tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

うぇいと 29

2018-07-23 00:16:30 | うぇいと

母親と二人暮らしでも楽しかった。
友達の親より若い自分の母親が自慢だった・・・働き者の母は明るく、何事にも笑って解決する頼もしさがあった。

『意地悪だよね、あの言い方』
『んー(笑)若いから知らないと思って言ってくれるのかもね(笑)。
貴女はサンキュって思いながら聞き流しな(笑)、一つずつ気にしてたら疲れるしー』

笑いながら呟く母に、そうかと教わる・・・何でも教えてくれる母・・・それが大人の会話でも、子供が聞いちゃいけない事でもだった。

だから友達は親に怒られたと、家へ逃げてくる・・・その理由を聞いて笑い飛ばしながらも真剣に教えてくれるのだ。

『だから子供は声にしない事(笑)。それは本当に大人になった時に考えればいいの。

お姉さんになったら色んな友達も出来るし(笑)その話題も出る。
だから体は大事と今は心に記憶はしておいて・・・興味だけで男に触らせない事(笑)。

本当に妊娠したらヤバい・・・それは皆の親も悲しいし世間って場所から、ずっと陰口のように言われて辛くなるの』

『なんでおばさんは知ってるの?』
『(笑)見た事があるから。回りで失敗する人達を見てきたわ(笑)だから自分は気を付けよって思った』

『そっかぁ、大人は何で言葉で教えてくれないか不思議だった』
『ウチのお母さんは怒ったのに、なんでイブのお母さんは怒らない?』

『(笑)人それぞれの考え方があるわ。ウチは早めに(笑)教えとくからなだけよ・・・まだ早い理由も分かったかな?』
分かったと笑う皆とおやつを食べながらお喋りにせいを出した子供だった。

知らない言葉は雪吹と遊んだ日に、イブの母に聞く・・・そうかと納得した頃に子供たちへ誰が話していたか聞き出した。

それは後で揉めない為だと知ったのは高学年になってからだった。
あまりの知識に驚き、問いつめればソコかと怒りは露になり夜の保護者会となった。

事細かに話す・・・それは自分の子が話し出した事・・・その思い当たる話で真実を知った。
何より一緒に聞いたという子の親の証言で事は静まった。

『目の前に子供がいないからと、声にすれば、子供にも耳はありますから・・・
本気で教えたくないなら、子供が確実に居ない場所で話してくれませんか?

色んな場所で知りたい年頃の子達はたくさんいますから・・・
何かに巻き込まれたらウチの子も困ります・・・それと、下手に濁す話し方は今時の子には通用しません。

余計に知りたくなって他へ目が向く前に、恥ずかしくても話はした方が納得は早い。だから駄目だと声にしたら、知らない子達と巻き込まれて自分が辛くなる・・・

それは最悪な事まで大袈裟に話して脅した方が子供の言動は止まる気がします』

『た、確かに・・・
ウチは男の子だから、興味本意でされても・・・それは家だけの問題でもなくなります。

誘われた・・・それでも子供に責任は負えませんし・・・だから言いました。
その後に性に関しては主人に頼んでネットで少しでしたが見せてました・・・もちろん良い方も・・・駄目な方も・・・
驚いた顔で見てたのは覚えてます』

そうかとそれぞれの親は話をし始めた事に気付いた先生も手習いのように感じたクラスでの事を呟いた。


そんな話をしてきたと布団に入りながら教えてくれた母・・・

『ねぇ(笑)そこまで話すの?私には必要?』
『ごめん(笑)、それでもイブキと二人だけだしね・・・お母さんが居ない時に何かあっても困るし(笑)。その間は雪吹が一人でするのよ?
(笑)知らなかったら?困るのは誰?』

『私だけどぉ・・・』
『全部を受け入れて覚えな(笑)。いつかは役立つはずってね・・・』
『役にたたないってある?』
『ごめん(笑)、けっこう ある・・・それでも、お母さんは必要でも雪吹には必要ない事もあると思う』

『えっ、分かんないの?』
『そう・・・だって(笑)お母さんは雪吹じゃないし・・・』
アハハと笑う・・・確かにと思えた雪吹に優しく笑み返したのだった。



ある日・・・・
先生に言われ帰り支度をした雪吹が学校を出た・・・そこに出迎えてくれたのは近所のオバサンだった事に驚いた。

母と仲良しで何かあれば時々、世話をしてくれていた人だった・・・
『(笑)おばさん?』
何でいるのかと笑った雪吹・・・涙を溢しながら腕を掴むと連れ出された事に驚きながらついて行った。

