「小鳥先生」のこと
最近年をとったせいか、昔のことをよく思い出します。正確に言うと自分で封印していた時代のことを解きほぐしている、みたいな感じでしょうか。。。
私は高校1年生までヤマハ音楽教室にお世話になり、クラシックピアノと作曲やソルフェージュを学んでいました。幼児科でリトミックをやり小学校に上がるのをきっかけにオーディションを受けて(簡単な実技があったので慌てて初めてピアノを習ったのがこの時です)ジュニア科専門コースという、作曲などグループで学びながら個人レッスンでクラシックを並行して学べる、というコースに入り、作曲や演奏を沢山の先生に学び、音大受験のための勉強もしながらコンクールやコンサート、海外でのオーケストラとの共演なども経験しました。
でも高校生になり、進路をいよいよ決める時になり、それまで何年も悩みながら音楽に向かってきた私は結局「音楽をやめる」という選択肢をその当時は取ってしまいました。そして22歳の夏頃、チック・コリアのCDに出会うまで、私は音楽との接触を敢えて避けた生活を送っていたのでした。
小さい頃の話に戻りますが、ありがたいことに私が小2の時「東京から月2回
作曲家の先生がいらして特別レッスンを受ける」というメンバーに選ばれました。
そして最初にそのレッスンを担当してくださったのが東京芸大の作曲科ご出身の「小島佳男」先生でした。(今思えば「そんなのカンケーねー」の方と同姓同名だったのですね(^◇^;))
隔週の日曜日、同い年の3人でのグループレッスン。前半は先生がこのレッスンのために作ってくださった曲を階名で歌ったり、音楽理論のレッスンを受けたり、、、バッハやモーツァルト、ショパンや様々な作曲家の作品がどういった形式で作られているか、とか分析を聞いたり、曲作りに必要な和声の動き、「ドッペルドミナント」なんていう単語を小2でわからないながらも覚えたり。
そして後半は一人づつ、曲作りのレッスンです。2週間の間に書き進めた曲の中身を見ていただき、これからどういう展開にするかヒントをいただく、というようなもの。
曲はだいたい半年くらいかけて1曲作ります。最初のレッスンでは「今回はロンド形式で作ってみましょうか」とかそれぞれに課題を決めて、何個も「モチーフ」を作っていきます。モチーフについても「今回はワンフレーズの息の長い曲を作りましょう」とか課題が出ます。そうしてたくさん考えて行っても「うーん、あなたらしさがまだ出てないなあ〜『アキコ節』が聴きたいなあ〜」とこんな小さい頃から私やその他の子の個性を
見出して、らしさを引き出すレッスンをしてくれる、、、そんな先生でした。
考えてみたら、その先生のレッスンで教わったことが今の私のジャズでの作曲方法や演奏にもたくさん生かされて(いや、ほぼ礎と言っても過言ではない)いるのです。下手したらちゃんと日本語が通じるのか?くらいの小2の女の子を相手に、芸大の作曲家を出た先生がレッスンをしてくださるなんて、なんと貴重なことだったか、そして先生の大変さは如何許だったか・・・と思ってしまうのですが、感謝してもしきれません。
小学校の作文で日曜日の出来事を書く、という課題が出た時に、私は小島先生のことをずーっと「日曜日は小鳥先生の特別レッスンを受けました。小鳥先生は東京からいらして。。。。云々」とずーっと作文用紙に「小鳥先生」と書いていたようで、家に持ち帰って読んだ母が爆笑し、それ以来私達の間では「ことり先生のレッスン行くよ」というのが合言葉になったものでした。
そんな話も思い出し、そしていま小島先生はどうされているのかなあ、とネットで検索してみたら。。。。東邦音大の名誉教授になられて、2018年に70歳でお亡くなりになっていました。お早いご逝去にびっくりすると共に、この感謝の気持ちをお伝えできない残念さ、そしてしっかり当時教わったことをちゃんと思い出さねば、、、などなど様々な想いが押し寄せていました。
その他にも、作曲では今桐朋の作曲家の教授でいらっしゃる土田英介先生、
演奏法は北島公彦先生、故 神野明先生、黒川武先生、など名だたるピアニストの方々、そしてヤマハスタッフの優秀な先生、そして私の小1から高1までの
すべてを見守ってくださった浜田典子先生(この先生が「はじまりの秋」を
作るきっかけになった先生です)など、本当に貴重な先生方のレッスンを沢山
受けました。
高1ですっぱりと音楽を捨ててしまった自分には、もう関係のないこと、なんなら恩知らずな自分、、、と思い出すことすら烏滸がましいと思い記憶を封印していました。
でも、音大も行かず、留学もせず、現場叩き上げでここまでやってきた私にとっては、この高1までの音楽経験が本当に貴重で、そして今の私があるのはこのおかげだ、ときちんと言いたくなったのでした。そう、本当に勝手に言ったりしているだけなので、私がこれを書くことで先生方の名誉を傷つけたりしないか、今もとても心配ですが、、、
でも、感謝の気持ちを込めて、過去に勉強したことを再度見直しつつ、さらに
前を向いて行かねば、と決意を新たにする、2021年の秋なのでした。
長文失礼致しました。読んでくださった皆様ありがとうございました!