アカネとお菓子作りの関係を一言で言えば、「性に合わん」というものである。
料理は作っていて楽しいと思えるし、逸品が出来て顔の緩みを抑えられないこともあるが、お菓子なんて作っていて楽しい、と思ったことが無い、そう言えば。
それでもアカネがお菓子を作るのは、いつぞやのカリスマ姉さんの言葉に押されてのことである。
ある日のことであった。
カリスマが、アカネに囁いた。
「お菓子を作れる女は、可愛いぞぉ」
その日から、アカネはお菓子を作れる女になろうと心に決めた。
情緒不安定な空模様の、春先の頃である。
そうして、プリンを作り、クッキーを作り、チーズケーキを焼き、アカネはせっせとお菓子作りに励んだ。
ある日のことであった。
神の家で、ケーキの本を見ていたとき。
「この作者、顔もこんなに可愛くて、その上お菓子も作れるなんてもうむっちゃ可愛いですよね~」
「そお?僕女の子が“趣味はお菓子作りです”とか言ってても、特に何とも思わないけど。」
「・・・それはあなたが自分でケーキ作れるからじゃないですか?」
「そうかもしれないなぁ。」
・・・この人ナニ言ってんの?神の一般論は世間の一般論と違うやん!!アカネは興ざめして、怒り心頭で帰ってきた。
それにしても何か気になるな。
じゃあ、お菓子が作れる女って、男の人から見たらどう映るんだろう。
アカネはJohnに聞いてみることにした。
「ねぇねぇ、お菓子が作れる女ってどう思う?やっぱり可愛いと思う?」
「女の子が“趣味はお菓子作りです”とかっていよったら、“へー、女の子らしいねー”って思うだけで、それで特に印象が良くなったりはない。男が“趣味はスポーツです”って言うようなもんかな。何でも相手がどれだけその分野に興味があるかどうかやな。」
アカネは、お菓子作りへの情熱が一気に消えていくのを感じた。
で、お菓子を作ることのメリットとデメリットを考えてみた。
☆メリット☆
・皆にすごいと思われる。アカネちゃんすごい、って言ってもらえる。
・感謝してもらえる。
・砂糖とかの分量を加減できる。
★デメリット★
・栄養面から見ても、別に必要なものじゃない。
・あんまりうまくできない。
・レシピの分量の数字を読むのがめんどくさい。
・材料代高い!出来てるケーキ買った方がマシ。美味しいし。
・なぜ砂糖やらカロリーやらをわざわざ取り過ぎなければならないのか。
それにしても、そのうち寮の後輩の誕生日会をしようと思っている。
どんなケーキを食べたいか聞いたところ、チョコレート系のケーキが食べたいとのことである。
で、せっかくやき『チョコレートのお菓子』ってゆう本買うて、ココアや製菓チョコレートを買いだめしてきた。やっぱ、手作りして喜んでくれるんやったら、作ってもいいかなって思うやん。道具もあるし。
で、船の中で何作ろうか考えながら、その本読んでみた。
やっぱり、何ちゃぁわくわくも楽しみも何もせんわ。
料理は作っていて楽しいと思えるし、逸品が出来て顔の緩みを抑えられないこともあるが、お菓子なんて作っていて楽しい、と思ったことが無い、そう言えば。
それでもアカネがお菓子を作るのは、いつぞやのカリスマ姉さんの言葉に押されてのことである。
ある日のことであった。
カリスマが、アカネに囁いた。
「お菓子を作れる女は、可愛いぞぉ」
その日から、アカネはお菓子を作れる女になろうと心に決めた。
情緒不安定な空模様の、春先の頃である。
そうして、プリンを作り、クッキーを作り、チーズケーキを焼き、アカネはせっせとお菓子作りに励んだ。
ある日のことであった。
神の家で、ケーキの本を見ていたとき。
「この作者、顔もこんなに可愛くて、その上お菓子も作れるなんてもうむっちゃ可愛いですよね~」
「そお?僕女の子が“趣味はお菓子作りです”とか言ってても、特に何とも思わないけど。」
