つぶやきイチロー

思いついたことを、思いついたまま綴る。ヒマな時に更新。

カネボウの粉飾決算 (2)

2005-10-06 20:01:42 | 政治・経済・社会
(前回の続き)
日本における監査報酬は国際的に見て非常に低い。監査を受ける企業にとっては監査報酬はコストでしかないので、可能な限り削ろうとする。会計士が本来的に必要と思う作業をしようと思っても、費用の制約から出来ないといった状況が起きていても不思議はない。つまり、監査人が粉飾決算を積極的に認めることは稀なケースかも知れないが、充分な作業を行うことが出来ずに不正決算を見逃してしまっているケースは相当な数あっても不思議はないのだ。

また、監査報酬が低いことを原因として別の問題も起きている。会計士は、低水準の監査報酬収入を補うためアルバイトをする。同一企業に対する監査業務とコンサルティング業務の分離は原則禁止されている筈だが、実際には両方が行われているケースがあるようだ。会計士が「こうすべきです」とコンサルした事項について、同じ会計士が監査する。会計士が「私利私欲がない完全無欠の人間」であれば問題ないが、そうでない場合、そこには大変なリスクが潜むことになる。

同じく監査報酬が低いことが原因だが、会計士はなんとか自分の仕事を失うまいと、自分のクライアント(被監査会社)の仕事に固執する。今回のカネボウの件もこれが原因だと思うが、担当監査人のローテーションが適度に行われず、監査人と被監査会社の癒着を生み出しがちである。

つまり、今回のような事件の再発を防ぐため、①監査法人内でのリスク管理体制の構築をする、②個々の監査業務の品質を向上させる、③監査業務とコンサルティング業務の完全分離をする、④担当監査人のローテーションの頻度を高める、などの改革を行うと監査法人にとっては業務が増加することにより今まで以上の費用が掛かり収入は減る。まさに茨(いばら)の道なのだ。

今回の事件を、中央青山の一部のクレイジーな社員による犯罪と片付けるのは単純過ぎると思う。上記の監査報酬の問題を解決しないと、根本的な原因は解決せず今後も同種の事件が起きる可能性が高い。私は監査報酬の決定には市場原理が働き、基本的には監査法人と被監査会社との関係で決まるべきものと思うけれども、現状に鑑みると、監査報酬が余りに安いので理想的な水準に近づけるためには相当な時間が掛かると思う。

適正な財務諸表が作成されることにより利益を受けるのは投資家とも言えるのだから、例えば緊急措置として、証券取引所が上場企業から強制的に一定の監査報酬を徴収し、監査法人に配分するなどの措置が考えられるのではないかと思う。