≪第100回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望2 北関東 -
【茨城】(参加96チーム)
強打・好投の明秀日立が初めての夏をつかむか。対抗はもちろん、名門の常総学院。
◎ 明秀日立
〇 常総学院
△ 霞ヶ浦
▲ 土浦日大 日立一 水戸商 藤代
県内で王座に君臨していた常総学院に対し、有望な選手を集めて「いつ迫ってくるのか」と言われていた明秀日立。そこにあと一歩が突破できずに”悲劇のチーム”と言われた強豪の霞ヶ浦が絡み3すくみの状態というのがここ数年の茨城高校野球界の勢力図。そして今年もその図式は変わらず。いや、ますますこの3強の力は抜けており、夏も3強の覇権争いとみて間違いないだろう。今年のこれまでの戦績を見ると、秋は優勝が明秀日立で準優勝が霞ケ浦、そして3位が常総学院であった。明けて春は常総学院が優勝をさらい準優勝が明秀日立、3位に霞ケ浦となっている。春は常総学院が準決勝の霞ヶ浦戦、そして決勝の明秀日立戦ともに完勝で力を見せつけたが、その原動力は矢田部、岡田の投の両輪だ。それを伝統の攻撃力が支えるオーソドックスながら強さがにじみ出る戦力で、今年も一言”強い”布陣となった。関東大会でも東海大相模に完勝するなど、見据えるは全国での上位進出だ。しかし今年の夏は、中心となるのは明秀日立だとみている。エース細川が関東大会で横浜相手に好投を見せて、「やはり彼の持つポテンシャルは高い」ということを示した。打線も主砲増田など破壊力は抜群で、やや苦手とする常総学院戦では、夏は力で押し切ろうと目論む。霞ヶ浦は相変わらずの安定し戦いを見せる。投打に突出した力はないが、戦いの安定感では上位の2校にも勝っており、もちろん候補の一角にでんと座っている。追っていくチームは3強とは差があるものの、その中では昨年長い沈黙を破って甲子園に進出した土浦日大が面白い。甲子園組が5人も残りチームの軸を形成する崩れにくいチームだ。安定した投手を中心にいつも上位に顔を出す藤代も面白い戦力を整えている。秋春と実績を残した名門・水戸商も久々の甲子園を虎視眈々と狙う。進学校として名高い日立一の”偏差値の高い野球”にも注目だ。
【栃木】(参加59チーム)
8連覇を狙う作新学院が本命。選抜1勝の国学院栃木に、青藍泰斗、白鷗大足利が4強を形成か。
◎ 作新学院
〇 国学院栃木 白鴎大足利 青藍泰斗
△ 佐野日大 文星芸大付
▲ 矢板中央 小山南 宇都宮短大付
夏の戦いを熟知する小針監督率いる作新学院の連覇は7まで伸び、今年は8連覇を狙う。今年も秋から春にかけて着実にチームは階段を上っていることが確認でき、夏の強さを考えると8連覇は限りなく近いところまで来ている感じだ。今年のチームも、打線は例年通り鋭い振りを見せ、エース高山もそこそこのレベルまで上がってきている。一昨年のような投打に爆発的な力はないものの、全国でしっかりと戦える力は持っている。対抗の一番手は、選抜で1勝を挙げた国学院栃木。もともとは3人の投手を駆使するスモールベースボールであったものが、選抜を経てかなり打てるようになってきたのが好材料。投手陣は安定しているので、優勝へのカギは打線が握っているといってもいいだろう。青藍泰斗は投打に安定感はあるが、今一つ爆発力がないのが悩み。夏の作新を破るには爆発的な何かが必要か。白鷗大足利も、安定はしているがこじんまりとまとまった印象が強い。その間隙をぬって浮上したいのが、佐野日大と文星芸大付の両名門校。佐野日大は田嶋(オリックス)の弟がエースで、甲子園に近づきたい。文星芸大付は打力が看板だ。宇都宮短大付のエース福田は、187センチから号泣を投げ込む栃木のピカイチ球児だ。
【群馬】(参加64チーム)
前橋育英の壁破るか、関東大会制覇の健大高崎。初の全国制覇へ、戦力の底上げはできた。
◎ 健大高崎
〇 前橋育英
△ 関東学園大付 樹徳 桐生一 藤岡中央
▲ 前橋商 伊勢崎清明 前橋工
