「あなた、私、エステの店を開こうと思うけど、どうかしら。」
やっとカオリが、保険金の使途を考え始めたようだ。
「そうだね、カオリの経験を生かせるし、性格も向いているいるようだから、良いんじゃないか。」
一郎に反対する理由は無い。
「美容室じゃ無くて、エステの店で良いんだね。」
「エステと美容室の兼業だと、中途半端になるし、田舎の雑貨屋じゃないから、何でも屋では、都会では受けないと思うの。それに、駒込には美容室は何軒も在って、過当競争気味なので、エステがいいと考えたの。エステの店も多いけど、まだ割り込む余地は有りそうよ。私には、何故か自信があるの。」
確かに、カオリは津軽女性特有の色白美人でスタイルも良く、性格も社交的で如才ないので、申し分無いと思えた。
「じゃ、これから店舗の物件探しだね。ところで、この機会に、私も会社を辞めようと思うけどどうだろう。」
一郎の勤め先の株式会社ダイカは、規制緩和と公共工事の抑制で業績は悪化の一途を辿っていたが、昨年秋のリーマンショックで、一段と受注が低迷し、何時倒産してもおかしくない状況になっていた。退職金がもらえる間に辞めたほうが良さそうに思えていた。そこに今回のカオリの保険金の話が出てきたので、保険金の一部で、何か商売でも始めたいという気持ちが芽生えていた。
「いいんじゃない。毎日一緒にいる時間が長くなって良いわ。エステの店に男の人が出入りしていると、女性は嫌がるので、お店を手伝ってもらうわけにはいかないけど、何時も近くにいてくれると、心強いわ。」
「不動産会社でも始めようかな。宅建の免許も持っているので。」
「そうね、それがいいんじゃないの。2~3年して黒字になるくらいで充分じゃないの。いつまでも人に使われて生きてるなんてね。お金の心配はしなくていいのよ。」
約3ヶ月かけて、二人のそれぞれの店舗用物件を探して、開業に向けて準備を始めた。エステの店は賑やか過ぎる場所は良くない。いかがわしい風俗店とは違うのだ。かといって、不便な場所やイメージの悪い場所も良くない。ビルの中より、路面店が良い。これはという物件は中々見つからないのだ。不動産の店は人の通りが多いほど良い。当然路面店が良い。2階3階では格段に不利になる。
深まる秋の気配を忘れるような、充実した毎日であった。
完
やっとカオリが、保険金の使途を考え始めたようだ。
「そうだね、カオリの経験を生かせるし、性格も向いているいるようだから、良いんじゃないか。」
一郎に反対する理由は無い。
「美容室じゃ無くて、エステの店で良いんだね。」
「エステと美容室の兼業だと、中途半端になるし、田舎の雑貨屋じゃないから、何でも屋では、都会では受けないと思うの。それに、駒込には美容室は何軒も在って、過当競争気味なので、エステがいいと考えたの。エステの店も多いけど、まだ割り込む余地は有りそうよ。私には、何故か自信があるの。」
確かに、カオリは津軽女性特有の色白美人でスタイルも良く、性格も社交的で如才ないので、申し分無いと思えた。
「じゃ、これから店舗の物件探しだね。ところで、この機会に、私も会社を辞めようと思うけどどうだろう。」
一郎の勤め先の株式会社ダイカは、規制緩和と公共工事の抑制で業績は悪化の一途を辿っていたが、昨年秋のリーマンショックで、一段と受注が低迷し、何時倒産してもおかしくない状況になっていた。退職金がもらえる間に辞めたほうが良さそうに思えていた。そこに今回のカオリの保険金の話が出てきたので、保険金の一部で、何か商売でも始めたいという気持ちが芽生えていた。
「いいんじゃない。毎日一緒にいる時間が長くなって良いわ。エステの店に男の人が出入りしていると、女性は嫌がるので、お店を手伝ってもらうわけにはいかないけど、何時も近くにいてくれると、心強いわ。」
「不動産会社でも始めようかな。宅建の免許も持っているので。」
「そうね、それがいいんじゃないの。2~3年して黒字になるくらいで充分じゃないの。いつまでも人に使われて生きてるなんてね。お金の心配はしなくていいのよ。」
約3ヶ月かけて、二人のそれぞれの店舗用物件を探して、開業に向けて準備を始めた。エステの店は賑やか過ぎる場所は良くない。いかがわしい風俗店とは違うのだ。かといって、不便な場所やイメージの悪い場所も良くない。ビルの中より、路面店が良い。これはという物件は中々見つからないのだ。不動産の店は人の通りが多いほど良い。当然路面店が良い。2階3階では格段に不利になる。
深まる秋の気配を忘れるような、充実した毎日であった。
完