tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

2018-03-22 08:21:05 | 50on 『 ま~ 』
『何事も声に しなさい・・・』

自宅へ帰る早々に、話があると呼び出され奥の襖を開けながら言った人を見上げた。

正座をさせられ仕方なく背筋を伸ばす・・・ジッと見据える祖母の声音は静かに始まった・・・時計を眺め静かにうつ向く・・・

『作文も絵も、貴女の歳なら勉強の1つとして必要だから学校で しなければなりません。
家族という中に貴女も居るのですよ・・・』
『 ・・・』
息継ぎは何処でするのだろう・・・相変わらず区切りなく話すなと考えながら時々聞いてみる。

『確かに・・・貴女が聞いた話なら事実です。それでも今は貴女の母親として一緒に暮らしています・・・立派な母親として・・・。
ですから母親という題を貰ったなら彼女を描き、家族という題があるなら今・・・貴女が一緒に暮らす人達を思い出して書きなさい』

いいですねと何度も念を押す・・・頑張れと笑むだけの祖父・・・テレビを見ながら聞いている姿を眺め、静かに祖母へ視線を戻して床へ視線を落とした。

危なかった・・・立派なと、付け足したように言葉を繋げた祖母の声・・・危うく自分の感情が表へ出そうになった・・・しかも祖母を見てしまった。
自分から外れた目線は一瞬で戻ってくる事に気づく・・・

慣れは凄いと視線だけをはずし、自分の手元へ戻して待った。
物凄い数のため息は繰り返される・・・バレなかったとホッとする・・・時間を知らせる音が始まると、深い息を吐き出す祖母に口を引く。

終ったと思えたが油断はしない・・・諦めずに念を押す祖母へ頷く・・・カンカンカンと頭の中で終わりを告げる。

『宿題をなさい・・・他の成績は大丈夫と聞いてます。父親の顔に泥は塗らず、しっかりなさい』
改めて言われ丁寧に頷く・・・行きなさいと呟かれおずおずと部屋を出たのだった。

宿題を済ませ、静かに自分の部屋を出る・・・裏口を使い彼女は家を出たのだった。



『また(笑)言われたのか?』
自宅から少し離れ、ため息をしていた自分・・・近所に住む女の子の兄、慶吾が通りかかり声をかけてきた。
そうだと頷くと、苦笑いをして やり過ぎたのかと 頭を撫でる姿に項垂れた。

家へ帰るのだろう迷うような顔つきでもあった人に苦笑いを返した。
大丈夫と笑み返し、また優しく頭を撫でた慶吾に微笑んだ。

『仕方ねーよ(笑)。噂は本当だったんだろ?諦めて適当に合わせてろよ。
うっせーババァが繋がりを否定したいんだろ、どうせ。そんなババァだし・・・ほっとけよ。

いつかさ・・・自分で稼げる歳になってから考えろ(笑)その時にスパッと捨てちまえ!
今は、麻季と遊んでこい(笑)』
口を引く・・・確かにと思えたからだ。



足音がする・・・いつもの子・・・そんな自分の思いに笑い、構わずに足を進めた。
暫く眺める景色に、静かに身をおくように佇んだ・・・


いつからか・・・気にも止めずに来たからか 不意に現れ黙って自分に寄り添う子が出来た。
本当に何も言わず、気づけば自分を見ている・・・何だとジッと見ていると照れた笑いで静かに視線を外す。

不思議な子だった・・・
辛くて我慢出来ないが、それでも父親や祖母の その時々に自分へ呟いた声を思い出す・・・耐えろと自分へ言い聞かせていた。

誰かの声に左右され自分じゃない変な気持ちが沸く事が嫌だった。
どうしたら諦め切れるのか、それは本当に出来るのか・・・近所に住む慶吾君の言葉は自分にも理解でき、時おり声にしてくれる事で そうかと納得し自分が楽にはなれていた。

それでも嫌な時はある・・・数日前から始まる祖母の声に、留目のように静かに内緒話かと思える声は、自分の母という立場の人が小さく声にする。

そんな季節と思えば楽なのに、今年は無理だと家から逃げた。
自分を知る人達に笑み返し、気にしないという素振りをする・・・そんな時に限って声をかけられ呼び止められていく・・・思いの外、突き刺さる今回は走り出す自分がいた。

息を切らして駆け上がる・・・ここだけが自分の中で蠢く何かを吐き捨てられる・・・ようやく上がれ、涙を堪えて我慢だとベンチを眺めた。

-まただ・・・-

ベンチに座り景色を眺めている男の子が先に居たのだ。
それでも、その場所でしか想いは吐き出せない自分・・・目があい笑み返すとベンチには座らずに遠くを眺めた姿があった。

『きみ・・・』
『またかよ・・・ここなら平気だろ・・・俺は居るけど、居ないと思え・・・見ないふりをしてやるから』

何度目だろう・・・声にもした事もない胸に刺さる自分の気持ちを出してくれていた子に苦笑いをした。

『きみは・・・』
『笑える力があるなら泣けよ・・・そっちが楽だろ・・・』
不意に言われる間に溢れていく自分の涙・・・手を引かれてベンチに座らされた。

男の子は自分の前に立ち景色だけを眺めていた。

暫くして気持ちもスッキリ出来た自分・・・フゥと吐いた事で気付いたのか隣へ座った。


-まただ・・・-
昔あった記憶は直ぐに思い出し、足が止まる。
気付いたのか、彼が振り向き自分を見返した。

『また、きみだ・・・なんで・・・』
『舞潤が好きだ・・・』
『 ・・・・・へぇ』
『 ・・・(笑)気にすんな』
『 ・・・』
何と言えばと考えるが声にならずに見返していた・・・照れた笑みで見ていた彼は静かに立ち、腕を引いてベンチに座れと促された。

