ペルシア湾魚介三昧

アブダビで入手出来る新鮮魚介類の目利きと調理法を紹介。時々番外編で地中海岸や伊勢湾沿岸の魚も登場。

春の予感?

2012年03月09日 | 日記
前々回の記事で紹介したウミヒゴイ。
マゴチやウスバハギと比べれば3倍近く値が張るのでしばらくご無沙汰していたのですが、今日は鮮度抜群のが市場で山盛りに出ていたので、お刺身用に二尾を選んで持ち帰り、マアジのタタキと一緒に姿造りに。身に濃厚な甘味があって、ワサビをたっぷり利かした醤油で食べると酒の肴にも、あるいは炊き立てご飯のおかずにも、最高です。
マアジの方は前回とは違い生臭みがありましたが、オロシ生姜とネギを加えることでほとんど気にならない程度に。美味しくいただきました。

それにしてもウミヒゴイの紅の華やかなこと。春のイメージですね・・・アブダビでは春を飛び越えて真夏がやってきそうですが。

3月2日 コチの日 卵の日

2012年03月02日 | 日記
 今日のアブダビ魚市場は、我が家的には大漁。
 マゴチを置いている店が三軒もあって、どれも鮮度が抜群だったのです。
 それだけではありません。半年に一度程度しか見かけないイネゴチ(目の大きい方)が、それも50センチサイズの立派なのが二匹。ウスバハギも二匹。シロギスやコウイカも良いのがあったので仕入れてきました。
 この季節、50センチ超のコチには大抵は立派な真子が入っています。
 今日はマゴチだけでなく、イネゴチにももれなく真子がついていました。ウスバハギにまで特大の卵が。
 というわけで、昼ご飯はウスバハギ子スパゲッティに。コチ子の方は煮付け用にとっておくことにします。
 夜はマゴチ、イネゴチ、ウスバハギ、イカ各二貫ずつ、カニカマボコ一貫の上握りセット。お吸い物はイネゴチの潮汁で。
 サク取りの写真は左がウスバハギ、身がちょっと赤い右側上二本がイネゴチ、下二本がマゴチです。



ところ変われば値打ちも変わる

2012年02月17日 | 日記

 場所によってモノの値打ちが大いに変わる好例をひとつ。
 写真の魚、体長約10センチメートル。うっすらとした赤味に、黄色の側線が美しいことを除けば、何の変哲もない小魚に見えませんか?
 日本の標準名はヒメジ、でも各地では地元の名前で知られています(例えば長崎のベニサシ、新潟のヤヒコヤマなど)。つまり、各地でよく獲れるのだけれど、傷み安い上に、小さな魚体に似合わずウロコが多く、捌くのが面倒なせいか、なかなか流通ルートには乗りません。東京では小平の「角上魚類」で新潟産のを数度見ただけで、価格は半キロほどが200円でした。まったくの雑魚扱いです。
 アブダビでは、もう少し獲れるけれど、雑魚扱いという点は日本と同じ。1キロ10ディルハム、日本円で220円程度です。鮮度が良ければ山盛りに買って来ます。
 何故かって?
 実はこの魚、レバノンに行けば「スルタン・イブラヒーム」の名で、1キロ3,000円近くの値がつく最高級魚なのです。それもスーパーでの値段。シーフード・レストランでこれを注文すればさらにその1.5倍程度に跳ね上がる。ベイルートにはそのものズバリ、「スルタン・イブラヒーム」の名を冠した高級レストランがあるくらい。
 確かに、新鮮なものをサクッと唐揚げにしてレモンを絞っていただくと、甘味のあるホクホクの白身がほぐれて、美味には違いないのですが…。

 なお、色が赤っぽくて口の下に二本のヒゲ(触覚)があるヒメジの仲間は、アブダビではオジサン、ウミヒゴイなど、他にも結構居ます。こちらは体長30センチメートルくらいまで大型化し、キロあたり30ディルハムを超える中流価格(?)。皮を引くと、ピンク色の薄皮が表面に残り、金目鯛の刺身そっくりになります。身がぎっしり凝縮された食感で、味の方も金目鯛以上。


