tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

かごのとり 55

2018-11-28 01:02:26 | かごのとり




深谷の頑張りにホッとしたハヅキ・・・アキ達へ構わずと声にしてマリナの様子を見守る日々になった。

戸惑いは和らぎ始めた気もした・・・そして同じ現実の壁が聳えた。
マリナから言ってみれば、確かにと呟けど翌日からも深谷の態度は変わらなかった事に余計に戸惑う彼女もいた。

それでも自分の気持ちが大事だろうと呟く深谷への思いはマリナへ静かに染み込んでいくような気がした。
柔らかな笑み・・・本来の彼女だろう笑みは増え、コウヤの声が背中を押す。

『もといた自分達の場所だから気にするな・・・そんな中で育ってきたろ。
刑務所に入らなくても一般からしたら敬遠される場所で暮らしてた。

諦められたら(笑)戻って・・・少し休んでから出てく事もできんだぞ・・・
取り合えず気にもしねぇなら入って確認してこい(笑)、兄貴達が邪魔しそうなら助けてやる・・・』

『 ・・・コウヤ』
『なんだよ(笑)。俺に怒鳴り散らしてたマリナは?どこ行った?』
『 ・・・(笑)』

『ここはさ、少しずつ軌道に乗り始めた(笑)。他のは撤退して削ったが、一本で出来そうな状態に近い(笑)。
お前の経営も上手い(笑)、だからさ・・・少し・・・自分の為の時間って、使って生きてみろよ』

『それでいい?本当に私は・・・』
『(笑)どう生きて行きたいか・・・いつかの夢だった事は実現したろ?
そこをガキを育てる意味で任せて自分の為にしてみろ。
無理なら助けてやる(笑)、ここで生きれた礼はする』
優しい声音で言ったコウヤに笑み返すマリナだった。

すっと運ばれた料理に目を落とし、誰が運んだと見上げれば・・・優しい眼差しで自分達を見ていたハヅキがいた。
二人には嬉しくて・・・恥ずかしくて・・・

照れた笑みの二人が可愛いと微笑んだハヅキ。
『大人になってきてる事が不思議と嬉しいのよね(笑)』
『(笑)弟じゃねぇ』『友達だもん』

揃って自分達はハヅキの弟や妹ではないと声にして拒否した・・・これも可愛いと笑み返すハヅキもいた。

『自分を生きるって(笑)大変だけど・・・家族って仲間がいたら・・・辛さも(笑)悲しさも・・・一瞬でも離して楽にしてくれるよね・・・
それだけで息も吸えて(笑)先へ生きて行けるって頑張れるよね。

困ったら(笑)みんなで解決してけるから・・・だから前に足を進めてみたら?(笑)二人が笑える先は絶対ある・・・私が見つけられたんだから・・・大丈夫と信じて歩きな(笑)』

『 ・・・』
温かな感情がわく・・・そんな気もした・・・声にしなくても分かってくれる人達の中に居たと改めて思えた二人だった。

ハヅキを背から抱くレン・・・その手が彼女を包み込んだ。
大事と包まれたレンの手を二人は笑みながら見つめた・・・

慌てるように静かに来た深谷が、腰を下ろしてマリナを心配そうに眺めた事にコウヤが苦笑いをした。
静かに離れ帰っていくコウヤに笑み、見送ったのはハヅキだった。

優しい眼差しで見送られる事に苦笑いをしながらコウヤが歩く。
抱き込むレンの笑みも不思議と自分へ優しく見ていた事に照れた。

見守る・・・そんな眼差しの気もした・・・子供のような気もしたが、それは嬉しくもあり苦笑いだった・・・

恋敵・・・そう思っていた自分・・・それでも取られた気もしない自分だった事に苦笑いだった。

自分の兄貴とは違う優しさが分かる・・・親のような温かさといえば、これが当てはまるのかと笑みを浮かべた。

実家よりも居心地がよく・・・そこに居るだけでホッとした場所だと改めて思える自分に笑うのだった。


心配している深谷に驚くマリナは彼を見返した・・・その理由に気づけば苦笑いだった。
嬉しくて溢れた涙・・・それを優しく払う深谷の手で気づいたのだ。

自分へ向ける想いが温かいと穏やかになる自分の気持ちは心地いいのだと思えた。

『深谷(笑)、マリナを隠せよ・・・
どっかで話し合ってこい(笑)ちゃんと、全部の気持ちを言ってこい』
『マリナもね(笑)。自分の気持ちを正直に・・・分からない事も、その理由も・・・全部を・・・』

『『 ・・・(笑)』』
『深谷は焦んな(笑)、ゆっくり・・・』
分かったと頷く深谷は彼女を立たせ手を繋ぐと・・・照れながらレンへ手を伸ばした。

鍵・・・声にしない深谷が苦笑いをしながら呟いた。
驚くしかないレンに笑うハヅキは自分の鍵を彼の手に押し込んだ。
サンキュと照れた笑みは驚いているマリナを連れ出して行った。

『あーハヅキさん・・・仕事あがりで俺はクタクタなんですが(笑)』
『も少ししたら上がれるから(笑)デートしよ』
『(笑)久しぶりだ・・・』

『待てる?』
『待つ(笑)』
ならそこでと促したハヅキにキスをしたレンは端奥にある席へ向かったのだった。



静かな空間・・・二人で手を繋ぎ、ゆっくりと足を進める。
『気になるよな・・・』
『(笑)レンの頭から出しといて』
『 ・・・(笑)』
ジッと自分を見つめながら呟くハヅキの声に、前にもあった会話だと笑み返した。

『全部にハヅキという膜で出来てるから大丈夫なんだ(笑)
スッて消えてく・・・ハヅキもだろ(笑)レンという膜で俺を感じてるだろ』
『(笑)レンに染まってるからね』
『 ・・・(笑)』
聞きながら不意に止まるレンに笑う・・・照れた笑みは近づき口付けた。

『レン(笑)、ここは外だった・・・』
『待てなかった(笑)』
彼女の服の裾から入り込むレンの手に気づき呟く・・・抱き込んで両脇へ巻き込む手に苦笑いだった。

『戻って・・・ん、戻るぞ(笑)、邪魔しないように静かに入ればいいだけだ・・・(笑)』
『(笑)出きるの?』
『すんだよ(笑)。どうせ・・・』
『 ・・・』

『あー・・・・(笑)今の俺と同じ気がする・・・し・・・』
『恋しいわけだ(笑)』
『(笑)一番近いからだ!』
『 ・・・』
『(笑)まだ照れる?』

『先が分かるから(笑)』
『同じだろ(笑)・・・・・・だっ・・・』
悪戯な目でハヅキに言ったレンだったが・・・同じ目になるハヅキを見つめた。

その恋しい彼女の手が自分へ向かっていた・・・声が漏れたが間に合わず・・・少しずつ照れたレンだった。

『(笑)待てと伝えてくれ』
触れている手が返事をすれば、微かな唸りに耐え笑みを溢したレン。
グッと耐えた彼はハヅキの手を繋ぐと指先まで絡ませながら急かすように歩き始めたのだった。



ドキドキは止まらなかった・・・静かに入り込む二人・・・それでも帰ったと内鍵をする音を出し、いいかと冷静に客室の前を通り過ぎた。

玄関にある二人の靴に微笑むハヅキを眺める・・・それから中へ入り込むのだった。

驚いたハヅキに、ほらなと笑いながら二人で身綺麗にする。
既に使われたバスルームの状態に笑みながらレンは急かした。

気の合う仲間・・・それは心から思う人との時間まで同じなのかと苦笑いしかでなかったハヅキだった。


朝になり・・・慌てながらも激しくドアを叩くレン・・・
『仕事だぞ!早く出てこい』
その声に反応したのか、中でドタバタと慌てる音や笑っているのだろう音が始まった。

『穂隅が迎えに来てくれてるから早くしろ!』
玄関へ向かうレンの声に、勢いよく開いたドアから身を整えながら出てきた深谷に笑った。

急に振り向き照れながらハヅキへ礼をすると、サンキュとレンへ声にした深谷・・・
『行ってらっしゃい(笑)』
ハヅキの声に笑みながら二人は仕事へ向かったのだった。

『(笑)マリナさーん。食べれる?』
『無理・・・アルコールが残ってるの』
『 ・・・』
驚いた・・・話ながら飲んだのかと・・・
ハヅキの様子に苦笑いをしたマリナが彼女の手を引いてソファーへ座り直した。

