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皇族ゆかりの品はその国の文化力を表す_東博 即位30年記念展 4/29まで

2019年03月18日 | 美術館・展覧会

まもまく退位される天皇皇后両陛下の即位30年祝賀行事が、東京では東京国立博物館と三の丸尚蔵館で行われています。東博での展覧会は「両陛下と文化交流」と題し、皇室ゆかりの名品や両陛下の文化交流の足跡を紹介しています。

  • 即位の礼で使用した屏風など、めったに公開されない皇室の調度品がずらりと並ぶ
  • 両陛下が外国訪問時に日本文化を伝えるために持参した、宮内庁所蔵の一級の美術品が素晴らしい
  • 両陛下が着用した御召物は、素材の質感そのものとそれを際立たせるデザインがさすが


皇族ゆかりの品はその国の文化力を表す。平成は、引き続き高い文化力を保持していた時代だったと確信できる展覧会です。



この展覧会の会場は、日本美術のコレクション展の会場である東博の本館で行われています。平成館で行うほどの展示規模がない特別展に使用される、1F正面大階段の奥にある特別5室が会場です。特別5室が会場となる展覧会は、2016年の「二つの半跏思惟像」「櫟野寺」など、平成館の特別展より”展示企画が乙”なものが多く、私は大好きです。

この展覧会は、皇室ゆかりの日本美術の名品に関する展覧会やフォーラムを開催する、宮内庁/文化庁/読売新聞社による「紡ぐ(つむぐ)プロジェクト」の一環として行われています。展覧会の収益により美術品の保存/公開/修理の好循環サイクルを維持しようとするもので、いわば美術品のSDGs(持続可能な開発目標)を達成するための取り組みです。

「両陛下と文化交流」が終了すると、引き続き「紡ぐプロジェクト」による「美を紡ぐ 日本美術の名品」展が行われます。今後、宮内庁・文化庁所蔵作品を公開する展覧会が増えてくることが楽しみです。

【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています

展覧会の入口の直後に巨大な屏風が展示されています。今上(平成)天皇即位後に行われた、秋の収穫を初めて祝う大嘗祭(だいじょうさい)で用いられた「地方風俗歌屏風」です。大嘗祭に供える稲を収穫する田を、東日本の悠紀(ゆき)地方、西日本の主基(すき)地方の2か所から占いで選び、その地方の四季や風俗を絵にした屏風を儀式で用いるのが慣例になっています。

3/31までの前期展示では東山魁夷による悠紀地方(秋田県)、4/2からの後期展示では高山辰雄による主基地方(大分県)の屏風が展示されます。高さ2mを超す六曲一双の屏風で、大きさはさておき、神々しい描写に”特別感”を感じます。

大嘗祭で用いる「地方風俗歌屏風」は、近代以降は当代きっての画家が制作を担当しています。大正天皇の際は竹内栖鳳と野口小蘋(しょうひん)、昭和天皇の際は川合玉堂と山元春挙です。新天皇の大嘗祭は今年2019年11月14日から行われますが、「地方風俗歌屏風」が制作されるのか、誰が制作するのかについてはまだ発表されていません。ワクワクしながら発表を待ちたいと思います。

両陛下が外国訪問時に持参した宮内庁所蔵の美術品も見ものです。岩佐又兵衛「小栗判官絵巻」は一巻で20m以上ある大作で、テンポの良いリアルな描写に又兵衛らしさを感じます。日本文化を外国に紹介する絵巻として、美しくわかりやすい名品だと感じました。場面を替えて通期展示されます。

4/2からの後期展示では酒井抱一の「花鳥十二カ月図」も登場します。江戸琳派のとても洗練された描写が魅力的です。浮世絵が庶民にうけていた時代に、上流階級はこのような美しい絵を好んだと説明することができます。

宮内庁や皇室の所蔵美術品は、慣例として文化財指定されないこともあり、今回の展覧会の出展作には国宝・重文の表示はありません。もしこの慣例が撤廃されたら、昭和以降の作品を除いて少なくとも重文にふさわしい逸品ばかりが展示されていると感じます。

京都の桂離宮は、推薦されれば世界遺産登録がほぼ確実と言われていますが、厳密には国の文化財指定を受けていないため、世界遺産登録の条件を満たしていません。庭園は特別名勝、建物は国宝指定が確実でしょう。庭園には特別史跡も付くかもしれません。この慣例もそろそろ見直す時期のように思えます。


国宝室は永観堂蔵「山越阿弥陀図」

東博は特別展だけ見て帰ってしまう人が、特に平成館が会場になっている場合に目立ちます。東博は所蔵品・寄託品の質と量は断トツの日本最高峰です。本館で展示される日本美術コレクションは、展示替えは頻繁に行われますが、いつ行っても日本最高峰の作品をたくさん見ることができます。

特別展のチケットがあれば、本館を含めすべてのコレクション展示を見ることができます。また特別展以外では、多くの作品の写真撮影が私的利用に限って可能です。撮影禁止の表示がされているのはおおむね寄託品、もしくは著作権の切れていない作品です。東博や文化庁が所蔵し、著作権が切れている作品は、ほとんどの外国と同じく、国家として撮影禁止とは言いません。

国立西洋美術館や東京国立近代美術館でも、コレクション展の多くは写真撮影可能です。しかし京都・奈良の両国立博物館は、コレクション展でもほとんどが撮影禁止です。京博・奈良博は、東博に比べ寄託品の割合がかなり高く、撮影ルールが守られにくいためと思われます。



東博のコレクション展にぜひ足を運んでください。ミュージアムショップも日本最高峰の品揃えです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



グラビアでたどれる平成の30年

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東京国立博物館
特別展 御即位30年記念「両陛下と文化交流―日本美を伝える―」
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:東京国立博物館、宮内庁、文化庁、読売新聞社
会場:本館 1F 特別4室/特別5室
会期:2019年3月5日(火)~2019年4月29日(月)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30(金土曜~20:30)

※3/31までの前期展示、4/2以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品/場面があります。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。



◆おすすめ交通機関◆

JR「上野駅」下車、公園口から徒歩10分
JR山手・京浜東北線「鶯谷駅」下車、南口から徒歩10分
東京メトロ・銀座線/日比谷線「上野」駅下車、7番出口から徒歩15分
東京メトロ・千代田線「根津」駅下車、1番出口から徒歩15分
京成電鉄「京成上野」駅下車、正面口から徒歩15分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR東京駅→山手・京浜東北線→上野駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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