては、自民党のホームページに載っているものが簡単にダウンロードできます。
「自民党改憲草案全文」と検索すればすぐにアクセスできます。
でも、こういう文章と言うのは、法律のしろうとにとっては難しいものです。
たとえば、基本的人権が保証される条件として…
現行憲法では「公共の福祉」に反しない限りとなっているのに対して…
改憲草案では「公の秩序」に反しない限りと変わっています。
わざわざ文言を変えるという事は、内容も変えますよ、という事なのですが…
どう変えるのか、分かり難いでしょう?
簡単に言えば、今は「本人以外の人の幸福や利益を明らかに害する場合」人権を制限する、ということ。
改憲案では「公」つまり行政が司る、社会の「秩序」を乱す場合には、人権は認めません、ということ。
他人を具体的に傷つけたり、財産を奪ったりしなくても、社会全体の「秩序」に反するような人には…
人権を認めません、という事です。
そういった、巧妙なレトリックで、今の私たちの生活や権利を、根本から変えてしまえる改憲草案。
まあ、これからマスコミや大手広告会社を使って「改憲、大丈夫ですよやりましょう」キャンペーンが展開されるでしょう。
そこでは、私たちが普段から親しみのある、有名人や著名人、芸能人もたくさん動員されるでしょう。
シャワーのように浴びせられる、改憲キャンペーンの中で、私たちもいつの間にか考えを変えられて……
賛成、となる人が多くなるでしょう。
いずれやってくる「国民審査」の結果が、改憲賛成となることは、まず間違いありません。
あとは、時間の問題だけです。
何年何月に、新憲法の最終案が確定し、改正の発議が国会を通り、国民審査が行われるのか。
そして、その結果、私たちの生活がガラリと変えられたことに私たちが気付くのは、いつになるのか。
まあ、はっきりとした変化が現れるまで、早くて3年。遅くて5~6年といったところでしょうか。
今回の参院選の結果でもわかる通り、歴史の「川の流れ」を逆流させることは、おそらく無理です。
あとは、この3~6年ぐらいの猶予期間に、私たちがどう身を処すか、だけです。
こんなことが書けるのも今のうち。
キャンペーンが始まったら「とりあえず今は護憲」派の人たちは、非国民扱いの空気になるのではないかと。
私も、黙ると思いますよ。
そのとき、まだ自由な空気があった時代のことなんて、みんな忘れちゃうんでしょうね。
人間、その時々の、自分の立場から見えるもの以外に目を向けることは、とても苦手ですから。
最後に、この曲を置いておきます。
本音を曲げて嘘ついて 得る正解ってなんだ?
長きに巻かれ 陰隠れ 得る平穏ってなんだ?
という歌詞が、刺さります。