『どれだけ飲んだ?』
『ごめん(笑)。ちゃんと冷蔵庫に補充するね・・・』
照れた笑みが呟く・・・

『全部(笑)言えたの?』
『酔った弾みって(笑)言い合った・・・言い訳に変えられるからって・・・』
『すっきり?』

『(笑)男としてないって聞いてから物凄い緊張した顔になって・・・(笑)手は止めないくせに本当に大丈夫かって(笑)返事するのが面倒なくらい声にしてた』

『 ・・・』
『 ・・・ ・・・・・(笑)』
思い出したのだろう・・・その時の戸惑う彼女の顔・・・そして恥ずかしそうな笑みに変わり自分から視線を外したと思えば笑みを浮かべたマリナに口を引き微笑んだ。

『それは(笑)はまったわけ?』
『っ!・・・・(笑)』
『(笑)何より』
『 ・・・なんで!』
『幸せって顔になったから(笑)』
声にされて照れたマリナはハヅキから言われ微かに頷き出した。

『彼の気持ち(笑)・・・んー(笑)心が伝わってきた・・・大事って・・・好きって・・・(笑)それが嬉しくて・・・』
『(笑)あったまったわけだ』
そうだと新たな頷きに笑みを浮かべた。

『違和感がなくて何よりだったね(笑)』
『ん・・・怖かった・・・怖かったんだけど大丈夫って(笑)。私を愛した気持ちだけ吹き込むから心配すんなって・・・』

『(笑)マリナの中に染み込んだ?』
『 ・・・(笑)』
『(笑)たっぷり入ったわけね・・・良かった良かった(笑)』
『へへ(笑)・・・』
本当に大丈夫だった自分が嬉しくて・・・そんなマリナの顔にホッとしたハヅキもいた。

『ハヅキ達はさ(笑)話をしながら出来るのね・・・何か楽しそうだったね』
『 ・・・』
驚いた・・・確かに色んな話をしながらだった自分達だった事に今更ながら思い出していた・・・・それを聞いたのかと・・・

『寝る前に部屋から出たらね(笑)彼が驚いて動けなくて・・・
(笑)一緒に聞いちゃった。ごめんね・・・心配かけて・・・
だからね(笑)レンさんに言っといて・ ・・・ハヅキは取らないよって(笑)』

『おっおっけ(笑)』
『 ・・・(笑)狙われて焦る彼は可愛いね・・・嬉しすぎて(笑)
ま(笑)私も楽しく出来たら最高だから頑張ってみるね』
満面の笑みで声にするマリナに苦笑いしか出なかった・・・・・


二人で帰ってきた彼らに驚き眺めたハヅキ・・・その後ろから笑いながらマリナまで入って来た。
夜食の準備をするマリナだった・・・

『帰る家(笑)間違ってない?』
『(笑)ごめん・・・リフォームしてるから暫く(笑)い?』
『 ・・・』

ハヅキは声に出来なかった・・・なぜなら、それは深谷がココへ通う事にもなる。
苦笑いをしながら断ると言い続けていたレンの理由を知った。

『ごめんってば・・・』
『(笑)おっけ』
ハヅキの声に礼をしたマリナはまた夜食作りへ戻るのだった。


声にせずハヅキへ張り付き、二人を眺めるレン・・・楽し気に話しては食べる二人の姿は目の前に居座った。

可笑しくて押し黙ってレンの観察をする楽し気なハヅキ・・・ムッとした顔に笑い彼の頬へキスをした。
肩へ凭れ、口へ運ばれる料理は我慢して食べているようにもみえた。

『深谷・・・』
『(笑)2~3日頼んだ』
『深谷(笑)』
『俺は我慢して(笑)黙ってやったぞ・・・(笑)俺にも付き合え』
『(笑) ・・・』

二人だけの会話・・・それはどんな事だと声にするマリナに男同士の秘密だとキスをして唇を塞ぐ深谷に呆れるハヅキもいた。

『あー(笑)目の前にピンクの花が咲きだした・・・』
『(笑)眩しくて、鮮やかで(笑)綺麗よね?』
『可愛い(笑)』
『(笑)サンキュ』
返事は深谷がした事に苦笑いだ・・・

『(笑)レン』
『ん?』
『その手はざわざわ(笑)しねぇ? いつもレンは無意識にしてんのか?』
深谷の呟きに何だと眺めれば、視線は自分へじゃなかった事に苦笑いだった。

それはレンが彼女を抱く手だった・・・透けた素材の彼女の服の中へ手は忍び込んでいた・・・片手は彼女の腰へ巻き付け、もう片方は彼女の胸へ張り付けていた。

『あ・・・』
今更ながらに呟くハヅキの声に、耳元でごめんと囁くレンに笑み返した。

『いつもだから気にもしないハヅキだったね(笑)、誰が触ってても拒否しないし・・・』
『まじ?』
『(笑)離せって声にしないで触り返してた・・・驚くから手は離れるし(笑)その隙に逃げてたもんね』

『マリナ(笑)声はヤバいのよ・・・聞いた人が困ると思うけど(笑)深谷さんの手はマリナへ向かうと思うから覚悟しといてよね(笑)』
『ん・・・・』

『私が気づいた場所はどこか(笑)教えといてあげようか?』
『 ・・・(笑)』
『探す楽しみは残したいので(笑)、ずっと後で答え合わせしましょ!』
『了解(笑)』

ハヅキと深谷の会話に驚きマリナとレンが押し黙った・・・それでもとレンが彼女の顔を捕まえ目を合わせた。

『手は俺だけって・・・』
『声だけよ(笑)。私の手はレンのだしね・・・違った?』
『声もやらない(笑)』
『二人に見せたいの?』

これをと視線を流した先に自分の手があった。
その手は彼女の中の服まで捲りあげようとしていた・・・照れながらハヅキのお腹を隠したレンが彼女の目元へキスをして見返した。

『俺だけの空間を貸してるから(笑)深谷は遠慮しとけよ』
『 ・・・』
『(笑)深谷』
『(笑)穂隅に妬かれるよな・・・わりぃ』

『(笑)穂隅は俺を知るから大丈夫だ』
『恩にきる(笑)』
『ん(笑)じゃ片付け頼んだ』
そう言ったレンはハヅキをリビングから連れ出したのだった。



かごのとり 54

2018-11-27 08:10:07 | かごのとり

寝付けずに自分を抱いたままのレン・・・自分と同じようにトモキの心に気づいたのだと思えた。

それでも言葉を選びながら・・・トモキへ声にした自分・・・話す言葉を思い出していた。

『言葉って・・・現す言葉は同じって・・・改めて気づくと怖いね・・・』
『 ・・・』
『どっちも私には必要で大事なのに・・・それを声にする言葉は同じだった。
意味は違うと思うのに・・・表現する言葉が見つからずに困った・・・
愛してる意味を、どう言うか考えても・・・私には考えつかなかった』

『本気の恋心って・・・気づいたのか?』
『ん・・・家族の愛じゃなかったね・・・それは嬉しくて・・・でも悲しくて・・・止めなきゃ次へ進めないトモキへ何て言おうか物凄く考えた』

『 ・・・あれで大丈夫だったと思うしかない・・・
どうしても消せなかった時は俺が対等に言う(笑)、男同士って所でな』
『 ・・・』

『誰かへ渡す気はない・・・それが家族でも・・・それは無理だ・・・
次で何かにトモキ自身が 迷ったら(笑)その時の言葉で繋ぐ事にする。
だから今回のは・・・もう声にしたから(笑)よしとして見守る事にしよう』

『ありがと(笑)』
『ん?』
『貴方が来てくれたからトモキは気持ちを止めなきゃって思った気がするから・・・』

『(笑)ハヅキは駄目だと止めたくて・・・それとトモキが可愛くてだった(笑)前より成長してる気がして・・・可愛いヤツ(笑)って思えたから・・・
それから(笑)諦めろって・・・言いたかった自分もいた』
『 ・・・』

『(笑)いくら弟でもな、取られる気はない』
そう言い切ったレンに笑み返した。

『本気の本気(笑)ハヅキを愛した自分がハヅキの中にいる事が嬉しすぎて(笑)、それを実感した事も嬉しかったんだ』
『重いのよ(笑)』

『だから立ってられるだろ(笑)俺もだし。真ん中に重石があるから(笑)迷わずに事を起こして行けるし・・・あちこち行かずに構えて行ける(笑)そんな気がしたんだ』
『(笑)貴方を愛してるわ』

『ハヅキを深ーく(笑)ハヅキよりも愛してるのは俺だ・・・転がる事はない自分だって改めて想えた・・・』
幸せだと笑みながら言ったレンに笑み返した。


熱く吐き出していく互いに酔いしれていく・・・それだけで嬉しくて激しく昂る自分達を、抑える事なく向けた。
求めた想いは深く絡ませ互いに浸り奥底へ運び込んだ二人だった・・・