見直しました

2012年02月10日 | 日記
 日本では美味い、安い、いつでもどこでも買えると、何拍子も揃ったマアジですが、アブダビではちょっと…。
 大体、あまり売っていない。南方系のマテアジは結構あるけれど、生臭くて苦手。仮に初日に美味しくても、翌日には血合いがどす黒く変色し、臭いが強くなります。
 他にもオニアジ、シマアジ、コガネシマアジ、ギンガメアジ、ロウニンアジ、アンダマンアジと、南洋ならではの大型のアジ類はいくらでも置いていますが、どれも同じ。つまり血抜きをしていないので生臭い。
 稀にマアジが入荷しますが、やはり同じで、かなりの確率で臭いが気になる。そんなわけで、ここ一年ほど、アジから遠ざかっていました。

 ところが今日の市場は違った。
 マアジ、それも刺身にして下さい、と言わんばかりの20~30センチサイズがあちこちの店先で、山の様に並んでいるのです。
 イワシとウスバハギ以外、他に掘り出し物がなかったこともあり、久しぶりに買ってみました。

 そして図のとおりとなった次第です。まあ日本のトロけるような冬のアジには敵わないかもしれないけれど、締まった身は甘味があって刺身醤油とワサビ、それに生姜おろしにもよく馴染んで最高でした。
 

春はあけぼの コチはアブダビ

2012年02月09日 | 日記
 アブダビで入手出来る魚でお勧めを一種類、と言われれば、ためらわずにマゴチを挙げる。3年間の滞在期間、ほとんど毎週、2~3匹を仕入れてきた。そもそも扱っている店が広い魚市場の中でも数軒しかなく、そこでさえ仕入れが無いこともあるから、ひょっとすれば過去3年間のアブダビのマゴチの8~9割方は我が家で消費したかもしれない。

偏愛の理由は明快。
安くて美味いからだ。それも、刺身から天ぷら、お吸い物、バター焼きと、およそどんな料理にも向く。

 海の無い奈良で生まれ育った筆者にとって、マゴチは馴染みの薄い魚であった。
 この魚との「出会い」は、30代も終わりにさしかかってから。魚料理に本格的に興味を持ち始め、購入した「魚の捌き方」という本に写真が出ていたのだ。本当にそれまでは、そんな魚の存在すら知らなかったのである。ちなみに、アブダビで出会った邦人の中にも、そういう人が少なくない。

 初めてマゴチを目にしたのは、それから更に数年後のこと。7年間住んだレバノンを離れ、東京に拠点を移した時だ(レバノンではホウボウは良く獲れるがマゴチは市場に並んだことが無い)。「角上魚類」で一尾700円で売っていたのを試しに買ってみた。
 第一印象は散々だった。
 まず、身体のヌメリとウロコの多さ、背ビレと腹ビレの鋭いトゲ。さらには大きく湾曲し、肉に食い込むあばら骨。捌きにくいことこの上ない。頭がデカく、可食部が少ない。更には、おそらく活け締めされていなかったのだろう、身は生臭く、刺身で食べるには抵抗があった。
 筆者も家内も、「これはたまらん」と、一発で厭になった。その後も東京で、数回丸魚で売っているのを見かけたが、とても買う気になれなかった。
 
 そんな筆者が2年後にアブダビの魚市場で見かけたマゴチに、もう一度トライしてみる気になったのは何故か。
 いくつか理由がある。
 まず、この間に読んだ数多の「捌き方」解説書が、いずれもマゴチを「白身の高級魚」、「料亭直行」、「夏フグとさえ称される」、と絶賛していたこと。あの時は何かの間違いだったんだ、このまま食べず嫌いを続けると一生後悔する…そんな気になりつつあったのだ。
 次に、鮮度の高さである。
 ある日、アブダビ市内の漁港に早起きして出かけたら、漁師が魚満載の鉄カゴを引き上げてトラックに積み込むところだった。まだ口をパクパクさせるハムール(オオモンハタ)や大型のアジ類に混ざり、大きなコチが入っていた。マゴチは冷凍や空輸ではなく、アブダビの砂浜で獲れるのだ(近くのビーチに潜った時にも目の前をマゴチが泳いで行った)。目利きさえ間違わなければ、確実に新鮮なものが手に入る。

