Rails で行こう!という人気blogで主の酒井氏が利権の本質と題した記事を書かれている。
その記事の中に非常に「ああ、鋭いな」と思わせてくれる一文があった。
該当のセンテンスは下記の文章だ。
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「・・・ 利権を享受してしている人たちは、それを正当化する理屈を持っているはずだ。
だから悪いことをしているという自覚さえないかもしれない。
むしろごく当然の権利を行使しているにすぎないと信じているはずだ ・・・」
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これは彼自身の感性による個人的な体感に過ぎないのかも知れないが、本質を突いている。
個人的にもこの考えには強いシンパシーを感じる。
おおよその人間は(特に生活圏内の狭い範囲に於いては)結構合理的であり、
どんな世界でも老年層は福祉を充実を要求するし、
シングルマザーは教育費の負担軽減を求める。
貧しい地域に住まう人々は中央政府からの助成金に期待するし、
起業家や経営者は法人税の減額を要請する。
こういった願望は個々で見るとそれぞれに正等な理由が存在し、
そして大抵の場合そのどれもが何か邪悪な意思によって企まれたものではない。
重要なのはそういった個別の最適が全体の効率を下げる原因になる事だ。
例えば子供手当ては子供を持てない(あるいは持たない)人間には、
リターンが不明瞭な不公平な支出であり、しかもその実態は赤字国債である。
(加えて今子供が多少増えてくれたとしても現状の賦課方式の年金は維持出来ない)
大きな組織図で考えてみれば解りやすいかもしれない。
NTTはDoCoMoグループの売り上げが利益の大半を占めており、
旧電話会社の部署は完全なお荷物部門だ。こういった状況で
主流でない旧NTT陣営にキャスティングボートを握らせると、
彼らに自分達の部門を支えようとする部族感情的バイアスが働いて
結局効率の悪い旧NTTグループ部門をいつまでも維持させようとするので、
その事によってNTT全体の効率は下落し、それが最終的には
ユーザーへのサービスの質が低下するという形で顕在化する。
この局所的な最適と全体の最適のミスマッチは常にありとあらゆる場面で発生しており、
それを解決することは頭脳明晰なエリート集団であったとしても容易ではない。
我々は政治に対して「目の前に見えている自分の問題」を望むが、
果たしてそれはゼロコストで出来ることだろうか。
あるいは、掛けたコスト以上の見返りが社会に還元されるものだろうか。
あるいは、他人の税金を使って自分達だけが利益を得るものだろうか。
そして、あなたは自分を、他人と比較して特定の利権を持つものだと思った事があるだろうか。
多分現在60歳の正社員の方は、多分自分が既得権益の保持者だ、
などとは露ほども考えた事がないだろう。
そしてそういった考えを持てるようになるかどうかは、
いわゆる家族愛的な、可視可能な少数の利益のみを追求し、
不可視な外の社会を無視する部族的な感情からは絶対に導き出されることはない。
つまり勉強なりなんなりで後天的な学習によって知識を吸収する以外、
社会の中の立ち位置としての自分が一体どこに居るかという、
強烈に根本的な問題が存在すること自体に気づけないのだ。
我々は学ぶ必要がある。
とりあえず今何が起きていて、自分がどこに居るのかくらいは知っておくべきだ。
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