※
深谷の頑張りにホッとしたハヅキ・・・アキ達へ構わずと声にしてマリナの様子を見守る日々になった。
戸惑いは和らぎ始めた気もした・・・そして同じ現実の壁が聳えた。
マリナから言ってみれば、確かにと呟けど翌日からも深谷の態度は変わらなかった事に余計に戸惑う彼女もいた。
それでも自分の気持ちが大事だろうと呟く深谷への思いはマリナへ静かに染み込んでいくような気がした。
柔らかな笑み・・・本来の彼女だろう笑みは増え、コウヤの声が背中を押す。
『もといた自分達の場所だから気にするな・・・そんな中で育ってきたろ。
刑務所に入らなくても一般からしたら敬遠される場所で暮らしてた。
諦められたら(笑)戻って・・・少し休んでから出てく事もできんだぞ・・・
取り合えず気にもしねぇなら入って確認してこい(笑)、兄貴達が邪魔しそうなら助けてやる・・・』
『 ・・・コウヤ』
『なんだよ(笑)。俺に怒鳴り散らしてたマリナは?どこ行った?』
『 ・・・(笑)』
『ここはさ、少しずつ軌道に乗り始めた(笑)。他のは撤退して削ったが、一本で出来そうな状態に近い(笑)。
お前の経営も上手い(笑)、だからさ・・・少し・・・自分の為の時間って、使って生きてみろよ』
『それでいい?本当に私は・・・』
『(笑)どう生きて行きたいか・・・いつかの夢だった事は実現したろ?
そこをガキを育てる意味で任せて自分の為にしてみろ。
無理なら助けてやる(笑)、ここで生きれた礼はする』
優しい声音で言ったコウヤに笑み返すマリナだった。
すっと運ばれた料理に目を落とし、誰が運んだと見上げれば・・・優しい眼差しで自分達を見ていたハヅキがいた。
二人には嬉しくて・・・恥ずかしくて・・・
照れた笑みの二人が可愛いと微笑んだハヅキ。
『大人になってきてる事が不思議と嬉しいのよね(笑)』
『(笑)弟じゃねぇ』『友達だもん』
揃って自分達はハヅキの弟や妹ではないと声にして拒否した・・・これも可愛いと笑み返すハヅキもいた。
『自分を生きるって(笑)大変だけど・・・家族って仲間がいたら・・・辛さも(笑)悲しさも・・・一瞬でも離して楽にしてくれるよね・・・
それだけで息も吸えて(笑)先へ生きて行けるって頑張れるよね。
困ったら(笑)みんなで解決してけるから・・・だから前に足を進めてみたら?(笑)二人が笑える先は絶対ある・・・私が見つけられたんだから・・・大丈夫と信じて歩きな(笑)』
『 ・・・』
温かな感情がわく・・・そんな気もした・・・声にしなくても分かってくれる人達の中に居たと改めて思えた二人だった。
ハヅキを背から抱くレン・・・その手が彼女を包み込んだ。
大事と包まれたレンの手を二人は笑みながら見つめた・・・
慌てるように静かに来た深谷が、腰を下ろしてマリナを心配そうに眺めた事にコウヤが苦笑いをした。
静かに離れ帰っていくコウヤに笑み、見送ったのはハヅキだった。
優しい眼差しで見送られる事に苦笑いをしながらコウヤが歩く。
抱き込むレンの笑みも不思議と自分へ優しく見ていた事に照れた。
見守る・・・そんな眼差しの気もした・・・子供のような気もしたが、それは嬉しくもあり苦笑いだった・・・
恋敵・・・そう思っていた自分・・・それでも取られた気もしない自分だった事に苦笑いだった。
自分の兄貴とは違う優しさが分かる・・・親のような温かさといえば、これが当てはまるのかと笑みを浮かべた。
実家よりも居心地がよく・・・そこに居るだけでホッとした場所だと改めて思える自分に笑うのだった。
心配している深谷に驚くマリナは彼を見返した・・・その理由に気づけば苦笑いだった。
嬉しくて溢れた涙・・・それを優しく払う深谷の手で気づいたのだ。
自分へ向ける想いが温かいと穏やかになる自分の気持ちは心地いいのだと思えた。
『深谷(笑)、マリナを隠せよ・・・
どっかで話し合ってこい(笑)ちゃんと、全部の気持ちを言ってこい』
『マリナもね(笑)。自分の気持ちを正直に・・・分からない事も、その理由も・・・全部を・・・』
『『 ・・・(笑)』』
『深谷は焦んな(笑)、ゆっくり・・・』
分かったと頷く深谷は彼女を立たせ手を繋ぐと・・・照れながらレンへ手を伸ばした。
鍵・・・声にしない深谷が苦笑いをしながら呟いた。
驚くしかないレンに笑うハヅキは自分の鍵を彼の手に押し込んだ。
サンキュと照れた笑みは驚いているマリナを連れ出して行った。
