第90回の選抜高校野球大会。
大会第3日目は、
地元の近畿勢が相次いで登場することもあって、
球場も満員に膨れ上がりました。
そんな中での第1試合。
秋の明治神宮大会で優勝、
今大会でも優勝候補の有力な一角に上がる明徳義塾が登場。
その明治神宮大会で直接対決をして4-2で勝っている中央学院が相手でした。
ワタシは戦前、
この対決は「すでに決着がついている」と思っていました。
この秋の対決で中央学院は、
終盤に主砲・大谷が一発を放ち”一見”接戦をしたように見えていますが、
試合内容としては『明徳が余裕の勝利』を収めた試合でした。
「1度対戦したチームは、丸裸にする」明徳が、
中央学院によもや負けることはない・・・・というのがワタシの見立て。
案の定試合は初回から、
大谷の「勝負どころでは力んで浮く」ストレートをとらえた明徳が3点を先取。
その時点で「決まったな」と思っていたワタシは、
この試合中盤から終盤にかけて、
淡々と試合を見ていました。
そこで思っていたのは、
「明徳打線があまり振れていない。やはり例年通り、さほど強力打線というわけではない?」
ということ。
しかし市川投手の投球は安定感抜群で、
「このまま3-1か、悪くとも3-2で逃げ切るだろう」
ということを容易に予想していましたが、
ここからが違った。
8回に市川がまさかの乱れ。
なぜかストライクが入らない状況で、
四球、死球、死球でなんとノーヒットで満塁。
そして今日4番に起用されているものの、
市川の横から外角に鋭く流れるスライダーに全くと言っていいほどバットが合わず、
まさにここまで市川に「手玉に取られている」状況だった高鹿がバッターボックスに。
ここで市川は、
まさに魅入られたようにど真ん中にスライダーを投げてタイムリーを浴び同点。
2市からは西村にも勝ち越しタイムリーを浴びて、
ビハインドを負ってしまいました。
この回の市川の投球、
馬渕監督でなくとも、
『野球って、本当に怖い』を実感する出来事でした。
少しのスキ、
いや、スキともいえないほんの少しの心の動き、揺れ……
そんなことが試合の状況を一変させてしまう野球という競技の怖さ。
まざまざと見せつけて試合は8回裏へ。
8回裏の明徳。
無死から3番渡部が四球で出塁。
ここもまた、
リードを奪った中央学院の大谷投手に若干の心の揺れが見えた場面で、
そこを『巧者明徳』が鋭く突きそうだなあ・・・・
と思っていましたが、
そこでバッターボックスに入った主砲の4番・谷合が併殺打を打ってしまって2死走者なし。
しかしここから明徳が粘って連打に盗塁を絡めて1点。
わずかに差を1点差としました。
そして9回。
大谷は明徳打線から簡単に2死を奪い、
初出場初勝利まであと一人にこぎつけました。
しかしここで、
勝負を急いで気持ちが逸ってしまったのか、
2・3番にヒット、死球を与えて1・2塁。
そして迎えたのが、
先ほどチャンスに併殺打を打ってしまっている、この日ノーヒットの谷合。
ここで社会人野球など経験豊富な相馬監督は投げ急ぐなの指示を出すものの、
大谷投手の心の揺れを修正できず。
これまでの打席でことごとく打ち取っていた自信を持つストレートを選択して投げ込むも、
その球はまさに”魅入られたように”ど真ん中の高目へ。
それを渾身の力で降りぬいた谷合の打球は、
打った瞬間に”それ”とわかる軌道を描き、
センターのはるか上を超えてバックスクリーンに突き刺さる逆転サヨナラ3ラン。
明徳はまさに「九死に一生」を得て、
3回戦に進出しました。
まさに鳥肌物の一撃でした。
思えば谷合選手は、
一昨年夏の甲子園でも昨年春の選抜でも、
そして昨秋の明治神宮大会でも、
いいところで一発長打の出る選手。
気持ちが本当に強い選手なんでしょう。
この日もその真骨頂を、
最後の最後に見せてくれました。
やっぱり「チームの4番」はこうでなきゃね。
それまでどれだけダメでも、
1試合に1回、
一番いい場面で「大きな仕事」ができる選手、
それが4番というものですよ。
このシーンを見ていて、
明徳が夏の選手権で優勝を飾った2002年の3回戦、
常総学院戦を思い出しました。
1点をリードされた8回裏、
2死から相手のミスでランナーが出ると、
2番沖田が起死回生の同点2ラン。
そしてすかさず3番森岡が、
決勝の2者連続ホームランを叩き込んで劇勝したのでした。
この勝利で明徳はこの年完全に波に乗り、
初めての全国制覇を成し遂げました。
思い出したファン、
多かったんではないでしょうか。
そして今年の明徳、
その02年に雰囲気が似てくるかもしれませんよ。
エース市川がこの勝利で吹っ切れて本来の投球を見せるようだと、
明徳は進撃していくかもしれませんね。
そうなっても全くおかしくはありません。
そして敗れた中央学院。
その02年に明徳に敗れた常総学院は、
その悔しさをもって03年に甲子園に連続出場し、
優勝を飾っています。
捲土重来、
まさにその言葉がぴったりの戦いぶりでした。
同じ「常総地域」の学校です。
中央学院にもぜひ、
甲子園でこの日の悔しさ、
晴らしてもらいたいものです。
初日から接戦続きの甲子園。
この後も、
毎日うららかに晴れそうな予報が出ていて、
いい感じで大会は進んでいきそうですね。
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