≪第100回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望5 北信越地区 -
【新潟】(参加89チーム)
県内無敵の日本文理。新監督で初めての夏が見えてきた。巻き返したい新潟明訓と中越の名門、そして関根学園と加茂暁星は初を狙う。
◎ 日本文理
〇 中越 新潟明訓
△ 加茂暁星 関根学園
▲ 北越 東京学館新潟 新発田 十日町 開志学園
昨年はベテラン大井監督”最後の夏”に日本文理が甲子園をプレゼント。その花道を飾った。カリスマ監督の引退で混とんとするかと思われた今年の新潟の高校野球界だが、日本文理の強さは新監督になってからも衰えることはなく、昨年の3季連続パーフェクト優勝に続いて、今年も秋春の県大会を連覇。夏の連覇に向けても、まったく死角は見当たらない。エース鈴木は150キロを計測する県内屈指の好投手。それを左腕の新谷がサポートする投手陣は盤石。打線は大井イズムが受け継がれた強力打線。県外の強豪にもおいそれとは負けない力を持っており、油断がなければ連覇は堅そうだ。追っていく名門の2校、特に中越は紙一重のチーム力を誇る。こちらも山本・山田の左右の2枚看板。しのぎあいに持っていければ勝機はつかめる。新潟明訓は、今年はややライバルとは差がある感じだが、夏は必ず上位まで上がってくるチーム力は健在。ライバルの2校にとっては厄介な存在だ。春に準優勝を飾ったのは関根学園。ここ数年何度も上位に顔を出してきており、初の代表へ、機は熟したともいえる。それは加茂暁星も同じこと。質の高い選手をそろえ、久しぶりに県内からの初出場を狙う。そのほかでは秋に北信越大会まで進出した北越が波に乗れば面白い。しかしながら、日本文理の牙城は崩れそうにない今年の大会だ。
【長野】(参加87チーム)
王者・佐久長聖が今年もトップを快走。エース直江で連覇に挑む松商学園が対抗。上田西の巻き返しも楽しみだ。
◎ 佐久長聖
〇 松商学園 上田西
△ 東海大諏訪 東京都市大塩尻
▲ 松本深志 日本ウェルネス信州北筑
強打に好投手、そして堅い守り。今年も”王者”佐久長聖が盤石な戦力を誇り一番手だ。安定感のあるエース林に、控え投手陣も充実して夏の連戦にも心配はなく、鍛えられた守りが強力に投手陣を援護する。打線も秋から春にかけて大きな成長を遂げ、今や強力打線と呼べるほどに。例年激戦になる県大会だが、今年は佐久長聖が頭一つ抜けているムードで、逆転がイメージできない大会になりそうだ。追っていく一番手は、松商学園が上がる。昨年ダークホースから一気に優勝へと駆け上がった名門は、今年もその時のエース直江を残す。直江は春まではやや打たれる場面も多かったが、最後の夏にはキッチリと調整してくるだろう。佐久長聖にガチンコで勝負できるのは松商だけと語る関係者も多い。その佐久長聖や松商学園に近年の実績では上回る上田西は、今年も要注意のチームを作ってきた。安定感抜群のエースがマウンドを死守するのがチームの伝統だが、今年のエースである塚田もまさに”大黒柱”の風情。投げても打っても、県内屈指の評判が高い好選手だ。この3強はいずれも本格派の好投手を持ち、しっかりした野球を展開する崩れにくいチームだが、追ってくる各校もなかなかのチームが多い。東海大諏訪は投打に安定感抜群。都市大塩尻もエース高木で波乱を起こせるチーム力を備える。日本ウェルネス信州北筑は創部2年ながら県内の名監督・中原監督に率いられて秋は優勝を飾っているだけに侮れない存在だ。そして”超名門校”として名高い松本深志は、双子のエースを擁してまさかの大逆転甲子園に狙いを定めている。
【富山】(参加46チーム)
富山商・高岡商の”富山の早慶戦”今年も。富山一、高岡一や富山国際大付などのチームがどこまで食い込んでくるか。
◎ 富山商 高岡商
〇 富山一 高岡一
△ 富山国際大付 南砺福野 富山東
▲ 新湊 不二越工 桜井