不安そうな皆へ、大丈夫と声にして いつもの自分達を作った。
時々、トモキはマリナへ声にしていたが少しずつ落ち着きだしたとハヅキが聞いてホッとした。

だから自分の相談もと苦笑いをするマリナに笑み返したハヅキだった。


驚くしかない・・・マリナの言葉に・・・気になる人が男性だった事にだ。
今まで マリナの心に入る人は女性だった・・・本人もそう言い、目さえ向かないと言い切っていた彼女だった。

話を聞いていれば、それは誰かと気付けた・・・彼女へ声にもしなかった。
何故ならコウヤと同じ感覚で付き合っているとばかり思っていたからだ。
それなのに、彼から言われた言葉一つで揺れ動いた自分がいたのだと自分へ話し出すマリナに驚いた。

『違和感もなくて・・・ただ驚いただけだったの・・・
友達って気持ちじゃない自分には気付けたけど・・・気持ちが追い付かなくて・・・緊張してきて・・・』

『だから色んな時間でハルト達に任せて帰ってたの?会わないように?』
そうだと頷くマリナを眺めるハヅキだった。

『マリナの気持ちは? 離れて考えてたんでしょ? 数日前に・・・』
話したろうと・・・驚いて続けて声に出来ずに彼女を見つめた。

『 ・・・考えるだけでドキドキしてる自分が怖いから・・・出来ないよ。
もし・・・本当の私を知ったら? これまでの事を知ったら?』
『嫌われて離れてく事が怖い?』

『気持ちは好きって思った・・・だけど体が拒否したら?』
『マリナは彼を何処まで知ってる?』

『彼は遠慮なく話すのよ?(笑)だから違和感もなく聞けちゃったわよ・・・この気持ちに気づく前だったし・・・

それでもって・・・彼が言ったんだもん・・・それでドキッとして・・・その後から意識し始めちゃって・・・』

『寝てる事も聞いた?』
『(笑)止められない感情が怖いって・・・自分にヘコむらしいよ(笑)』
『 ・・・それが・・・』

『聞いた・・・トモキ君の話もしてたから・・・経験して・・・でも子供だから試させてやれない事も言ってたし。
自分が可笑しいんだって言った顔が悲しそうだったわ・・・』

『人肌が恋しいだけ・・・そんな』
『ん・・・そう思ったよ。だけど私は気持ちが大事とも思うの・・・愛したから体も許せる・・・時々(笑)体が求めた時もあったけど・・・

好きな人に触れなくて・・・焦がれて狂った自分の解放は(笑)病気の域だけどね・・・』

『(笑)その辺も似てるのかな』
『彼より誰彼って行ってない(笑)』
自分はと呟くマリナだったが、ふと驚きながらハヅキを眺めたマリナだった。

『誰か・・・相手が誰か知ったの?』
『ごめん・・・(笑)マリナを知るから気付けたよ・・・』
『(笑)・・・そっか・・・』
『そうとうマリナを大事って想い始めたよね・・・』
『ん?・・・』

『ここで(笑)、お持ち帰りは無くなってたわよ? 次に飲みにって・・・出て行く事はないじゃない・・・
皆と飲みに来るし(笑)一人で来る事も多くなった・・・
静かになった話は穂隅さんから聞いてる(笑)仕事に集中してきた事が面白いって話し方だった』

『(笑)それでも、もしもって先の想像も半端ないのよ?
私の場所・・・私の過去も(笑)全部が障害物だもん』
『その辺も彼なら知ってたんじゃないかな・・・レンを見てるし・・・
それは話してない?』

『話した事はある・・・ほら、前に立て籠りがあったし・・・
それでもハヅキの話だったし(笑)私の場所の話でもなかったからな・・・』
『試せば?』
『 ・・・怖い』
確かにと怯えた悲し気なマリナへ強く声に出来ないハヅキもいた。

『ハヅキ・・・』
『ん?』
『ほんとはね・・・』
『 ・・・』
『 ・・・(笑)物凄く酔った・・・日に・・・』
『そっ、その記憶は?』

『ない・・・起きたらベッドで・・・裸で寝てて驚いて・・・そっと抜け出して着替えてから寝たから・・・』
『気付かれた?』
『分からない・・・確認してない・・・
彼が起きた時に合わせた・・・大人だしって(笑)・・・お互いに謝って終わりだった・・・それが自分でも精一杯だった』

照れながら呟くマリナにも驚いた・・・どこまで泥酔していたか知らない・・・それで出来る事も知らないし、そういう彼かという事も知らなかったから声にも出来なかった。


今まで・・・飲み会で彼らを見た記憶を探し出す・・・どんな人だったのかと・・・。
彼らの会話・・・彼が居ない間の会話・・・より楽し気な雰囲気へもっていく彼らだけの会話・・・

酔った中での会話は、惜しみ無く静かに声にする・・・自己の責任・・・その徹底さ・・・仲間への遠慮ない指摘・・・全員が親友のように深い繋がりは聞いていれば簡単に知れるほどに互いの詳細まで知っている気がして驚いた事もあった。

励ましもする・・・そっと背を押すような言動もあった・・・宥め何も言わずに隣で過ごす事も。
全ての苦楽を共にする・・・そういう人達だと思えた頃の記憶が甦った。


思い出したような優しい笑みの彼女に驚いた・・・何かの想いは優しいのだと、それは誰に向けた笑みで思い出しているのか気になった。
それでも想像しなくても分かる・・・彼女の心を揺らした相手は彼だけだから・・・

ハルト達に向けた姉の包むような優しい目でもない・・・恋い焦がれた目でもない。
慈しむ・・・そんな優しい眼差しは誰かへ想いを運んで思い出している気もした。


ムカつきながらも先に身綺麗にしたレンは自分の想いのままにベッドへ入り込み彼女を抱き締めた。

彼女の頭に浮かぶモノ全てを消し止めたくてだ・・・なのに有無もなく腕の中へ連れ込んでいくレンだった・・・

『声にしてくれないと(笑)』
『そうなのよねぇ・・・』
『 ・・・』
互いに驚いた顔になった・・・少しずつ焦る顔になったレンが彼女の頬を捉えて目を合わせた。

『俺だけを頭の中に残せ・・・』
『 ・・・消えた事ないけど・・・』
レンの言葉に驚いて、それは何の事で言ったかを考えるハヅキもいた。

『 ・・・今まで誰がいた?』
『マリナ・・・・』
『?・・・・て事は深谷か・・・』
『 ・・・』
『(笑)恋煩いしてる・・・物凄く昔に一度、激しく持ってかれた事があった(笑)その時に似てて・・・』

『成就した?』
『してない。試しって始めたのに女が逃げた・・・』
『本命は重い?』
『激しい一途(笑)。極端なんだよな・・・これが自分って諦めてもいる』

『そうしないと自分をコントロール出来ないとか?』
『あー・・・
(笑)普段の軽さとか・・・あの明るさから入るしな・・・本当は寂しがり屋だし(笑)自分だけのって囲いたいし・・・』

『(笑)寒がりね』
『極端って言ったろ(笑)。恋しくて恋しくて・・・あっためて気を紛らせてきた・・・
それでもな(笑)、公私混同もない』

『一度も?』
『ない(笑)。相手の見極めも凄い・・・同じ匂いだとかって酒を進めてく』
『 ・・・』
『マジで揉めた事もない(笑)。その辺は尊敬もする・・・それが嫌だっていう女が多い中で自分を確立して公言もする』

『仕事に支障が出てかないんだ』
『ない・・・それが自分って片目閉じて見てくれって上司に言ってたし(笑)ある意味すげーんだ』
苦笑いをしながらも呟くレンに口を引いて見つめたハヅキだった。

『で?なんで、その顔になってた?』
『ん?』
それは何だとレンを見ながら考えた・・・

『誰を思ったよ・・・深谷?だけ?・・・マリナと深谷?』
『 ・・・ごめん。その意味は知らないけど、今気になるって二人の事だけだと・・・思う・・・
ん?悩んだ顔になってた?』

『なってない・・・』
『どんな顔よ(笑)』
『誰かを想ってる感じ・・・』
『 ・・・レンがやくほどの人がいた?』
『 ・・・』

『んー(笑)
マリナって・・・初めて会った頃から(笑)物凄く優しい子だったの。

意地悪されてるのに、悲しんでると隣に座ってあげてたり・・・話しかけたり・・・(笑)気づくのも早かった気がする。
それでも押される感情には直ぐに流されてく・・・出された手は受け取らないけど、そのまま我慢してた』

『ん?』
それはどんな事だと訝しげた。
『触られ放題(笑)、いっかって・・・全部を預けちゃってた・・・
後で嫌だったって泣いて我慢して』
『襲われた?』
『んー触られて感じてた?(笑)かな・・・』