『あーハヅキさん・・・仕事あがりで俺はクタクタなんですが(笑)』
『も少ししたら上がれるから(笑)デートしよ』
『(笑)久しぶりだ・・・』
『待てる?』
『待つ(笑)』
ならそこでと促したハヅキにキスをしたレンは端奥にある席へ向かったのだった。
静かな空間・・・二人で手を繋ぎ、ゆっくりと足を進める。
『気になるよな・・・』
『(笑)レンの頭から出しといて』
『 ・・・(笑)』
ジッと自分を見つめながら呟くハヅキの声に、前にもあった会話だと笑み返した。
『全部にハヅキという膜で出来てるから大丈夫なんだ(笑)
スッて消えてく・・・ハヅキもだろ(笑)レンという膜で俺を感じてるだろ』
『(笑)レンに染まってるからね』
『 ・・・(笑)』
聞きながら不意に止まるレンに笑う・・・照れた笑みは近づき口付けた。
『レン(笑)、ここは外だった・・・』
『待てなかった(笑)』
彼女の服の裾から入り込むレンの手に気づき呟く・・・抱き込んで両脇へ巻き込む手に苦笑いだった。
『戻って・・・ん、戻るぞ(笑)、邪魔しないように静かに入ればいいだけだ・・・(笑)』
『(笑)出きるの?』
『すんだよ(笑)。どうせ・・・』
『 ・・・』
『あー・・・・(笑)今の俺と同じ気がする・・・し・・・』
『恋しいわけだ(笑)』
『(笑)一番近いからだ!』
『 ・・・』
『(笑)まだ照れる?』
『先が分かるから(笑)』
『同じだろ(笑)・・・・・・だっ・・・』
悪戯な目でハヅキに言ったレンだったが・・・同じ目になるハヅキを見つめた。
その恋しい彼女の手が自分へ向かっていた・・・声が漏れたが間に合わず・・・少しずつ照れたレンだった。
『(笑)待てと伝えてくれ』
触れている手が返事をすれば、微かな唸りに耐え笑みを溢したレン。
グッと耐えた彼はハヅキの手を繋ぐと指先まで絡ませながら急かすように歩き始めたのだった。
ドキドキは止まらなかった・・・静かに入り込む二人・・・それでも帰ったと内鍵をする音を出し、いいかと冷静に客室の前を通り過ぎた。
玄関にある二人の靴に微笑むハヅキを眺める・・・それから中へ入り込むのだった。
驚いたハヅキに、ほらなと笑いながら二人で身綺麗にする。
既に使われたバスルームの状態に笑みながらレンは急かした。
気の合う仲間・・・それは心から思う人との時間まで同じなのかと苦笑いしかでなかったハヅキだった。
朝になり・・・慌てながらも激しくドアを叩くレン・・・
『仕事だぞ!早く出てこい』
その声に反応したのか、中でドタバタと慌てる音や笑っているのだろう音が始まった。
『穂隅が迎えに来てくれてるから早くしろ!』
玄関へ向かうレンの声に、勢いよく開いたドアから身を整えながら出てきた深谷に笑った。
急に振り向き照れながらハヅキへ礼をすると、サンキュとレンへ声にした深谷・・・
『行ってらっしゃい(笑)』
ハヅキの声に笑みながら二人は仕事へ向かったのだった。
『(笑)マリナさーん。食べれる?』
『無理・・・アルコールが残ってるの』
『 ・・・』
驚いた・・・話ながら飲んだのかと・・・
ハヅキの様子に苦笑いをしたマリナが彼女の手を引いてソファーへ座り直した。
『どれだけ飲んだ?』
『ごめん(笑)。ちゃんと冷蔵庫に補充するね・・・』
照れた笑みが呟く・・・
『全部(笑)言えたの?』
『酔った弾みって(笑)言い合った・・・言い訳に変えられるからって・・・』
『すっきり?』
『(笑)男としてないって聞いてから物凄い緊張した顔になって・・・(笑)手は止めないくせに本当に大丈夫かって(笑)返事するのが面倒なくらい声にしてた』
『 ・・・』
『 ・・・ ・・・・・(笑)』
思い出したのだろう・・・その時の戸惑う彼女の顔・・・そして恥ずかしそうな笑みに変わり自分から視線を外したと思えば笑みを浮かべたマリナに口を引き微笑んだ。
『それは(笑)はまったわけ?』
『っ!・・・・(笑)』
『(笑)何より』
『 ・・・なんで!』
『幸せって顔になったから(笑)』
声にされて照れたマリナはハヅキから言われ微かに頷き出した。
『彼の気持ち(笑)・・・んー(笑)心が伝わってきた・・・大事って・・・好きって・・・(笑)それが嬉しくて・・・』
『(笑)あったまったわけだ』
そうだと新たな頷きに笑みを浮かべた。
『違和感がなくて何よりだったね(笑)』
