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桜を見ながらシューベルトの交響曲を聴く

2009-04-25 09:09:36 | 各種写真


桜の時期が終わってしまい、記事にするタイミングを逃してしまってたんですが、写真を画像フォルダにアップしていたので、兵庫県・武庫川の今年の桜の様子と、桜を見ながらシューベルトを聴いてみた感想をご紹介しようと思います。

◎武庫川の桜と、川周辺の風物
武庫川は兵庫県にあり、源流は丹波地域南部の篠山市から出て、三田、宝塚、神戸(北区)、伊丹、尼崎、西宮の各市を流れて瀬戸内海に注ぎます。
ウィキペディアに武庫川の項目があります
夏の盛りには川底が見える位干上がることもありますが、春は雨が適度に降るので、水量が豊かになります。



今回は、西宮・尼崎両市のほぼ境となっている下流の河川敷付近の桜を見て歩きました。
上の写真では向こう側が尼崎、手前側が西宮です。また左手が北(上流側)、右手が南(下流側)です。
この写真では西宮側に桜がありますが、桜は下流域では尼崎側(東岸)に多いです。今回、尼崎側(東岸)を河口近くから歩いて北上しました。
武庫川は底が浅くほぼ天井川なので、両岸には高い堤防があります。
堤防上には車道があり一部は歩行者も問題なく歩ける区間もあります。
そうした所の中には、堤防のすぐ脇に桜がある所もあり、そこではこんな風に見下ろす形でかなり近づいて、望遠レンズなしでもアップで桜を撮る事ができます。



これは今回新発見でした。
河口近くから河川敷を北上していくと、まず国道43号線と阪神高速3号神戸線の高架をくぐります。
さらにしばらく行くと、国道2号線にたどり着きます。ここには武庫大橋が架かっています。

  

武庫大橋は昭和2(1927)年に建設された橋で、クラシカルなデザインを基調にしながらも、デザインの各要素は抽象的・幾何学的にまとめてあるあたりにモダニズムを感じます。

新発見といえば、尼崎側の岸を武庫大橋からさらに少し北上したあたりに、西武庫公園というかなり大きな公園があるのに気付きました。



この公園は武庫川の堤防のすぐ内側にあります。ローカルな公園ですが、なんとホームページがあります。
半分は、いわゆる「交通公園」で、市街地に似せたミニチュアの道路や信号機、横断歩道などが設けてあります。子供の交通マナー学習等によく使われるものです。
昭和38年開園で、こうした「交通公園」としては日本初のものだそうです。
残り半分が緑地公園になっており、武庫川の水を引いた水路が園内を巡っています。
この緑地公園部分の桜が、写真のようにかなり壮観でした。





ローカルな公園で、これ程たくさんの桜があるのは初めて見ました。
もともと河川敷にある桜を見るのが目的だったので、こんなにたくさんの桜が満開の場所に出くわすとは想定外で、かなり得した気分になりました。
園内では至るところで花見を楽しむ人達がお弁当を広げていて、それも壮観でした。地域ではお花見スポットとして定着している様です。



今回はこの西武庫公園からもう少し河川敷を北上し、折り返して再び河口近くまで戻り、都合五時間弱ほど歩きました。
折り返した所には、チューリップや菜の花を植えた一角があり、こちらも満開でした。



桜と違い、チューリップは赤、黄、白と多彩で、まばゆい春の日射しのもとでは目が痛い感じがする位に強烈なコントラストをなしていました。チューリップはここ数年見たことがなかったので、変な話ですが妙に懐かしく、美しさは強く印象に残りました。

◎桜を眺めて歩きながら、シューベルトの交響曲を全曲聴いてみた
ということで、今年は桜のみならず他の花も偶然楽しむ事が出来たのですが、こうした満開の桜の下で、一度やってみたいことがありました。
シューベルトの交響曲の、特に第1番・第2番を聴いてみたかったんです。
もともと私は、シューベルトの交響曲第1番・第2番はほとんど無視していました。
それが2007年の春、偶然ベーム指揮ベルリン・フィルの演奏のレコードを、第6番以外全て入手し、その時に交響曲第1番・第2番を改めて聴き、若さ・力強さにあふれた魅力に初めて気づきました。
(そうした話はこちらの記事に書いています。)
そして安直な自己満足ですが(笑)
「これらの曲は、春に満開の桜の下で聴いたらピッタリじゃなかろうか?」
と思いついたんです。

今年、武庫川の桜を見るとすると、4~5時間はかかると思ったので、どうせならシューベルトの交響曲を全曲聴いてみるか!と、アホな事を思いつき、実行してみました。
ラインナップは以下の通りです。

第1番:ロンバール指揮スイス・イタリア管弦楽団(仏フォルラーヌの全集から)

第2番:コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団*
(1984年11月、ミュンヘン、ヘラクレスザール)

第3番:ベーム指揮ベルリン・フィル(独グラモフォンの全集から)

第4番:ヴァント指揮ケルン放送交響楽団(RCAの全集から)

第5番:ヴィオッティ指揮ザールブリュッケン放送交響楽団*
(1994年4月4日、ザールブリュッケン、コングレスハレ)