『 ・・・』
『人肌の恋しい人だらけ(笑)。寂しいのは皆一緒だったから・・・
誰か自分を少しでも支えてくれるなら大丈夫って・・・そうすれば自分は出来るって思ってたのかも』

『自信がないからとか?』
『重石がなかった(笑)。恋しくて・・・それだけで来た感じ。
だから深谷さんとの(笑)どんな会話も付き合えたし違和感もなく話せてたって・・・』

『ハヅキは聞いてるか?』
『何を?』
『酔った弾みの話・・・』
『それは本当に寝たの?』
『途中で我に返った記憶だけ・・・起きた時には自分達が服を着てなかった事とか・・・』

『やっぱり着た事は知ってたんだ(笑)』
『マリナは大丈夫だったか?』
『(笑)した記憶はなかったみたい・・・焦って着替えて寝直したらしいわ』
『途中で焦った記憶は?』
『ない。言わなかったし・・・』

『真面目に向き合いたい彼女に手を出した事に焦ったらしい。
酔った過ちで自分の気持ちは遊びだと勘違いされる恐怖とか・・・ふと過って止めた記憶はあったが・・・先に進んだか覚えてないらしくて・・・
それを思い出すと激しく落ち込む(笑)』

『マリナは彼の言葉で揺れてる・・・』
『深谷の事・・・は・・・』
『だから(笑)揺れてる・・・自分に怖くて先へ進めない感じ』
『マリナはさ・・・ハヅキの事・・・本気だったか?』
『 ・・・』

『本気のヤキモチだったって事か?』
『 ・・・淡い期待・・・そんな感じ』
『 ・・・穂隅がさ・・・同じ気がするって言ってた・・・』
そうなのかという顔のレンに悲し気な笑みで頷くハヅキだった。

『だから戸惑うって穂隅が言ってた・・・好きって思ってた場所が真逆なら・・・・本当に・・・自分に驚くよな。
それでも・・・深谷を受け入れてくんねーかな・・・』

『それだけの戸惑いじゃないのよ?彼は理解してるのかな・・・
レンを見てたなら気づくとは思うけど・・・彼は大丈夫なのか・・・彼女を幸せにしてくれるのか・・・』

彼女の呟きは少しずつ独り言のように小さくなっていった。
祈りの囁きのような優しい声音は静かに消えていった。


かごのとり 53

2018-11-25 00:43:50 | かごのとり

ふとアキの声で気づいた。
トモキからの声が止まった事を・・・カフェでトモキを観察するが、飲みに来た穂隅を幸せそうに眺める事もなくなった。

会話はと話してみれば、何となくだが大人になった話し方に変わっていた事に気付いた。
そして数日前からのハルトやタケルの言動・・・あの不審な動きを考え、その理由を探す。

不意に言ってみた・・・
『今も、穂隅さんが(笑)好き?』
『ハヅキちゃんが好き(笑)』
即座に満面の笑みで返った事に驚いた・・・その照れた笑みはハルトと同じようにもみえた事にホッとしたハヅキだったが、微妙な違和感は取れずにいた。

それでも急に誰も居ない場所へ自分の手をとり連れだった事に驚いた。
なんだと思えば・・・
『(笑)女の子としてみたよ・・・内緒ね(笑)』
トモキの告白・・・その恥ずかしそうに照れる顔に驚くしかない。

『それは・・・』
『ん。ちゃんと同意してくれたから。避妊もした・・・ちゃんと出来たけど・・・(笑)ほんの少し・・・違和感は残ったんだ・・・』

残念そうな苦笑い・・・既に戸惑いもなく自分で考え事をしでかしたのだと戸惑った。

『トモキ・・・』
『ん・・・こんどは本当に大好きになった人とする・・・ハルトもタケルもそう言ってたし(笑)それは同じだもん。
大好きになったら出来る・・・そう思った』

『(笑)良かった・・・』
『今のライバルはレン兄なんだ(笑)。だから物凄く頑張るね!』
そう言い切って離れていくトモキに驚いたハヅキ・・・その意味を理解するまでに時間が必要になった。


呆然とする・・・立ち尽くすハヅキに何だとアキが近寄り、その視線を追った。
それがトモキと気付くとハルトとタケルへ視線を投げた・・・
視線は重なり苦笑いをし始めた二人の姿に訝しげハヅキを眺めた。

『ハヅキ?』
『ひょっ・・・』
『ひょ?』
『標的?』
『それ何?』
『 ・・・たっ、対象・・・?』

物凄く激しい戸惑いの声に驚いた・・・照れや焦る顔にもなるタケル達・・・それはトモキが二人へ何かを言った時から始まった。
『どーしよ・・・』
それだけのハヅキの呟きに何だと眺めるアキだった。


始まる・・・・
それは誰から見ても分かるほどにハヅキへ思いが転がっていく気がした。
一つ間違えばストーカーと呼べる域へ入りそうでもあった。

ハヅキから離れない・・・視線もだ・・・姿が消えれば探し、見つければ二人だけで会話をする。
ハヅキの隣は自分だけと声にしてから寄り添い回りからの声は長過ぎと呟く。

帰りが遅ければ部屋の前で待ち、客室に泊まる回数まで増えていった。

早瀬はたんに好かれているとしか思えなかったが、それは度を越す勢いもあり・・・暫く様子見をしていたアキが見張りタケル達と押さえた。

それが数度重なったある日・・・我慢出来ずに声にしようと、アキはトモキに話そうと連れ戻し呟いた。

『何で駄目なの?ハヅキちゃんより子供だから?』
『違う・・・トモキが好きでも、ハヅキは同じ気持ちじゃないから』
『好きって言ったよ?』

『それはハルト達と同じ好きって意味・・・恋人っていう意味じゃない』
『寝れるよ?』
『トモキは弟だから、ハヅキはしないわ』
『愛してるよ?』
泣きながら呟くトモキに、揺れないようにジッと見据えて声にしていた。

『トモキ・・・ハヅキが貴方を大好きでも、ハヅキの恋人にはなれない。
彼を愛してるから・・・悲しませないで』
『 ・・・レン兄も愛してるから?』

『ずっと二人は愛し合ってたし、それは これからもよ・・・』
『 レン兄より・・・そばに居れるよ?』
『居なくても心は繋がってるから大丈夫なのよ?』

『ハヅキちゃんを愛してるから・・・』
『トモキ・・・俺もハヅキを愛してるぞ?』
『ハルトは何で寝ない?』
『愛してるからって必ずするとは限らない・・・それに家族として愛してるし、レン兄も好きだし・・・』

『レン兄とする?』
『しない。レン兄はハヅキだけだから。それでもレン兄は俺達が好きだぞ?』
『 ・・・』

『トモキは勘違いしてるぞ・・・トモキのその気持ちは家族という気持ちだろ・・・』
『愛したら恋人じゃん・・・』

『意味が・・・違うと思う・・・お互いに愛したら恋人っていえる・・・それは家族よりも深い・・・どっちも大事だけど・・・少し違う気がする。
想う深さとか・・・感情の種類は違うと思う・・・』
タケルの言葉に項垂れる・・・これも違うのかと悲しくなった・・・

『トモキの愛した気持ちは本当だろうと思う・・・
それでも、レンがハヅキを愛してる気持ちと違うと思う』
『アキちゃん ・・・僕もハヅキちゃんが大事だよ?』

『それだけじゃない・・・
トモキ、ハヅキだけをみて追い掛けても駄目。ハヅキのモノを取っても無駄・・・ハヅキの全てを手にしても・・・ハヅキはトモキを男として愛さない』

『何で?僕が愛してるのに!』
『ハヅキの心はレンと一緒にいるから・・・
トモキは弟だから・・・男じゃなく弟だから家族の愛なの』

『僕のもそうだと言いたいの?』
そうだと頷く皆・・・自分の愛は違うのだと否定され辛くなった。

『隣で一緒に寝てくれるよ?』
『家族だからよ。トモキが辛そうだから・・・
それがハルトでもタケルでも・・・ハヅキならするわ』
『 ・・・』

『ハヅキが悲しむから諦めろ。家族って場所から離れてくぞ!』
『駄目だ!ハヅキちゃんを渡さない!』
『トモキが勘違いしたままなら出てくさ!気付けって・・・』
理解しないトモキに苛立ちながら呟いた。

『トモキはレン兄が嫌い?』
『好きだよ・・・』
『穂隅さんも好きだったろ?』
『(笑)穂隅さんと同じくらい好き・・・タケルだってレン兄が好きじゃん。ナオ兄も・・・』