何事かが起きたのだと分かる・・・母親が心配になるが、声はなく連れて行かれたのは病院だった事に焦った。

冷えた薄暗い部屋へ連れて行かれ・・・真っ白な布がかけられた何かがあった。
会釈した人は静かに布を捲る。

ソコには眠る母がいた・・・泣き崩れるオバサンに驚いたが、目覚めない母親に近寄りそっと頬へ触れた。

『お母さん?』
・・・声はない・・・冷えた頬・・・身動きもない母親の体を眺めた。
横にあるケースには、母の荷物があり・・・一瞬で気付けた・・・母は逝ったのだと。


揺すられ・・・経が響く中で自分が座っていた事を知った。
知らない間に真っ黒な服を着ていた自分・・・涙を堪えて来訪者に応対していた見知る人達・・・促されるままに動かされ歩かされ・・・いつの間にか母の為にと遺影を眺めた。

知らない人達だと回りがざわつき始める・・・身形は普通ではない・・・それでも母の面影がある人が誰かを従えて歩いてきた。

『君が雪吹?』
『 ・・・どなたですか?』
『君の母親は私の姉だ・・・私は弟の八雲龍之介と言う』
『それは私に関係してますか?』

『 ・・・だから祖父の代わりに迎えに来た。一緒に彼女を見送ったら私と来なさい』
『断ったら?』
『 ・・・望むなら施設は探してやるが・・・行きたいか?』
『それでいいなら・・・』

『そうか・・・では、これから50日後に君に会いに来る・・・
その時に答えを貰おう・・・いいか?』
『はい。本当に母の弟なら証拠を持ってきて証明してくれますか?』

『 ・・・(笑)分かった、そうしよう・・・それにしても・・・言い方も容姿も似てるな(笑)姉が子供に戻った気がする』
不思議だと笑いながら呟く人は、母を見送る事なく帰った事に回りの人達が驚いた。


雪吹の先は不安だが、引き受ける事も出来ないだけに何も言えなかった。
それでもと一番仲良しだったオバサンは声にした。

『子供の貴女に苦労はさせたくないと、母さんは思ってる。
本当に弟さんなら、貴女が大人なるまでと助けを求めな。
施設よりはマシだと思うわ』

『聞いた事もない家族だよ?それはお母さんには家族じゃないからでしょ?孤独の身って聞いてたもん』

『それでも来た・・・誰かに言われたからかもしれないけど迎えに来た。
イブちゃんの世話を彼女の代わりにすると思いたいなら、それは利用して大人にして貰えば生活も苦しくないと思う。あれだけ高そうな格好もしてたし』

『あれはブランドモノだと思うから、本当は裕福な家庭だったのかもよ?』
『 ・・・』
『言ってたでしょ(笑)。
取り合えず受け入れて自分を考える、それが容易ければ出来るとしてみる・・・とか何とか(笑)。だから行ってみたら?』

『そうね、ムリだったら施設にって頼めば良い・・・』
そうかと考える雪吹だった・・・

11歳という子供へ選択をさせる事の辛さは、オバサンだけが泣いて謝っていた。

自宅の片付けも一緒にしてくれた・・・学校に行かずに、モノの整理をしながら考える雪吹だった。


一枚の写真が出てきた・・・それは知らない人達の集合写真のようだった。
笑みのない母の顔・・・これは仕方ないと付き合っている気がした・・・笑える・・・初めて見た真顔の母に。

思い出しても笑顔しか思い出せない・・・笑い飛ばす強さを自分にもくれと叫びたかった。
辛い自分を大丈夫と撫でてくれる手がない・・・これから・・・ずっとだ・・・
泣けてくる・・・嘘だと迎えに来て欲しいと辛くなった。

自分を自分で抱いて泣く・・・止まらない涙は今だけだと母との別れをしなきゃと思えた。

そっと自分を抱く人に驚いた・・・苦笑いした人は自分ごと母の写真を抱いて凭れてきた。
母を偲んで泣いていると分かった・・・母を愛した人なのかと、そう思えた雪吹だった。

泣き疲れ押し黙るように写真を抱いた・・・自分の小さな肩に凭れ震え泣く大人を初めて見た。

目が合うと苦笑いをした泣き顔・・・溢れた涙を拭いてやれば照れた笑みにかわった。
よく見れば葬儀の時に話した人だった事に驚いた・・・今、その人に冷たさはない事に驚いた。

