≪第107回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望6 近畿 -
【滋賀】(参加48チーム)
滋賀学園は、昨年以上の高みを目指す。名門・近江が新監督のもと覇権奪還を目指す。
◎ 滋賀学園
〇 近江
△ 滋賀短大付 彦根総合
▲ 綾羽 八幡商 立命館守山
滋賀学園はセンバツこそ初戦敗退だったが、戦力は充実しており、昨夏の全国8強以上を目指す。土田・長崎の強力投手陣は昨夏の甲子園でも実証済み。打線はつながり出すと止まらない打線で、得点力は高い。選抜の悔しさを糧に、その目は全国に向いている。追っていくのは、名将・多賀監督の後を受けた小森新監督が率いる近江。しかし昨年来、滋賀学園の2枚看板がどうしても打てない。近江らしいかさにかかった攻めが見せられれば、活路は見いだせるはず。そのためには投手陣が粘り、接戦に持ち込む必要がある。これまでのようにエースと呼べる大黒柱がいない現状をどう打破するか。選抜で初めての甲子園の土を踏んだ滋賀短大付は、秋に履正社を抑えたサウスポー、桜本を中心にしぶとい戦いで勝ち上がりたい。彦根総合は宮崎監督が数々の荒療治を敢行、なんとしても上位の戦いを勝ち切るたくましさを身に着けさせようとしている。秋3位に輝く綾羽は、例年の通り全員野球で臨む。昨夏は悔しい決勝での敗戦。この悔しさを知る世代が雪辱を誓う。春の戦いを見ると、投手陣が揃ってきているように見える。そのほかでは八幡商は磯部・脇坂の打線の軸がしっかりしている。
【京都】(参加71チーム)
西村が復調すれば、京都国際が圧倒する力を持つ。監督交代の龍谷大平安は意地を見せられるか。
◎ 京都国際
〇 龍谷大平安
△ 東山 立命館宇治
▲ 京都共栄 京都外大西 福知山成美
昨夏全国制覇を果たした京都国際。そのエース格だった西村が残り今年も盤石と思われていたが、打線が振るわず秋春ともに8強にも残れていない。西村は相変わらず球にキレがある全国屈指のサウスポー。普通に投げれば県内ではどんなチームにも2点はやらないであろうというほどの安定感を持つ。投手育成に長けた小牧監督の下、今年も控え陣も充実してきており、投手陣はまさに盤石な状態だ。問題はバッティング。昨夏猛威を振るった、ケースに応じた”大人のバッティング”が、今年は完全になりを潜めている。さて、夏の大会で、果たして打線は復調するのか。復調すれば、まさに県下に敵はいない。平安愛にあふれた名将・原田監督が失意のうちにチームを去った龍谷大平安。川口新監督のもと巻き返しを図るが、激戦の夏の古都の戦いを制することができるか。エース臼井は春は京都国際を完封。夏もその再現を狙っている。打線はまだまだ本格化とは言えないが、そこそこ打てるようにはなってきている。3番手には春準優勝の東山が上がるか。矢根・笠井の投の2枚看板は安定感が高く、春の戦いぶりからは上位進出の可能性が高いと思われる。その春を制したのは京都共栄学園。福知山の地から初出場を狙う。全員野球が身上で、力負けしなければ後半まで食らいつく力を持つ。昨春選抜を経験の京都外大西は、その時のメンバーが主軸に座り、にらみをきかせる。福知山成美のエース小沢も好投手。上位行は、序盤での対戦は避けたいところであろう。
【大阪】(参加152チーム)
やはり大阪桐蔭が一番手。戦力的には、十分に全国制覇を狙える。ライバルの履正社も逆転を狙い、大院大高がどんな戦いを見せるかに注目。
◎ 大阪桐蔭
〇 履正社
△ 大院大高 興国
▲ 大体大浪商 関大北陽