第6番:ツェンダー指揮南西ドイツ放送バーデンバーデン・フライブルク交響楽団
(独ヘンズラーの全集から)

「未完成」:フロール指揮デンマーク放送交響楽団*
(収録日不詳、コペンハーゲン、デンマーク放送コンサートホールでのライヴ)

「グレート」:ショルティ指揮ウィーン・フィル(英デッカ)

ということで、指揮・楽団ともに全部違うものにしてみました。*つきのものは、エアチェックしたもので、その他はCDです。
結果は…
第1番・第2番は予想通り。スケール大きく熱く歌うような曲調が、満開の桜の豪華さ・抜けるような青空・日射しの強烈なコントラストにぴったりで、心が高揚する感じでした。第1番の第2楽章は、春の夕暮れ時のようなほのかな哀愁が漂う曲ですね。
第3番も全体に溌剌としていて随所にユーモアを感じさせる曲調が春にぴったりですね。ベーム指揮ベルリン・フィルの演奏は、すっきりとした表情を保ちつつも、かなり熱気もある表現で、季節の溌剌とした感じによく合っていました。

今回、春にはアンマッチかな?と予想していたのが第4番。これは個人的には冬の印象が強いです。
実際聴いてみて、桜のイメージとはやはりアンマッチかな、とは思いましたが、遠くに六甲山系の山々をのぞみ、それを背景にして緩やかに武庫川が流れていく風情には場所によっては格調高く見える所もあり、そうしたものと似合う面もなくはないな、と新たな印象も持ちました。
ヴァント指揮ケルン放送交響楽団の演奏は、私がこの曲を初めて聴いた演奏です。どこか突き放したような表情付けをしているところがなかなか気に入っています。第4楽章の緊迫感とスピード感あふれる表現も秀逸だと思います。

第5番は、個人的には春・夏・秋ならどれでも似合う曲だと思ってました。初期の第1番・第2番に比べると、表現にかなり深みが増しているように思います。
今回聴いたヴィオッティの演奏は、全集のCDの分ではなくライヴ録音で、そのせいか随分と情熱的な起伏に富んだ演奏です。
第4楽章の疾走するような音楽の流れには、「光陰矢のごとし」という言葉を久々に思い出しました。散り急ぐ桜の花の印象とも重なるものがあります。
また、ヴィオッティも既に50歳で急逝して、もう新しい演奏を聴くことは叶わないですよね。かえすがえす残念です。第2楽章の、明るさの中にふとよぎる寂寥感を久々に聴いて、そんなことも思い出しました。

第6番は優しく爽やかな曲調が春のイメージにはぴったりですね。「ロザムンデ」序曲と共通のベースをもつ、とよく言われる第1楽章などは典型的にそうではないでしょうか。また第2楽章や第4楽章のリズミカルな部分や、第3楽章の快活な曲調は聴きながら歩くのにはテンポ感がよく合うな、と感じました。
今回聴いたツェンダー指揮南西ドイツ放送バーデンバーデン・フライブルク交響楽団の演奏は全集CDの一部です。現代音楽の作曲家でもあり、マーラーの演奏の印象も強いツェンダー、かっちりとした表情ながら、どこか古風な響きの漂う演奏を展開しており、初めて聴いた時には、その表現がシューベルトの本質を巧みについているように思い、驚きました。

第4番と並び、春のイメージに似合わなそうに感じていたのが「未完成」でした。
聴いてみて、第1楽章はやはり明るくはないのですが、夕闇の中に浮かぶ桜の幽玄なイメージには合いそうだな、と思いました。対して第2楽章は、ほのぼのとした中にも一瞬よぎる哀感が、「出会い」「始まり」といったものと同等に存在する、「別れ」「哀しさ」といった春のイメージの別の一面とも通じるものを感じさせました。フロールの演奏は、管楽器のコラールの響きが美しく、荘厳さはありながらも重苦しくならないところがなかなかのさじ加減の演奏です。

そしてここまでで既に4時間近く聴いて来た上で、最後に聴く「グレート」というのは、格別な感じがするものですね。これは予想外でした。
グレートを聴く頃には、そろそろ武庫川の河口、という所まで戻ってきており、川幅も深さも増して、悠然たる流れ、といえる風情になってきていました。
これに加えて、広大に晴れ渡った青空、春の日差しをうけて咲き乱れる桜の花、と、グレートを聴くには絶好のお膳立て、とも思える状況もあいまって、最後の大曲を楽しく聴いて、しめることができました。
またこういう風情の中で聴くウィーン・フィルの音、特にウィンナ・ホルンの響きというのはすばらしく美しく聴こえますね。自然環境によくなじむ響きだと感じました。他楽団との音色の違いを、いつも以上に強く感じました。ショルティの堂々として活気ある解釈も、このイベントを締めくくるにはふさわしいもののように思いました。

…ということで、自己満足な感想を長々と書いてすみません(笑)
しかし今回はいい体験でした。今まで、交響曲全曲を聴くとなると、家で腰を落ち着けて聴くのが相場でしたが、今回野外で初めてやってみて、風景や自然の風物から刺激を受けながら聴くことで、各曲の新しい印象を多く得ることができました。
こうしたことを、また誰かの曲で是非やってみたいです。

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