いろいろ。

同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

容疑者 室井慎次

2005-10-30 18:51:53 | 映画-2005年

「田中麗奈の走りっぷりが良い」

 踊るシリーズなので観たい観たいと思っていて、ようやく、『容疑者 室井慎次』を観にいけた。
 みんな知ってることだけど、冒頭、いきなり室井さんが逮捕されてるところから始まり、グッと一気に掴む。オオッ、ってカンジで、否が応でも期待が高まる。

 室井さんがパクられた理由については、弁護士の回想によって語られていく。
 逮捕容疑は「特別公務員暴行陵虐罪の共謀共同正犯」というそうで。トレーラーとかで佐野史郎が言ってるんだけど、早口なのでなんのことやら分からなかったので、一応、文字に起こしてみた。

 で、この室井さんの逮捕を巡って、「正義」という言葉の定義が曖昧なままに、「正義」だけが一人歩きしながら物語が進行していく。
 室井さんが正しいと思っていたことが解釈によってどうとでも捉えられて、正しかったはずの正義が別の解釈で悪とされ、それゆえに室井さんが自縄自縛されていく様が惨いというか悲惨というか。
 これまでの踊るシリーズを見ていたオレにとっては憤懣やるかたないというか、非常にフラストレーションが高まっていく。

 んで、また、この室井さんを追いつめていく八嶋智人率いる弁護士軍団ってのが、イヤなヤツらばっかりで。
 変態チックにデフォルメされた外見に、登場するときのノイジーなBGMといい、ネチネチした喋りといい、共感とか同情を一切受け付けないイヤなキャラに仕上がっていて絶対に行列に並びたくない。これぞカタキ役。
 ところが彼らは彼らの解釈による「正義」を持っていて、また法律に従えばむしろ彼らこそが「正義」である。つまり、カタキ役だけど決して悪党ではないってところが、この映画のミソというか見所。
 しかも行政や司法も、いろいろな思惑があって室井さんには味方してくれない。

 そんな状況で八嶋軍団に対抗する弁護士は田中麗奈一人だけ。
 田中麗奈はなかなか熱いキャラで、眉毛の太さもイマドキじゃなくて、熱い。燃えてる。
 挫折しながらも突き進もうとするところなんて、青島にも通じるところがあるのかも。っていうか、彼女も走ってばっかりだった。
(余談ながら、田中麗奈の走りっぷりはけっこうイイ感じ。よたよたしていない。替え玉かもしらんけど)

 弁護士は田中麗奈しかいないんだけど、そこはそれ。踊る大捜査線。
 湾岸署のメンツは役に立たないけど、これまでのシリーズを通して一緒にやってきた連中が、「警察に本当に必要なもの」のために頑張ってくれる。
 っていうか、やけに素直になってしまった真矢みき=沖田がカワイイ。
 逆に新規参入の哀川翔は影が薄かった…。

 といったカンジなんだけど、見終わった感想としては消化不良感というか、「やったぜ!」ってカンジの爽快感はない。
 劇中の哀川翔ではないがガックリしてしまうような結末。高まったフラストレーションの行き場がないカンジ。
 それはひとえに「正義」ってものが、解釈によってどうとでも捉えられてしまうってことだと思う。
 この事件の黒幕だって法律的にはたいした罪に問われないわけだし。どうせ、優秀な弁護士つくんだろうし。
 それと、さんざんっぱら「正義」を弄んで、しっちゃかめっちゃかに暴れまわった八嶋弁護士も、意外と志が低かったのもがっかり感に拍車をかけた。
 もっと変態的で、俗人離れした異様なキャラだったら恐ろしさ激増だったのに。
 ただ、穿ってみれば、これぐらいくだらなくてアホらしいことでも、一人の人間を合法的(まさに法律を盾にとって)に抹殺することもできるのだ、という背筋の冷える恐怖はあったかも知れない。

 最後に。
 この映画はフジテレビが作っているんだから、「正義」の所在についてマスコミが果たす役割についても触れてほしかった。
 法律によらずとも「正義」も「悪」も作り出せる唯一の機関がマスコミなんだから。
 と思ったりもした。

『容疑者 室井慎次』(映画館)
http://www.odoru-legend.com/
監督:君塚良一
出演:柳葉敏郎、田中麗奈、八嶋智人、真矢みき、筧利夫、哀川翔、他
評価:7点


最新の画像もっと見る

コメントを投稿