「・・・それはあなたが自分でケーキ作れるからじゃないですか?」
「そうかもしれないなぁ。」
・・・この人ナニ言ってんの?神の一般論は世間の一般論と違うやん!!アカネは興ざめして、怒り心頭で帰ってきた。
それにしても何か気になるな。
じゃあ、お菓子が作れる女って、男の人から見たらどう映るんだろう。
アカネはJohnに聞いてみることにした。
「ねぇねぇ、お菓子が作れる女ってどう思う?やっぱり可愛いと思う?」
「女の子が“趣味はお菓子作りです”とかっていよったら、“へー、女の子らしいねー”って思うだけで、それで特に印象が良くなったりはない。男が“趣味はスポーツです”って言うようなもんかな。何でも相手がどれだけその分野に興味があるかどうかやな。」
アカネは、お菓子作りへの情熱が一気に消えていくのを感じた。
で、お菓子を作ることのメリットとデメリットを考えてみた。
☆メリット☆
・皆にすごいと思われる。アカネちゃんすごい、って言ってもらえる。
・感謝してもらえる。
・砂糖とかの分量を加減できる。
★デメリット★
・栄養面から見ても、別に必要なものじゃない。
・あんまりうまくできない。
・レシピの分量の数字を読むのがめんどくさい。
・材料代高い!出来てるケーキ買った方がマシ。美味しいし。
・なぜ砂糖やらカロリーやらをわざわざ取り過ぎなければならないのか。
それにしても、そのうち寮の後輩の誕生日会をしようと思っている。
どんなケーキを食べたいか聞いたところ、チョコレート系のケーキが食べたいとのことである。
で、せっかくやき『チョコレートのお菓子』ってゆう本買うて、ココアや製菓チョコレートを買いだめしてきた。やっぱ、手作りして喜んでくれるんやったら、作ってもいいかなって思うやん。道具もあるし。
で、船の中で何作ろうか考えながら、その本読んでみた。
やっぱり、何ちゃぁわくわくも楽しみも何もせんわ。
今日は、久しぶりに着物で市内へお出かけだ。
「今日は、綺麗やなぁ!」
「見違えたわ!」
高速艇の船長さんから、微妙な褒め言葉をもらう。
・・・まあいいか!
何しろ、今日は以前から約束していた、インドカレー屋でインド人にカレーを習うという日なのだ。インド文化にどっぷり浸かるかと思うと、逆に大和魂がわくわくと疼き始めてしまったのだ。エプロンとたすきがあれば、大丈夫!
アカネとケイコちゃんは駅で合流し、こないだアカネが仲良くなった洋服屋を訪ねた後で、件のカレー屋に出発した。
カレー屋の厨房が空くのが、三時~四時半なのである。コックさんたちがいなくなったその時間に、カレー屋のマスターがカレーの作り方を教えてくれる約束であった。
アカネたちが店についたのはちょうど三時。
我々が店の前に姿を現すと、従業員一同が満面の笑みで迎えてくれた。話したことがあるのはマスターだけだったが、もしかしてアカネってこの店では既に有名人、時の人なのか!?
全員の歓迎っぷりに、開き扉を両方とも開け放って入っていくアカネとケイコ。気分はまるでスーパースター、降り注ぐ紙吹雪まで見えそうな高揚感である。
アカネたちは二階に案内された。
とりあえず荷物をテーブルに置きなよ、ってことかな?と思っていると、ウェイターの兄ちゃんがメニューを持ってきた。
「?? 今ここでカレー食べたら、自分らで作ったカレー食べれんでね?」
「それか、注文したカレーを自分らで作れるってことかな?」
疑問符を撒き散らしながらも、兄ちゃんの甘いマスクに、思わず注文してしまう二人。
ウェイターが引っ込んでから、鼻メガネのマスターがやってきた。
アカネは、マスターと少し話して、マスターがカレー教室のことを忘れていることに気づいた。(入店したときの、あの待ちわびた雰囲気は何だったのだろうか??)