『レン兄が悲しむよ・・・トモキも好きなのに・・・悲しむハヅキちゃんを見たくなくて・・・』
『それは嫌だ・・・だけどハヅキちゃんを・・・ハヅキちゃんだけが・・・』

皆へ伝われと自分の気持ちを言いたいのに拒否されている言葉が多く悲しくなるトモキだった。

『トモキはハヅキと恋人にはなれない。ハヅキの恋人はレン兄だから』
今の状況だけを言おうと、真っ直ぐにトモキを見つめながらアキは声にした。

『一人・・・』
『そ、一人だけ』
『トモキ・・・ハヅキちゃんは俺らの姉さんで・・・家族だ。だから恋人にはなれないんだ・・・』
『誰かを愛したからって、その誰かと恋人って事にはならないんだ』

『愛し合う事が出来るから恋人でしょ?』
『家族の愛と恋人の愛は違う・・・』
『 ・・・』
押し黙る・・・自分の全部の気持ちが否定され余計に辛くなった・・・

ボロボロと涙を溢していくトモキ・・・激しく思い込む事で一つ一つの物事は深く浸るように根深い。
だから余計に メリハリをつけてトモキへは声にしていた。

間違った言動も即座にその場で否定して意味が理解するまで声にしていた。
余計に絡まり勘違いは酷くなるとハヅキが気づいてから、それは皆も聞きトモキへ言っていた。

今回もだ・・・ハヅキの仕事あがりにレンが来て、一緒に帰っていく後を追った。
追い付いたトモキはレンへ声にして離しハヅキを支えて歩き始める。

アキが素早く引き離しトモキは自分の部屋だと促して戻ってきた。
レンに取られると、ハヅキと一緒に寝たいトモキの呟きでアキが声にしていた。

ハヅキの想像通り、愛するイコール恋人という意味で捉えていたトモキ。
最後はハヅキ自身で言うと相談はしていたので、ありったけの言葉を次々と それでも選びながらトモキへ言った。

はっきりと否定する・・・返るトモキの言葉・・・それは やはり勘違いという場所にあった。
それを理解させる言葉が多く出てこないと戸惑った。

タケルやハルトまで部屋から出てきて声にしたが・・・大好きだから・・・それは愛情で一番ハヅキが好きだから恋人だと言いきったトモキだった。


静かに部屋へ入り込んだトモキの様子を眺め、迷ったが今しておかないととハヅキを呼び出した。
話した内容を伝えるとハヅキは謝りトモキの部屋へと入り込んだ。

『トモキ・・・』
『僕・・・僕は・・・僕の気持ちは恋人の愛情じゃないって・・・ほんと?』
『ん・・・違う』

『一緒にいたいし、顔見て嬉しいし、ハヅキちゃんを助けたいし・・・隣で一緒に笑いたいし・・・
ハヅキちゃんとなら全部が嬉しくて楽しいんだよ?』
『ありがとね(笑)』

『家族にも?』
『(笑)思う・・・キッチンの中は危険だから怪我してないか気になる。
火傷とかしてないか大丈夫か気になる。誰かに拐われてないか心配もする・・・何かに不安で泣いてないかと気にもなる・・・』

『それ・・・僕達?』
『そ(笑)、私の弟達だから・・・』
『レン兄は?』
『(笑)気になる。凶暴な犯人がいたら怪我とかさせられてないかとか・・・余った時間は、ちゃんと休憩してるかとか・・・』

『同じじゃん・・・』
『だね・・・』
『何が違うの?』
『 ・・・レンがいるから、私は安心出来て・・・弟達の心配が出来る。
レンが笑っててくれるから、自分は大丈夫と前に進めてる(笑)』

『僕は?』
『(笑)大好きな弟・・・トモキが頑張る姿が見れて嬉しい・・・』
『レン兄も頑張るよ?』
『だね・・・(笑)・・・トモキ・・・』
『ん?』
『(笑)大好きよ』
『僕もだ(笑)』

『それより、もっと・・・レンが好きなの・・・』
『僕・・・より?』
『(笑)ごめん』
『僕も大好きなんでしょ?』
『そうよ・・・大事な弟だから・・・』

『 ・・・恋人は?僕と・・・』
『なれない。
んー・・・気持ちって・・・色んな思いかたがあるね(笑)』
『みたいだね・・・
でもさ・・・家族も恋人も・・・嬉しいも悲しいも・・・全部、大事に思えてて・・・同じだよ?』

『 ・・・だね・・・だけど私には少し違う・・・
確かに離れてて心配してる事は同じだと思う・・・』
『でしょ、だから!』
『違う・・・恋人は全部を渡せる・・・全部を貰える・・・相手の為に・・・』

『家族もじゃん・・・』
『ん・・・でも、家族に全部は渡せない・・・心の奥にまで入れるけど・・・その奥に家族は入れない・・・』
『レン兄だけ?・・・レン兄がいるから?』

『出したくない自分が守ってるの・・・それは大事で・・・自分が生きていく為に必要なの・・・』
『僕は必要じゃない?』
『いいえ・・・
トモキも大事・・・ハルトもタケルも大事・・・大好きな弟だから物凄く大事。
レンは・・・私の心を強くしてくれてる・・・だから強く生きれてる』

『家族・・・僕にも出来るよね?』
『 ・・・最後の最後は無理・・・それはハルト達でも、アキ達でも無理・・・』
『一緒にいるのに・・・』

『そうだね・・・だけど家族でも・・・家族って近さだけど出来ない。
ずっと先まで一緒・・・それは家族も恋人も出来るけど・・・』
『一番大好きな人が居るから頑張れる・・・家族の愛よりも深くて・・・』

『トモキ?』
『(笑)ハヅキちゃんが離れてた時もレン兄は大丈夫だった・・・寂しいのに・・・大丈夫だった。
いつの間にか分からないけど・・・レン兄は隣にハヅキちゃんが居る感じにみえた。

寂しいって気持ちが沸くと頑張ってたら戻るって・・・僕に行ってた・・・。
帰ってきたら何を話す?って・・・心は繋がってるから大丈夫なんだぞって・・・』

『 ・・・そっか』
『皆は大丈夫かって事だけ心配してた・・・でも(笑)レン兄はハヅキちゃんなら頑張ってるから今は自分だって・・・応援してた気がする』

『それは』
『心の奥で一緒に居るから・・・
さっき言った事の意味?そんな意味になる?』

『(笑)離れてたけど、心の奥で守ってくれる姿が見えるから頑張れる。
何処にいても自分は大丈夫・・・相手の幸せを夢見る事が出来てるから・・・寂しいけど平気・・・
だけど家族は心配だらけ・・・同じように幸せを祈るけど・・・離れて寂しいって気持ちになるけど・・・不安で・・・悲しくなる』

『辛いよね・・・頑張る力の出方が違うって事なんだね・・・家族よりも強く想えるって意味なんだね・・・
みんな大事・・・その中でも一番・・・その人が大事に想えたら、みんなまで大事に出来る・・・(笑)・・・』

『(笑)トモキ・・・』
『 ・・・知らない事が多すぎて・・・(笑)僕は大人になれないね・・・』
『(笑)自信がもてたら頑張れる・・・そこに(笑)もっと強くしてくれる人が現れるよ』

『それはハヅキちゃんだった・・・』
『 ・・・』
『(笑)レン兄も好きだよ・・・それはハヅキちゃんが大事な人だからだね(笑)僕を守ってくれる人って教えてくれたから・・・
僕を好きになってくれたから・・・大人にしてくれるから・・・大事に・・・』

涙を溜めて呟くトモキ・・・優しく頭を撫でるハヅキの手を眺め彼女に寂しそうな笑みで見つめた。

その視線が苦笑いをした・・・ハヅキを背から抱き込んで一緒に優しい眼差しで自分を見つめた事も嬉しかった。

『僕のは家族って気持ちだった・・・
二人で僕を見てる気持ちが嬉しくて・・・心が(笑)ぽかぽかしてくる・・・』
『ハヅキの弟は(笑)俺の弟でもある』

『嬉しい(笑)
レン兄が俺のって・・・いつもいう意味が分かった気がする(笑)。
みんな知ってるけど・・・笑ってるけど・・・とらないけど・・・』

一人小さく呟いていくトモキの言葉と想いに気づくレンもいた。

初恋・・・淡い小さな想いは芽生えていた気がした・・・それは自分の弟でもある・・・可愛い姿だとも思いながら近付いた。

ハヅキごと抱き締めてやりたいと彼女の背へ回りトモキを眺めた。
その悲し気な目で気づいた・・・それでもハヅキには弟で家族の一人だ・・・勘違いでもない淡い恋心は止めたい。

