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ビェロフラーヴェク指揮チェコ・フィルのドヴォルザーク交響曲・協奏曲全集

2014-08-10 16:35:42 | 音楽の感想
先日ドイツのラジオ局のホームページで、ビェロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のドヴォルザークの交響曲・協奏曲全集がデッカからリリースされたとの情報が載っていました。
(どこの局だったかは忘れました)
日本に入ってくるのはまだだいぶ先かと思っていたら、結構早く入手できましたので、ご紹介をしたいと思います。
イルジー・ビェロフラーヴェクは、1990~1992年までチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者をしていました。
その後、プラハ国民劇場の音楽監督やBBC交響楽団の首席指揮者をしていましたが、2012年にチェコ・フィルの首席指揮者に再度就任しました。
今回のドヴォルザークの交響曲・協奏曲全集(Decca 478 6757)は、このコンビ初の大型企画ではないかと思います。


あまり写りのよくない写真ですみません(苦笑)

内容は
・交響曲第1番ハ短調 op.3 B9「ズロニチェの鐘」
 チェロ協奏曲ロ短調 op.104 B191(独奏:アリサ・ワイラースタイン)
・交響曲第2番変ロ長調 op.4 B12
 ヴァイオリン協奏曲イ短調 op.53 B96(独奏:フランク・ペーター・ツィンマーマン)
・交響曲第3番変ホ長調 op.10 B34
 ピアノ協奏曲ト短調 op.33 B63(独奏:ギャリック・オールソン)
・交響曲第4番ニ短調 op.13 B41
 交響曲第5番ヘ長調 op.76 B54
・交響曲第6番ニ長調 op.60 B112
 交響曲第7番ニ短調 op.70 B141
・交響曲第8番ト長調 op.88 B163
 交響曲第9番ホ短調 op.95 B178「新世界から」
の6枚組となっています。
録音は、2012年11月~2013年12月にかけて、プラハのルドルフィヌム・ドヴォルザーク・ホールで行われたとのことです。

次は演奏のご紹介です。CDごとに紹介していきます。
(CD 1)
交響曲第1番とチェロ協奏曲が1枚のCDに入っています。
これを見て、最初結構不安を感じました。
というのも交響曲第1番は、だいたいが50分弱はかかるわりと大曲で、今回のビェロフラーヴェクの演奏のように45分くらいだと、どこかしら譜面をカットして演奏している例がほとんどだったからです。
しかし、3回聴いて、他の演奏とも聴き比べてみましたが、どうやらカットはしておらず、単純に演奏のテンポが速いようです。第2楽章が結構速めのテンポになっているようです。また第1楽章は繰り返しはしていません。
全体に速めのテンポで進んでいきますが、せせこましい感じはなく、曲の持ち味の豪快さや熱気は十分伝わってきます。
ただささいなことですが、第1楽章など、楽団のアンサンブルの縦の線が若干ずれかけている部分があったように思いました。
チェロ協奏曲は、アメリカの若手アリサ・ワイラースタインが独奏を弾いています。第1楽章の中間部で結構テンポを遅くしたりしているところに個性的な表現を感じましたが、全体に奇をてらうことはなくしっかりとした演奏になっていると思いました。

(CD 2)
交響曲第2番は、曲の持ち味である明るさ・若々しさが十分に表現できており、スケールの大きな演奏に仕上がっていると感じました。50分を超える大曲ですが、冗長な感じがしないのもよいです。
交響曲第1番・第2番ともに、まだまだよい演奏の盤が少ないので、今回のこの演奏の出現はこれらの曲の魅力を伝えるためにはよかったのではないでしょうか。
ヴァイオリン協奏曲は、独奏のツィンマーマンが、基本的にかなりドイツ人らしいがっちりした風情で演奏を進めているのが印象に残りました。
それでも、ロマンティックな風情の第2楽章や、フリアント(チェコの快速な民族舞曲)風の第3楽章は、オーケストラと相まって詩情豊かで躍動感のある表現で、よい流れを作れていたと思います。

(CD 3)
交響曲第3番は、前2曲と比べると演奏時間はだいぶ短いですが、オーケストレーションはワーグナーの影響を強く受けており、第1楽章では雄大さ、第2楽章では哀愁、第3楽章ではスピード感のある迫力を感じることができ、充実した内容になってきています。
ビェロフラーヴェクの指揮はオーケストラから多彩な表情を引き出すことに成功しており、躍動感の表現も素晴らしいと感じました。
ピアノ協奏曲は、独奏のオールソンがとてもロマンティックでエレガントな表情でソロを弾いているのが印象に残りました。
私はこの曲で今まで聴いた演奏は、結構厳しい表情のものが多く、オールソンの弾き方はそれとはだいぶ違う印象でしたが、私はこれもありかな、と感じました。ただ聴く人によっては好感しない方もいらっしゃるかもしれません。

