この写真ものは1974年製のFender Rhodes Mark Iで、会社の軽音楽部の倉庫に永いこと放置されていたものを譲り受けました。ARMを始めた1999年9月頃から2002年秋頃迄、キーボード持込「要」の場合はほとんどこれを使用していました。長野県車山に持って行って気温5℃の中演奏したり、仙台では雨降りの中演奏したり、数々の修羅場をくぐりぬけましたが常に素晴らしい音で鳴ってくれました。しかし、ポータブルと言っても重量89kgは重過ぎで、車への積み込み、楽器のセッティングなどに非常に苦労させられるため、じょじょにその出番を失いつつ現在に至ります。
さて、ピアノの代用と書きましたが、発音原理はヴィブラフォンに近いため、アコースティックピアノのつもりで弾くとちょっと問題があります。原理上アタックがピアノより弱く、特に低音はルートを「ゴーン」と叩くつもりが「ブョーン」と鳴ったりします。また機構上ハンマーの戻りが遅いため、早弾きすると独特のモタり感が出ます(単に楽器が古いせいかもしれませんが)。和音は音を少なめに、できるだけオープンヴォイッシングとした方がきれいに鳴ります。倍音が複雑で、コードを弾いているうちに気持ちよくなってトランスできます。ラテンではEddie Palmieriが70年代に多用し、狂気のトゥンバオを弾きまくっています。
個人的な見解ですが、そんなFender Rhodesの特性を最も理解し、最大限にその特性を自分のオリジナルミュージックに適用できたプレイヤーと言えば、Chick Coreaではないでしょうか。音色の違いだけに捕らわれてピアノの代用としてRhodesを弾いていたジャズピアニストが多かった時代に、「Light as a Feather 」などの完成度の高さは素晴らしいものがあります。Rhodesのサウンドを堪能したい方に是非お勧めします。(八巻記)