母は私に向かい「わしは生きとるよね」と聞きました。私は少し躊躇しましたが、
「もう死んだんだよ」と答えました。すると母は少し寂しそうに笑いながら去って行きました。
まるで本当に私に確かめに来たようなそんなリアルな夢でした。
実のところ、母の死が悲しくなくて、93歳という年齢もありますが、私の中での母はとうに消えていました。
私は母を助けるために生まれてきたような子どもでした。
それ以外に自己肯定感が全くなく、しかし、親の親を演じることは重荷で、思春期の頃にはとても反発した記憶があります。
母のために必死に尽くしてきたのは30代後半まででしょうか。私は37歳で離婚して当時4歳だった息子を一人で育てて来ました。産後のうつ、離婚その他私の人生曲線はとても波の幅が大きく、辛い事がたくさんありましたが、母は私の苦しみに寄り添う力がありませんでした。
私は次第に母を憎み、一時は縁を切りたいと本気で思ったほどでしたが、老いてゆく姿を目の当たりにする度、心が痛みました。憎みきれなかったのは事実です。
認知症が進み、施設へ入れた後、その費用を捻出するため実家を処分した時、肩の荷が降りた気持ちでした。その時から既に母は私の中から消えていました。
施設には何度か面会に行き、姉の意向で時々は旅行や食事にも連れ出しました。
私としては義務は果たした。でも母としては、1番優しくて親想いだった私が何故だんだん冷たくなったのかわからないままだったと思います。
母の死を本気で悼まなかった私に母は会いに来たのでしょうか。
極楽浄土に行けるようにと祈ります。