シドゥリ暦632年
三千世界監察軍が結成されて2年が過ぎたこの時期、監察軍に技術者たちは積極的に異世界の技術収集を行っており、その一環として『機動戦艦ナデシコ』の木星プラントと火星極冠遺跡を大々的に調査していた。といっても原作の2196年ではなく、それから五千年近く前の紀元前2800頃であった為に監察軍の調査活動を阻む者は存在しなかった。
それとは別に監察軍はサードインパクトで人類が絶滅した『新世紀エヴァンゲリオン(旧劇場版)』の世界でもエヴァンゲリオン関係の技術を調査していたが、邪魔な現地人がいない為こちらの調査も順調だった。
監察軍の目的は各地の下位世界に存在するトリッパー達の支援だけでなく、各世界の知識、技術、情報を収集する事であった為に比較的容易に調査できるこれらの世界が対象になっていたのだ。
さて、監察軍はナデシコ世界の遺跡からボソンジャンプ、ウィンドウ通信、重力波ビームの送受信、相転移エンジンなどの技術を得ていたが、特に木星プラントから超高効率原子変換による生産技術の入手が大きかった。
この超高効率原子変換技術は所謂科学的に錬金術を再現する代物で、非金属を金にするだけでなく様々な資源を生成することが出来た。その上、食料品から工業製品まで作れるのだ。原作で木蓮があれだけの大艦隊を用意することができたのも木星プラントの生産力チートのおかげです。
ブリタニア帝国は元々宇宙開発を行う事で資源調達を行っていたが、必要とする資源すらも自力で生成できるようになり、資源価格の低価格化と安定化がもたらされることなった。
更に工業プラントによる資源調達と工業製品製造だけでなく、軍事プラントが大型艦艇に搭載されるようになり、ミサイルなどの武器弾薬を艦隊が自力調達できるようになり、補給面で劇的な向上することになるのであった。
シリウスside
「そうか、順調なのはいい事だ。引き続き頑張ってくれ」
「ええ、わかっています」
三千世界監察軍本部にて、総司令官シリウスは技術者の男性から最新の報告を訊いていた。シリウスにとって二つの世界に派遣した技術者たちの報告は満足できるものだった。現地の状況から技術者たちが結果を出すのは当たり前のことであるが、それでも良い報告を訊けたのはシリウスにとってありがたかったのだ。
シリウスが総司令官として監察軍が創設されて、各地の下位世界でトリッパー捜索が行われているものの、それにかまけてばかりはいられない。まずは監察軍がブリタニア帝国に対して成果を示す必要があった。その為、下位世界で有益な技術を調査解析してそれをブリタニア帝国に提供することで実績作りをすることにしたのだ。
そこで、現地勢力に抵抗されて調査が躓いたら目も当てられないので、有益な技術を得ることができ、なおかつ抵抗勢力が存在せず楽に調査できる無難な下位世界を標的にしたのだ。
その結果として、監察軍はエヴァンゲリオン世界ではエヴァンゲリオン関係の技術を得ることができ、ナデシコ世界でも有益な技術を手に入れる事ができた。さすがにナデシコの世界のボソンジャンプのブラックボックス(演算ユニット)は解析が未だ終えていないが、我々の技術力を持ってすれば解析が終わるのも時間の問題だ。
監察軍はブリタニアにおいて絶対権力を有する皇帝の後ろ盾を得ている以上、かなりの予算と権限を与えられていたが、それだけに監察軍を疑問視するブリタニア貴族も多い。それを払拭する為にも結果を出さなければいけない。シドゥリの後ろ盾に甘えてばかりでは大きな反発を受けて後で大きな痛手を負う事になるのは分かりきっているからだ。
しかし、今回の成果で時間を稼ぐことができた。これだけの成果があれば当面は何とかなる。その時間を利用して各地に散らばるトリッパー達を探しつつ彼らの協力を得て各地の下位世界の知識、技術、情報などを集めていけば更に実績を積むことができ、そうなれば監察軍の立場は安定するだろう。
はたから見れば帝政国家ブリタニア帝国皇帝の支持をうけて我が世の春なシリウスであったが、彼は下位世界の安定と多くのトリッパー仲間の為に監察軍の組織運営に必死だった。
解説
■火星極冠遺跡&木星プラント
『機動戦艦ナデシコ』の世界で謎の地球外知的生命体が作り上げた施設。原作では木蓮やネルガルが管理していたが、紀元前2800年代ならば地球人が宇宙進出するどころかまともな近代文明すら存在しない為に誰にも邪魔されずに調査できた。
■エヴァンゲリオン関係の技術
『新世紀エヴァンゲリオン』の世界には使徒やエヴァの技術はマギシステム、S2機関、A.T.フィールド、ロンギヌスの槍などブリタニア帝国にとっても興味深い物が多かった。ついでにN2兵器の調査している。
■シリウス
ここのSS『トリッパー列伝 シリウス』で登場した憑依型トリッパー。『ヴァンパイア十字界』出身の純血のヴァンパイアでストラトスよりも百年ほど若い。ヴァンパイアでありながら太陽を克服してストラトスに匹敵する能力を持っている。実はシドゥリが異世界間転移技術(ユグドラシル・システム)の試験運用中に最初にであったトリッパーで、それが縁でシドゥリに監察軍総司令官に推薦された。
あとがき
三千世界監察軍創設初期はシリウスも組織の実績作りに奔走していたという裏話です。さすがに異世界人がトップで、かなりの予算と権限が与えられている組織となれば、ブリタニア貴族としては面白くないわけです。その為、トリッパーの支援ばかりやってろくに貢献していなければかなり拙いです。まあ、ぶっちゃけると実際にやっていることは墓荒らしと、遺跡荒らしにすぎませんが(笑)。
下位世界の人間の技術全部や異星技術全部、アカシックレコード接続可能等のチートトリッパーは全滅したと言う事ですか?
生存しているのなら、わざわざ調査に行かずにチートトリッパーに聞けば早いはずですが。
時代設定がかなり初期だから転生者の中でもチートレベルの人たちとは接触できてないからだと思うよ
と言うより、まだ転生すらしてない可能性が高いんでは?
その手の知識チートのトリッパーが全滅したわけではなく、監察軍創設直後には知識チートのトリッパーがいなかっただけです。
>Unknownさんへ
おっしゃるとおり、トリッパーシリーズで紹介されている知識チートのトリッパー達はいずれもこの時代から千数百年後に転生しているので、この時代にはいません。