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歯科技工士・岩澤 毅

秋山進(著) 「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体 (PHPビジネス新書)

2015年03月28日 | amazon.co.jp・リストマニア
例え話の難しさ

投稿者 歯職人 投稿日 2015/3/28

 リクルート社出身の経営・組織コンサルタントの秋山進さんによる、ダメな組織、停滞する組織の風土を分析し、新たな会社員の生き方と企業組織文化の作り方の方向性を示唆した一冊です。
 実際にコンサルタントとしてかかわった豊富な企業群から、ダメな組織、停滞する組織に共通する病理として“子ども病”を「発見」したとの部分が、本書そして著者のオリジナルと言うことなのだろう。
 著者の秋山氏は、本書の74ページで過去の高度成長期「同じ方向を向いて、同じときに同じやり方で、同じことをするほうが効率的で大きな成果につながりました」と時代背景を説明し、ボート競技の「エイト」と言う種目を例に、「コックスと呼ばれる一人だけが前向きで、漕手である八人は後ろ向き。コックスが競争相手の艇の動きを見ながら、漕手にピッチの上げ下げを指示します。漕手はコックスの指示どおりにリズムや力加減で漕ぎます。八人の力量が同じくらいで、かつ息があっているほど、一糸乱れぬ動きができて艇のスピードが上がります。もし一人だけ飛び抜けた力量の人がいると、艇のバランスが崩れ、逆に遅くなってしまいます。したがって、この競技では、抜群の力量をもつ個人は不要で、全員のレベルの底上げを行うことが合理的な選択となる」と解説する。
 ここで、「例え話の難しさ」を感じる。この様な簡単に類型化される人と組織が実際にあるのか。「同調性」が主要な審査基準とされるシンクロナイズドスイミングでさえ、「力量が同じくらいで、かつ息があっているほど、一糸乱れぬ動き」をするために集まるチームに、様々な個性と体型が集う。バラバラの個性・体型であっても、「同調性」があるように見せる所に、この競技の難しさと面白さがあるのではないか。
 エイト競技の経験者は、「確かに8人のうち飛び抜けている人がいても、それが艇速には直結しませんが、必ずしも8人全員が同じである必要もありません。力量はもちろんですが、手の長さ、足の長さ、足首の固さ、肩の位置なども個々に異なります。リズムとタイミング、バランスは一致させる必要がありますが、実は8人のポジションは艇の位置によってその役割が異なっています。それぞれの個性を生かして配置することになります。また左右それぞれ4人も力量が一致しているとは限らず、そのままでは左右バランスが悪くなるときは、オールの位置とポジションを変更することもあります。そうした工夫や練習を重ねて、最終的には一糸乱れぬ意識と動きによって艇速を生み出すことになります。」と丁寧に解説してくれた。話を単純化して説明すると論旨が明確になる様な気がするが、そこで切り捨てられる様々に、もっと奥深いものがありはしないだろうか。
 一つのたとえ話から、全体の論旨に疑いを持ってしまうこともある。本当に例え話は、難しい。

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PHPビジネス新書
「一体感」が会社を潰す―異質と一流を排除する“子ども病”の正体

秋山 進【著】

価格 \907(本体\840)
PHP研究所(2014/03発売)

サイズ 新書判/ページ数 221p/高さ 18cm
商品コード 9784569811529
NDC分類 336.3

内容説明

戦後、日本企業は「一体感」を武器に成長してきた。しかし、それこそがバブル崩壊ののち、人と組織を停滞させた元凶だったのだ。30社以上に助言してきた組織コンサルタントが、社会経済の変化とキャリアパスに潜む問題から、この重篤な病気を喝破する。大人の仕事場であるはずの会社が、なぜ子どもの仲良しグループのように馴れ合い、一流の人材を排除しはじめるのか。あるいは個人の成長を妨げるのか。幼稚な組織と心中しないためにも要一読。

目次

第1章 「個人がコドモ?」の組織
第2章 「組織文化がコドモ?」の組織
第3章 「マネジメントがコドモ?」の組織
第4章 コドモの組織から大人の組織へ
第5章 コドモの組織で大人になる戦略
終章 グローバル化と大人の組織

著者紹介

秋山進[アキヤマススム]
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

出版社内容情報

「感情的な議論」「身内のルール優先」「自社にしかわからない言葉を使う」……「子どもの論理」ばかりで動く組織に警鐘を鳴らす。

【著者紹介】
経営・組織コンサルタント

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