≪第88回選抜高校野球大会≫
【総合展望】
『強いものが勝つ』当たり前の予定調和が色濃く浮かび上がる大会になる
昨年、100年を迎えた高校野球。
戦争での中断はありましたが、おおむね100年間の間常にファンを熱狂させてきた高校野球。
しばしば『社会現象』まで引き起こしてきたこの高校野球も、
21世紀になって『その質の変化』が顕著になってきたと言われだしました。
ワタシは『高校野球観戦歴』がおよそ45年程度ですが、
『そういえば、ワタシが見始めた頃、熱狂がピークだったころ、そして新世紀に入る前と現在では、高校野球の”質”も大きく変化したなあ』と思うことも多いですね。
昭和40年代~50年代中盤ぐらいにかけては、
やはり高校野球と言えば『守りと小技』がチームを作る柱で、『しっかりとしたエースを持って、堅実に守る』チームが勝ち進んでいくという傾向があったと思います。
そして甲子園戦術と言えばなんといっても『バント』でした。その当時は、ランナーが浅いアウトカウントで塁に出ると、まさに”判で押したように”バント出進塁させるという作戦が取られていました。そして、2アウトの前にランナーが3塁に到達すると必ず『スクイズ』をするというのが作戦の中心。『打って打って打ちまくる新世代の野球』なんて言われていた原貢氏率いる東海大相模でさえ、3塁ランナーはスクイズで還していたことが多かったように思います。
そして、長い間高校野球が他の競技よりも人気を博し、庶民に熱狂的に支持されてきたのは、一つは『日本国民は野球好き』ということが大きいのですが、もう一つは『何が起こるかわからない大会』だからということなんじゃないかと思ったりもしています。もともと数10点単位で点を取り合う競技ではない野球は、1点の重みが他の競技に比べて大きく、それゆえ『波乱の起きやすい競技』ということも言えます。
『弱者が強者を倒す』『一人のヒーローが、強豪をなぎ倒す』なんていうことも起きやすく、それが戦後日本の世相ともマッチして、人々の興味を引いたのではと思っています。
そしてもう一つ大きなことは、郷土色の強い『ふるさと対抗戦』だということです。〇〇高校、△△商業、◇◇工業など、ふるさとの匂いのする校名の学校に、人々が思い入れたっぷりに応援する……それが高校野球で、ワタシは”高校野球オヤジ”として、『高校野球は日本のスポーツで最大の”文化”だ』と思ったりしているのです。
しかし近年、そうですねえ、特にここ10~15年ぐらいかな、『高校野球の質が変化してきたなあ』ということを強く感じたりしています。
野球がより科学的に進化してきたのに比例して、トレーニング法なども変わり、飛躍的にその競技力を向上させた選手たちが、出始めましたね。
ワタシの【好投手】の定義の中で、98年の『超高校級投手』である松坂大輔と、04年のダルビッシュ有、06年の田中将大、そして12年の大谷・藤浪などは、完全に分けてみている存在です。松坂が『アナログ世代の(最後の)スーパースター』であるのに対して、後の世代は完全に『デジタル世代のスーパースター』という感じですね。ダルビッシュからは、『素質を持った選手が、最先端の技術で磨かれて磨かれた、今までに類を見ない『作品』として完成した』選手に見えます。その頂点が、今のところ大谷だと思われます。
そして高校野球も、これまでの泥臭くチーム作りをする野球から、『素質のある選手を内外から集めて恵まれた環境と科学的トレーニングを駆使してチーム作りをして、プロ監督の指揮の元頂点を目指す』という、いわゆる”プロ化”のようなチーム作りが前提となってきました。
サッカーのユースチームのチーム作りと同じようなことが、高校野球でも行われていると感じることが多くなりましたね。
それに抗っているのが、誰あろう『高野連』なんじゃないかと、思ったりしています。
高野連はとかく『頭が固い集団』『前近代的な・・・・・』なんて言われますが、ワタシは『現在の風潮と今までの伝統に、何とか折り合いをつけさせる』ことを模索しているように、最近では見えてきました。
この時代の変化、質の変化に伴って、以前よりもずっと『強豪校の寡占化、固定化』が進んでいるように思います。
既に時代のニーズに合わなくなってきたと考えられている商業高校、工業高校は普通高校への転換が進み、『あの伝統校が・・・・・』と言われる高校がまったく甲子園に出られなくなってきている現状が、確かにあります。
そして他の競技のクラブチームの様に『幼少時代からの才能発掘』ということで年少時からの『選手の囲い込み』も激しくなってきているようです。
そして選手は、環境のいいチームに集中して、強いものはますます強く・・・・という流れが止められないものになっていると考えています。
