いろいろ。

同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

ステキな金縛り

2011-11-05 18:53:00 | 映画-2011年

「タップダンスがサイコー」
三谷幸喜監督の期待の新作。
三谷監督の過去作品から大ファンなので、今回も期待して見にいってきました。

今回も映画館で声を出して笑えて、おもしろい作品でした!
でも完成度としては、前回の『ザ・マジックアワー』に比べると、ちょっとな~……ってカンジでした。

以下、ネタバレを交えつつ感想です。

今作は「幽霊」が重要な証人として裁判に出廷する、という突拍子もない設定の映画です。
三谷監督の映画は監督独特の世界観があって、現実とのちょっとしたズレ(オレは、かつてこれをキレ具合とヌケ具合のギャップって言ってた)がおもしろいと思います。
それに対して、今作では「幽霊」という超常現象、我々の常識から思いっ切りズレてるものを登場させています。

でも、西田敏行演じる更科六兵衛のキャラが、いわゆる「幽霊」から、きちんと、ちょっとズレています。
(たとえば400年前に死んだはずなのに、栽培員裁判に興味があるとか)
んで、このちょっとズレてる幽霊という存在・現象に、みんながちょっとずつズレながら振る舞っていく。
現実の社会を舞台にしながらも、ビミョーにファンタジーな世界観というのか。
この辺の采配の妙が三谷映画らしくて、ホントにおもしろかったです。
特にタクシーの車内と、阿部寛が公判引き延ばしを目論むあたり。

ファンタジーな世界だったら、それこそミュージカル映画とかだったら、阿部寛のタップダンスで本当に2時間引き延ばせちゃうんだろうけど。
この映画では、当然のようにわずかな時間しか経ってません。
それを大まじめに阿部寛がトライして、「異議あり!」とツッこむ中井貴一のズレたやりとりがおかしかったです。
その代わりってわけでもないんでしょうが、六兵衛が現代世界の夜の町を歩き回るシーンでは、いかにも作り物めいた演出で時間を圧縮してます。
この辺までは、ズレた現実世界と、演出としてのファンタジーなノリを使い分けてるのかな、と思ったんですが……。

さて物語後半に向かうところで、六兵衛は成仏させられて作中からは消えてしまいます。

六兵衛がいても不利だった裁判だったのに、重要な証人がいなくなってしまって、はたして裁判は大丈夫なんだろうか…? という展開になっていきます。

でも、六兵衛と一緒に法廷で戦ってきた深津絵里は、いつの間にか彼に頼らなくても(証言だけでなく、良き相談者としても)戦えるようになっていました。
(そういえば、この時点では上司の阿部寛も死んじゃってたんだな…)
さあ、この状況で手強い検察を相手に、どんな知恵比べをするのか……と思いきや、最後は死んだ被害者の幽霊を呼び出して証言させてしまいます。

う~ん、これはちょっと……。
せっかく、ちょっとズレてるのがおもしろかったのに、幽霊というファンタジーに思いっ切り乗っかって事件を解決してしまうってのは、なんとも納得いかんのだよな~。
しかも、六兵衛の姿が見えてもなお幽霊を信じなかった中井貴一が、なぜか被害者の幽霊はすぐに信じちゃうし。この幽霊が被害者本人だなんて証拠ないでしょ!
ここはズレた現実世界だったはずなのに、ファンタジーの世界になってしまったの?
後に裁判長が「死んだ被害者に証言してもらえば裁判は楽」みたいなことを言ってるんですが、まさにそうです。そのものです。だからこそ、禁じ手だったんじゃないの?
禁じ手じゃないなら、最初から被害者に証言してもらえばよかったのに。今までの苦労は何だったのか、と。

上映時間とかノリを考えて、今さら法廷での知恵比べもないだろうとは思いますが。
でも、このオチの付け方はガッカリでした。

そして、ラスト。
閉廷後、なんとなく法廷に戻ってきた深津絵里の前に、六兵衛が彼女の亡くなった父親を連れて現れます。
でも、裁判を通じて成長した彼女には、六兵衛たちの姿は見えなくなっていました(気持ちが弱っていると幽霊が見える、という設定)。
これで終わってもいいのにな~、と思っていたんですが。裁判で使ったハーモニカを使って、延々と親子の語り合いが……。
見方はいろいろでしょうが、オレ的には冗長に感じられました。

というわけで、前半のノリはすごく好きだったんですが、ラストに向かっていまいちなカンジがする尻すぼみ感がアレでした。
とはいえ、笑えて楽しい映画であることには間違いありません。

ステキな金縛り』(映画館)
監督:三谷幸喜
出演:深津絵里、西田敏行、中井貴一、他
点数:7点


最新の画像もっと見る

コメントを投稿