そんな中、高平哲郎の『今夜は最高な日々』(新潮社 2010年8月15日刊)を読んだ。
高平の、赤塚との初対面は、インタビュー記事『もう欲なくなっちゃった・・・・・・いつ死んでもいい』(宝島 1973年11月号)である。齢38歳にして人生を悟る赤塚の当時の姿は、 『酒とバカの日々 赤塚不二夫的生き方のススメ!』(白夜書房 2010年10月1日)や『高平哲郎スラップスティック選集 6 上巻 ぼくのインタヴュー術 入門篇』(ワニブックス 2016年7月27日)などへ多々再録されている。
この本は、『今夜は最高!』をはじめとし、高平が関わったテレビ番組を中心としたエッセイ集である。赤塚関連で特筆すべきは『11PM・赤塚不二夫のギャグテレビ』(日本テレビ 79年8月8日)の詳しい内容や、『日曜はダメよ』(日本テレビ・82年4月10日~8月28日)のオープニングにニャロメを使ったピンク・パンサー調のアニメが使われていたことも触れられていることであるが、ある項には仰天した。
それは、テレビ番組版『ギャグゲリラ』とも言うべき番組の存在である。
赤塚の連載漫画『ギャグゲリラ』は、赤塚が72年に第18回文藝春秋漫画賞を受賞したことを受けて、井上ひさしの戯曲に赤塚が挿し漫画を付けた連載『ひさし笑劇場』が文藝春秋誌上でスタートさせたことに始まる。それから発展したのが週刊文春での読み切り漫画『護送』であり、それを連載化したものが『ギャグゲリラ』(連載時タイトル『赤塚不二夫のギャグ・ゲリラ』)である。『おそ松くん』や『天才バカボン』で、話のタネとして使用されていた時事ニュースを大々的に取り上げた漫画で、一般誌ではまだ、前時代的なコマ漫画が珍しくなかった時代に、漫画雑誌と変わらぬ8ページ(オイルショック後は6ページ)というボリュームで、手塚治虫曰く赤塚の“風刺の鬼”ぶりがいかんなく発揮された作品となった。11年に渡る連載終了後も『今週のダメな人』や『いじわる時事』、『にっぽん笑来ばなし』など、同様の時事漫画の連載が依頼され、赤塚のお得意として認識されていくようになる。
高平の『今夜は最高!』によると当時、日本テレビのディレクターだった矢野義幸は、タモリがテレビ初出演した『土曜ショー・マンガ大行進!赤塚不二夫ショー』(テレビ朝日 75年8月30日)が忘れがたく、『11PM・赤塚不二夫のギャグテレビ』を制作。そこから矢野は、今度は赤塚不二夫で「重大ニュース」を出来ないかと、高平に話を持ち込んで来たという。赤塚の考えなしな「おい、やろうぜ!」との呼び声の中、出演者とスタッフが集まった。79年、80年、82年度末の計3度放送され、タイトルに『ギャグゲリラ』の文字が冠されたのは82年度のみではあるものの、「重大ニュース」というネーミングは『ギャグゲリラ』の78年~82年の年度末回でお馴染みのもの。奇しくも漫画『ギャグゲリラ』も82年末に終了している。
以下、放送データを『今夜は最高な日々』と、新聞テレビ欄の情報から掘り起こしてみたい。
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『土曜スペシャル 爆笑!激笑!!今年の笑いおさめだ79重大ニュース』
日本テレビ 1979年12月29日放送
出演/由利徹、谷啓、研ナオコ、タモリ、小松政夫、団しん也、所ジョージ、松金よね子、たこ八郎、赤塚不二夫他
構成/滝大作、高平哲郎、広岡豊、日高はじめ
土曜スペシャル 『爆笑!激笑!!今年の笑いおさめだ79重大ニュース』
話題のソックリさん全員集合 由利徹 小松政夫 タモリ 研ナオコ 桜田淳子 所ジョージ 谷啓 赤塚不二夫
土曜スペシャル 『爆笑!激笑!!今年の笑いおさめだ79重大ニュース」 (日本テレビ=後・7・30)
漫画家赤塚不二夫が監修したギャグと笑いをふんだんに盛り込んでおくる今年の重大ニュース。ニュースの主役はすべてそっくりさんが担当。久米宏と黒柳徹子のそっくりさんが進行役となり、数々のニュースをドラマ仕立てでつづっていく。取り上げるニュースは江川問題、大平首相再選、三菱銀行強盗事件、カラ出張、「関白宣言」大ヒット、銀河鉄道999ブーム、東京サミットなど。出演は、由利徹、小松政夫、団しん也、所ジョージ、タモリ、谷啓、研ナオコほか。