全国屈指のライバル対決、大阪桐蔭と履正社の頂上決戦は、今年も間違いなく全国注目の的だ。今年は秋は履正社が決勝で大阪桐蔭を破りV、春は大阪桐蔭がそのリベンジを果たしてVを飾った。両校の戦力を比較すると、大阪桐蔭が若干上回るという評価だ。間違いなくドラフト上位で消えていくエース森と、それをサポートする中野の2枚は全国屈指の好投手。そこに多分4,5枚は新しい投手が加わり、今年も盤石な態勢をつくる。しかし今年の問題は打線か。大阪桐蔭といえば打線がすぐに思い浮かぶほど強力な打線が、今年は好投手相手には火を噴かないことがしばしばある。一発勝負でそれが出た時、強力投手陣が踏ん張り切れるのかが勝負を分ける。今年の春は、投打ともにライバル・大阪桐蔭には力負けという感じで、どこまで巻き返していけるか。そして、夏の戦いではライバルに分が悪いというのも心配のタネだ。さて、今年の春のセンバツは両校とも出場はかなわず、大阪からの出場ゼロという異例の事態になった。しかしながら、そのレベルが落ちているということはなく、悔しさがあるからこそ、今年の夏の戦いは白熱しそうだ。この全国屈指の2校を追うのは、昨年来急伸してきた大院大高とルネッサンスの最中の興国だ。大院大高は秋は府3位、春は履正社に屈したもののタイブレークに持ち込むなど、徐々に2強に食い込む実力を身に着けてきている。辻盛監督のメソッド満載のチームは溌溂としていて、どこか期待感を感じさせる。今年は2年生中心のチームで、本当の勝負は来季だが、今年も2強に一泡吹かせる可能性は十分にある。興国も面白い。スラッガー揃いの打線は得点力が高く、投手陣が安定してくれば上位での戦いも十分に考えられる。名門2校も黙っていない。大体大浪商は安定感のあるエース高原を軸に、あの牛島ー香川以来の夏を目指している。関大北陽も春は4強入り。かつてはPLキラーとして恐れられたチームで、そのマムシのようなしつこい野球で上位打倒を目指す。そのほかでは強豪の東海大大阪仰星、近大付らのいつもの上位陣もいい戦力を整えつつあり、2強対決が予想されるものの、若干波乱を含んだ大会になりそうだ。
【兵庫】(参加153チーム)
東洋大姫路の大復活で、報徳との「究極のライバル対戦」が実現か。 しかし神戸国際大附など、追ってくる勢力も力は十分だ。
◎ 東洋大姫路
〇 報徳学園
△ 神戸国際大付 明石商
▲ 社 滝川 三田学園
新監督、岡田監督が就任し、すぐに全国レベルのチームへと蘇った東洋大姫路。今年は秋春ともに近畿大会を制して、全国で最も注目される学校の一つとなった。春のセンバツで大ブレークを果たしたエース木下は安定感抜群の投球を見せ、大阪桐蔭、智辯和歌山という全国屈指の強打線のチームを抑えきって、夏への視界は良好だ。ここに秋までの大エース・阪下が復調してくる予定で、この2本柱が揃うとまさに全国屈指の投手陣を形成できる。選抜ではさほど振るわなかった打線もここにきて当たりを取り戻しており、県大会は全国の頂点への一里塚だ。しかし昨年まで2年連続で選抜準優勝に輝いた名門・報徳学園も黙ってはいない。春はさほど当たりの出なかった打線だが、全国の頂上を知るメンバーがずらりと並び、迫力は満点。そこに力を伸ばしてきた荒井・中野の左腕のデュオが絡めば、東洋大姫路とも互角の勝負に持ち込める。兵庫県で昭和40年代から切磋琢磨してきたこの東洋大姫路と報徳の2校。神奈川の横浜ー東海大相模、広島の広島商ー広陵などとともに、究極のライバル対決の一つとして全国にも認識されている。両校が相まみえるという事になれば、兵庫の夏はまさに熱く燃え上がる。しかし両校以外にも、力を持ったチームが多いのが兵庫の特徴だ。その1番手は神戸国際大付。闘将・青木監督に率いられ、今年は秋春と2季連続の4強入り。その力強い打線は例年のごとく折り紙付き。今年は投手陣の整備が遅れており、そこが覇権を握るポイントか。コロナ前の一時全国を席巻した明石商も巻き返しを図る。ここ2年はいずれも決勝で涙を呑んでおり、3度目の正直で全国を狙う。昨年からマウンドに上がるエース横山の踏ん張りが明石商の命運を握る。一昨年まで連続出場を果たし、すっかり夏に強いイメージをまとっている社は、非常にレベルの高い選手をそろえており、一発逆転のチャンスは十分。滝川には県内屈指の速球派、新井がいて、一気に久しぶりの頂点を狙う。三田学園も昭和40年代以来の聖地を目指す。古豪とは呼ばせたくない気迫は買える。
