天幕の下で、客と寛いでいると声をかけられた。
『これを聞いて下さいますか?』
手帳を見せて言った人が、彼女へとイヤホンを渡したが・・・・彼女のソバに居た人はイヤホンを、その人へ返しながら
『変えて頂けますか?無理ならスピーカーで・・・・』
そう言った・・・・驚き眺める人達・・・
『聞かれて・・・・』
『ここで、プライバシーも何もないでしょう・・・・
あからさまに客の居る中へ踏み込み、捉える貴方がたの姿に脅され・・・』
『脅しては・・・・』
『警察の方が、大勢の中で取り調べるのでしょ?
身動き出来ない中で・・・他へ聞かれないように配慮など不可能・・・・・
どーぞ、音声を出して下さい』
刑事がジッと彼女を眺めていたが、隣の彼が持つイヤホンに代えスイッチを入れた。
『貴女の見知る全てをお話下さいませんか?』
彼女は男を眺めた・・・・
『これが私の仕業と? よく、調べて頂けました?
口だけは、どーでも言えます(笑)』
言い返した彼女・・・・イヤホンをとった。
『お聴かせ下さい・・・・私は彼女の弁護士でもあります。
聴かせて頂いたら、コピーを頂きます』
『手際がいいですね・・・』
『護衛も兼ねますから常に控えております・・・』
『会長が居ませんでしたが?会わせて頂きたい』
担当も違うのか、それぞれに質問していく刑事達に苦笑いもして眺めた。
『失礼いたします、この方はウチの招待客です。話があるなら我らへ 一言頂けませんか?無礼にも程があります・・・・』
『中の事とは別の件で、彼女に用がありました』
『それでも、ここでなさるのは控えて頂きたい』
『中と関連していますか?』
『客の争いに巻き込まれたのに、貴殿がたは事件へも巻き込むのですか?』
睨むように警察へ言った男・・・・弁護士は制止して
『中身は今回の事では、なさそうです。誰かの差し金と思われますので、私が調べあげましょう』
『それは我らにも、詳細を賜りたく・・・・』
言われた弁護士は呆れ顔だったが彼女へと確認した。
『いいわ、それぞれに言った記憶はあるけど同じ日に言ってはいなかったわ。
盗聴したモノを意図的に繋げたのでしょうね・・・・腕のある方の仕業でしょ?(笑)』
『盗聴と・・・・』
『録音しながら話す内容ではありません・・・・違いますか?』
弁護士は彼女を後ろへひき、刑事から離した。
後から来た男は、彼女を抱き寄せ優しく背を撫でていた。
『俺が掴まえるか?』
『中で何が? もう、行っても?』
『このまま帰ろう・・・疲れただろ』
小さく頷く彼女を抱いたまま、場を離れていった。
止めようとした刑事の行く手を塞ぐ人達・・・・
『早々に解決し、素早く出て行って下さいませんか?』
よく見れば、庭に居たはずの客らは誰一人いなかった事に驚いた。
『貴方は弁護士でしょう・・・・なぜマフィアの中で働きますか?』
『働いてなぞいませんが? 私は彼女のみ警護しておりますから・・・』
『行かれましたよ?』
『刑事さん(笑)話しは逸らさず、コピーを頼みます・・・』
『君も危ないだろう・・・・』
怒りを抑えた声で話す刑事を見つめ
『私達を危険に晒しているのは貴殿方ですよ?