 ダントツのコストパフォーマンスの高さも特筆したい。
 アブダビ魚市場の魚介の値段はまさにピンからキリまで。
 最安の大衆魚はイワシやマアジの類で、一キロ5ディルハム(約115円)。最高は大型のハムールとイセエビなどの大型エビ。活きているやつなら、キロ100ディルハム(約2,300円)を超える。売れ筋の大型アジ類、ハマフエフキなどのタイ類はキロ30~40ディルハムが相場だ。
 ところでマゴチ。一キロ10ディルハム以下である。日本で料亭直行の高級魚が、イワシと変わらない値段で手に入るのである。先ほど「可食部が少ない」と書いたが、それも知識が乏しかったから。実際にはマゴチの頭部やカマには美味しい身がつまっているし、骨やゼラチン質の皮からは最高の出汁が出るので、潮汁や雑炊にすれば最高だ。
 マゴチは中国語で「鰐魚」と書く。扁平に潰れ、長く伸びた頭はなるほど鰐に似て、醜悪だ。体色も砂場に隠れる保護色の灰色と、極めて地味。捌くのに手間がかかるのに加え、この見てくれの悪さが、アブダビで一般の消費者に見向きもされない理由だろう。ちなみに、アブダビではマゴチには名前すらついていない。英語ではflathead(そのものだが)、アラビア語ではワハルと言うそうだが、そんな言葉を使っても誰も知らない。漁師や魚市場の人が良く使うヒンディー語でも、名前が無い。

 ひとつ。このマゴチ、実は雌雄転換する。体長が40センチ程度を超えると、もれなくメスになるのである。産卵期の冬から春にかけて、この魚を買えば、もれなく極上の真子がついてくるわけだ。全身ほぼくまなく味わえるのである。

 アブダビで初めて買ったマゴチの刺身にはまったく何の臭みもなく、ポン酢になじんでそれはそれは上品な味であった。それ以来、当時6歳の息子、4歳の娘まで含め、一家あげてマゴチのファンになってしまった。かれこれ2年半ほとんど毎週、欠かさずマゴチを食べている。

【欠点】
アブダビのマゴチの欠点を敢えて挙げるなら、活け締めされていないこと。どんなに鮮度が良くても、衰弱死した個体の身肉の味は活け締めのマゴチに敵わない。筆者は名古屋の柳橋市場と白子の鈴鹿漁協直売所で一尾ずつ生け簀のマゴチを仕入れ、活け締めしたが、その身肉の透明感とプリプリした歯ごたえは、同じ魚と思えないほどだった。もっとも、刺身以外の料理であれば、活け締めと野締めでそれほど味に大差は無いというのが筆者の印象である。

もうひとつの欠点はおろし難さ。特に密集したウロコを綺麗に落とすのは至難の業だ。筆者はウロコ引きでサッとウロコをとった後、全身を金タワシで力を入れてこすっている。

【目利きの仕方】
漁獲量が少なく、白い腹を上向きに、他の魚に混ざって無造作に並べられていることが多い。しかし必ず手にとって鮮度を確認すべし。
外見でわかりやすいのは、他の魚と同じで目とエラの色。目は透明感があって、瞳は黒く澄んでいるのが良い。エラはカマの上のエラブタを広げて、鮮紅色であることを確認する。黒ずんでいたり、エラの中のヌメリが強いのは痛み始めている証拠。目やエラの色に疑問を抱いたなら、迷わずエラの匂いを嗅ぐ。少しでも悪臭があれば買ってはならない。
筆者はアブダビと名古屋の柳橋市場で一度ずつ、苦い経験をしている。
どちらも同じ手口に引っ掛かった。
一尾だけが手に取れる場所に置いてある。そこそこに新鮮なので値段を訊くと、有無を言わせず奥まった場所に置いてある数尾と一緒にビニール袋に詰め込み、「まとめて○○円(ディルハム)だ、持っていけ」と来る。お買い得価格だから言い値で引き取って、家で捌く段になって腐っているのに気づき、地団駄踏んで悔しがる、というわけだ。

