男性の場合比較的「おじさん」が多い唯さんのファンですが(もうデビューしてからずいぶん長いから)...
その中でも私はさすがに長老的な存在だから、気を使って立ててくれているのでしょう。
いつも現場で会うと、親切にお菓子をくれたり、雑談してくれたりするフレンドリーな方もいるのですが...
知り合っても、まもなくよそよそしくなったり、無視するようになったり、中にはどこか敵意のこもった目で見てくる人もいます。
まあそれもわかります。なぜなら...
「声優オタク」やアニメオタク、アイドルオタクの世界、特に男性オタクの世界というのは、一種のホモソーシャルな空間で...
多かれ少なかれ女性のキャラクターや生身の女性を、性的に消費し搾取することを前提にして成り立っているものだから。
(男性アイドルの「女オタ」の界隈は男性の性を消費し搾取している、反転した擬似ホモソーシャルなのかな)
そんな集団ですから、オタクにとって「フェミニスト」というものは宿命的な敵なのです。
男のオタクは、女性の性的消費に反対したり、女性が差別から逃れ、自立して人生を確立して行こうとすることを推進する人々を...
「フェミさん」と呼んで軽蔑し、攻撃的な態度を取ります。もちろん例外は存在しますが、基本的には。
そこから派生して、フェミニズムだけでなく、リベラル系の思想を持ったり発言したりすること全般をも嫌っています。
アニメなどのサブカル系コンテンツには、兵器や武器などのミリタリーアイテムや、戦争をモチーフにした世界観、バトル系のストーリーに依拠するものが多いので、そういうものを好む人々は...
自然と「保守」に親和性を持ち、リベラルを嫌う傾向になる、ということも確実にあると思います。
だからオタクは「フェミ」やリベラルの逆張りをしたがる。
私はSNSでもバロリスタというハンドルネームを使っていて、そこでかつてリベラルな言説や反戦的な言辞をたくさん投稿していました。
ネトウヨがたかるのがうるさくて、今は投稿はやめて他人のそうした言説をリポストするだけになっていますけれど...
私をSNSでフォローしたオタクさんたちはそれを見て「めちゃめちゃサヨクでフェミな爺さんじゃん」と思って...
嫌ったり、嫌うまで行かなくても引いてしまってなるべく避けるようになるのだと思います。
また、男オタクさんたちは独身でパートナーもおらず、お金と時間のほとんどを推し活に使っているような人が多いので...
私のように妻子がいて、しかも息子は既におとなに成長しているなんていう人間は「異質過ぎて仲間だと思えない」という人が多いのかも。
それでも付き合ってくれる、少数派のオタクさんは、よほど寛容で心が広い人たちなのでしょう。

ではなぜサヨクでフェミ(という属性にあると私自身が認めた訳ではない)だとみなされる私が...
小倉唯さんを応援し、唯さんが関わるコンテンツを消費することで、彼女に経済的貢献をしているのか。
声優オタク(自虐的に声豚などと自称する人もいる)と同じことをしているのか。
まず純粋に、彼女の声と話し方、表情と仕草(ラジオや動画配信、イベントなどで普通に喋っているときの)が好きで、見て聞いているだけで心が癒されるというのがあります。
本当にリラックスして、暗く落ち込んだ気分から一時でも解放されたりするんです。
日々の癒しのもと...これはもう説明しようのない好み、のようなものです。
ただぶりっ子してブリブリに振舞っているだけ...では、あそこまでいつでもどこでも徹底してそれを貫き通し、関係者や同業者にさえ隙を見せないのは難しいかと。
しかもそういう演技を続けるのは、実はかなり精神に負荷のかかる、つらいことのようです。
だからアイドルは、そこに居られなくなって「卒業」したり...無理を続けるとしばしば心を病んで、人間としておかしくなってしまうことがあるのです。
要するに、頑張っても演技はそう長く続けることができない。だからアイドルやアイドル声優が「ブリブリして」いられる期間は短く、その存在は儚いのです。
小倉唯さんの場合はそれを一分の隙もなく17年続けていながら、人として壊れることもなく、何なら女性ファンのロールモデルとしてますます生気を増しているという状態。