『ん・・・怖かった・・・怖かったんだけど大丈夫って(笑)。私を愛した気持ちだけ吹き込むから心配すんなって・・・』
『(笑)マリナの中に染み込んだ?』
『 ・・・(笑)』
『(笑)たっぷり入ったわけね・・・良かった良かった(笑)』
『へへ(笑)・・・』
本当に大丈夫だった自分が嬉しくて・・・そんなマリナの顔にホッとしたハヅキもいた。
『ハヅキ達はさ(笑)話をしながら出来るのね・・・何か楽しそうだったね』
『 ・・・』
驚いた・・・確かに色んな話をしながらだった自分達だった事に今更ながら思い出していた・・・・それを聞いたのかと・・・
『寝る前に部屋から出たらね(笑)彼が驚いて動けなくて・・・
(笑)一緒に聞いちゃった。ごめんね・・・心配かけて・・・
だからね(笑)レンさんに言っといて・ ・・・ハヅキは取らないよって(笑)』
『おっおっけ(笑)』
『 ・・・(笑)狙われて焦る彼は可愛いね・・・嬉しすぎて(笑)
ま(笑)私も楽しく出来たら最高だから頑張ってみるね』
満面の笑みで声にするマリナに苦笑いしか出なかった・・・・・
二人で帰ってきた彼らに驚き眺めたハヅキ・・・その後ろから笑いながらマリナまで入って来た。
夜食の準備をするマリナだった・・・
『帰る家(笑)間違ってない?』
『(笑)ごめん・・・リフォームしてるから暫く(笑)い?』
『 ・・・』
ハヅキは声に出来なかった・・・なぜなら、それは深谷がココへ通う事にもなる。
苦笑いをしながら断ると言い続けていたレンの理由を知った。
『ごめんってば・・・』
『(笑)おっけ』
ハヅキの声に礼をしたマリナはまた夜食作りへ戻るのだった。
声にせずハヅキへ張り付き、二人を眺めるレン・・・楽し気に話しては食べる二人の姿は目の前に居座った。
可笑しくて押し黙ってレンの観察をする楽し気なハヅキ・・・ムッとした顔に笑い彼の頬へキスをした。
肩へ凭れ、口へ運ばれる料理は我慢して食べているようにもみえた。
『深谷・・・』
『(笑)2~3日頼んだ』
『深谷(笑)』
『俺は我慢して(笑)黙ってやったぞ・・・(笑)俺にも付き合え』
『(笑) ・・・』
二人だけの会話・・・それはどんな事だと声にするマリナに男同士の秘密だとキスをして唇を塞ぐ深谷に呆れるハヅキもいた。
『あー(笑)目の前にピンクの花が咲きだした・・・』
『(笑)眩しくて、鮮やかで(笑)綺麗よね?』
『可愛い(笑)』
『(笑)サンキュ』
返事は深谷がした事に苦笑いだ・・・
『(笑)レン』
『ん?』
『その手はざわざわ(笑)しねぇ? いつもレンは無意識にしてんのか?』
深谷の呟きに何だと眺めれば、視線は自分へじゃなかった事に苦笑いだった。
それはレンが彼女を抱く手だった・・・透けた素材の彼女の服の中へ手は忍び込んでいた・・・片手は彼女の腰へ巻き付け、もう片方は彼女の胸へ張り付けていた。
『あ・・・』
今更ながらに呟くハヅキの声に、耳元でごめんと囁くレンに笑み返した。
『いつもだから気にもしないハヅキだったね(笑)、誰が触ってても拒否しないし・・・』
『まじ?』
『(笑)離せって声にしないで触り返してた・・・驚くから手は離れるし(笑)その隙に逃げてたもんね』
『マリナ(笑)声はヤバいのよ・・・聞いた人が困ると思うけど(笑)深谷さんの手はマリナへ向かうと思うから覚悟しといてよね(笑)』
『ん・・・・』
『私が気づいた場所はどこか(笑)教えといてあげようか?』
『 ・・・(笑)』
『探す楽しみは残したいので(笑)、ずっと後で答え合わせしましょ!』
『了解(笑)』
ハヅキと深谷の会話に驚きマリナとレンが押し黙った・・・それでもとレンが彼女の顔を捕まえ目を合わせた。
『手は俺だけって・・・』
『声だけよ(笑)。私の手はレンのだしね・・・違った?』
『声もやらない(笑)』
『二人に見せたいの?』
これをと視線を流した先に自分の手があった。
その手は彼女の中の服まで捲りあげようとしていた・・・照れながらハヅキのお腹を隠したレンが彼女の目元へキスをして見返した。
『俺だけの空間を貸してるから(笑)深谷は遠慮しとけよ』
『 ・・・』
『(笑)深谷』
『(笑)穂隅に妬かれるよな・・・わりぃ』
『(笑)穂隅は俺を知るから大丈夫だ』
『恩にきる(笑)』
『ん(笑)じゃ片付け頼んだ』
そう言ったレンはハヅキをリビングから連れ出したのだった。