―毎日新聞 1979年12月29日
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『木曜スペシャル 発表!輝け!!80爆笑ニュース大賞・笑いでつづるこの1年』
日本テレビ 1980年12月25日放送
出演/由利徹、タモリ、研ナオコ、松田聖子、小松政夫、所ジョージ、加賀まりこ、団しん也、木ノ葉のこ、谷啓、山田康雄、赤塚不二夫他
構成/高平哲郎他
木曜スペシャル 「発表!輝け!!80爆笑ニュース大賞・笑いでつづるこの1年」
由利徹 タモリ 研ナオコ 松田聖子 小松政夫 加賀まりこ 団しん也 木ノ葉のこ 谷啓
―毎日新聞 1980年12月25日
木曜スペシャル「発表!輝け!! ’80爆笑ニュース大賞・笑いでつづるこの1年」 ★日本 夜7・30
今年起こった事件や話題の数々を、コメディアン、歌手、漫画家たちが演じるパロディーでつづってゆく。取り上げる話題は長嶋茂雄、王貞治、山口百恵らの引退、「イエスの箱舟」事件、一億円騒動など視聴者の記憶にも新しいものばかり。出演は研ナオコ、松田聖子、タモリ、所ジョージ、谷啓、赤塚不二夫ほか。
―朝日新聞 1980年12月25日
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『木曜スペシャル ギャグゲリラ82・明るい日本!重大ニュース』
出演/由利徹、谷啓、由利徹、研ナオコ、秋野暢子、松金よね子、夏目雅子、チャンバラトリオ、内藤陳、石井愃一(東京ヴォードヴィルショー)、坂本あきら、佐渡稔、花王おさむ、魁三太郎、九十九一、小林のり一、斎藤晴彦、山本晋也、児島美ゆき、木ノ葉のこ、高見恭子、秋野暢子、所ジョージ、植木等、小松政夫、赤塚不二夫他
構成/高平哲郎他
木曜スペシャル 「ギャグゲリラ82・明るい日本!重大ニュース」
由利徹 谷啓 由利徹 研ナオコ 秋野暢子 所ジョージ 植木等 小松政夫 赤塚不二夫
木曜スペシャル 「ギャグゲリラ82・明るい日本!重大ニュース」 (日本テレビ=後・7・30)
由利徹、タモリ、小松政夫、研ナオコ、松金よね子、夏目雅子らが、今年の重大ニュースを明るくコミカルに料理する。「明るい日本・ドラマそれぞれの冬」と題して、茶の間でテレビを見る家族の姿からスタート。折しも、びっくりすると体が爆発するという伝染病が流行、国会でビニ本を見た議員らが次々と爆発、そんなニュースを見ていた由利の夫、松金の妻がびっくりするまいと懸命になるが、タモリの脅かしあってついに爆発。ほかに「のぞき喫茶」 「校内暴力」 「東北新幹線開業」 「FBIのおとり捜査」など、さまざまなニュースをギャグ仕立てで紹介する。
―毎日新聞 1982年12月23日
★
『今夜は最高な日々』では、「思い出としては、たこちゃんを鐘撞き棒にして、除夜の鐘を打ったり、研ナオコが口裂け女をやったり、所ジョージが三菱銀行人質事件の梅川のパロディをやったり、いまじゃとても考えられない過激さでした。記憶に間違いがなければ、さだまさしの『関白宣言』を桜田淳子が当て振りで演じたんじゃなかったかなぁ。『神野寺の虎騒動』ではビートたけしが『家族そろって歌合戦』のパロディで虎さんチームを出したりね」という矢野の懐古によって番組内容が少し分かる。オールスターのコントと、何よりブレインと出演をこなした赤塚の顔が見てみたいと思わせる番組だ。
ちなみに視聴率は、79年度は12%、80年度は17%ときて、82年度は視聴率が1桁という結果に終わっている。
なお、1990年10月~12月には、伊集院光のテレビ初レギュラー番組である『ギグギャグゲリラ』が日本テレビ系列で深夜に放送されるが、これはタイトルの類似のみで赤塚とは無関係なものであったようである。
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