「まぁ、ここでカレー食べて、後はマスターとお話してもいいし!」
健気な提案をしてくれるケイコ。
実際、アカネたちが食べた『学生限定カレー』と『ひき肉と玉子のカレーランチ』は、とっても美味しかったよ。
二人で、珍しい味に舌鼓を打っていると、一階からマスターが呼ぶ声がする。
「アカネ~、まだ~!?ハヤクきなよぉ~!」
どうやら、マスターはアカネたちが食べ終わった後に、カレーレッスンをしてあげなければ、と思ったらしい。
厨房はとても綺麗に掃除されていて、広々としてピカピカしていた。
「作り方、ゼッタイ誰にもイワナイ!!」
と、マスターに釘を刺されたために、ここでは割愛するが、ここでマスターが作ってくれたのは、店のメニューにあるカレーではなく、家庭のカレーだった。
小麦粉も、ジャガイモの擂り下ろしも使わないのに、出来上がったカレーは濃厚なとろみがついていた。
「ナニ入れたか、ちゃんと見たでしょ!?コムギコなんてつかわない!日本のカレーは、コムギコ入れてまぜるだけで、ハイ、デキタ!って。インドカレーは違う!スパイス30シュルイ以上入れる!」
マスターは自信たっぷりだった。
アカネは、カレー作りにはまってから、本とかネットとかいろいろ見て、いろんなカレーの作り方勉強してたけど、マスターの作り方はどの本にも載っていないやり方だった。それに、インドの呼び名なのかもしれないけど、スパイスをほぼ網羅して常備しているアカネにも、聞いたこと無いスパイスもたくさん使っていた。
そのカレーは、マイルドだけど後からぴりぴりと来る辛さで、とっても濃厚。
「よかったら、島に来てくれませんか?友達で、カレーの作り方、教えてもらいたい人とか、自分の作ったカレーを、インド人に食べてもらいたい人とか、たくさんいるんです。みんなで、カレーパーティーしませんか?」
「うん!イイよ!いつでもイイ!」
・・・アカネはある構想を温めていた。
このマスターが、アカネくにえらい来たがってたので、本当に来れるのであれば、皆を呼んで【スーパーデラックススペシャル・カレーの祭典2006 in リンカーン島】を開催したい、というものである
カレーメイト達を集結させたい!
秘密のカレー教室に来たがってた友達たちの夢を叶えたい!
てゆーかもう面白そうなこと全部やってみたい!!
てなわけで、12月にインド人のマスター招いてアカネ宅でカレーの祭典するYO!
「今日は、綺麗やなぁ!」
「見違えたわ!」
高速艇の船長さんから、微妙な褒め言葉をもらう。
・・・まあいいか!
何しろ、今日は以前から約束していた、インドカレー屋でインド人にカレーを習うという日なのだ。インド文化にどっぷり浸かるかと思うと、逆に大和魂がわくわくと疼き始めてしまったのだ。エプロンとたすきがあれば、大丈夫!
アカネとケイコちゃんは駅で合流し、こないだアカネが仲良くなった洋服屋を訪ねた後で、件のカレー屋に出発した。
カレー屋の厨房が空くのが、三時~四時半なのである。コックさんたちがいなくなったその時間に、カレー屋のマスターがカレーの作り方を教えてくれる約束であった。
アカネたちが店についたのはちょうど三時。
我々が店の前に姿を現すと、従業員一同が満面の笑みで迎えてくれた。話したことがあるのはマスターだけだったが、もしかしてアカネってこの店では既に有名人、時の人なのか!?
全員の歓迎っぷりに、開き扉を両方とも開け放って入っていくアカネとケイコ。気分はまるでスーパースター、降り注ぐ紙吹雪まで見えそうな高揚感である。
アカネたちは二階に案内された。
とりあえず荷物をテーブルに置きなよ、ってことかな?と思っていると、ウェイターの兄ちゃんがメニューを持ってきた。
「?? 今ここでカレー食べたら、自分らで作ったカレー食べれんでね?」
「それか、注文したカレーを自分らで作れるってことかな?」
疑問符を撒き散らしながらも、兄ちゃんの甘いマスクに、思わず注文してしまう二人。
ウェイターが引っ込んでから、鼻メガネのマスターがやってきた。
アカネは、マスターと少し話して、マスターがカレー教室のことを忘れていることに気づいた。(入店したときの、あの待ちわびた雰囲気は何だったのだろうか??)