少しずつ大人へ向かうトモキに自分は何が出来るかと考える自分に気づく・・・血は繋がらないがトモキは自分の家族という近さまであった事も嬉しくなった。

『ハヅキちゃんを泣かせないでよ?』
ふとレンを見ながら呟くトモキに苦笑いだった・・・

『しない(笑)。トモキも大好きだぞ』
『僕もだよ(笑)』
『ハヅキは俺のだ(笑)』
『(笑)レン兄も僕の家族だよ』

『良かった(笑)、ずっとだから頑張ろうな・・・』
『見ててくれる?』
『(笑)家族だし』
当然と微笑んだレンに嬉しくて、トモキが笑みを浮かべた。

『僕ね・・・』
声にして押し黙るトモキに驚いたが、それは自分の中で少しずつ解決出来そうな雰囲気だと気づく二人は静かに笑みながら声をまった。

『(笑)も少し考えてから言っていい?』
『(笑)待ってるね』
分かったと頷く二人に笑み返した。
布団へ潜り込み二人へ小さな笑みを残し、トモキは寝ると言いたげに静かに目を閉じたのだった。

ホッとしたハヅキ・・・自分を強く抱き締めたレンの腕に触れた彼女もいた。



かごのとり 52

2018-11-23 00:44:07 | かごのとり

仲間達が声もでず驚くだけだった。
滅多に女性と飲まない深谷・・・今迄にみない姿に驚いて席へ座る。

先に飲んでいたという笑みで自分達へ視線を向ける・・・笑み返すと、いつもなら自分達の席へ来て一緒に飲み始めるのに今回は今の場所から動かず、その空間へ戻っていった。

自然な笑み・・・いつもの意気込む楽し気な深谷の笑みがなかった事で余計に なんだと驚きながら 彼から離れた場所の席へ座った仲間もいた。

『落ち着いた男に(笑)見える事もあるんだな・・・』
『二人で飲んでる姿も(笑)新鮮だよな』
『(笑)あの顔は、チャレンジ顔じゃないぞ?』

『確かに(笑)。普通に楽しく飲んでる顔だよな・・・(笑)あれ』
『(笑)な。素の深谷が普通に女性と飲んでる姿は初めてみる(笑・・・』
『ん?』

『マリナさんだよな(笑)。彼女も楽しそうだ・・・』
『(笑)初めて見るな、彼女が男と飲んでるって・・・』
『あー確かに(笑)。大体は、ここの子達か・・・(笑)ヤツだな』

『それでも(笑)、彼女は酔っぱらってるし・・・あれは(笑)ダチ扱いだな』
『女性の友達って(笑)居たか?』
『あー(笑)ない・・・』
『(笑)深谷が持ち帰りしてない状態って・・・初めて見た気がするぞ・・・』
そうだったと誰もが思った・・・

自分からも宣言するように声にもしていた・・・飲む相手は ソレ込みの女性なんだと。

だからか、ほろ酔いになれば連れ出して行く・・・その状態の女が可愛いと・・・何より どんな女かも分かるからと飲ませる深谷のはずだった。

今・・・一緒に飲んでいる彼女は、深谷が連れ出す状態よりも酔っていたが・・・何よりレンの親友でもある・・・そして深谷の飲みは・・・楽し気でペースは緩やか・・・そう見てとれた。

観察されているのだと、気づいたのだろうマリナは声にしているようで 笑いながら深谷が振り向いた。

その顔に笑い・・・違いに照れた笑みになった。
『おっ?(笑)弾けてない・・・』
『(笑)これはマジって事か?』
『俺もそう思う(笑)。照れてる顔だろ・・・あれ・・・』

『彼女の指さしは俺らに?』
『(笑)視線を止めろ?』
そうだと頷く人に笑み、それでも眺め微笑む姿は自分達でも可笑しいと分かるのか静かに苦笑いをしてグラスを傾けるのだった。

『(笑)いい雰囲気だ・・・』
誰かの呟きに軽く頷く人達もいた・・・楽しめと深谷に笑み返す彼らだった。


ようやくレンと穂隅が仕事を終えて帰ってきた・・・奥から慌てるように出てきたハルトの姿も見え何事かと笑う。

それでも自分の姿は誰かから隠したいのか不審な動きになっていて甲ヶ崎達が笑った。

誰かへ視線を向け様子を見ているのか探るように眺めては進むハルトが可愛くて大人達が眺める。
気付いたのか笑っているレン達もいて可笑しかった。

やっと二人へ辿り着いたが、少し驚いた顔になるレン・・・少しずつ笑い始めたがハルトが慌て二人の間へ挟まり何処かへ連れ出していった。

『(笑)何だ?あれは何でだ?』
意味が分からず不審な動きを見せる子達・・・
『誰に(笑)見つからないようにだ?』
笑いながら呟く大人が一人・・・

『内緒話がしたいんだろ(笑)』
『二人に?(笑)』
『どんな相談だよ(笑)レンが解決する?』
『ま、穂隅(笑)居るし』
『何とかなんだろ(笑)』
確かにと飲みながら話す人達に苦笑いだった・・・

深谷が笑みながら来た事に皆で笑いながら出迎えた。
甲ヶ崎が深谷へ乾杯とグラスを差し出す・・・・笑う深谷は手にしていたグラスで応え空いた椅子へ座り込んだ。

『(笑)いったん休憩か?』
『店を閉めに行った(笑)。カフェは終了だってさ。邪魔してたみたいだ・・・』
『どんな話を(笑)してる?』
『カフェ(笑)。あとはスイーツ関係とか・・・・・・(笑)・・・』

『意外と好きだもんな。カフェって場所』
『まーな(笑)。彼女の知識が深くて驚いたから、余計に聞いてたんだ』
『(笑)へぇ・・・』
そうなのかという皆の呟きに苦笑いをした深谷が飲み込んだ。

『 ・・・』
押し黙る・・・酔えば陽気になる深谷は今まで見た事もない状態になり皆は驚くしかない。
何だどうしたと様子を見ながら観察する姿に深谷も気づき苦笑いをした。

『(笑)不思議と言いたいんだろ・・・
ダチの一人・・・そっから出すなと念を押された・・・』
『 ・・・』
一人呟く・・・少しずつ、その声音は残念そうな声になり驚いた・・・無意識にだろう深谷の視線はマリナへ向いていた。

視線を辿れば片付けを手伝うハヅキに抱き付き、笑みながら話をしているようにも見えた。

羨ましそうな深谷の笑み・・・不意に苦笑いをした深谷が静かに酒を飲み込んだ事で彼の本当の気持ちに気付いた仲間達だった。

甲ヶ崎が苦笑いをしつつ深谷の肩を優しく叩く・・・それからは静かに飲み始めるのだった。


『酔いすぎ(笑)』
邪魔だとマリナをカウンター席に座らせると、水をくんで目の前に置いた。

カウンターの中へ入り片していく・・・洗い物だと奥へ運び早々に店じまいと支度をした。

レジを閉める・・・いつもはマリナがするが、ハルトが迷いながら始めた。
優しく眺めるハヅキ・・・ハルトを手伝いながら終わらせ二人は先に返した。

場所を移動させカフェを閉める・・・全ての流れをマリナは見ていた・・・
終わったとマリナを眺めたハヅキに、礼を言いながら抱き付く・・・

『(笑)・・・お願い・・・』
『出来ない(笑)。そこにいるレンが悲しむから』
直ぐに自分を離してハヅキは別に座り直した事に苦笑いするマリナもいた・・・

いつもなら、マリナが好きな彼女が飲みに来て一緒に帰る曜日だった・・・なのに最近は深谷と飲んでいて気になってはいたのだ。

『私・・・・』
『別れたの?』
『ふられちゃった・・・というか、私が拒否する回数が増えてたから・・・』
『浮気されて?』
『ん・・・待てなくてって・・・』

『そっか・・・』
『そっかじゃない・・・
今はね・・・流されそうで怖い・・・
私ね・・・話をしてて楽な人もいるって初めて知ったの・・・』

悲しそうに呟くマリナの声にハヅキは黙って聞く事にした。
奥ばった席に移動しマリナを座らせ眺めた。

『隣に座ってくれないのね・・・理由は分かるけど・・・』
『ごめん、そこは私が座るべき場所でもない・・・』
『 ・・・』
グッと口を結び手で顔を覆ったマリナを優しく見返すハヅキもいた。

『酔うとさ・・・女なら友達感覚で近くても平気だけど男は嫌だった。
だけどね・・・嫌悪感が沸かない人が現れた・・・何度か一緒に飲んで試してみてたの・・・』
『大丈夫だった・・・・?』

『不思議よね・・・私へ触れてくる手も拒否反応は無くて(笑)自分が可笑しい・・・今の私は人肌が恋しいのかな。
それでも違うと止めれば先へ進まないから・・・なんかホッとして一緒に飲めたの』

