見出し画像

札幌・円山生活日記

8人の気鋭アーティストたちの共演です!~「札幌美術展 昨日の名残 明日の気配」~

「札幌芸術の森美術館」で開催中の「札幌美術展 昨日の名残 明日の気配」。“8人のアーティストたちが、かつてあった「昨日の名残」と、これからを予感させる「明日の気配」を鋭敏に感じ取り表現する作品”が展示されています。見応えがあります。会期は1月28日(土)~3月12日(日)の予定です。

本日は「札幌芸術の森美術館」で開催中の「札幌美術展 昨日の名残 明日の気配」の鑑賞です。「野外美術館」で「芸森かんじきウォーク2023」を楽しんだ後に鑑賞した「野田弘志-真理のリアリズム」の際に前売りチケットを購入しました。8人のアーティストたちによるかつてあった「昨日の名残」と、これからを予感させる「明日の気配」を鋭敏に感じ取り表現する作品が展示されています。“今をとらえ明日に向かうヒント”が得られたかは自信がありませんが8人の気鋭アーティストの共演は見応えがありました。アクセスは本日も地下鉄東西線「大通駅」で南北線に乗り換え、終着の「真駒内駅」から中央バス(空沼線・滝野線)に乗り「芸術の森入口」で下車です。このバス便は15分毎なので便利で有難いです。 


「札幌芸術の森」入口付近。シンボルアートの伊藤隆道氏・作「空と地の軌跡」。

「札幌美術展 昨日の名残 明日の気配」のチラシ。
‟パンデミック以降、私たちは新たな「日常」を取り入れてはいくつかを元に戻しながら、日々歩んできた。変化のただなかで私たちは今どこにいて、どこへ向かおうとしているのか。本展では、パンデミックによりあらためて問題があらわとなった自然と人との関係、そして人と人との結びつきをテーマに、過去と未来の狭間でおぼろげな輪郭をもつ私たちの現在地を探る。
8人のアーティストたちが、かつてあった「昨日の名残」と、これからを予感させる「明日の気配」を鋭敏に感じ取り表現する作品には、今をとらえ明日に向かうヒントが隠されているだろう。”
出品作家は、上村洋一、北川陽稔、熊谷文秀、佐竹真紀、進藤冬華、中島洋、半谷学、渡辺行夫の各氏です。

「札幌芸術の森美術館 」エントランス。

ロビーの美術展パネル。

会場への入場直後に設置されている熊谷文秀《RUNNER》2019年。会場内は一部映像作品を除き写真撮影可です。
《RUNNER》は映写機のように回転する4つのリングがゾートロープのような動きのある映像を作り出します。最初のリングは赤ちゃん、次に子供、青年、老人へとそれぞれの世代の走る姿が順次再生されていきます。

青年です。最初から‟これは!”と思わせる印象的で楽しい作品です。
熊谷文秀氏の作品展示室。それぞれ動きのある作品です。
《WALKER》。こちらもゾートロープのような映像を作ります。
解説。スタートボタンを押すと・・。
球体につけられた覗き窓から球体内部の円盤上に並ぶ人形が動き歩いているように見えます。
《DIALOG MACHINE-mini》2022年。文字盤が動き意味のあるメッセージが発生していく様を機械的に視覚化する作品。miniで4文字メッセージです。 
《SPROUT》2020年。
時間がくると作品上部の照明が灯り、その下の砂利の中から小さな芽が現れ成長していきます。 
《DIALOG MACHINE 2》2021年。

《DIALOG MACHINE-mini》と同じくバラバラな文字の集団から意味のあるメッセージが発生していく作品。こちらは16文字のメッセージです。 

佐竹真紀氏の映像作品《タイムカプセル》2022年は写真撮影禁止(写真はネット上より拝借)。

進藤冬華氏の作品展示室。
《架空の衣装(衣装一式)》2014-2016年。

中島洋氏のビデオインスタレーション《死者の唄水の声》2023年の展示室。長くなりますが興味をそそりますので解説を引用します。
‟《死者の唄水の声》は、壁面の表裏に投影される2編の映像を中心に、蛇ロや水道管、タ張の炭鉱住宅跡の土等が配された、映像インスタレーションである。一方の映像は、駆け回ったり、遊具で遊んだりする子どもたちを中心とした、市井の人々の何気ない日常生活の一部が、それぞれ数秒程度のカットで構成される。中盤と終盤には、栄えていた1960年のタ張炭鉱の風景が、タ張市が財政再建団体となった後の2020年に同地点から撮影した風景とオーバーラップする。対するもう一方の面は、林立する水道管と蛇口が映し出される約40分の映像である。蛇口からすぐさま連想される水は、一向に出てくる気配
はない。
明確なストーリーが紡がれているわけではない。人々の営み、タ張の風景、太古から息づく土、風化した蛇ロ、本作を構成する要素は、過去のものだ。にもかかわらず、これらの集積である本作は過去を懐古するというより、むしろこの先の未来を思わせる。それは、これらの要素が、変化しながら積み重なっていく歴史を示唆するからであろう。過去を経験した今という現在地が、ゆるやかに時に急に変化する大きな流れのなかの一地点であることを改めて認識させ、さらにその先を想像させる。”

