Google翻訳の精度が飛躍的に上がったらしい。これを利用して英訳した文章を和訳すると,原文よりも読みやすくなるという話を見つけて,試してみた。題材はウチの研究室の修士論文の草稿。まだ僕がチェックする前の段階のもの。参考文献表示などは省いてある。
(原文)
近年,地球温暖化や化石燃料の枯渇といった問題を解決するための新エネルギーとして,トウモロコシやイモ,サトウキビなどの植物資源を発酵・蒸留することにより得られるバイオエタノールが注目されている。バイオエタノールを燃焼した際に発生するCO2は原料植物が成長過程で光合成により大気中から取りこんだものとみなすことができるため,カーボンニュートラルの概念に則る。よってCO2の排出量としてはカウントされず,地球温暖化の抑制に大きく貢献することが期待できる。
原料植物を発酵させた時点でのバイオエタノールは大部分を水が占めており,エタノールは10~15 wt%程度しか含まれない。そのため工業利用の際には脱水・濃縮操作が必要となり,現在は一般に蒸留法による濃縮が一般的である。水/エタノール混合物に対する蒸留においては気液平衡の理論上96 wt%以上への濃縮を行うことが不可能であり,より高濃度への濃縮には共沸蒸留または膜分離を行う必要がある。共沸蒸留は2成分の混合液に任意の第3成分を加えることで共沸点を変動させる手法で,これを行うことによりエタノールのさらなる高濃度化が可能になるが消費エネルーギーコストが大きいという問題がある。対する膜分離法は水分子とエタノール分子の分子径が異なることを利用した分離法で,両者の分子径の中間に位置する細孔径を有した分離膜としてゼオライトが注目されている。ゼオライト膜を用いた膜分離を行うことでエタノールを99.5 wt%以上へ濃縮することが可能であり,この際の消費エネルギーは共沸蒸留で同程度の濃縮を行う際の半分以下に抑えられると考えられる。
(英訳)
In recent years, bioethanol obtained by fermentation / distillation of plant resources such as corn, potatoes and sugar cane has attracted attention as new energy for solving the problem such as global warming and depletion of fossil fuel. CO2 generated when bioethanol is burned can be regarded as taken from the atmosphere by photosynthesis in the growth process of the raw material plants, so it follows the concept of carbon neutral. Therefore, it is not counted as CO2 emissions, and it can be expected to greatly contribute to the suppression of global warming.
Most of the bioethanol at the time of fermentation of the raw material plant is occupied by water, and ethanol is contained only about 10 to 15 wt%. For this reason, dehydration and concentration operations are required for industrial use, and generally, concentration by distillation method is generally common. It is impossible to concentrate the gas / liquid equilibrium theoretically to 96 wt% or more in the distillation to the water / ethanol mixture, and it is necessary to perform azeotropic distillation or membrane separation for concentration to a higher concentration. Azeotropic distillation is a technique of varying the azeotropic point by adding optional third component to a mixed solution of two components. By doing this, it is possible to further increase the concentration of ethanol, but the problem of large consumption energy cost There is. Zeolite has attracted attention as a separation membrane having a pore size located between the molecular diameters of both molecules by a separation method utilizing the fact that the molecular diameters of water molecules and ethanol molecules are different. It is possible to concentrate ethanol to 99.5 wt% or more by carrying out membrane separation using a zeolite membrane, and the consumption energy at this time can be suppressed to less than half of that at the same degree of concentration by azeotropic distillation Conceivable.
(和訳)
近年、トウモロコシ、ジャガイモ、サトウキビなどの植物資源の発酵・蒸留により得られるバイオエタノールは、地球温暖化や化石燃料の枯渇などの問題を解決するための新たなエネルギーとして注目されている。バイオエタノールの燃焼時に発生するCO2は、原料植物の生育過程で光合成によって大気から奪われたものとみなすことができるので、カーボンニュートラルの概念に従う。したがって、CO2排出量としてはカウントされず、地球温暖化の抑制に大きく貢献することが期待されます。
原料植物の発酵時のバイオエタノールの大部分は水で占められており、エタノールは約10〜15重量%しか含まれていない。このため、工業的には脱水濃縮操作が必要であり、一般的に蒸留法による濃縮が一般的である。理論的には水/エタノール混合物への蒸留で96wt%以上に気液平衡を集中させることは不可能であり、より高濃度に濃縮するためには共沸蒸留や膜分離を行う必要がある。共沸蒸留は、2つの成分の混合溶液に任意の第3の成分を添加することによって共沸点を変化させる技術である。こうすることで、エタノールの濃度をさらに高めることができますが、エネルギー消費量が大きいという問題があります。ゼオライトは、水分子とエタノール分子の分子径が異なることを利用した分離法により、両分子の分子間に孔径を有する分離膜として注目されている。ゼオライト膜を用いて膜分離を行うことによりエタノールを99.5重量%以上に濃縮することができ、この時の消費エネルギーは共沸蒸留により同濃度の半分以下に抑えることができると考えられる。
この文章の出来栄えを5段階評価してみよう。
読みやすさ:★★★★☆
原文:「消費エネルーギーコストが大きいという問題」
和訳:「エネルギー消費量が大きいという問題」
→ 文脈を適切に汲んで簡潔に言い直せている。蛇足ながら原文の「エネルーギー」をいう誤表記も適切に修正されている。
原文:「対する膜分離法は水分子とエタノール分子の分子径が異なることを利用した分離法で,両者の分子径の中間に位置する細孔径を有した分離膜としてゼオライトが注目されている。」
和訳:「ゼオライトは、水分子とエタノール分子の分子径が異なることを利用した分離法により、両分子の分子間に孔径を有する分離膜として注目されている。」
→ 冒頭の「対する」は対比関係がすでに明らかになっていない場合は分かりにくい。和訳のようにカットするか「それに対して,」「一方で,」のように対比関係であることを宣言するような語の方が好ましい。また,主語である「ゼオライトは」を前に持ってくることで読みやすくしている。一方でこの和訳は誤訳があるのだが,それは後述する。
正確さ: ★★★☆☆
原文:「水/エタノール混合物に対する蒸留においては気液平衡の理論上96 wt%以上への濃縮を行うことが不可能であり」
和訳:「理論的には水/エタノール混合物への蒸留で96wt%以上に気液平衡を集中させることは不可能であり」
→ 「濃縮」が「集中」に誤訳されている。これは専門分野の語彙を強化しないと難しいだろう。
原文:「両者の分子径の中間に位置する細孔径を有した分離膜」
和訳:「両分子の分子間に孔径を有する分離膜」
→ 両者(エタノール分子と水分子)の中間のサイズの細孔を持つ,という意味が崩れてしまっている。これは原文の書き方にも問題があって,「位置」という言葉を不用意に使っていることが影響しているだろう。
言葉遣い: ★★☆☆☆
- 「wt%」が「重量%」に訳されているところとそのままの箇所がある。
- 文体が一部敬体に変わっている。
総じて,読みやすさについては表現を簡潔にしたり語順を変えたりすることで改善される見込みが大きい。一方で正確さについては原文の良し悪し次第のように思われる。むしろ不正確な訳文になったら,原文の構文に問題がないか見直すという使い方がいいのではなかろうか。言葉遣いについてはGoogleのやる気次第かな(笑)。
学生たちには「Googleにも読める文章を書け!」とでも言ってみるか。かくしてGoogle丸投げ教員の出来上がりである。