『それ・・・』
『(笑)声にしないで』
『 ・・・』
『(笑)一番近くなった時に寝ないと言ったわ・・・友達だからって・・・
それからは話す楽しみだけを味わってる・・・』

『たり・・・』
『ん・・・物足りない自分は知れた・・・だけど利用もしたくないし出来ない・・・・』
『怖い?』

『無理だもん、きっと・・・途中で拒否したら・・・
それは試せないよ・・・男となんて・・・』
そう呟くマリナ・・・それでも今までのマリナの拒否した物言いとは違っていた事に驚いた。

本当に心から嫌だと呟くマリナでもなかったからだ。
深谷と一緒に飲む姿は何度か見かけた事はある・・・最初はトモキも交ざっていた・・・

二人で泥酔という事もあったが仲良さげに互いに楽しかったと帰っていく・・・本当に友人の一人・・・そんな関係にも思えたが、今の話で より近くなってきた事に戸惑っている気もした。

それでも声に出来ない・・・二人ともに女を求める場所にいるから・・・
深谷も多少知るハヅキだが、彼のマリナを見る目は近い・・・友人の一人・・・そういう目でもない気も最近になってからだが気付いた。

ハヅキからは背は押せない気もした・・・互いの志向は違う気もするから・・・マリナが一人の男性として見るのは友達なのか異性なのか分からなかった。

今の会話から・・・意識し始めている気はしたが女性を求めるマリナの心は戸惑っている・・・その理由に自分で気付かなければ解決もしない。

マリナ自身を大事に・・・幸せにしてくれるなら、それが男でも・・・女でも構わないと思えた。

マリナ自身が答えを見つけなければとハヅキは自分の声を止め 考えていけと願った。


不意に立ち上がる深谷に驚いた・・・その視線を辿ればハヅキとマリナが居た席だった。
穂隅が気付く・・・そっと早瀬へ目配せ促して・・・二人は席を離れ話を始めた。

『彼女さ・・・』
『マリナさん?』
『ん・・・彼女は俺と同じだ』
『ん?』
『 ・・・前に・・・彼女が初めて来た頃・・・ハヅキに抱き着いてたろ』

『 ・・・妹のようなじゃなくて?そっそんな意味だった?』
その頃を思い出しながら呟く早瀬の言葉に頷く穂隅もいた。

『たぶん・・・ハヅキを取られるヤキモチは本物だったんじゃ?』
『 ・・・あれは?』
『分かんねーよ(笑)。それでも男性と飲んでる姿も見てない・・・それに彼女から男性という声を聞いた事もない・・・
だから、これは俺の想像でもあるが・・・・彼女の恋人になる人は・・・』

『女性だった・・・か?』
『彼女はハヅキが好きだった・・・』
『深谷・・・』
『知らないだろ・・・俺達から教える事も駄目だ・・・あれは互いに話してかないと・・・』

『深谷がやっと本命そうな子と会えたのに・・・あれはマジだろ・・・昔と似てるし』
『だよな・・・
最近は(笑)、誘い込む事もしてないだろ・・・飲みに出るとココだったし』

『あー確かに・・・朝帰りも女の気配もない・・・』
だよなと二人で深谷を眺めれば、行くに行けずに椅子へ座らせる仲間の姿はあった。
心配そうな顔・・・その顔つきで本当に彼女を愛したのだと思えた。

『今回ばかりは押せない・・・それをしたら繋がりは絶対に消える気がする・・・・』
穂隅の呟きに確かにと思えた・・・涙を払う仕草・・・それを見ている深谷の口は強く結ばれた気もした。

『ハヅキに彼女の気持ちを聞きたいが、合図もないから・・・これは黙れだよな・・・』
『たぶんな・・・見守る事にしたのかも・・・』
『って事は深谷に揺れてる?』
『ん? ・・・』

『体は女へでも気持ちが深谷にって・・・・』
『 ・・・』
『(笑)性別じゃなくてさ・・・深谷という人が気になる・・・みたいな』

『 ・・・あー。深谷が気になる・・・それが男だった事の戸惑い・・・か・・・』
『そ・・・』
『 ・・・穂隅は?そんな気持ち・・・・ごめん』

気持ちを持った事はあるのかと聞きたくて声にしたが、それを聞く違和感がおき それは偏見という言葉にもなったかと気になり言葉を止める早瀬だった。

『 ・・・(笑)性別が違う・・・か・・・
感情は抜きにして、レンには悪いがハヅキに違和感はない』
『かっ感情が交ざったら?』
『 ・・・』
早瀬の言葉に驚く穂隅は、彼の驚いた顔が可笑しくて笑うのだった。

『近い存在でいうなら(笑)親友のような感情に近い。恋愛でもない』
聞いていた早瀬のホッとした顔に笑う穂隅もいた。

『受け止める彼女の大きさに惚れても(笑)それは恋愛という場所には向けてない。レンの恋人って知ってるし』
『ごっごめん・・・』

『(笑)気にすんな。
それより、俺はないが好きになった相手の性別が変われば・・・それは戸惑いしかない。
嫌悪感がない違和感が彼女に起きてるとか・・・』
じゃないかと二人で眺めながら言った。

『それは恐怖みたいに怖い事か?・・・親友とか・・・そのへんの気持ちよりも強くなった・・・から・・・』
『分からないよな・・・俺もお前も体験してないし』

『だよな・・・
あー深谷を持ち上げんの・・・どーしてやる?』
『(笑)深谷がどうしたいかだよな・・・失恋覚悟で押してくか・・・親友という場所の近さまで運ばせてから始める・・・とか・・・』

『逃げられる前に関係が近いなら次に持ってけるよな(笑)』
だよなと笑う早瀬に確かにと頷く穂隅・・・頑張るかと笑みあい二人は席へ戻ったのだった。


テーブルへ顔を伏せ静かに自分の感情を落ち着かせるマリナ・・・
『(笑)今まで話してた事より、もっと広く話してみたら?』
『 ・・・』

『まずは仲良しの友達になる過程を体験してく(笑)。マリナが友達を作る時みたいに・・・』
『だって ・・・』
『(笑)たまたま男性だっただけよ。男性の友達を作ってみたら?嫌じゃない(笑)その人から・・・』
『 ・・・』

『相手を知ったら・・・今度は自分がどうしたいか考えてみる(笑)』
『優しい話し方だから錯覚してるのかも・・・』
『そうじゃない違和感が出来てるんだから体験って(笑)進んでみたら?』

『 ・・・彼は・・・嫌がらないかな』
『(笑)知らない。誰かも知らないし』
『意地悪ね(笑)』
少しずつ、いつものマリナへ戻ってくる事に笑み声にするハヅキ・・・

『元気ないマリナはみたくない(笑)。マリナが幸せな場所・・・それは何処か探したいのに・・・怖いって言われたら探せないのよ・・・何が怖いか分からないから』

『黙っててごめん・・・(笑)』
『戸惑いは何で?』
『 ・・・少しドキドキした事・・・ハヅキと一緒にいた頃の気持ちに似てたから・・・
本当に嫌だったのに、それが大丈夫だった違和感・・・それは彼だけなのか・・・何でなのか・・・』

『(笑)たくさん話をしてたから、知らない間に友達って場所まで知り合ってたんじゃない?』
『 ・・・気付いてなくて、知った時には物凄く近かったから?・・・かな』
『あー・・・確かに(笑)そんな感じ』
『 ・・・』

『(笑)マリナは無意識にでも考えてるじゃん・・・
もしかして、違和感が起こっても(笑)違うって考えを止めてたんじゃない?話が楽しくて(笑)』

『(笑)聞いてくれるから・・・ついつい話し込んじゃってた。その時間は楽しくて・・・お酒も美味しくて・・・』
『それを続けてみたら(笑)何か分かる気もするけど・・・それも嫌?』

『んーへんに自覚してきて怖くなったから・・・彼は男だったって・・・』
『それ(笑)差別よね。そうじゃなくて、その人との時間を楽しんでよ(笑)性別は意識しないで・・・』

『 ・・・普通に話したい気持ちはあるの・・・何で意識し始めたか分からないけど・・・』
『(笑)怖くない。友達になったら親友になってくだけよ・・・互いに自分を深く知ってく一歩・・・それだけ・・・』

『 ・・・』
『無理そう?なら(笑)これ以上プッシュしないでおこうかな・・・』
『えっ・・・』
『マリナが辛くなるのは嫌だもん(笑)』

『 ・・・辛くはないのよ・・・たぶん』
『 ・・・』
『コウヤ達は平気なんだけどね・・・』
『(笑)そっちは家族の場所じゃない・・・こっちは友達の場所よ?』

『確かにね・・・も少し近い友達になってみようかな。男だけど気にしないで(笑)深谷って一人の人と・・・あ・・・』
隠していた誰か・・・その名を思わず言ってしまった自分に苦笑いだ。

