私達年配者が模範を示せれば社会人としての「謝罪方法」も継承できていたのだろうけれど、なかなかそうは行かなかった。環境が変化する中で、観て育てだけではうまくいかないだろうし、「今の若い者は…」との苦言を良く聞くと、苦言を呈している年配者の頑固さなどが問題な場合も多い。
「謝罪」がマニュアル化して心のないものになってもいけないが、最低限の常識は守れるようにとの訓練は必要な時代になっていると思う。昔から満員電車や長時間の渋滞など皆が加害者、皆が被害者という状況も多い。自分の立場から言えば、自分が3、相手が7の割合くらいの主張の感覚が、客観的には五分五分であるという。「江戸しぐさ」ではないが、お互いに譲り合うという姿勢からも、まずは「謝罪」という所から始めるのもどうだろうか。
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「素直」「すぐ」「真摯」に 仕事でミス、どう謝る
基本編 関係強化のチャンスも
2015年1月19日 日本経済新聞 夕刊
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO82071500X10C15A1EL1P01/
仕事で失敗して取引先や上司などに迷惑を掛けたとき、どう謝るかで迷うことはないだろうか。謝罪するときの態度や言葉遣い、手段などを間違えると逆効果になりかねない。相手との関係を円滑に修復するポイントを2週にわたって紹介する。今回はまず覚えておきたい基本から。
「最近はうかつに部下を叱れない」。都内の広告会社で働く金子孝宏さん(仮名、41)はこう話す。勤務態度や顧客への対応について叱るとむくれたり、しょげたり、場合によっては翌日出社しなくなったりする若手がいるという。「謝りの言葉すら出てこない」とため息をつく。
「謝ることは自分を変えるチャンスと考えよう」。こう話すのは「『謝り方』の技術」(三笠書房)の著者で、話し方研究所(東京・文京 http://www.hanashikata.co.jp/ )会長の福田 健さん。適切な謝罪ができれば相手は自分を見直してくれるかもしれず、関係が良くなれば前より積極的に仕事に取り組めるためだ。
では具体的にどうすればいいのだろうか。謝罪には大きく分けて「間違いを認める」「謝る」「改善策を示す」の三つのステップがある。
まずは自分の間違いを素直に認める。「自分は必ずしも悪くない」といった自己防衛の気持ちを持ったまま謝っても、誠意は伝わりにくい。先方がどれだけ迷惑を被ったかを考えよう。トラブルに発展していなくても、自分でミスに気付いた段階ですぐに「ご迷惑をかけてすみません」などと伝えるといい。「人は先に謝られると腹が立ちにくい」(福田さん)
■突然訪問はNG
自分で気付かず、相手にミスを指摘された場合でも「できるだけ早く」が基本。上司など社内であれば比較的早く伝えられるが、取引先なら連絡を取ることが必要だ。ビジネスマナーなどの指導をするヴィタミンM(横浜市 http://www.vitaminm.jp/ )社長の鈴木真理子さんは「まず電話し、その後にメールという順が基本。外出の多い相手ならメール、電話の順でも構わない」と話す。メールだけで済ませると「軽く見られた」と受け止める人もいるので避けた方が無難という。
過失の内容によって先方に直接会って謝るほうがいいケースもある。ただ、突然出向くのはご法度。まずは相手の都合を確認しよう。訪問前に上司に報告することも必要だ。上司が同行するかどうかは、上司の判断を仰げばよい。一人では自信がない場合は「力を貸してください」などと頼むのも手だ。「上司の謝罪を見ることで学ぶこともできる」(鈴木さん)
いざ相手に謝罪するときはどうするか。まず相手の話を聞くことが大切。「お言葉を返すようですが」「それは誤解です」などと口を挟んでいけない。「ごもっともです」などの言葉と共に真摯な態度で共感を示しながら、相手の怒りのポイントがどこにあるのかをくみ取ろう。
謝罪する際はみだしなみにも注意したい。「落ち着いた色のスーツを着て、女性は化粧やアクセサリーを控えめにするといい」と鈴木さんは話す。心から申し訳なく思っていても、派手な服や濃い化粧をしていると、「反省していない」と受け止められるケースもあるためだ。
■最後は改善案を
相手が一通り話を終えたら、謝りの言葉を伝える。ただ「すみません」「申し訳ありません」を繰り返すばかりでは、本当に謝っているのかと疑われかねない。「深くおわびいたします」「私のミスです。」「おわびのしようもありません」などと表現をかえて、丁寧に伝えよう。
謝罪の後は原因や経過を説明する。ミスの言い訳をすべきではないと考える人は多いが「自己弁護のためではなく、相手のために説明は必要」と福田さんは指摘する。
迷惑を被った相手は、なぜこうなったかを知りたい。単純なミスだったのか、やむ得ない事情だったのかなどを知ることは、相手が今後の対応を考えるうえでも大事な材料になる。
