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真っ暗闇の男女の秘め事は五感を刺激する貴族の遊びだった。伏見稲荷大社の物語 36話

2022-08-17 16:02:20 | 日記
真っ暗闇の男女の秘め事は五感を刺激する貴族の遊びだった。灯明と透け透け襦袢ででさらに…和江瑠(ワコール)が貴族社会に進出 伏見稲荷大社の物語 36話より

 奈良時代から神仏用の灯明と照明用の油は製造されていた。主に荏胡麻の油は灯明、菜種油は照明用に使われてはいたが、やはりこれは高価なもので農民や一般庶民には縁がなかったものだ。というよりも朝は夜明けと同時に働いて日が落ちると寝るという文化があり照明そのものの必要性がなかったからだ。この時代には唐から蝋燭が輸入されていたが、これは高価なもので蝋燭を日本で作る技術はまだなかった。

 これは天皇家も公家も貴族も同じで夜は寝るものでわざわざ照明をつけて仕事をする者もいなかった。このころの空は空気も綺麗で高いビルも街灯もなく屋敷の奥の部屋ではそれこそ真っ暗闇の世界になる。ただその分だけ月や星の光というのは現在よりも数倍明るく感じていた。庭に面した部屋などはこの月の光だけで十分な照明になっていた。また雪に反射した月の光などは銀座のネオンより明るく感じるほど輝いていた。

 ただ昼間でも神社や寺での本堂の中では真っ暗闇とはいかない、なぜなら灯明、蝋燭の明かりや灯篭の明かりが神秘性を生み出すばかりか仏様の顔が見えなければ信心そのものが成り立たなくなるからだ。ゆらゆらと揺れる光の中で観音様の顔はより優しく、怖い顔をした仏像はさらに迫力がでるというものだ、稲荷神社でも夜の参拝者用に表参道には灯篭を、社殿の中には灯明、蝋燭を一年中切らさなかった。

 貴族の寝所は屋敷の奥にありここには月の光も届かないからそれこそ真っ暗闇になる。そこでの男女の二人は目の前一寸さえ見えない、衣擦れの音さえ普段の3倍ほどに聞こえる。相手の息遣い、匂い、仕草に全神経が集中していることになる。その相手の指が腕の内側をす~と撫ぜると全神経がここに集まり快感が暴発しそうになる、また背中を指で摩られると悶絶するほど感じる。しかし、これがたとえば時計の文字盤の蛍光塗料一つで光っていれば腕と背中を触られただけにしかならない。

 腕、背中でそうだから彼の唇と指が本格的になると…しかし、これはかなり疲れる行為であって新婚や不倫の場合はまだいいが、慣れた女房にはチトしんどくなる。そこで疲れないように部屋に照明用の油をつけていた。そうなるとまた違う刺激がほしくなるのがこれまた人間の欲と性になる。

 都の左京に東市という市場がある。その室町通りには公家、貴族向けの高級ブティックがあった。そのブティックは和江瑠(ワコール)という屋号で主に女性下着の長襦袢を売っていた。これは絹でできていたが、その絹の一番細い糸で織っているから透け透けの織物だった。色もピンク、赤、白、銀ラメ、黄、黒と色鮮やかで貴族の女性はこれを買うために牛車で押しかけて店の前は牛車の行列ができていたという。

 神泉苑離宮では満月の日の恒例の月見の宴が開催されていた。ここには公家の他に高級貴族も招かれている。もちろん稲荷神社二代目宮司の生成(いなり)も招待されている。部屋の照明はなく満月とその月が池に映った月光だけでもけっこう明るい。宮廷の雅楽の演奏もされてムードは最高潮になったころ、若い女性が5人も池を背に出てきた。そして舞を披露しているが…

 その女性らは全員素肌に色それぞれの長襦袢を着ているがそれは透け透けのもので満月の光で色白の肌がシルエットで鮮明に浮き上がっていた。招かれた客は全員男だが目を点にしていた。そして一曲目が終わったときに天皇が、
「この色気のある長襦袢をお主らの妻や妾が着て夜を待っていると巷では噂になっているが、この長襦袢の流行をどう思うか率直な意見を聞かしててほしい」

 こういう場合はまず位の一番高い貴族が天皇に対して言葉を述べるが、その貴族は頭の中が混乱して言葉がでないようだ。そこで天皇は生成を指名していた。生成は、
「これが噂の和江瑠の透け透け長襦袢ですか、たしかにセクシーで私はいいと思います。しかし、一方では都の風紀が乱れという意見もあります。ところで、私の稲荷神社でも夜の参拝者が増えています。これは夜は寝るだけの文化から楽しむ文化へと移行しています。それは闇の世界から視覚を楽しむという生活の余裕から来ていると思います。庶民が夜の時間を楽しめれば経済活動が活発になり税収も増えることになります」
天皇は、
「そか、夜は寝るだけの文化から楽しむ文化になるのか?」
「はい、この月見の宴も公家や貴族だけの専売特許にせず、庶民にも広げることが日本の発展にもなります」
「そか、それなら照明用の荏胡麻や菜種の油が大量に必要になるが…」
「はい、それが大山崎の山崎屋という油商がなんでも種から油を採る鉄の機械を発明したそうで、これで油を抽出すれば油の値段も庶民に手が届くようになるそうです」
「そか、それなら蝋燭はどうなる?」
「はい、これも国産で製造できるように稲荷大学の学生が研究しています」

 この天皇と生成との話を聞いていた客らも頷いていたのでもう誰も和江瑠の長襦袢を批判できなかった。そして宴の〆にもう一度雅楽の演奏があり、やはり透け透けの5人の舞が始まったころには貴族の顔もかなり緩んでいた。この天皇のお言葉「夜は寝るだけの文化から楽しむ文化」が世間に広がるのは3日もかからず稲荷神社のライトアップ参拝にカップルが押し寄せ、やがて結婚、そして子供ができてこの時期に都の人口も一気に増えていた。

★…本当に真っ暗闇な世界を体験したことがあります。それは清滝に通じるトンネルの中で少しカーブの一か所だけ真っ暗闇があったのです。その時は子供と手をつないで歩いていたのですが、その瞬間に子供が消えてしまい恐怖というものはこれだと思った。災害などで土砂に埋まって助けを待っている人たちもこの恐怖を味わったと思うと…ここの読者も一度真っ暗闇を体験してください。

「音川伊奈利」で検索できます。



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