シスターリトルと子猫劇団

超ミステリー架空空間・子猫劇団

灯火

2023年03月12日 | Weblog
それぞれ生き方が違い、信条は異なります。
困難にぶつかったとき、堪えきれぬ衝撃に流されるとき。
どうやって己を保てばよいのでしょうか。
わたしは保てたのかどうかわからないのですが、
大きな障壁が立ちはだかるといつもこなす作業があります。
一冊、本を選びます。
外国語にて書かれた文章です。
その一冊を翻訳します。
まったく理解しておらぬ言語の場合もありますし、中世期英語や古英語を選ぶこともあります。
辞書とテキストを購入し、わからない単語を書き出した単語帳を作り、電子辞書で発音を確かめながら、
1行ずつ、段落ずつ、ノロノロとでも休まずに進みます。
不明な箇所はカラーペンで印を付け、それにかかわる研究をされている論文をCNiなど検索システムを利用して取り寄せます。
もはや、この時点で忙しい。
何のために自分がそれをしているのか。よく考えぬうちに、考えられぬままに没頭する。
そうこう過ごしているうちに現実の哀しみや葛藤をよそに、解けぬ課題に挑む自分の背中が見えてくる。
「書いた人が書けたのだから、翻訳ぐらいでけるわい!」などと開き直りもできる。
意味はあまりなくても、文豪のできたことをなぞるうちにわたしの心は文豪とひとつに……
とは、あいにくなれませんが。
ひとつにはなりませんが、何故このひと言が、どうしてこの1行がこの部分に配置されたのかが判明する。
それが愉快で、わたしは楽しい。
至上のよろこびと言ってもいい。
甘いオペラケーキを口に運ぶように、書見台に向かって文豪の後を追う。
それが、わたしの「越え方」です。
現実の世界で解決を見つけられぬならば、他者の思考を身につける。
案外、シンプルな答えが出ます。
写経の効果と似ているかもしれません。
写経は文字が学べるので良いし、翻訳は語学力増強に訳に立ちます。
泣いているひまはありません。
人生の時間はとても短い。
しかし、先日訳したD・H・ロレンスによる評論は「おっさん。結局、何を言うてんねん」と思いました。
知性とは、小難しいこと言うたらええっちうもんではありません。
わかりやすく言うて、納得してもらう。
それが賢さではないでしょうか。
まだまだわたしの理解力が及ばぬもので、ロレンス先生の真価を計りかねております。
修行はつづく。

追伸:写真の謎の物体の正体は、サクランボです。
いっしょに映るのは、初代・志津江さまであります。始祖ちびちゃんの娘にて、現党首ミニーメイのお祖母さまです。
このご一党をお守りするために人生を棒に振ったわたくしであります。
これで良かったのだと、振り返ることの出来る生涯にしたいと強く強く願う次第でございます。
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