『(笑)黙っとく』
『頼んだ(笑)』
『(笑)根はいい人だもんね。自分を持ってるから・・・
軽そうだけど本音は違ってる気がする』

『優しいよ(笑)話し方も相手に合わせてるし・・・私にも合わせてくれるから楽だったの』
『親友になれたら(笑)少し楽になって・・・マリナも頑張れるね(笑)』
『(笑)・・・』

何か言いたげで・・・それでも声にしなかったマリナに笑み返した・・・
いつの間にか視線が自分から外れ誰かへ向かっていた事には気付いた。

本当に無意識にだろうが、微かに芽生え始めたマリナの変化は始まるのだと思えた。

それはマリナの幸せへ向かっている事を願った・・・その先の心配はその時に皆で考えればいいと余計な思いは押し込んだ。

笑みの優しさに微笑む・・・早く家へ戻れと声をかけたハヅキはマリナが座る席から離れたのだった。



かごのとり 51

2018-11-22 00:39:48 | かごのとり

トモキの言動にホッとした日から暫くしたある日・・・

その音に覚えがあるハヅキは項垂れるように玄関へ歩いた。

チャイムとドアを叩く音・・・それは優しく叩かれてはいたが、寝ていたハヅキには辛く・・・音が止まったかと思えば今度はチャイムと繰り返されていた・・・

いつかの出来事を思い出し始めた・・・壁に片手をついてドアを開けてみれば・・・その記憶にもいたトモキが泣きなから立っていた。

『どした?』
『 ・・・』
ハヅキの声に余計に泣き出したトモキは、彼女に抱き着いてまで泣き崩れた。

適度な量で飲んだハヅキだったが、二日酔いも混ざるのか体は怠く・・・久しぶりの休日は爆睡してしまおうと思っていた。

叩き起こされた・・・その眠りから出された自分も可笑しくて笑う彼女だった。

地団駄を踏むように・・・それは何かを我慢しているように・・・トモキはジッとしていられないのか、いきなり両手をズボンの中へいれてしまった。

驚いた・・・眠気の取れない中で何が起きたのかと思え・・・その状態を眺めればトモキの世界へ入っていた。

それでも場所が場所だけにと、止めようとトモキの両手があるだろう場所へ手を運ぶ。

ズボンの上からだが、押さえ付けた・・・体が震え・・・ビクつき・・・力なく床へ腰が抜けたように滑り落ちた。

項垂れたトモキに呆れ・・・何となく察しはついたハヅキが目の前に腰をおろして見返した。

恥ずかしいのか、視線を合わせないトモキに口を引く・・・
『イケなかったわけ?』
そうだと頷くトモキ・・・うつ向いた状態だった・・・

『変だなって起きたら・・・』
『触ったわけだ・・・』
『ん、だけど少しずつ・・・やり方を思い出したけど・・・それ以上・・・
怖くて・・・ハヅキちゃん思い出したから・・・・』

『スッキリしたの?』
『ん・・・ごめんなさい・・・』
『(笑)シャワーしな。着替え持ってくから』
『はい・・・』
照れた笑みに口を引くとトモキはバスルーム、ハヅキは寝室へ戻った。



塞がれた唇・・・驚き見返せばレンだった事にホッとしたハヅキが苦笑いをする。

ソファーで眠るハヅキにホッとしたレン・・・背凭れへ身を預ける姿があった。

帰ってくればトモキのスニーカーがあり、客間を覗くと寝ていたトモキがいたが その姿に驚いた。
裾が捲り上がった状態・・・それは下着もなく・・・露な姿に焦った。

それはないと思いながらも自分の心臓は高鳴り中で音は響き始めた。
戸惑うようにリビングへ向かう・・・ソコを抜ければ寝室があるからだ・・・

手前にあるソファーで眠るハヅキは、座った状態で背凭れへ身を預け天井を見上げながら目を閉じていた。

顔を覗く・・・起きていたら分かるのに目を開けない・・・思わず彼女の唇へキスを落とした。

笑み返されハヅキを見つめ直し、そっと頬へ触れ優しく唇で触れる。
その手を項へ滑らせ離すなと押さえ付けた。
絡ませあとを追う・・・自分の気持ちに気づいたのか彼女は腕を回した。


『(笑)お帰り』
『 ・・・ただいま・・・起こしてごめん』
『いいの・・・トモキに起こされたし』
『 ・・・何があった?』
『起きたトモキが自分でね・・・無理だったらしくて怖くて来たの(笑)
玄関で我慢出来なくて、余計に自分で始めて・・・』

『 ・・・風呂?』
そうだと苦笑いをして頷くハヅキ・・・隣へ座り直して彼女を抱き込んだ。
『いくらなんでも・・・』

『(笑)服は着てたけどな・・・けつが丸だしだった・・・(笑)マジで焦ったぞ』
可笑しいと笑う彼女にキスをして胸元へ押さえ付けた。

『バスルームに行かせようと思って、トモキの手を止めたら終わり・・・
もー驚くより呆れた・・・何なんだって感じよ・・・
下手したら犯罪って場所に自分から行きそうで怖い・・・』

『 ・・・それは、自分でしてスッキリしなくて驚いたから来た?』
レンの言葉に、たぶんと呟きながら頷いた・・・

『トモキが助けてって?』
『聞く間に自分で始めちゃった・・・それでも恥ずかしかったのか私の顔も見なかったわ』

『だから風呂・・・』
『もー眠くて・・・着替えたから部屋で寝かせたの。
自分で・・・出せないって・・・ちゃんと覚えてないのかな・・・』
『んー・・・・』
考え始めたレンに笑み、寝ると寝室へ向かうハヅキだった。



室内に綺麗に響く誰かの声音に、また起こされたと身を起こし目が覚めて始める。
ボーっとした感覚は静かに引いていく・・・少しずつ・・・慌てるような・・・唸るような、そんな声音が聞こえてきた。

それでも騒ぐような声音もあり、何だとリビングへ出てみれば・・・その音の出所はバスルームだった事に苦笑いだった。

時々、聞こえる笑い声はレンと分かり・・・それ以上、声は出すなと呟けば辛そうな声音が謝り唸る・・・

分かったというトモキの元気な声に、ハヅキは項垂れる・・・そして念をおす声・・・必要以上にするなと・・・

性教育だったかと、聞いていると疲れそうだと ハヅキは水を持って寝室へ戻るのだった。


戻ったレンが彼女を抱き込み眠り始めた・・・
『(笑)サンキュ』
『起こしたか・・・ごめん』
『 ・・・』
『(笑)聞きたいか?』

『 ・・・必要なの?』
驚いた顔の彼女に苦笑いをした彼が話し出す。
『(笑)完全に思春期突入・・・そこはタケルとハルトへ回した』

『聞けって?』
『ん・・・恥ずかしいけど聞けって声にしてから話せ・・・(笑)そう言ってみた』
『 ・・・』

『(笑)誰かの手を想像する・・・男の手、女の手じゃなくて(笑)手だけ・・・触られてる手・・・それだけにって・・・あとは想像・・・とか』
『(笑)して見せたわけ?』
『してない(笑)。触らずに手だけ見せた・・・トモキは自分のでな・・・
あーまいった・・・』

本当に思うのだろう・ ・疲れたと苦笑いをする彼にキスをして、彼女は新たな眠りへ入り込むのだった。

男の子の思春期の想像が分からない・・・それは何処までと思えるが、大人でもなく子供でもない状態・・・今の言動から教えられず、出してもやれない。

自分はとも言えない・・・それは考える間も自分は貰えず・・・生きる為だけに、その歳は素早く通り過ぎていた気がするから。

睡魔が来ない・・・それでも彼を休ませたいと、彼は話していたが目を閉じた。

静かな室内になり、そっと眠る彼に笑み返しホッとした・・・トモキに付き合い教えたろう事に口を引いた。

それで、収まるなら助かると思えたが・・・ハルトには無かった事が次々と起こる・・・
よく考えればと苦笑いだ・・・トモキは声にする・・・レンから言われた事を実行しそうだとも思える。

それは似た歳の子達だ・・・ 幼さが残るトモキの言動に何れだけ向き合えるか不安はあった。

タケルとハルトは、レンと杉原へ声にするのかと・・・恥ずかしさが沸く自分から言わない気もしたが、そこは男同士という場所へ預けようと彼女は放ったのだった。



数日後・・・・

なにやら密談が始まったが・・・アキと知らぬを通し日々を流した彼女達だった・・・