賑やかに栄えていた1960年の夕張炭鉱。
タ張市が財政再建団体となった後の2020年に同地点から撮影した風景。建物は無くなり土だけです。
裏面の水道管。


半谷学氏の《さしがさばな 枯れた傘に再び花が生ずる》展示風景。

不要となった傘の骨組みを活用したアートですが単なる「環境アート」ではなく、人ともの、人と人との関係性を考える作品だそうです。

渡辺行夫氏の展示室。タデ科の植物オオイタドリを活用した作品。大イタドリはアイヌ民族を始め日本で伝承的に健康保持機能が期待される野草として根付いてきたものだそうです。

《Power of Pamt 2》2017年。

《オドリ木》2021年。
《土中(つちなか)の声》(手前)と《地下茎植物》。
《地下茎植物》2022年。
《土中(つちなか)の声》2022年。

北川陽稔氏の展示コーナー。
《Invisible Red》2022年。森の中で木々に囲まれた雰囲気になる大小の写真が並べられています。
《Imitation of Pant Ecology》2023年。

上村洋一氏のビデオインスタレーション《scratch the snow field》2021年の映写室。
《scratch the snow field》2021年(一部)。

最後の展示コーナーは再び熊谷文秀氏の作品群。
動かし方が解説されています。
《ABS》。足元の踏み台センサーに乗り足踏みをすると黒いスポンジ作品が腹筋運動を始めます。さぼると目のライトが黒くなります。

《HAPPA》。踏み台センサーに乗り芽の揺れに合わせて足踏みをすると次第に芽も伸びて葉っぱに成長していきます。
《せんちゃん》。作品の前で柏手を打つと中から潜望鏡のような「せんちゃん」が飛び出してきます。

《REMNANTS of DIALOG MACHINE #1》2023年。

《REMNANTS of DIALOG MACHINE #2》2023年。

【札幌芸術の森美術館コレクション選/加藤顕清/そこに「人間像」はあるか】
同時開催の「札幌芸術の森美術館コレクション選/加藤顕清/そこに「人間像」はあるか」の展示室。ロビー横のB展示室。
“生後間もなく北海道に移り住み、旧制中学校卒業までをこの地で過ごした加藤顕清(1894-1966)は、日本の彫刻界において昭和初期より頭角を現し、1960 年代にかけてその発展を支えました。謹厳で端正な美をたたえた人物像の制作に邁進し、長きにわたり帝展、日展等、文部省が管轄するいわゆる官展系の審査員をつとめます。戦後の彫刻界は野外彫刻の全盛期を迎え、この時期には本郷新や佐藤忠良ら、北海道にゆかりの作家が多く活躍しましたが、彼らの一世代ほど上にあたり、後進の育成にも力を注いだのが加藤でした。
 本展では当館の収蔵品の中から、加藤顕清が終生テーマとした人物像や、北海道との関わりをうかがわせる馬の彫刻を中心に展覧します。実直な作風によりアカデミックな彫刻の一典型をつくりあげるとともに、彫刻界の発展に力を注いだ加藤による作品の数々をご覧ください。”
《孤独》1952年。


《南極観測船樺太犬慰霊碑》のレリーフ(1960年)。タロ/ジロのお話ですね。
同拡大。
稚内市「稚内公園」の《南極観測船樺太犬慰霊碑》(参考)。
《馬》1946年頃。以上で鑑賞終了です。大変見応えのある美術展でした。ありがとうございます。

「札幌芸術の森美術館 」ロビー。

次回の札幌美術展は「艾沢詳子 gathering―集積する時間」(4月15日(土)~6月11日(日) )です。早速前売りチケットを購入しました。

「札幌美術展 昨日の名残 明日の気配」
会期:2023 年 1 月 28 日(土曜日)~ 3 月 12 日(日曜日)
時間:午前9時45分〜午後5時00分 *入館は閉館の30分前まで
会場:札幌芸術の森美術館
観覧料:一般 900(720)円、高大 500(400)円、小中 300(240)円 ※()内は前売・20名以上の団体料金 ※65歳以上の方は年齢のわかるものをご提示で720 円
休館日:月曜日
主催:札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、北海道新聞社
後援:北海道、札幌市、札幌市教育委員会助成独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団 

「札幌芸術の森」
〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目75番地駐車場
TEL:011-592-5111(代表) FAX:011-592-4120
開園時間 9:45~17:00(6~8月は17:30まで)
※札幌芸術の森美術館の入園は閉園の30分前まで
休園日 4月29日~11月3日は無休、11月4日~4月28日は月曜日
※月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日
年末年始(12月29日~1月3日)
https://artpark.or.jp/
(2023.2.19訪問)

最新の画像もっと見る

最近の「美術館・博物館・演劇・演奏会・展覧会」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事