【もっとも印象に残った高校球児】
7.宮城
大越 基 投手 仙台育英 1989年 春 夏
甲子園での戦績
89年春 1回戦 〇 3-2 小松島西(北北海道)
2回戦 〇 2-1 尼崎北(兵庫)
準々決勝 ● 2-5 上宮(大阪)
夏 1回戦 〇 7-4 鹿児島商工(鹿児島)
2回戦 〇 4-0 京都西(京都)
3回戦 〇 2-1 弘前工(青森)
準々決勝 〇 10-2 上宮(大阪)
準決勝 〇 3-2 尽誠学園(香川)
決勝 ● 0-2 帝京(東東京)
数多の名選手を輩出している宮城県。
3度の準優勝を記録し、
あと一歩がどうしても破れない悔しい思いを何度もしましたが、
その”悲劇性”がまた、
高校野球ファンの脳裏に深く刻まれています。
古くは仙台育英で延長17回を投げあったエース・大久保。
元仙台育英の監督で、現役時代はサッシ-・酒井と見事な投手戦をくりひろげた佐々木投手。
ガラスのエースと言われながら、最後の夏に見事なピッチングを見せた東北・中條投手とそのチームのスラッガー・安倍選手。
言わずもがなの大魔神・佐々木投手(東北)。
甲子園最速をたたき出した佐藤由規投手(仙台育英)。
素晴らしい選手の宝庫ですが、
やはり印象に残っているのは二人。
仙台育英の”魂の投球”を続けた大越投手。
そして東北のダルビッシュ投手です。
どちらかを選べと言われれば、
やはりどこか冷めた印象のあった高校時代のダルビッシュよりも、
熱投また熱投でチームを初の全国制覇の寸前まで導いた大越投手でしょう。
あの夏、
大越はとびきり熱い【全国のヒーロー】でしたから。
世が平成に変わった89年。
大越が全国デビューを果たしたのは、
センバツ大会でした。
秋の戦績から期待されてはいたものの、
『どこかでやられてしまう』という予感もはらんでいた当時の東北のチーム。
案の定甲子園では、
勝ち進んだものの準々決勝で、
元木・種田らの率いる【最強軍団】上宮の前に、
力の差を見せつけられて敗退してしまいました。
そこまでなら、
東北のよくある強豪の話。
しかし夏に連続出場を果たした仙台育英は、
というよりもエースの大越は、
『ものすごい投手』
に変身を遂げていました。
なにがって・・・・・
その気迫がです。
一見するとさほど春と変わりなく見えるこの大越でしたが、
最後の夏を迎えてその気迫は、
見ている者にもやけどを負わせるほどの凄さでした。
2回戦の京都西戦で『あわやノーヒットノーラン』という1安打完封劇を見せると、
3回戦では同じ東北勢の”格下”と見られていた弘前工に、
チーム全体の慢心もあったのかペースがつかめず大苦戦。
しかし最後は、
”主役”大越の特大アーチで決着をつけ、
選抜と同じ準々決勝の舞台で、
”不倶戴天の敵”上宮との対戦を引き当てました。
『大会NO1』
の看板に偽りなく勝ち進んできた上宮の打線に対し、
大越はそれこそ1球1球マウンド上で吠えながら熱闘。
種田・元木ら強打者に一歩も引かず、
この難敵を大差で葬り去りました。
この時点で、
大会のムードは大越一色。
続く準決勝でも、
苦しいマウンドを根性で凌ぎ切り、
最後は勝ち越しのタイムリーを放って延長の苦しい試合をもぎ取って決勝へ。
決勝の相手は、
甲子園ではヒール役を演じることの多い帝京。
甲子園の雰囲気は、
『みちのくに大旗を!』
一色に染まりました。
大越はこの日も、
疲れを見せずに”剛球”で強打・帝京に相対していきます。
対する帝京のエース・吉岡は、
淡々と低めにボールを集め、
ピンチになるほど集中力が増し、
仙台育英の打線を抑えていきました。
『圧倒的に仙台育英が押していた』
試合を観戦していたワタシには、
その印象しかありません。
しかし・・・・・
ホームは遠かった。
延長10回、
ついに帝京の打線が疲れの見えた大越を捕らえて2点。
その裏、
もはや仙台育英に反撃の余力は残されておらず、
平成に年号が変わったこの年も、
東北勢悲願の初制覇の夢はついえたのでした。
『甲子園のヒーロー』
として輝きを放った大越は、
その後紆余曲折を経て、
今年のセンバツに指揮官として甲子園に戻ってきてくれました。
彼の高校野球人生、
まだまだこれから続いていきます。
1球1球、
マウンド上で吠えながら、
そして打者をにらみつけながら前身をばねのようにして投げ込む速球。
迫力満点でした。
【大越の弟子】
と呼べる気迫満点のピッチャーに、
早く会いたいなあ。
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