群馬の両雄、前橋育英と健大高崎。両校が見据えるのは常に全国の頂点で、そのつばぜり合いは年々激しさを増している。しかしここ数年、前橋育英が優位に戦いを進めており、健大高崎はその壁を越えられなかったが、今年はついにその壁を破り夏の全国への切符をつかみ取りそうだ。健大高崎は秋に続いて春の県大会を制覇した後、関東大会でも優勝。しかも破った相手が、東海大甲府、浦和学院、木更津総合、日大三と全国にも名だたる強豪ばかり。夏への備えを盤石にしたと思っていたが、ここにきてちょっとしたつまずきがあったりしたので、夏へチームが一丸となれるかが優勝へのカギとなってきた感が強い。戦力的には問題がない。今年は伝統の機動力に加えて打力が例年以上にすごいレベル。高校通算70発を超えた主砲山下は、昨春は甲子園満塁弾連発、そして昨夏は県大会新記録の5試合連発と、これまでも大舞台でど派手なことをやってきている。甲子園に出場すれば、注目の選手として脚光を浴びるのは間違いないところだ。一方投手陣はチームの伝統である継投策で乗り切る。一方の雄である前橋育英は、昨年はすべての県内タイトルを取ったが今年は無冠。しかしそういう時がかえって不気味な存在だ。例年のごとく投手陣の充実度は県内屈指。エース恩田は”前橋育英エースの系譜”に名を残す好投手に育ってきており、思いは一つ・打倒健大高崎だ。この2強に迫るチームとしてまず名前が挙がるのが、関東学園大付。秋も春も準優勝に輝き、連続で関東大会という大舞台を経験。その経験が生きる夏にしたい。関東大会でも強豪・常総学院に対して終盤まで互角の試合を展開。圧倒的な力はないが、しぶとく食らいつく野球で悲願の甲子園をつかめるか。その他では投打の軸のしっかりしている樹徳、センターラインがまとまる桐生一の桐生勢の巻き返しに期待。21世紀枠候補に挙がった藤岡中央も、優勝争いに絡んできたい。前橋商、前橋工の両名門は、新興私学に押されっぱなしの歴史から何とか脱却を図りたいところだ。
【北埼玉】(参加74チーム)
ライバルと別れ、悠々と独走状態築く花咲徳栄。真紅の大優勝旗を、全員で返しに行くと意気込む。
◎ 花咲徳栄
〇 上尾
△ 春日部共栄 本庄一
▲ 春日部東 白岡 不動岡
これまで数年間、夏の埼玉の覇権は、花咲徳栄と浦和学院という、両雄の対決で決着してきた。そしてそんな厳しい戦いの中3年連続で甲子園をつかみ取ってきた花咲徳栄が、ついに昨年埼玉県勢として初めて真紅の大優勝旗をつかみ取った。そして今年。。。。その「宿命の対決」は、記念大会ということで実現しなくなった。いや、強豪の両校だけに、甲子園での初対決があるかもしれない。今年は北と南に分かれた埼玉大会。花咲徳栄の入る北埼玉は、ほぼこの徳栄の「1強状態」と言え、まず間違いなく甲子園を4年連続でつかみ取るだろう。有力校が多くそろった南大会に比べて、北大会は花咲徳栄と他校の間に、2ランクぐらいのレベル差があると感じられる。実際春の県大会によって決まるシード校は、北大会ではわずか3校のみ。ということは、1つのブロックは「完全ノーシードブロック」となるわけで、大会のレベル自体に不安がよぎる大会になるかもしれない。花咲徳栄は相変わらずの強力打線を誇り、昨年ほどではないにしても、全国でも十分に戦える戦力が整っている。特に主砲の野村のバットには要注目だ。一方追っていく各校は群雄割拠。もしこの大会に花咲徳栄がいなければ、空前の大混戦大会になったのではないだろうか。そんな中で、名門・上尾が2番手に上がってきた。何といっても注目は、あの82年エース・日野投手の息子である日野選手。84年の甲子園組である高野監督の下、あの上尾高校の伝統のユニが甲子園で踊る場面はやってくるのか。春日部共栄も4年前の代表校だが、今年はお世辞にも花咲徳栄に伍していけるほどの戦力が整っているとはいいがたい。それでも伝統の力で、直接対決の時を待ち、一発にかける。その他では県内の強豪の座を占める春日部東や甲子園経験豊富な本庄一などが甲子園を狙うが、花咲徳栄の覇権は揺るがないとみるのが妥当な大会だろう。
【南埼玉】(参加84チーム)
浦和学院が記念大会を生かし5年ぶりの夏を狙う。一発にかける”浦学キラー”市川越が一発逆転を狙う。
◎ 浦和学院
〇 市川越 山村学園