昨年絶対的な強さを誇った高岡商が今年もトップを走るが、昨年ほど他校と差はなく、今年は伝統の富山商との対決になりそうな気配が濃厚だ。高岡商はプロ注目のエース山田を擁してスケールでは昨年を上回るとの声も。一方の富山商も、こちらも右腕のエース沢田がプロの注目を集め、一歩も引かない構え。選抜でも好投を見せ、その力は実証済みだ。両エースの投げ合いが濃厚な今年の大会は、例年以上にレベルが高く燃える夏となりそうだが、2強のほかにも力のあるチームは数多く、激戦の可能性もある。その筆頭候補としては、富山一が上がるか。選手の質は高く、切り札はないが全体のレベルが高い野球をする。高岡一は1・2年生がメンバーの大半を占めるフレッシュなチーム。それだけに諸刃の剣だが、波に乗ることができれば一気に突っ走る可能性も十分だ。ここ数年安定した力を見せる富山国際大付や久々の甲子園へ照準を絞る南砺福野、そして昨年今年といい戦いを見せる富山東なども圏内。甲子園経験のある新湊、不二越工、桜井などの巻き返しも予想され、序盤から大会が盛り上がりそうな気配だ。
【石川】(参加47チーム)
星稜は全国制覇を狙うチームへの第一歩を踏み出した。ライバル・日本航空石川も聖地進出を譲るつもりは全くない。
◎ 星稜
〇 日本航空石川
△ 遊学館 金沢
▲ 小松大谷 金沢学院 小松
選抜に2校が出場して2校ともに8強入り。一時若干低迷していた県内の高校野球熱は、今最高潮に達している。名門・星稜は完全に復活して、あの名将・山下監督時代よりも力強い歩みになってきた。山下監督が「いつか北陸路に優勝旗を」と日々選手を鍛え上げ、その中から松井秀喜などの好選手、好チームが生まれてきたが、今の星稜は当時以上の好素質の選手を集め、全国制覇に照準を絞ったとみていいだろう。選抜ではその強打のほか、2年生の奥川が素晴らしいポテンシャルを見せつけたが、今春入学の1年生はそれ以上の逸材がゴロゴロ。春の北信越大会を制したチームの中心として、すでに高校デビューを図っており、層の厚さは全国屈指のレベルとなっている。星稜が本格的に全国制覇を狙うのは今年の秋以降になってきそうだが、それでもこの夏のチームも全国の舞台で大活躍できる可能性を秘める大型チームだ。その星稜に対して一歩も引かないのが、同じく選抜8強の日本航空石川だ。その打力はすでに全国屈指のレベル。終盤の粘り腰とともに、日本航空石川の看板となっている。故障者の多い投手陣にやや不安材料があるものの、打倒星稜に燃えており、決勝対決となった場合は全国的に注目を集める好カードだ。完全な「2強激突」という図式になりそうな100回大会だが、そうはさせじと名門の2校が狙いを定める。一時の勢いにやや陰りの見える遊学館だが、その持っているポテンシャルは高い。今年は打力で勝負か。金沢も名門復活にかけており、こちらは質の高い投手陣を押し出しての戦いとなる。そのほかでは、星稜との「激闘数え歌」で知られる小松大谷は今年はどこまでやれるのか。同じく能登からは小松もいい戦力をそろえる。エース小川に注目だ。金沢学院は秋春ともに県大会4強進出で、2強に迫る実績を残しているが、夏の戦いでどこまで肉薄できるか。
【福井】(参加30チーム)
昨夏代表の坂井が今年も好位置につける。いつもの3強、福井工大福井・福井商・敦賀気比の巻き返しはなるか。
◎ 坂井
〇 福井工大福井 敦賀気比 福井商
△ 啓新 北陸
▲ 金津 丹生 敦賀
昨夏出場の坂井に県内3強である福井工大福井、福井商、敦賀気比の4校による覇権争いの様相だ。一時期春の選抜を制した敦賀気比が県内のチームからは一歩抜け出た存在になったが、ここに来てまた「馬群に巻き込まれる」形になって戦国大会の様相を呈してる。坂井は昨夏の甲子園出場で自信をつけ、秋準V、そして春は優勝を飾った。攻守の柱である石川捕手を中心に、しっかりとした野球で安定した勝ちを拾っていく戦いぶりはブレがない。福井工大福井は監督が代わったが新スタッフを大阪桐蔭出身者で固め、打てるチームへの変貌を図っている。敦賀気比は明徳義塾や聖光学院のように、全国屈指の戦力で一時代を築くかと思われたが、最近は失速気味。今年の巻き返しを期す。県内有力校の指導者はここ5年ほどで様変わりしたが、敦賀気比は唯一の全国制覇経験を持つ東監督が率いており、そのアドバンテージを生かしたいところだ。かつて北野監督時代は「夏といえば福井商」と言われたが、最近はめっきりその威光も影を潜めた福井商。今年は春の大会で決勝進出を果たし、4強の一角として夏に臨む。”炎のチーム”の復活は、甲子園のファンの多くが待ち望んでいる。元東海大甲府の大八木監督を招いて甲子園を狙った啓新だったが、その夢をつかむことはできず体制を刷新。初めての夏に臨む。投打に好選手をそろえており、まさかの初代表があるか。そのほかでは一昨年の代表である北陸や21世紀枠代表となった金津、秋春連続8強入りの丹生や古豪の敦賀などが面白い戦いをしてくれそうだ。