(CD 4)
交響曲第4番は、第3番以上にワーグナーの影響が曲に強く出ており、スケールの大きさと劇的表現があふれている一方、第2楽章のように天性のメロディメーカーのドヴォルザークらしい美しい歌も聴くことができます。
私は、この第4番のチェコ・フィルの演奏というと、1989年録音のリボル・ペシェク指揮の演奏の印象が強いです。
ペシェク盤は、劇的な展開・表現の厳しさが素晴らしく、そして必要なところでは十分に歌えている、という印象がありました。
今回のビェロフラーヴェク盤はそれに比べると少し抑えた表現になっているように思いました。ペシェク盤に比べるとテンポが少し速めだからかもしれません。かといってメリハリのない演奏ではなく、ペシェク盤に比べると表現がスマートなのかも知れません。この曲は第1楽章に繰り返しがありますが、この演奏ではしています。
交響曲第5番はワーグナーの影響も残しつつ、ボヘミア的民族的な情緒がひなびた牧歌的な雰囲気の温かみや哀愁を全曲に色濃く与えているように思います。
ビェロフラーヴェク盤は重厚さ、躍動感、劇的な表現が印象に残りました。
この曲も第1楽章に繰り返しがありますが、この演奏ではしています。
第5番はペシェク指揮チェコ・フィルの演奏(1989年録音)もありますが、こちらはひなびた風情とどちらかといえば内向的な表現のように感じます。

(CD 5)
交響曲第6番は、ニ長調という明るい調性のもと、さわやかで活気あふれる音楽になっている一方、オーケストレーションはブラームス的ながっしりしたものになっています。また音楽に民族的な要素がかなり強く出てきています。
ビェロフラーヴェク盤はスケールが大きく、音楽の流れのよい、躍動感あふれる演奏になっていると感じました。この曲は第1楽章に繰り返しがありますが、ほかの演奏ではほとんどしておらず、この演奏でもしていません。
交響曲第7番は、第6番とは対照的に哀愁を帯びた渋い曲調で、オーケストレーションも大変念入りに書かれている力作です。
ビェロフラーヴェク盤はこの複雑で演奏しにくいオーケストレーションを大きなスケールで、情熱的に演奏しています。和声の多彩な変化もきれいにまとめられていると思います。

(CD 6)
交響曲第8番は、交響曲の構成の中にチェコの民族的色彩がしっかりと織り込まれた、快活で親しみやすい表情の作品です。
ビェロフラーヴェク盤は劇的な迫力と美しい音楽の流れを両立できていると感じました。
交響曲第9番「新世界から」は、大変な名曲で、ドヴォルザークが滞在したアメリカの当時の音楽の要素と、彼の民族的な持ち味がうまく融合された、スケールの大きい劇的な作品です。
ビェロフラーヴェクはこの交響曲をたしか1994年頃にチェコのスプラフォンにチェコ・フィルとともに録音していましたが、当時の記憶ではあまりよい印象がありませんでした。
今回の録音では不満は感じませんでした。曲の随所にある厳しく力強い表情の部分の力感も十分でしたし、有名な第2楽章もきれいな流れの音楽になっていました。またオーケストラの各パートがそれぞれ違った動きをしながら同時に進んでいくようなところが曲中にいくつかありますが、そうしたところも音がごちゃ混ぜにならず、非常に見通しのよいアンサンブルになっていると感じました。
なお「新世界から」は、第1楽章の繰り返しはしていません。

全体的に、アンサンブルはしっかりしており、全集としての水準は高いと思います。
録音は、間接音・残響はあまり過剰にならないようにしていると感じました。これにより、オーケストラが斉奏になったときでも、ごちゃごちゃして細部が聴き取れない、ということが避けられているように思います。
実はビェロフラーヴェクとチェコ・フィルは、1992年にドヴォルザークの交響曲第5番~第8番までを、英国のシャンドスに録音していました。
交響曲第5番(左)、第6番(右)

交響曲第7番(左)、第8番(右)

カップリングは、ドヴォルザークの交響詩やスケルツォ・カプリツィオーソや弦楽のための夜想曲でした。

交響曲第5番~第8番については、今回この録音との比較が大変楽しみでした。
当時チェコ・フィルは、首席ホルンにズデニェク・ティルシャル、首席トランペットにミロスラフ・ケイマルという、大変な名手を有していました。
シャンドスでの録音では、やはり彼らを中心とした、柔らかくしかし力強さも十分な明るい雰囲気のアンサンブルの特徴が、シャンドス特有の間接音・残響を割と長めにとる、鮮やかな録音と相まって、どの曲も非常に活気のある表情となっていたという印象が強いです。ティルシャルのホルンの微妙で美しいビブラート、細く弱い音でもよく通る美しい歌いまわし、ケイマルのトランペットの明るく力強い表情も印象的でした。
前述したペシェクの録音でも演奏の特徴はほぼ同じですが、ペシェクの録音はヴァージンというレーベルで、シャンドスの録音に比べるとすこし落ち着いた渋い感じの録音になっています。
今回の録音では彼らはすでに引退しており、演奏家の音色の個性が随所にちりばめられている感じはあまりしませんが、オーケストラ内部のアンサンブルは非常にきれいにまとめられており、かといって整然としすぎてもなく、民族的な野趣あふれる表情や活気、チェコ・フィル伝統の素朴な音色は十分維持できていると感じました。
ビェロフラーヴェクは以前も1990年~1992年にチェコ・フィルの音楽監督・首席指揮者をしていましたが、そのときはあまり長く続きませんでした。
今回彼は十分なベテラン指揮者として首席指揮者に復帰しています。彼らの関係が今回は少し長く続き、充実した成果が今後ももたらされることを、強く期待したいです。

以上、久々にたくさんの枚数のセットものの紹介を書いたので、勘がつかめないところがあり、十全な内容ではないかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。




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