その一極集中こそが世の中の流れにとても似ていて、
『高校野球の流れも時代の流れには抗えないなあ・・・・・』と強く感じているところです。
高校野球はそのすそ野が広く、
それゆえたくさんの学校がトーナメントに挑むために、
面白い大会となっていたと思います。
高校スポーツのほとんどはそうではなく、
ほとんどの競技では『全国トップクラスの数校が、優勝旗をたらいまわしにしている』トーナメントが昔から主流です。
全国大会を見て、『どの学校にも優勝のチャンスがあって・・・・』なんて本気で言っている競技なんて、
ほとんどないと思います。
大会の前に優勝する学校を予想すると、
4・5校予想しておけば、まず外すことはない競技ばかり。
しかし高校野球だけは波乱の要素も大きく、
『予想通りにはいかない』ことが主流でした。
少し前の時代までは・・・・・・。
他のほとんどの競技で見られる、
『ほぼ実力通りに決まる』予定調和の時代が、
高校野球にも訪れようとしていると、
言ってもいいと思います。
”大会の波に乗ったチームがずんずん勝ち進んでいく”姿こそ大会の華。
ワタシは今でもそう思っていますが、
今大会はどうなることでしょうか。
昨年の選抜の東海大四の快進撃のようなことが起これば面白いですがね。
ただ、甲子園の大会では、
他の競技のように『シード制』を取っていない高校野球ですから、
【組み合わせの妙】があるのは事実。
そこが大会を面白くしています。
今年の大会でワタシが思うのは、重複しますが『高校野球の質の変化が顕著になるのか否か』ということ。
そんなことを考えながらの大会です。
3強プラス2 覇権争いのトップを走る5チーム
それではサラッと大会の展望を。今年の大会もまた、『高校野球界の盟主』大阪桐蔭中心になるのは間違いない。冬場を超えて打線がいつもの年の様に秋から1ランクアップしていることが予想され、しかも今年はエース高山が12年春夏連覇時の藤浪の様にマウンドで仁王立ち。攻守でスキのない戦力に仕上がっている。選抜連覇を狙う敦賀気比は、秋の時点ではまだまだ課題を残したエース山崎の出来がカギを握りそう。昨年の平沼並みの安定感を見せれば、十分に連覇の圏内へ。エース藤嶋の東邦も面白い。まだまだ先の2強に比べて全体の選手層の厚さなどには差があるものの、なにしろ超高校級の二刀流・藤嶋を擁しているだけに制覇への道筋ははっきりと見えているはず。春に強い東邦の面目躍如の戦いを見せられるか。
3強に続くのは、九州のニューフェース・秀岳館と関東では常総学院とみる。秀岳館は何しろ鍛冶舎監督の甲子園初采配が見もの。今まで長年解説者席から見た甲子園との違いを語ってもらいたい。常総学院はエース鈴木を支える打線の迫力もあり、関東では実力NO1。
”野球王国”の復権を目指す四国は、明治神宮大会で一足早く全国制覇を成し遂げた高松商に注目。安西・米麦の上位は大阪桐蔭・敦賀気比の強豪に競り勝った原動力となった。明徳義塾も相変わらず安定した戦力を誇る。今年は優勝争いに絡むのは難しいとみているが、上位を狙うには十分すぎる戦力だ。レベルの高い関東と近畿も、好チームを揃えた。Aクラスのチームがいない関東勢だが、どのチームも力を持っていて侮れない。注目の左腕・高橋を擁する花咲徳栄と夏のエース2枚が残る東海大甲府、そして秋関東制覇の木更津総合は、いずれも昨年の甲子園で勝利を挙げた経験を持ち、簡単には負けそうもないが、爆発力も今ひとつで優勝争いに絡むかということについてはやや疑問符が付く。それよりも地味だがしっかりとした野球を行う桐生第一に、躍進のニオイを感じる。近年レベルがぐんと上がった群馬代表だけに、ひと暴れを狙う。近畿ではやはり名門の龍谷大平安がいい戦力だ。一昨年の選抜を制したとはいえ、近年その他の甲子園の試合ではことごとく力を出せないまま終わっているので、今年はしっかりと勝ちきって上位を目指したい。滋賀学園・神村、明石商・吉高、智弁・村上など各チームとも絶対的なエースを前面に出した戦いになると思われ、エースにかかる比重が高い。
常連組では、八戸学院光星が今年はいい戦力。8強以上がまずはターゲットだ。鹿児島実、日南学園といった九州の名門も、虎視眈々と狙う。21世紀枠で出場の3校のうち、特に注目は小豆島。水準以上のチーム力を持ち、全島の熱い声援を受けて聖地に立つ。『高校野球のお手本』のチーム、土佐の出場も彩りを添える。
いずれにしても、”春はセンバツから”の名前の通りの接戦を期待します。
そして、予想が完全に外れるような、快進撃のチームの出現も。
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