「まぁ、ここでカレー食べて、後はマスターとお話してもいいし!」
健気な提案をしてくれるケイコ。
実際、アカネたちが食べた『学生限定カレー』と『ひき肉と玉子のカレーランチ』は、とっても美味しかったよ。
二人で、珍しい味に舌鼓を打っていると、一階からマスターが呼ぶ声がする。
「アカネ~、まだ~!?ハヤクきなよぉ~!」
どうやら、マスターはアカネたちが食べ終わった後に、カレーレッスンをしてあげなければ、と思ったらしい。
厨房はとても綺麗に掃除されていて、広々としてピカピカしていた。
「作り方、ゼッタイ誰にもイワナイ!!」
と、マスターに釘を刺されたために、ここでは割愛するが、ここでマスターが作ってくれたのは、店のメニューにあるカレーではなく、家庭のカレーだった。
小麦粉も、ジャガイモの擂り下ろしも使わないのに、出来上がったカレーは濃厚なとろみがついていた。
「ナニ入れたか、ちゃんと見たでしょ!?コムギコなんてつかわない!日本のカレーは、コムギコ入れてまぜるだけで、ハイ、デキタ!って。インドカレーは違う!スパイス30シュルイ以上入れる!」
マスターは自信たっぷりだった。
アカネは、カレー作りにはまってから、本とかネットとかいろいろ見て、いろんなカレーの作り方勉強してたけど、マスターの作り方はどの本にも載っていないやり方だった。それに、インドの呼び名なのかもしれないけど、スパイスをほぼ網羅して常備しているアカネにも、聞いたこと無いスパイスもたくさん使っていた。
そのカレーは、マイルドだけど後からぴりぴりと来る辛さで、とっても濃厚。
「よかったら、島に来てくれませんか?友達で、カレーの作り方、教えてもらいたい人とか、自分の作ったカレーを、インド人に食べてもらいたい人とか、たくさんいるんです。みんなで、カレーパーティーしませんか?」
「うん!イイよ!いつでもイイ!」
・・・アカネはある構想を温めていた。
このマスターが、アカネくにえらい来たがってたので、本当に来れるのであれば、皆を呼んで【スーパーデラックススペシャル・カレーの祭典2006 in リンカーン島】を開催したい、というものである
カレーメイト達を集結させたい!
秘密のカレー教室に来たがってた友達たちの夢を叶えたい!
てゆーかもう面白そうなこと全部やってみたい!!
てなわけで、12月にインド人のマスター招いてアカネ宅でカレーの祭典するYO!
アカネの家には、大概のものがある。
パソコンもあるしぃ、電子レンジもあるしぃ、お菓子用の調理器具とかもあるし。基本的な生活必需品に加え、余興ともいえるそれらのものも、ある程度整っていると思っている。
(あと無いのは、クーラーとストーブとテーブルとバスマットぐらいだろう。)
アカネの家を訪れた人が言うことがある。
「この家、テレビあるの?」
勿論である!先日洗濯機が来たことによって、三種の神器は揃っている。何度も言うが、この家には大概のものがあるのだ。
ただ、目につかないところに仕舞ってあるだけだ。
アカネはテレビを見ない。
あまり見ない、どころではなく、全くもって見ない。
今住んでいるこの家には、前の住人が置いて行ってくれているテレビがある。
だけど、アカネはテレビなんか大嫌いなのだ。スイッチを点けなければ、あんなハコ、場所をとるだけの邪魔物である。視界に入るのさえ嫌だ。
だから、戸棚の中に隠しているのだ。
どうしてそう嫌なのか、自分でもよくわからない。
以前は時々見ていた。大学で一人暮らしをするときに、近くのホームセンターで安いのを買ったほどだ。
だけど、いつ頃からか見なくなった。
邪魔になったので、押入れに入れてみた。そしたら、不都合無かった。
で、リンカーン島に来るとき、持って来なかった。やっぱり、別に何の必要もなかった。
で、今に至る。
テレビを見ないがために、困ること。
世間一般の、ベースである情報を知らないこと。世間を揺るがせている凶悪犯罪も、災害も、スキャンダルも、芸能人も、日本の行く末すら、何も知らずに生きている。
カラオケとか行っても、最近の歌が何一つ解らないこと。
友達とかが笑っているネタが解らないこと。
でもそれは、アカネの中で別にどうというものでもないことである。
テレビを見ないがために、得していること。