【奈良】(参加34チーム)
天理ー智弁のいつもの2強対決に、今年は奈良大附が割って入るか。本命の天理は、投打のバランスがいい。
◎ 天理
〇 奈良大附 智弁学園
△ 奈良 畝傍
▲ 郡山 高田商 橿原学院
およそ50年も続く古都・奈良の夏の覇権争い。ここ数年は智弁学園がやや優位に進んでいたが、今年は天理が秋春ともに県大会を制して一歩リード。その天理。悔しい初戦負けを喫した選抜から帰って臨んだ春の県大会を5試合無失点で駆け抜け、投手陣の底上げを達成した。枚数の揃った投手陣は夏の大会に向かうにあたっては非常に心強く、全国屈指の赤埴を中心とした強力打線に絡めば盤石となる。ライバルの智弁学園はどうだろう。一昨年、昨年と非常にインパクトのあるチームで甲子園を駆け巡ったが、今年は少し鳴りを潜める。春は畝傍にコールド負け。しかし勝負の夏は、必ずチームを上げてくることが予想され、やはり無視できない存在なのは確かだ。チームは昨年もよく打った少路、中道らが残り相変わらず迫力はある。投手陣は枚数は揃っているので、大事な試合を任せられる軸を作ることだ。その2強に今年割って入りそうなのが奈良大附。エース杉山が非常に安定感があるが、春準決勝、決勝に先発した新城にもめどが立った。打線はややおとなしいが、勝負どころを見極めるクレバーさを備える。昨夏は決勝で智弁に接戦の末敗れており、何とか甲子園への道を切り開きたい。秋春と県大会で上位に進出して近畿大会を経験した奈良も面白い。小さな大投手・神山がチームを鼓舞する。畝傍は春、智弁学園を何とコールドで葬り去った。その戦いを夏もできるか。郡山、高田商の名門は虎視眈々と上位を狙う。橿原学園も春4強入り。組み合わせ次第では上位も。
【和歌山】(参加35チーム)
選抜準優勝・智辯和歌山の進撃をさえぎる壁はない。 市和歌山は、横浜戦で好投のエース丹羽の右腕にかける。
◎ 智辯和歌山
〇 市和歌山
△ 星林 和歌山東
▲ 日高 初芝橋本 箕島 桐蔭
今年の和歌山大会も、選抜準優勝で盤石の強さを誇る智辯和歌山の1強だ。その強さは他を圧倒している。渡辺・宮口と選抜で全国屈指を証明した投手達が、チーム内競争でどんどん力を伸ばし、さらに進化した姿を夏に見せる。攻撃も福元を中心に上位、下位とも息の抜けないスラッガーぞろいで、ちょっと付け入るスキのないチームだ。智辯和歌山の目指すところは、明確に4年ぶりの全国制覇。そこに向けての県大会の戦いとなるが、まったく死角は見当たらない。追っていくのは近年ライバル関係にある市和歌山。選抜では優勝した横浜に対して、エース丹羽が好投を披露。4失点に抑えて今後の楽しみを継続させた。打線が智辯和歌山に比べるとかなり小粒なため、例年通り投手を中心にロースコアゲームに持っていくしかないが、可能性があるとすればこの市和歌山という事になる。星林はSB小久保監督の母校だが、90年以来35年ぶりの栄冠を狙う。春は接戦を勝ち抜いて決勝まで進出したが、決勝では智辯和歌山に0-12の大敗。現実を思い知らされる結果となった。エース則藤は好投手だが、このままでは智辯和歌山には通用しないと認識したであろう。夏はどのような変化を遂げて登場するか。秋準優勝の和歌山東は、何をやってくるかわからないチームの怖さがあったが、その野球を推進していた米原監督が退任。チームカラーは変わるのか。日高、初芝橋本らはまとまった好チームで、名門の箕島、桐蔭も軸がしっかりしていて、勝ち上がる要素は十分だ。
(つづく)