珍盤奇盤のある風景

日本音楽史の暗闇を彩った奇蹟の名曲たち

21曲目 ザ・レンジャーズ「赤く赤くハートが」その②

2011-12-29 16:12:09 | 珍盤奇盤
さて、こうしてデビューした「ザ・レンジャーズ」だが、
じつは元々のバンドの名は「ザ・レインジャーズ」だった。
当時、演歌専門レーベルのような立ち位置にあった
クラウンレコード期待の新人バンドとしてデビューしたものの、
デビュー曲『星空の恋人』がまったく売れず、
2枚目のシングルより改名したのである(改名の真相は後述)。


やけっぱちというか、捨て鉢というか、
つまりは起死回生を狙った2枚目のシングル。
それが『赤く赤くハートが』だ。

この曲の魅力を端的に記した素晴らしいレビューが存在する。
自分の知る限り、この世に数多あるライナーノーツのなかでも
傑作といえるものだ。こちらもこのサイトより引用させていただきたい。



元々は平穏なワルツのつもりで作ったが、メンバーが反発して無理矢理ロック的に
作り変えたため時空に捻じれが生じ奇跡的に現れたGS屈指の名曲

混乱を極める痙攣ボーカル、地獄の底から追ってくるコーラス、
実は失敗している演奏(実際オーバーダビングしたらしい。)と
何一つ成功をしていない負のエネルギーを一身に背負い永遠の輝きを獲得した
奇跡の大怪曲。アメリカでも認められたモンドの極み。




下線部に注目して頂きたい。
まさに、時空に捻れが生じたのである。奇跡的に。

そして本物の「奇跡」が誕生した。

もう、能書きは十分だろう。さあ、聴いていただきたい。






とても凄いことに、この曲は「小ヒット」を飛ばしたという。
ギターソロもうねりを感じさせ、なぜか心地よさまで覚える。


では、「問題の」ボーカリスト宮城ひろしについて迫ってみたい。
おわかり頂けたとおり「痙攣しながら歌っている」としか思えない、
非常に個性的な歌唱法を持ったセクシー(エクスタシー)ボーカリストである。
「地獄谷で録音されたのでは?」という疑問を持たざるを得ない
地を這うようなコーラスと絡み合いながら、歌声が炸裂する。

この手のボーカルは「下手」というか、微妙に音程がおかしくなることが
多いものだが、宮城ひろし、上手い。あえぎ声が若干邪魔ではあるが。


そして、この曲は語り継がれるべき世紀の傑作?となった。
「あの時代には早すぎた(歌唱法が)」
「いや、時代を追い越し、一周してしまったあげく、
 結局、追いつけなかっただけだ(歌唱法が)」
……リリースから45年が経とうとする今、思うのはこういうことである。
だからこそ、正当な評価が与えられるべきであろう(歌唱法に)。


ただし、GS屈指の名演であることは断言できる。


コンプリート・トラックス
ザ・レンジャーズ
日本クラウン



最後に「改名の真相」について。

名付け親であるディレクターが「このつづりはもしかして…
レインジャーズではなくレンジャーズでは?」と気付いたのが発端とのこと。
宮城ひろしご本人がこの曲を取り上げた某ブログのコメント欄に登場し、
語っておられた。「さもありなん」という理由なのだが…。

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21曲目 ザ・レンジャーズ「赤く赤くハートが」その①

2011-12-29 15:52:04 | 珍盤奇盤
ザ・レンジャーズ・コンプリート・シングルズ*赤く赤くハートが
ザ・レンジャーズ
Pヴァインレコード

日本ロック史上、最大最高の狂乱ボーカリストによる
衝撃の歌声が思う存分、いや、涙が出るほど味わえる一枚


今をさかのぼること20年前、それまで廃盤状態が続いていた
GS(グループ・サウンズ)シーンにキラ星のごとく登場した
レコード会社5社(ビクター、テイチク、ポリドール、
日本フォノグラム、クラウン。のちにキング、コロムビア、
ソニーも加わる)による共同プロジェクト。
それが『カルトGSコレクション』である。

それは、B・C級GS作品を徹底的に集めた、当時としては
とんでもなく画期的なコンピレーションシリーズであった。
それまで(リアルタイムで発売されたレコードを除いて)、
海外発の海賊盤でしか聴くことができなかった作品に
スポットライトがあてられたのである。
このシリーズ、思いのほか(?)ヒットし、10年ほど前は
中古盤屋において、法外ともいえる値がついていた。

さて、今回取り上げるのは、この『カルトGSコレクション』内に
収録された一曲である。愛好家には、もはや「伝説的」としか言えない
曲の誕生秘話と合わせ、非常に有名な曲だ。



曲を生み出した怪物バンドの名は「ザ・レンジャーズ」。
“世界最古のパンク・バンド”という異名を持つ。
そしてその「GS史上最大の怪曲(←あまり聞き慣れない表現ではあるが)」
のタイトルは『赤く赤くハートが』だ。

まず曲の簡単なプロフィールを記しておこう。
リリースされたのは1967年11月10日。
作詞は山口あかり、作曲は荒井靖夫。


当時はGSブームが本格化したころで、各レコード会社が競うように
新人バンドを発掘…というより「乱造」し、矢継ぎ早にデビューさせていた。
この「乱造」については、「ブームの終焉を早めた」という論評もあり、
評価が分かれるところだが、ここでは「奇跡の一曲を生み出した」という
「功」のほうを取りたい。いや、そう取るしかない。



続いて、バンドのプロフィールである。これについては、
B級・C級GSに関する有名サイトがあるので参照頂きたい。
マニアにはたまらない情報が網羅されており、非常に有用なサイトである。
一部を引用させていただく。


ザ・レンジャースは、元ルビーズの水木譲二からクラウンが
GSをデビューさせたがっているということを聞いた古賀民也
(ベンチャーズの代理メンバーとしてステージに立ったことのある)が
これに応え、42年6月にもともとの古賀のバンド・ブルーナイツ
(女性ドラマーだった。同名のムードコーラスグループとは別。)
の4人に事務所が用意したボーカル、オルガンを加え結成された。
マネージャーには水木が収まった。
このボーカルというのが問題の宮城ひろしでもともとは
「次郎物語」の兄役などで知られる子役だった。タップの名人でもある。
ちなみにオルガンのほうは武蔵野音大生だった。
ともかくこうして演奏力とアイドル性を兼ね備えたバンドとして出発し、
高松で一ヶ月ほど演奏修行した。42年10月、クラウンPW品番の
第一号タレントとしてクーガーズやサムライズ、バッキングをつけた
泉アキらとともにデビューした。



長い引用になってしまったこと、お許し願いたい。

文中に「問題の宮城ひろし」という一読ではよくわからない一節があるが、
「何が、どう問題なのか」は、ひと言では語れない。


次回につらつら綴っていきたい。



カルトGSコレクション(2) クラウン編
日本クラウン
日本クラウン


高値ですよ(笑)
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