『わざわざ作った笑顔は必要なのか?お前には大事なのか?』
『きみに』
『知らねーよ・・・それが自分って、他はホッとけ・・・』

『 ・・・さっき純弥が、きみを探してたよ?』
『あとで遊ぶ(笑)。気にすんな・・・』
『 ・・・』
『助けろと声に出せよ・・・俺とお前だけの秘密だと気にすんな。我慢しなくていいんだぞ?
声に、わざわざ出さなくても俺を見ろよ・・・助けてやるから』

『きみは嫌じゃない?』
『(笑)ねーよ。俺は気にしない・・・関係ないし・・・本当に笑える場所なら探してやるぞ?』
『(笑)今日はたくさん喋るね・・・』
『誰も居ねーし(笑)』
『(笑)そだね』

照れた笑みで呟くと、彼が笑み返し自分を見ていた。
視線を外さずに話す事も彼なら大丈夫と思えた日から気にもならなくなった。

自分を見ていてくれる温かな視線も不思議と居心地は良かった。
自分じゃない瞬間は数多い・・・それが彼と目があった瞬間に消える・・・それでも理由はいいと自分を救ってくれる彼の言葉に感謝した。


いつか見た花を思い出した・・・真っ黒な汚ない泥沼の中に、雄大に広がる緑の葉が増え始めた。
それが何かを知らないまま、何だろうと眺めに何度か足を運んだ。

所々に咲き始めた花・・・それが蓮だと聞いたのは少しずつ枯れはじめた頃だった。
そこを通りかかった人が教えてくれたのだ。

いつの間にか隣にいて一緒に眺めていると自転車を止めて笑み声をかけられた。

『不思議でしょ(笑)汚い泥水の中で、こんなに綺麗に咲かせられるって素敵よね・・・
自分は自分って(笑)綺麗に咲くぞって感じにみえない?』
『(笑)はい』

『蓮っていう花よ・・・(笑)汚い泥水だと余計に綺麗に咲かせるんですって・・・一瞬で綺麗に咲かせて自分で終わらせるみたいよ・・・』
『もう咲きませんか?』

『咲いてる日は短いと聞いたわ(笑)。良かったわね・・・綺麗に咲いた時に見れて・・・』
そう言って帰って行く人に笑み、また少しだけ残る花を眺めた二人だった。

『きみも好き?(笑)この花が蓮って知ってた?』
『知らない』
『そっか・・・』
『汚ない場所でも咲かせられる花があるんだ・・・我慢した笑いは必要なら使ってもいいんだな・・・』

『きみも、そう思った?だから私も平気よ・・・』
自分もと苦笑いをしながら眺めた彼女を見返した。

『(笑)戻してやるから、大丈夫な瞬間は笑え・・・一緒に笑うから・・・』
『ん・・・』
『引っ越し話が出た・・・決まった訳でもないけどな・・・
舞潤・・・離れてても』

『(笑)きみは大丈夫・・・』
『お前もだ・・・(笑)本当に悲しいと思えたら電話しろ、会えなくても気持ちだけは お前に飛ばしてやる。
ずっと中で笑っててやるから』
『きみは?悲しくない?』

『お前が泣いてないなら(笑)。俺なら思い出すだけで、不思議とお前が笑ってる・・・
同じなら・・・舞潤も思い出せ(笑)。思いだけでも飛ばしとくから』
『ありがと(笑)』

『(笑)お前の親が探してたんだった・・・知らないとは言っといたけどな(笑)静かに部屋に戻れよ』
『そーする(笑)。
速見奏多くん・・・も少し、きみを貸して下さい(笑)・・・少しでいいから』

『いいぞ(笑)。全部やれるぞ?』
『家族が悲しむよ・・・』
『俺の気持ちは俺のモノだ(笑)。何処に飛ばそうが関係ない・・・
ほら、(笑)歩け』
『ん(笑)・・・・ありがと』
フッと笑う大人びた顔に笑み返した彼女は家路へ足を向けたのだった。


引っ越しの話は、それから聞かなかった・・・何より自分の方が出れそうな雰囲気にホッとした自分・・・不安そうな父親には驚いたが、心の奥底から願った自分だった。

頼むと誰かへ願う・・・麻季と話しホッとしたが寂しさはあると泣かれ・・・それでも楽になるならと励まされた。

本当の間際に話せば、挨拶する時間さえ出来ずに父親は秘書を促し早々に準備が始まり家を出た。
受験をして・・・それは確実になり、本格的にソコでと促された。

小さな文房具を置く店に、ポスターが飾られていた。
蓮の花が咲き誇るように、見た事もない位の数で咲いていた。

一緒に見た彼を思い出す・・・本当に現れ・・・自分に笑む姿があった・・・穏やかな気持ちは、これから先の不安はないと消してくれた気がした。

自分を救ってくれた人なのだと嬉しくもなった・・・優しく笑む姿・・・目を閉じても見返す眼差しはあった。

連絡する方法はない・・・誰かを経由してしまう事は避けたかった・・・

不意に現れる事を願って、彼女は眠りへ入り込めた事にホッとしたのだった。


-end-


お付き合い下さり、ありがとうございました。

蓮<はす>・・れん・・・
そこから意味を探し蓮の花へ・・・花言葉の負を読んで・・・不意に思い立つ話がこれに・・・
2017 X'masの話の一部として・・・
失礼しました。-tami-


次! 「ろ」 へ、参ります!