毎年6月上旬に札幌市中心部の路上で開かれる「YOSAKOIソーラン祭り」が岐路に立たされている。
大音量で流れるロック調のソーラン節に合わせ、独特の衣装に身を包んだ数十人が鳴子を手に、一糸乱れぬ踊りを披露するが、その“騒音”に市民からクレームが相次いでいるのだ。
全国で類似イベントが開催されるほどの人気だが、地元民の心境は複雑なようだ。
「祭りといっても、札幌まつり(=北海道神宮例祭)のように地域に根ざした伝統祭事ではないし、各チームが競うように音楽を流し続けるのは神事というよりイベントでしょう。
参加者たちは大興奮ですが、祭りの部外者で興味のない地元住民との“落差”は激しいですね」
札幌市中心部のマンションに住む主婦(35)は、今年で19回目を迎える同祭を冷静に語る。
こうした地元民の声を受け、同祭実行委員会は、6月9-13日の会期中、スピーカーの音量を市の条例で定められた商業地域での基準「75デシベル以下」にするよう制限。
改善しないチームは演舞中止処分とすることを決めた。
同祭は1992年、元北海道大生で、今年の参院選に出馬を予定している男性が、高知の「よさこい祭り」と北海道の「ソーラン節」を合わせた新イベントとして立ち上げた。
そのノリの良さが若者にも受け、北海道を代表するイベントに成長。現在の観客動員は217万人で、経済効果は札幌ドームのプロ野球日本ハム戦をしのぐ238億円とも言われる。
だが、地元には以前から批判の声が強かった。2007年に北海道新聞が行ったアンケートでは、「YOSAKOIが好き」と答えた人が45・3%に対し、「嫌い」は53・6%。
理由として、コンテスト化や商業化、騒音や衣装に対する嫌悪感などが挙げられた。
「最初のころは参加も10チーム程度で、全員が普通の法被姿。見物人も鳴子を持って飛び込み参加できるような親近感がありました。
しかし、今のYOSAKOIは300以上のチームが参加し、大音量のBGMにスクリーン投影、激しい踊りと派手な衣装・化粧で、『ついていけない』と感じる市民は多いようです」(旅行会社社員)
実際、上位チームにはスポンサーが付き、プロの踊り手も加わって入賞を競っている。
こうした点も地元民の“YOSAKOI離れ”を加速しているという。一方で、景気の冷え込みが厳しい北海道では「これ以上の優良な観光コンテンツは二度と現れない」(同)ともいうから痛し痒しだ。
今回の措置について、実行委員会は「祭りは公の場所を使わせてもらっており、市民の理解をいただくのが大原則です。
騒音対策以外にも、参加者が会場の移動に使う地下鉄の乗車マナーや、路上での打ち合わせなどでルールを厳守するよう、各チームの代表者に徹底していきます」と話している。
騒音や商業化が問題になっているYOSAKOIソーラン祭り
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20100519/dms1005191629016-n2.htm