無関係の人 一人に目をつけている・・・利用される気はありません。
早々に解決し出て行って下さい』
弁護士はパソコンを出し、手を刑事へと出したのだった。
車に戻る途中で、声をかけられた・・・
「なんでココに?」
そう呟く人を見つめた彼女・・・
「君はいつから知り合いだ?」
彼が彼女を引き留めた人を見つめた。
「貴方には関係ないわ、サラ・・・」
「・・・・・確かに私の名だけど、貴女を知らないわ(笑) どんな関係?」
「知らないなら行こう(笑)、増えたら帰れなくなる・・・・」
手を繋ぎ抱き寄せた彼は、彼女を引いて歩き出した。
話を割って引き離した彼に驚いた・・・
「女性よ? (笑)やきもち?」
「違う(笑)帰って寝たいだけだ・・・疲れたしな・・・・」
「そ?(笑)、警察に知り合いが居たのね・・・私」
「警察じゃなくて、学生だった頃かもな・・・・」
「なら・・・話してみたら・・・・」
「近い関係なら、もっと早い段階でサラを探してるさ・・・・きっと違うんだよ」
「そっか(笑)」
彼の腰へ回した腕を掴む彼が、より彼女を抱き寄せて歩くのだった。
引き留めようとした女性に、手下が立ちはだかった。
『警察に用はねぇ』
『二人への手出しは無用・・・』
『あんたは、察の仕事を始めな!』
動きを止めた彼らは諦めた。
『お願いします、話があると伝えて下さいませんか?』
『りょーかい(笑)』
肩越しに手を振ると車へと乗り込んだ・・・・走り出す車を、呆然と眺めていたのだった。
上司に注意された彼女は、屋敷へと歩いていった。
警察らが、忙しなく動いている中で
女性が二人囲われて二階から降りてきていた。
『彼女は大丈夫だった?巻き込まれてなかったの?』
若い方の女性が自分を支えている人へ聞いていた。
『大丈夫だ・・・・さっき帰ったみたいだ。俺たちも帰ろう(笑)ココは暫くは無理だろうから・・・・』
『せっかくサラちゃんと話せると思ったのに・・・・ドレスのお礼もしてないわ・・・・』
『日を改めなさい(笑)、人が死んだらしいわ。
終わったら全て綺麗に直しましょう(笑)貴女が決めなさい』
『お母さん・・・・』
『母さん・・・・暫く彼女と出てるよ・・・母さんもそーしてくれ』
通り過ぎていく人達の中で続く会話・・・・それは一般の中でする会話では無いことに ため息をする彼女だった。
『エリン・・・・』
『・・・・・・もしかして、会えた?』
『確かに本人だった気もするが、俺たちと初対面の顔だった』
『サラだったけど?』
『記憶?』
『ない? なんで、コイツらの中にいるのよ・・・・
囲われて帰っちゃったわよ・・・・
そういえば、いつからの知り合いか聞いてきた・・・・記憶・・・ないなら、どこまで消えてるんだろ・・・・』
『向こうとの接触は?』
『ずっとない・・・・なぜだ・・・・』
仲間が回りを探り始めた・・・・様子を探るように手下らは、あちこちから自分達を監視していた事に苦笑いをしていたのだった。
次々と来る弁護士達へと対応し、場は人でうるさかった。
『あの・・・・貴方はサラの弁護士と聞いてます。
彼女とは昔からの知り合いで・・・会いたいので連絡先を教えて貰えませんか?』
『お断りを・・・・身の危険に晒されてます。まして貴女も警察側のようだ・・・・浅い付き合いでしょう?
彼女も知らないようです』
『なぜ分かりますか?』
ムッとした顔で彼女は聞いた。
『私に伝言はありませんから。
万が一知り合いがいれば、言伝ては必ずあり連絡先を渡しますが・・・・今日は仰ってませんでしたから』
『帰りがけに会ったから・・・・』
『その場合でも、彼女から・・・もしかしたらと連絡は下さいます。
では失礼を致します、仕事がありますから』
『なら貴方から言伝てを頼みます・・・・会いたいと・・・話したいと伝えて下さいませんか?』
名刺を差し出したエリンに、仲間が止めた。
マフィアに身をおく弁護士に、情報を出すなと・・・・
『それでも会いたいから・・・』
止めも空しく、エリンは弁護士へと渡したのだった。