【調理例】

① 薄造り
鮮度が高く身が締り、透明感があるなら迷わず薄造りに。色鮮やかなお皿に盛りつけ、身の薄さをアピールすると高級感が演出できる。葱の他、湯引きあるいは炙った皮を細かく刻んで、身の上に散らすと一層豪華。ポン酢であっさりといただく。
② 刺身
同じ刺身でも、厚めに切ればわさび醤油に良くなじみ、極上の刺身あるいは寿司ネタになる。
③ ユッケ風
アジのタタキのように、糸造りにした刺身をさらに短く切り分ける。キムチの素、ポン酢、刻み葱、ごま油と和えるとマゴチのユッケ風の出来あがり。酒の肴として、あるいはごはんのおかずとしても一級品。
④ バター焼
読んで字の如し。フライパンにバターを溶かし、切り身を強火で焼く。塩コショウしてほんのりキツネ色に焦げ目がつけば出来上り。シンプルそのものだが、バターの香りが上品な白身にマッチして、止められない味わい。
⑤ コチ飯
岡山ではマゴチのお吸い物を白米にぶっかけた料理のことを言うそうだが、我が家では研いだ米の上に良く炭火で焼いたマゴチ(頭部を落とし、切り分けたもの)を乗せ、水と素麺の汁を加えて炊き上げる。炊き上がると身をほぐしてご飯に混ぜる。ポイントは炊き込む前にしっかりとマゴチに火を通すこと。生焼けのまま炊き上げると、臭みが残ってしまう。
⑥ 天ぷら
刺身用におろした柵に衣をつけてカラッと揚げる。大きなマゴチだと中まで火が通りにくいので、薄く切り分ける。天つゆに大根おろしで食べると最高。なお、天つゆは素麺つゆで代用出来る。
⑦ コチ子スパゲッティ
小さな鍋にバターを溶かし、素麺つゆ(無ければ醤油と粉末かつおだしでも良い)を混ぜる。マゴチの真子の袋を破り、生の卵を鍋に入れる(真子の袋は庖丁かハサミで切って、まな板の上でスプーンでかきだせば、きれいに袋の皮からはがれる)。スパゲッティの茹で汁をスプーン数杯分だけふりかけ、軽く卵を加熱する。生クリームを混ぜ、アルデンテに茹で上がったパスタにさっとからめる。
卵は茹で汁と、茹で上がったパスタの熱だけで軽く加熱、生の食感を残しておくのがポイント。刻みのりをふりかけていただく。我が家の冬の定番メニュー。
⑧ 潮汁
マゴチのアラ(頭、中骨、尾ひれなど)を鍋で炊く。沸騰直前に火を止め、蓋をして1~2時間程度おいておく。再度加熱してアラを取り出し、灰汁を捨てる。酒、醤油、生姜、葱を加えて味を調える。高貴な味わい。水の量を控えめにすれば、冷蔵庫で寝かせるとゼラチン質が固まり、煮こごりになる。その場合は醤油を少し多めにするなど、強めに味つける。

番外編2:トリポリ車海老

2012年01月21日 | 日記
車海老の写真です。

番外編1:トリポリ漁港

2012年01月21日 | 日記
 レバノンのトリポリ漁港に行って来ました。
 アブダビでは、日本で言えば沖縄あたりの亜熱帯系の魚が中心なのに対して、トリポリ漁港は九州くらい。日本でも馴染み深い魚が手に入ります。漁港と市場が直結しているので、鮮度は日本やアブダビ以上。

 ちなみにレバノンの我が家は標高1400メートルの高地にあり、この季節は頻繁に大雪にみまわれます。路面が凍結するので早朝のドライブは無理。この日も市場に着いたのは午前10時を過ぎていました。ろくな魚は残っていないだろう、との予想は大きく外れ、カワハギ、ガシラ、ミシマオコゼなどが売り場で跳ね回っていました。大慌てで値段を交渉し、次々に仕入れては持ち込んだ出刃で活け締め。二日にわたって寿司と刺身を堪能しました。ちなみに上記三種はいずれも肝が大きく鮮度抜群だったので、刺身は肝あえに。

 写真はサヨリと活け車海老。サヨリは日本でもアブダビでも手に入るけれど、身の締り、透明感ともに地中海のサヨリが一番、と思います。
 車海老は一キロあたり5,200円程度と、ちょっと手が出ませんでしたが、考えてみれば日本で活け車海老を買うよりは割安だったかも。


お寿司にしました

2012年01月07日 | 日記
 昨日の活け締め二尾、どうやっていただこうか迷ったけれど、結局お寿司にしました。

 「本物志向」を気取る我が家では、ご飯は鉄釜で炊き、酢飯は吉野杉の飯台で作ります。鉄釜は錆びるし、木の飯台にはカビが生えるから、どちらも手入れが大変。魚を買い出し、捌き、ネタを切っているととても追いつかないので、シャリ作りは普段家内に頼っているのですが、あいにく今は帰省中で、何から何まで自分でやるしかない。面倒だけれど、せっかく良い魚を仕入れたのだし、練習のつもりで・・・と、苦闘しながら酢飯も何とか自分で作りました。酢と甘さの加減が家内が作るようにはいかなかったけれど、それなりに仕上がったと思います。まあ本人が食べてハッピーだったので、それで良し。

