参照元 youtube MOONLIGHT SONATA
ドアがいくつも並ぶ 幅1間の長い 明りの差し込まぬ暗い廊下
高さ3尺幅2尺程の ゼンマイ蓄音器があった
大きなラッパ管 鉄の針をネジで固定し何度も聴いた
蓄音器の前に胡坐をかき これを何度も聴いていた 中学2年生
満州でホームスパンで成功した女傑の家に養子になった
玄関右にある梨の木 西洋梨の木
もぎ取ってすぐ食えない梨は知らず
指で押すとへこむのを待って
濃厚な香りに めまいしそうになった
食い物の記憶は鮮烈だ
建坪50坪くらいの洋館だった
ここから中学へ通った
3畳の屋根裏部屋が自分の住まいだったな
何故自分がここにいるのか わかるわけもなく
夏休み 汽車で帰った自宅には自分の居場所も無く
子供だったから 親の心を知らず 自分は疎外されたと
親の期待に添えずと
信じ込んでいた
ムーンライトソナタ
レコードが擦り切れるほど
これをたまに聴くと
廊下に蹲っていた自分が蘇える
こんなに年を取ったのに
胡坐をかき 膝小僧を抱え 蹲る自分が見える
彼は自分であるのに
まるで見知らぬ子供のように
眺めている 自分がいる
懐かしさには浸る趣味は無く
懐かしさに 無言になる
あの頃 悲しかったのだろうか
あの頃 寂しかったのだろうか
自分にはそんな情感の記憶は無く
ただ この旋律を聴きたいという
それだけだったように思う
聴いてると なんか穏やかになれる
穏やかさが 多分 自分には必要だったのかもしれない
心が揺れ動く時代
ハリネズミみたいな尖がった心
身構えなくていい時間と空間
それが必要だったんだろう
一人に慣れ過ぎた自分を
それすら理解できない自分に
moonlight sonataを聞かせよう
自分の原点へ 戻ろう
朝晩 秋風が吹く
季節が巡って来た
日常は こうして過ぎて行く