家の中で、テレビに邪魔されずにしたいことができる。テレビがついていると、ついつい動けなくなるもの。
友人と、向かい合って話ができるのも、テレビがない利点かもしれない。テレビがついていると、視線とか集中とかを、テレビに獲られる。アカネも、テレビの方を思わず見入ってしまうし。
自分でも、この状態はヤバイと思う。
テレビを見ないだけでなく、新聞も、本も、ネットのニュースとかも見ないからだ。アカネはこんな自分を、「メディア的引きこもり」と名付けている。
何か、テレビを見るのが恐い。
テレビには、不穏な情報が渦巻いている。
メディアは、陰謀で埋れている。
たった一人でテレビを見て、心を落ち着けていられる自信がない。(人と一緒なら、テレビも見れるんだけど)
自分の生活に集中していたい。
自分に与り知らぬところで、心を奪われたくない。
このところずっと二次元からも遠ざかってるぐらいだし。
・・・でも、三瓶が来てくれてたとき一緒に見た、『オーラの泉』はおもしろかった。(見た後ですぐテレビを忍べたんやけどね)
人と一緒に見るテレビは、おもしろかった。
他人との共同生活で期待することの一つは、テレビを見れるようになること、でもある。
パソコンもあるしぃ、電子レンジもあるしぃ、お菓子用の調理器具とかもあるし。基本的な生活必需品に加え、余興ともいえるそれらのものも、ある程度整っていると思っている。
(あと無いのは、クーラーとストーブとテーブルとバスマットぐらいだろう。)
アカネの家を訪れた人が言うことがある。
「この家、テレビあるの?」
勿論である!先日洗濯機が来たことによって、三種の神器は揃っている。何度も言うが、この家には大概のものがあるのだ。
ただ、目につかないところに仕舞ってあるだけだ。
アカネはテレビを見ない。
あまり見ない、どころではなく、全くもって見ない。
今住んでいるこの家には、前の住人が置いて行ってくれているテレビがある。
だけど、アカネはテレビなんか大嫌いなのだ。スイッチを点けなければ、あんなハコ、場所をとるだけの邪魔物である。視界に入るのさえ嫌だ。
だから、戸棚の中に隠しているのだ。
どうしてそう嫌なのか、自分でもよくわからない。
以前は時々見ていた。大学で一人暮らしをするときに、近くのホームセンターで安いのを買ったほどだ。
だけど、いつ頃からか見なくなった。
邪魔になったので、押入れに入れてみた。そしたら、不都合無かった。
で、リンカーン島に来るとき、持って来なかった。やっぱり、別に何の必要もなかった。
で、今に至る。
テレビを見ないがために、困ること。
世間一般の、ベースである情報を知らないこと。世間を揺るがせている凶悪犯罪も、災害も、スキャンダルも、芸能人も、日本の行く末すら、何も知らずに生きている。
カラオケとか行っても、最近の歌が何一つ解らないこと。
友達とかが笑っているネタが解らないこと。
でもそれは、アカネの中で別にどうというものでもないことである。
テレビを見ないがために、得していること。
家の中で、テレビに邪魔されずにしたいことができる。テレビがついていると、ついつい動けなくなるもの。
友人と、向かい合って話ができるのも、テレビがない利点かもしれない。テレビがついていると、視線とか集中とかを、テレビに獲られる。アカネも、テレビの方を思わず見入ってしまうし。
自分でも、この状態はヤバイと思う。
テレビを見ないだけでなく、新聞も、本も、ネットのニュースとかも見ないからだ。アカネはこんな自分を、「メディア的引きこもり」と名付けている。
何か、テレビを見るのが恐い。
テレビには、不穏な情報が渦巻いている。
メディアは、陰謀で埋れている。
たった一人でテレビを見て、心を落ち着けていられる自信がない。(人と一緒なら、テレビも見れるんだけど)
自分の生活に集中していたい。
自分に与り知らぬところで、心を奪われたくない。
このところずっと二次元からも遠ざかってるぐらいだし。
・・・でも、三瓶が来てくれてたとき一緒に見た、『オーラの泉』はおもしろかった。(見た後ですぐテレビを忍べたんやけどね)
人と一緒に見るテレビは、おもしろかった。
他人との共同生活で期待することの一つは、テレビを見れるようになること、でもある。