神はそれでも意地悪に僕らの魂をいつかは取り上げるのだろう

クズと思われても仕方がない赤裸々な日記。

The world is not enough/其の一

2013年04月19日 23時33分31秒 | 日記
あれは確か、2008年の秋のことだったと思う。


事の発端は、友人のTから俺の携帯にかかってきた一本の電話。
彼は突然、「新しい世界を見るためにテレクラへ行こう」と言い出した。
俺は混乱した。
新しい世界とテレクラとの間にどのような因果関係が存在するのか分からなかった。
もちろん俺は一言目は拒否したけれど、Tと二人なら面白い冒険になりそうだな、と思い直した。
彼とは二人で様々な冒険に出た。ストリップの時も、秘宝館の時も、メイド喫茶の時も、発展場の時も、どんな時も、最初は拒否したけれど、飛び込んでみれば面白かったわけだし、彼と二人ならどんなにディープな世界に足を踏み入れても必ず生還出来るような気もした。
中学生の頃からTの相棒を自負する俺としては、ここで逃げるわけにはいかなかった。

俺がテレクラ突入を承諾すると、彼は「基本コンセプトは、騙される事ね」と言った。
「騙されるって…気が進まないな」と俺が言うと、彼は「騙される以外に何があるんだよ」と言い放った。
確かに、テレクラで掴まえた女とニャンニャンするわけにもいかないし、ネタとしては、「騙されに行く」ぐらいのほうがいいのかもしれない。
俺はコンセプトを快諾し、突入当日を待つだけになったのだけれど、突入前日に再びTから電話があった。
「騙されるのはやめて、純粋な愛を求めに行くことにしよう」

意味が分からない。

話を聞くと、Tはその数時間前に恋人から別れを切り出されたのだという。自分の失恋までネタにしてしまう彼の生きざまに俺は感動し、コンセプトは「騙されること」から「純粋な愛を求めに行くこと」に変わった。



…つづく