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合言葉はヒュッゲ

映画 死刑に至る病

話題作だが、グロいシーンが多いと聞いて観に行こうかどうかためらいはあった。

ただ残虐なだけの作品なら、無駄足になるけれど、タイトルの「死刑に至る病」に惹かれ勇気を出して映画館に足を運んだ。

評判通り、阿部サダヲの狂気はすごい。
何がすごいかって、とっちゃん坊やの面影に隠された冷酷非道な猟奇的殺人。ただ殺すだけではなく、じっくり信頼関係を築いた高校生達を散々いたぶって、いたぶり倒して殺める手口に震撼した。

この作品には多くの人物が登場する。しかし、ごちゃつかず、速やかでミステリアスな描き方をしているので、観る者を飽きさせず、そして最後のシーンには「!!⁉︎」と誰もが感じた事だろう。

阿部サダヲ演じる連続殺人魔は、自分の犯した数々の殺人の中の一件だけは冤罪だと訴え、その立証を昔パンカフェを営んでいた頃の常連客だった岡田健史に依頼する。

20数件に及ぶ犯罪の内、ただ一件は自分とは無関係だからその疑いを晴らしたいという要望は、ある意味あつかましく、しかし、ある意味妥当なものだと思う。

人はどんなに汚れても、自分のきれいな部分が残っていれば、そこを捨てたくないのだろう。

校長を勤め上げた祖母が実権を握る厳格な家庭で育ち、父からの暴力を受けて育った岡田健史演じる雅也は、Fランクの大学に通い何の希望もなく漂うように生きていた。

ある日、八方塞がりな雅也の元に舞い込んだ殺人鬼大和からの手紙で生活は一変する。

恐る恐る拘置所の大和と面会をし、大和の穏やかな瞳と優しい言葉かけに翻弄された雅也は、いつしか探偵の真似事で、大和が冤罪と指摘する事件の関係者を洗い出し、他の事件との関連を調べて行く。

大袈裟に言えば生きる屍のようだった雅也が水を得た魚のように生き生きと躍動し始める。

岡田健史の演技が素晴らしかった。常に父の圧力に怯え、姑と夫に逆らえず苦労してきた哀れな母の背中をずっと見てきた雅也の声は、喉元に何か詰まっているかのように小さく、かすれて苦しそうだった。

そんな雅也にとって、中学生の頃、塾の前に通い続けたパンカフェ店でのひとときが癒しの時間で、店主大和の優しさに励まされて来た。

大和自身、虐待を受け児童養護施設で育ち、その後、里親に引き取られ大人になっていた。

子リスのような瞳と屈託のない笑顔は大和が勝ち得た表向きの仮面。大和は内面の残虐さを覆い隠し、店の常連高校生達に言葉巧みに近づいて行く。そして、気を許した相手を山奥の燻製小屋に連れ込み、生爪を剥がした後、殺害するといった残忍行為を繰り返す。

私はグロいのは得意でないから、そういったシーンからは目を背けていました。なので、そのシーンの説明はできません。

この映画、中山美穂演じる雅也の母と大和が昔の友人だったり、冤罪と訴えた事件の真犯人と疑われた男、EXILEの岩田剛典演じる金山と大和が繋がっていたりと関係が複雑で、「原作者すげーっ」と感心します。

タイトル「死刑に至る病」
でも大和はまだ死刑判決となっていない未決囚なんです。

これは、司法と医療の複雑な関係を危惧してつけられたタイトルなのか?

見終わった後、一瞬沈黙後、呻きたくなるような、何とも微妙で、でもすごい
ともかくすごい作品でした。



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