これは、それがほぼ無理のない自然体であるのか、またはもはや人間離れしていると言って良いくらい強靭な精神を持っているかのどちらかでしょう。
どちらであっても、尊敬に値する。
私もだてに還暦過ぎて生きているわけではないし、週刊誌記者などという仕事をして人の汚いところをさんざん見てきました。
それをほじくり返すのが仕事だったから仕方ない。
取材対象の芸能人より、さらにずっと汚いその取り巻きや運営、自分の同僚たちの見下げ果てたクズっぷりを知って人間不信にもなりました。
その後、組織に属さず25 年。ひとりで世の中を渡って来て、裏切られたり陥れられたり、ずいぶん酷い目に遭いながらサバイバルして...
普通のサラリーマンの方よりは、人間を見る目もついたと思います。
その上で小倉唯の言動を約十年間、つぶさに観察して来た結果、彼女の場合はあれでかなり率直なほうなのだと思うようになりました。
もちろん人間ですから自分をよく見せたいという気持ちはあると思いますが、そこまで無理をしてキャラを作っているわけではない。
(いろいろな面でかなり変わった人であるのは間違いないですが)
仕事の関係から、たまたま唯さんのご家族とお話する機会があって、コンテンツとしての「小倉唯」を離れた、素の姿についても垣間見て。
真面目で責任感が強い、その一方で、弱い人や困っている人など他人の役に立ちたい、助けたいという真情のある人であることもわかりました。
また...
17年間何のゴシップもスキャンダルのタネもないというのは(ネット民からの誹謗中傷は別として)彼女の鉄壁の「脇のかたさ」のおかげなわけですが...
今までゴシップメディアの餌食になった声優さんは数多く。その中でも最もぶりっ子風のキャラであった小倉唯のゴシップをあげるのは...
他の誰をネタにするよりも一番インパクトがあることは、そういうメディアもよくわかっています。
ここだけの話、複数回「B砲」に狙いを定められたこともあるらしいですが、砲弾は彼女の硬い装甲に跳ね返されたようです。
書かれないように話を止める力のない弱小の事務所にいて、守ってくれる人もなかったのに。誰も認めていないけれど、何気にこれはすごいことです。
それは自分が仕事を失いたくないとか恥をかきたくないとかではなく、小倉唯というコンテンツで、どれだけの関係者とその家族が食べているのかを理解して...
その生活を背負っている自覚、みんなを守るという決意のもとに活動し、生活もしているから、自分を律することに徹底できるのでしょう。
声優界の姐御こと、たかはし智秋さんが「小倉唯ってかっこいいよね」「ある意味男前だと思う」「あたしより姐さん肌」と評したのは、そういうところなのだと思います。
フリフリのフリル、レース、リボンに飾られた、あのファンシーな世界観にしても、ファンに媚びているわけではないし、また誰かに命じられて、いやいやながらやっているわけでもない。

幼児さんのころから絵本や漫画で見たお姫様チックな夢の世界、それが心底好きで、かわいい、癒しだと思うから、表現しているようです。
だから三十路を迎えるに当たってそういう表現を控えるのではなく、逆に、強烈にパワーアップさせて出して来るのです。おそらく。

それを「おばさんなのに痛い」と言う人が居ても、気にしない。自分自身の本当の「好き」を表現しているんだから、ということ。
そして声優と、歌やダンスの活動だけでなく、マルチクリエイターとして、プロデューサーとして、情報発信者として...
文字通り八面六臂の活躍をし、殺人的なスケジュールをこなしてバリバリ働いているのもすごいこと。
声や話し方に癒される以上に、年齢に関係なく、リスペクトできるその才能と生き方と人間性を推しているんです、私は。
もちろん容姿も素敵だとは思いますが、それは自分にとっては二次的なものでしかない。
そうした動機で推すことは、性的消費や性的搾取とは全然違うものだと思います。
そういうわけで周りのオタクから嫌われても、いい歳して馬鹿みたいだと他人から思われても、小倉唯を応援することはやめません。
おそらく彼女がすべての活動から引退するよりも、私が居なくなるか...
もしくは社会状況の悪化でそれどころではない世の中が来るほうが先でしょう。
推しは推せるうちに推しとけ!
