枯野

写真の楽しみ

憲法9条改正論議

2005-05-04 | 雑文

                        (北品川の権現山公園にて)

 憲法記念日の3日の朝日新聞に掲載された同社が行った世論調査の結果を見ると、9条の改正に反対は、51%であるが、自衛隊は、今のままでよいが、ただ、憲法を改正してその存在を明記すべきであるとする意見が、58%に達しているということのようである。つまり、実績を重ねた自衛隊を普通の軍隊にすることには躊躇するが、今の自衛隊を憲法にきちっと位置づける方がよいという結論になるわけである。
 憲法については、門外漢であるから何ら私見を述べたりする資格も能力もないが、折りしも国会の憲法調査会の報告書が発表されたこともあって、ずぶの素人ながら俄に興味と関心が寄せられる次第である。前記世論調査の結果とあわせて、前記調査会の調査報告を読むと、問題点が浮き彫りにされ、どういう立場に賛するかどうかは別として、不勉強な者にとっては、非常に啓蒙させられるものがある。
 やはり目下の憲法改正論議の中心をなす重要問題は、戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条改正の是非及び自衛隊をどう考えるかの点であろう。もともとこの9条については、これまでも各種の解釈や意見が錯綜してきているようであるが、ただ、昨今では、自衛隊は、9条からみて違憲であるとする見解は、極めて少数になっているようで、逆に、9条は、自衛のための戦力の保持までも禁止しているものではないから、自衛隊は違憲ではないとする解釈が、定着してきているように見受けられる。
 そうだとすると、自衛隊は、違憲でないことを明らかに示す意味から、むしろ積極的にこれを公認するための明文規定を憲法に設ける必要があるという考え方が浮上してくるわけであり、9条は、そのままにしておいて、この方の改正こそが急がれるという点が、問題となってこよう。
 前記調査会の報告書では、他の点についても同様であるが、無理に一つの立場に集約した意見を示してはおらず、各種の違った立場の意見とその動向を紹介するに止めているようであるが、かえって、それだけに貴重な資料を提供してくれたわけである。そこで、自衛隊の問題については、「自衛権及び自衛隊の憲法上の根拠を明らかにするための措置をとるべきであるとする意見」、「自衛権の行使や自衛隊の法的統制に関する規定を憲法に設けるべきであるとする意見」、「自衛のための必要最小限度の武力の行使を認めつつ、9条を堅持すべきであるとする意見」、そして、最後に「自衛権の行使としての武力の行使及び自衛隊に否定的な意見」の各種の意見の詳細な内容を開示している。
 そこで、9条は、そのままにして、自衛隊を憲法上公認すべきであるという前記の調査において示された世論での多数意見について考えてみると、調査会報告書に記されているとおり、この立場を根拠づける理屈としては、自衛隊が保持する実力は、自衛のための必要最小限度のものであり、9条2項で保持が禁ぜられる「陸海空軍その他の戦力」には当たらないという解釈を前提とした上でのことになろう。そして、その具体的な自衛隊の憲法規定は、どうなるかが次に当然問題となってくるわけである。
 何ら憲法改正の必要はないという立場に立つとすれば何もすることはないが、何らかの改正が必要であるとする各種の立場に立つ各種の憲法改正条文の案をそれぞれについて順次詳細を詰めて行くことが次の課題であろう。