 飾り付けの姿造りはゴマフエダイ。皮霜造りにしたゴマフエダイとホシミゾイサキの刺身を四切れずつ、並べています。
 握り寿司は上段左からマゴチ、右にエビ各二貫ずつ。右端はトビッ子の軍艦巻き。下段の四貫が活け締め二種です。皮を外すと、どちらがどちらかわからなくなってしまいました。美味しかったからどっちでもいいです、実際。どちらも透明で血合いの色合いが鮮明なのはアップの写真でもわかっていただけるでしょう。
 お吸い物はマゴチの潮汁です。やっぱりこれが無いと、物足りませんね。

活け締め二尾

2012年01月06日 | 日記
 朝、市場に出かける前、冷凍剤を入れようとクーラーボックスの蓋を開けると、中に活け締め包丁が。先週釣りに行った時に入れたままになっていました。
「市場だし、これは要らないか」
と思って、包丁を抜き出して出発。

 アブダビ魚市場では、最近、生簀もどきの水槽を設置しました。
 でも中に入っているのはオマーンからの大型のカニだけ。各地の漁港から魚を活かして持ち込むのはコストもかかるし難しいのでしょう。
 稀に、まだ呼吸をしている魚が店頭に並ぶことはあります。
 特に高級魚キジハタ。余程生命力が強いらしく、水の無いところでも、結構長い間呼吸している。
 でもキジハタはもともと高級魚の上、活きているとなると、1キロあたりの価格が60~80ディルハムに高騰。とても手が出ません。それに個人的には、ハタ類の刺身はちゃんと血抜きしても生臭く、どうも苦手。
 他に活きているのと言えば、ウシノシタの一種で、ヌルヌルの身体をくねらせている。こちらは大衆魚ですが、ヌメリが強過ぎるのと、尻尾が胴体と完全に一体化している形状のため、文字通り「掴みどころ」が無く、ウロコ取りや捌く作業が一苦労。その割には美味しくないし、身も少ない。これなら死んでいてもガンゾウビラメや普通のシタビラメを煮付けにした方がよほど美味しい。
 貝類と、稀にセミエビ、コウイカは活きたまま売られていますが、このあたりは活け締めしてもしなくても味は変わらないし・・・というわけで、今朝は不覚にも活け締め包丁を家に置いたまま出発したわけです。

 そんな日に限って、あったんですね、店頭のトレイの中でエラを動かす魚が。
 ホシミゾイサキにゴマフエダイ。前者は一度釣ったことがあり、後者も漁港でたまに活きたものを仕入れます。どちらも活け締めの刺身は絶品。死んでいてもキロあたり40ディルハムするのを、今日は35ディルハムで売っていました。
「活け締めすればどんなに美味しいだろう・・・でも、家に着くまでには死んでしまうし・・・」
と悩みに悩んだ挙句、
「迷っている間は無い(死んでしまう)」
と大胆に果断・英断。一尾ずつ買うと、その足で洗い場に直行しました。

 ちなみに普段洗い場は使いません。他人におろしてもらうと、ウロコが残っていたり、せっかくの真子を捨てられたり、と、何かと思い通りにはいかないもので。練習のつもりで全工程を自宅で作業するのですが、今日ばかりは選択の余地なし。
 ナタを持ちだして、胴体の真ん中をぶった切ろうとするインド人らしき洗い場の青年に、
「違う違う、ちょっと待って」
と焦りつつ、日本の叡智、活け締めを懇切丁寧に伝授して、見事に頸動脈と尾の付け根の神経を切断してもらいました。
 その後、海水に漬けるという血抜きの工程は省略したものの、帰宅後さばいてみたら、釣り魚と変わらぬ身肉の透明感にニンマリ。一晩寝かして明日にいただきます。

サヨリの握り寿司

2011年12月18日 | 日記
ほぼ半年ぶりに新鮮なサヨリが入ったので握り寿司にしてみました。
アブダビではダツはほぼ一年中獲れるのですが、活きの良いサヨリは希少。それに、大抵は南方系のナンヨウホシザヨリで、身の色がくすんでいて、どうも「創作意欲」が湧かないのです。
昨日仕入れたのは体長15センチほど、痩せたいわゆる「ペンシルサヨリ」。でも鮮度が抜群だったので半キロを5ディルハムで仕入れました。
セロハンのような薄皮を剥ぐと、ご覧のとおり惚れ惚れするような乾いた渋い銀色に。サヨリの刺身の醍醐味ですね、これが。臭みは全くなく、歯応えのある身肉は寿司ネタに持って来いです。