珍盤奇盤のある風景

日本音楽史の暗闇を彩った奇蹟の名曲たち

2曲目 西郷輝彦「ローリング・ストーンズは来なかった」

2005-09-17 13:40:25 | 珍盤奇盤
幻の名盤解放歌集 クラウン編 ハートを狙い撃ち
オムニバス


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ちなみにジャケット右側に写っている男は西郷輝彦ではない。


割と有名な曲なので、この狭い世界では知っている人も多いと思う。
はっきり言って怪作であり、なおかつ傑作である。
一聴しただけでこの曲の深い世界観を掴みとれる人は、おそらくいないだろう。


さて、この曲、作詞・作曲・編曲は“情念の歌謡魔神”“性愛音楽の帝王”
そして“夜のワーグナー”こと藤本卓也である。なんせ“夜のワーグナー”だ。

歌い手は西郷輝彦(辺見えみりの父で辺見マリの元夫)。
助さん格さんのどちらかをやっていた人である。

藤本卓也がなぜ幻のローリング・ストーンズ初来日公演を
こんなふうにリンクさせたのかは非常に不可解かつわかりやすいが、
まあ徹夜明けに天才の思いつきで作ったのだということにしてしまおう。

怪しげなオルガンが奏でるラテン調のイントロで曲は始まる。
うなるギター。西郷輝彦の歌い出しも非常に落ち着いたもので、
無駄な好感を覚える。この曲の聴き所は、なんと言っても藤本卓也の凶気あふれる歌詞だ。


真珠のジャニス いとしのキャロル
ホク(フォーク) ホク ディラン
ブギウギ ボラン
ローリング・ストーンズ ジョン・レノン 
サンタナ シカゴ


もはや注釈をつけるのは野暮というもの。
ホク(フォーク) ホク ディラン
という歌詞が、何とも泣かせる。

しかし、この曲をただのロック讃歌と思うなかれ。
この曲の凄み(と臭み)はここから始まるのだ。


他人に出来て 俺に出来ない
筈がないさ おまえも頑張れ
ローリング・ストーンズ ジョン・レノン
サンタナ シカゴ

今こそ 二流の俺だが
いずれは売り出すさ
夢のスーパー・スターだ!!
ローリング・ストーンズ ジョン・レノン
サンタナ シカゴ


この「頑張れ」はこう書いて「やれ」と読むらしい。
ロック讃歌のAメロから、歌の世界観は一気に四畳半フォークに転げ落ちる。

主人公がどうやらスーパースターになりたいことはわかる。
ロックスターが目標なのだろう。それも容易に想像できる。

というわけで、海外のロックスターの名がひたすら歌詞に羅列されるという
何が何だかわからない展開になるのだ。
とりあえず、エンディングまで延々と続くコーラスは鳥肌モノである。 

そんな藤本卓也の思惑とは全く別の場所で西郷は静かにロックしている。
彼の楽曲の中でも異次元の輝きを放っているといっても言い過ぎではないだろう。


どうやらベスト盤の中にも収録されているようだ。
しかし、このジャケットの西郷輝彦の不可思議な凛々しさは
いったいぜんたいどうしたものなのだろうか。


ゴールデン☆ベスト
西郷輝彦
日本クラウン

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