最後は改善策を提案する。ミスを防ぐための今後の取り組み内容や善後策などを話す。例えば納期が遅れた場合は「○月△日に納品させていただきたいのですが、よろしいでしょうか」といった具合に相手の要望とズレていないか確認する形で提案しよう。
次回は相手の性別の怒りのタイプなどに応じてどう謝るかといった応用編を紹介する。
(ライター ヨダ エリ)
[日本経済新聞夕刊 2015年1月19日]
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相手の性別・立場 意識して
仕事でミス、どう謝る 応用編
男性には迅速かつ明確に 女性には理屈を言わない
2015年1月26日 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO82385940W5A120C1EL1P01
仕事で失敗をしたら、素直に謝ることが大切だ。しかし過失に対する相手の反応の仕方は性別や立場などによって異なる傾向があるという。相手や状況に応じてどう謝るかという応用編を紹介する。
「男性は一般的にプライドが傷つけられたら、機嫌が直りにくい人が目立つ」。医師で作家の米山 公啓さんはこう語る。男性と女性とでは、怒り方や怒るポイントに違いが出ることが多い。男性は女性に比べ立場や名誉を重視する傾向があり、それが傷つけられたとき怒りは大きくなりやすいという。
このため男性にはすぐに謝り、相手が正しいと明確に認めることが重要が。そのうえで今後の改善策や責任の取り方などを、目に見える形で示すことがカギになる。「男性はテストステロンという男性ホルモンの影響で自分で有利でいたい、勝ちたいという要求を持ちやすい」と米山さんは説明する。つまり自分の優位が示されれば、怒りが引きずりにくい。
相手が女性の場合はどうか。「女性は怒りを忘れにくい」「過去の怒りを事細かく覚えている」とよくいわれる。米山さんによると、女性の脳は快・不快を判断する扁桃体(へんとうたい)と記憶をすかさどる海馬が男性に比べ密接に連携していおり、感情と記憶が結びつきやすい。
このため女性に謝る際は論理的に事情を説明するよりも「不快な思いをされたとお察し致します」などと相手の心情に共感を示すことを重視する。話は手短に済ませるのもポイント。「話が長引くと様々な記憶がよみがえり、怒りが収まりにくくなる可能性がある」(米山さん)
■翌日も改めて謝罪
謝る相手が上司か部下によっても覚えておきたい点がある。上司の対してはすぐに真摯な態度で謝るのはもちろん、「翌日にはもう一度謝るといい」と企業や自治体向けに折衝・交渉研修などを手掛ける話し方研究所(東京・文京)会長の福田 健さんは話す。「昨日は申し訳ありませんでした。あれからよく考えて、自分の至らない点が分かりました」と伝えれば、上司も「自分も言い過ぎたよ」などと返してくれる可能性がある。
上司は部下に謝りにくいかもしれない。「特に男性は面子を気にして、上司や目上の相手以外には謝りたがらない傾向がある」(米山さん)。尊大な態度で反省の言葉を伝えれば、かえって部下からの信頼は低下しかねない。謝罪と上下関係は分けて考えよう。
「あんな風に怒鳴られたらどうしょう」。都内の雑貨店に勤務する山本 加奈さん(仮名、32)は、ほかのスタッフが顧客に謝罪をしているのを見たとき不安になった。店側のミスとはいえ、相手が怒りをあらわにしたとき、対応できるかどうか自信がないという。
■落ち着くまで待つ
福田さんは「感情的になった相手には、ひたすら謝るのが一案」と助言する。怒りたいだけ怒れば、気が済むケースも少なくないからだ。ビジネスマナーなどの指導をするヴィタミンM(横浜市)社長の鈴木真理子さんは「3つのチェンジで相手が落ち着くのを待つのがお勧め」と話す。
感情的になった相手にはひたすら謝るのも手だ感情的になった相手にはひたすら謝るのも手だ
まだ、謝る人を変える。例えば担当者が謝罪したものの先方が納得しない場合は上司が同行する。担当者が1人で何度も足を運ぶより、解決が早まる可能性があるからだ。担当者レベルのミスではなく会社として重大な責任を感じている、というメッセージを伝えることもできる。
場合や時間を変えるのも有効だという。たって話をしているのであれば座って話す。あるいは「改めてお伺いします」と言って、ひとまず帰社する。相手が来訪している場合は受け付けから応接室に通して場合を変え、お茶を出して落ち着く時間をとるという方法もある。
人格を否定されたり、理不尽な対応をされたりすることもあるだろう。「とう考えても腹いせや八つ当たりだと感じた場合は聞き流していい」と福田さんは助言する。相手の話を吟味して、無駄に落ち込まないことが大切だ。
相手が怒るのは基本的に、事態を改善したり関係をよくしたりしたいと考えているから。叱ってもらえるのは失敗をプラスに転じるチャンスと考え、適切に対応できる謝り上手を目指したい。
(ライター ヨダ エリ)
[日本経済新聞 夕刊 2015年1月26日]
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