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続き:平安時代の”宇宙”が上野にやってきた_東博「東寺」展 6/2まで

2019年04月21日 | 美術館・展覧会

東京国立博物館の特別展「国宝 東寺 ―空海と仏像曼荼羅」の後半をレポートします。空海プロデュースの”宇宙”の魅力に完全にノックアウトされるのは、後半の仏像の展示を見てからにしましょう。

  • 21体の美仏で構成される講堂の立体曼荼羅から15体が上野に集結
  • 普段見られない角度や明るさで仏教美術を鑑賞できる展覧会の利点を堪能できる
  • 普段見慣れていると思っている京都人でも、わざわざ東京まで見に行くと驚嘆する


京都にのこる平安時代の仏教美術は、質量ともに東寺が抜きんでています。1,200年前の空海のDNAが見事に現代に伝わっています。


唯一の写真撮影OKはイケメン帝釈天

展示前半は2Dの絵画作品が中心でしたが、後半はほぼ3Dの仏像の展示です。


展覧会公式 YouTube 動画 「帝釈天 搬出映像」

展覧会の搬出・搬入動画は最近、やみつきになります。主催者の挨拶から始まるような”普通”の動画は、クリックしてもらうにはかなり苦しくなっていると感じます。


東寺・講堂 入口

後半第2会場の展示は平成館2Fの東半分です。仏像のような大きさのある3D展示物ではすっかりおなじみとなった、天井が高く床面積の広い3,4室です。

第2会場の最初に、是非ともというより必ずお会いしてほしい美仏がいらっしゃいます。国宝「兜跋毘沙門天(とばつ びしゃもんてん)」です。兜跋とは西域の兜跋国:現トゥルファンを指し、8c末に中国で造立された仏像と考えられています。日本にはない何ともエキゾチックな表情に目が釘付けになります。平城京の正門・羅城門に安置されていたという記録があることも、この仏像の魅力にさらに箔を付けています。

【展覧会公式サイトの画像】 第4章「曼荼羅の世界」

続いて9cの中国製と考えられる日本にはない表情が魅力の美仏の空間です。東寺の子院・観智院(かんちいん)に伝わる重文の「五大虚空蔵菩薩坐像(ごだいこくうぞうぼさつざぞう)」です。五体がそれぞれ動物の上に鎮座しています。五体はいずれも、同時期の日本の仏像に見られる中性的で妖艶な表情はなく、男性的でとても生真面目に見えます。

この表情は日本に現存する仏像では稀有です。希少感があふれており、京都・山科の安祥寺(あんしょうじ)から南北朝時代に東寺に移されたものです。安祥寺は、平安時代には醍醐寺に匹敵するような大寺院でしたが、その後本格的に再興されることはありませんでした。2019年は京都国立額物館に寄託されていた五智如来坐像が国宝になり、一躍注目を集めています。

安祥寺は、2019年の春の京都非公開文化財特別公開でも初めて、境内と本尊・十一面観音が一般公開されます。「令和」時代のスタートにふさわしい由緒ある寺の公開です。



展示順の最後の巨大な4室は、この展覧会の最大の目玉の立体曼荼羅ワールドです。美仏の殿堂の講堂の立体曼荼羅21体のうち、15体が上野で出開帳します。劣化の心配が少ない仏像であり、通期展示で見事な”宇宙”が味わえます。

15体の美仏の展示配置は、東寺・講堂の実際の配置とは異なりますが、見やすいよう照明が配慮され、すべて360度拝観できるところに展覧会ならではの利点が感じられます。

【展覧会公式サイトの画像】 帝釈天騎象像

東寺・講堂の立体曼荼羅21体の中では、国宝・帝釈天のイケメンが以前から著名です。そんな人気に忖度(そんたく)したのでしょう、帝釈天のみ写真撮影です。この忖度をふまえて観覧者の方々には、写ってしまった第三者の肖像や私的利用公開範囲に配慮した利用を強く望みたいものです。

この帝釈天はお会いするたびに、非日常感を強く感じさせます。イケメンな表情はとても西域っぽく、腕のポーズも一瞬をとらえたようでとても洗練されています。イケメンであると同時に、平安時代初期の最先端の文化を具現化した美術品です。かけがえのない魅力に言葉も出ません。

【展覧会公式サイトの画像】 増長天立像

増長天は、ロボットのような隆々としたボディに無感情な表情の頭がのっかっている姿が目を引きます。四天王によく見られる躍動感よりも、立ち止まった静寂感の表現が見事です。国宝にふさわしい逸品です。

普段見られない背中もぜひご覧ください。くねった背骨のラインが女性的な美しさを醸し出しており、お尻のラインも絶品です。超フェチな視点で仏様にお会いできる稀有な機会を存分に活用しましょう。

【展覧会公式サイトの画像】 降三世明王立像

明王の造形も感動的です。「降三世明王」は、密教的な怪しさ・妖艶さが特に表現されていると感じます。単体でも見事な仏像として語り継がれると思える名品です。これも国宝です。

【博物館公式サイト】「密教彫刻の世界」

本館で特別展と同じ日程で開催されている特集展示「密教彫刻の世界」にも、是非お立ち寄りください。東博の所蔵品から、密教美術の魅力を味わうことができます。


特集展示「密教彫刻の世界」

展覧会は、現地に行かなくとも見られるという価値がもちろんあります。加えて仏像の360度鑑賞に代表されるように、照明がきちんとあてられて見やすく、かつ普段見られない角度から鑑賞できるのも大きな魅力です。

今回の東寺展も、京都の東寺でお会いするのとは異なった表情を、いずれの美仏にも感じることができます。信仰のために安置されたお寺の本来の立ち位置と、信仰の制約がなく鑑賞に利のある展覧会の両場面でお会いすることが、最もその仏様の魅力を吸収することができます。普段見慣れた京都人を始め関西の方も、わざわざ東京にまで見に行く価値は充分にあります。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



この増長天、美しいです。

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<東京都台東区>
東京国立博物館
特別展
国宝 東寺 ―空海と仏像曼荼羅
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式サイト】

主催:東京国立博物館、教王護国寺(東寺)、読売新聞社、NHK、NHKプロモーション
会場:平成館 特別展示室
会期:2019年3月26日(火)~2019年6月2日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:9:30~16:30(金土曜~20:30)

※会期を10通りに分割し、一部展示作品/場面が入れ替えされます。
 詳細は公式サイトでダウンロードできる作品リストPDFでご確認ください。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っています。

<京都市南区>
東寺(教王護国寺)
【公式サイト】 http://toji.or.jp/




◆おすすめ交通機関◆

JR「上野駅」下車、公園口から徒歩10分
JR山手・京浜東北線「鶯谷駅」下車、南口から徒歩10分
東京メトロ・銀座線/日比谷線「上野」駅下車、7番出口から徒歩15分
東京メトロ・千代田線「根津」駅下車、1番出口から徒歩15分
京成電鉄「京成上野」駅下車、正面口から徒歩15分

JR東京駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
JR東京駅→山手・京浜東北線→上野駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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