『何で来た?家で待てと言ったろ!』
その冷たい声音と怒る声は誰だと玄関を眺めれば、自分を抱いている人と同じ顔だった事に驚くしかなかった・・・

『迎えに来て何が悪い・・・自分の兄弟が死んだんだぞ! 騒ぐな!』
怒りを露にした人と言い争う声で隣のオバサンが駆け込んできた。

大丈夫かと覗けば驚いたオバサンが入り彼から自分を遠ざけた。
睨むように二人を眺める・・・同じ顔だと、オバサンまでが驚いていた。

『知らない人達が黙って入って来るって・・・』
『姉が世話になりました。雪吹は私が引き受けますから安心して下さい・・・』

『 ・・・勝手に決めるな・・・それも許可は要るだろ』
『じゅうぶん大人だろ?お前は自分で考えとけよ・・・俺は姉さんの子と生きる事にする』

『 ・・・その子と約束がある・・・残り40日だ・・・それまで待て・・・』
互いの声で言い合いながらも、考えを譲らない二人・・・同じ顔でも違うのだと見返す雪吹だった。

『本当に約束したのか?』
静かに呟く人が見つめた・・・そうだと頷けば、後から来た人を眺めた。

『隠すなよ・・・お前だけの子じゃない・・・姉さんだけの子だ・・・大事に守って育ててきた子・・・忘れるな』
『それはない。やっと見つけたのに・・・許可を取ったのは俺だぞ?』
『 ・・・』

違和感というのか微かに起きる自分を信じ黙って耳をすませる雪吹だった。
事は終わったようで二人は帰っていく事にホッとしたのはオバサンだった。

『本当に兄弟がいたんだね・・・双子の弟が・・・。冷たい弟、温かそうな弟・・・そんな感じで余計に気になる・・・』
『 ・・・オバサン。あの人達に捕まらないように逃げたい。
誰にも内緒で施設とか行けないかな・・・親戚もいない孤児って事で』

『気持ちは分かるけど、あの人達に直ぐに見つかりそうだよ?そんな雰囲気だったし・・・』
『 ・・・お願い』
それは出来るのかと思え悩んだが、それも雪吹へ話して部屋を出た。

写真を眺める・・・女の子の両隣で笑っている男の子・・・椅子に座る人達・・・それぞれに二人ずつ、その隙間は少し・・・それは家族ごとの気がした。

いとこ という間柄なのか他にも子供は写っていたが、その子達は端に立ち3人の子供だけが真ん中に近い場所にいた。

それぞれの顔は、その時の思いが交ざっている気がした・・・


少しの着替えと、いつかの為のお金・・・貴重品という袋はあるが、殆んどは見て覚える事が多かった。

本当に、そんな日が来るとは思わなかった。
自分よりも先へ行くのに必要なモノを持てればいい・・・写真1枚でも思い出は残る・・・大丈夫・・・雪吹は大丈夫・・・・・・笑みながら母親が言った声は響いた。


数日後にやって来た人へ挨拶をする・・・福祉委員・・・そんな立場の人らしく、思いの外 緩そうな規則を聞く雪吹だった。

『持ち物はソレだけ?』
『形見と着替えと母の写真・・・
あ、学校に必要なモノ・・・それだけです』
『(笑)パソコン、使えるのね』

『これも母の大事なモノで・・・持って行っても大丈夫ですよね?』
『施設によっては没収される事もあるの』
『なら、比較的に自分でさせてくれる施設・・・それと子供の持ち物とか取らない場所にして下さい』

『 ・・・』
『どんなに離れた場所でも構いません。生きる為に必要で、取られたくないモノは自分で持ってていい場所なら』
『 ・・・』

『されたら復讐はします』
『あなたね・・・』
『子供だから取っていいって・・・それはないですよね。子供だろうが大人だろうがソレは犯罪ですから』

『そうね。
予定してた施設は、貴女くらいの子達が多い。その上の歳の子達もね・・・だから盗まれる事も有り得るわよ?』
諦めたのか、説明だと簡単に話し出した。

『(笑)身を守るに必要な知識も母から学びました。自分のモノを守る為なら選びません』
『 ・・・取り合えず住所はここよ。明後日までに準備は終わりそう?』
『はい。大丈夫です』

『なら、その日の10時頃に迎えに来ますね。処分するモノはしておく事・・・戻れないから』
分かったと呟く雪吹に苦笑いをして、仕方ないと帰っていった。


数多い頼み事は知るオバサンと隣のオバサンに頼んだ・・・本当に残したいモノや処分しても気にしないモノ・・・それはほんの少しだけだった母のモノ・・・それを眺め抱きながら眠る雪吹もいたのだった。