△ 聖望学園 埼玉栄
▲ 浦和実 川越東 ふじみ野
浦和学院にとっては、この100回大会はまさに福音ともいうべき大会。これまでずっと夏に勝てなかった花咲徳栄と地区が分かれ、最大のライバルに対する対策を立てなくてもよくなった。例年のごとく春は埼玉を制し、これで過去3年間6回の秋春の県大会で5回目の優勝を飾るという「県大会に圧倒的に強い」浦学の面目を躍如した。ちなみにその6回で一度だけ浦学が制覇できなかった今年度の秋は花咲徳栄が制覇。その徳栄は、6回すべてで決勝に進出、何と浦学との決勝5回をすべて敗れているが、その花咲徳栄が夏は強く3年連続で県大会を制している。浦和学院は毎年夏に「まさかの負け」を経験してここまで来ているということで、今年はなんとしてもその”負の歴史”を払しょくしたいところだ。今年の戦力は入学時から期待されたプラチナ世代。下級生時からの試合経験も豊富で、個々の力も抜けている。エース佐野と渡辺の二本柱は他校垂涎の好投手。それを打線が鋭く援護するいつも通りのチーム構成だが、夏に負けるときはいつも打線の沈黙が敗因となる傾向があるので、どんなタイプの投手からもある程度の得点を奪いたいところだ。追っていく一番手は市川越。左腕和田が秋浦学戦で好投を見せており、その再現を狙いたい。しかし打線が強力でないので、投手陣にかかる負担が大きいのが悩み。山村学園は秋春ともに県4強に入り安定感は抜群だが、強豪にあたった時の負けっぷりが今一つで、やや評価を落としている。初の甲子園をつかみ取れるか。聖望学園は夏に強い伝統があり、岡本監督も今年はチャンスと狙いを定める。埼玉栄のエース米倉は早くからプロの注目を集めていたが、ここまでは結果を残せていない。待ったなしの最後の夏、覚悟が問われる大会だ。その他群雄割拠の南埼玉大会は、必ずしも浦学一強とはなりそうにない感じで、興味深い大会になりそうだ。
【山梨】(参加35チーム)
宿命の対決再び。山梨学院と東海大甲府の両雄が、雌雄を決する。
◎ 山梨学院
〇 東海大甲府
△ 帝京三 日本航空
▲ 駿台甲府 甲府工 甲府商 都留
やはり今年もこう来たか。そんなことを思わせる両雄対決が今年も実現しそうだ。吉田監督率いる山梨学院と、村中監督率いる東海大甲府。どちらの強豪も、相手に対して一歩も引く気配はない、『甲斐路の夏決戦』に高校野球ファンは今年も沸くことだろう。この3年間、秋、春、夏の県大会の決勝はすべてがこの両校の対決で、その結果は山梨学院が5勝3敗と勝ち越している。今年は秋が東海大甲府、春は山梨学院が優勝を飾り、夏の決戦を迎えることとなった。山梨学院は左腕のエース垣越が成長。強豪との試合をしっかり任せられるようになったのが春の収穫。もともと打てるチームだけに、軸がしっかりしてきたのは夏に向けて明るい材料だ。山梨学院の弱点は、試合によってその内容がガラッと変化してしまうところか。しかしそれは東海大甲府にも言えることで、逆境になった時こそ真価を発揮する甲子園強豪校の戦いぶりに近づけると、そのステータスもぐっと上がると思われるが。。。。一方東海大甲府は、プラチナ世代だった一昨年の夏に決勝で山梨学院の軍門に下って以来、どこか元気がない印象。選手の力量では上回っている印象もあるライバル対決に、どこか意識過剰な部分があるのではないかと思われる。甲子園での実績では山梨学院を大きく上回るだけに、今年はこの壁を突破して全国への道を切り開けるか。両校に続くのは秋春4強入りを果たした駿台甲府だと思っていたが、監督が選手と対立して辞任。一気に覇権争いから後退した印象だ。エース荘司は左腕の好投手だが、初めての甲子園をかける大会前だけに、何とも残念な出来事ではあった。その間隙をぬって浮上するのは帝京三か。こちらも監督交代劇からようやく立ち直ってきた気配で、上昇気流を描く大会にしたい。いいグラウンドが完成して、その真価を問われる日本航空はここまで音なしの構えだが、この夏はどうなのか。石川の兄弟校がブイブイ言わせているので、負けてはいられないはずだが。その他いつも上位に食い込む公立の精鋭たち、甲府工、甲府商、都留に日川らの戦いぶりにも注目だ。