駒込さくらワールド

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10.弘前プリンスホテル

2009年04月22日 | 不忍通り物語
 弘前駅から、最初の信号を右に曲がって、100m程進むと、右手に弘前プリンスホテルがある。プリンスホテルと言っても、東京の西武系のプリンスホテルグループとは何の関係も無い。地元資本の普通のホテルだ。ビジネスホテルより少しグレードが高いクラスか。規模も弘前ではかなり大きい方だ。
 
 一郎は、二庄内ダムへ来た時は、ほとんどここに泊まった。出張の多い仕事をしていると、泊まる宿は大体決まってくる。そこが一番いいと言うわけではなく、偶然泊まって、特に問題なければ、また同じ宿に泊まりたくなる。これは人間の習性か。始めてのホテルや旅館は落ち着けない。緊急やむを得ない場合は、どこでも泊まるが、予約するだけの時間に余裕がある場合は、なじみのホテルに電話をしてしまう。

 現場に泊めて貰う場合もある。二庄内ダムにも一度泊まったことがある。現場の食事は美味しいし、職員や作業員の皆さんと懇親を深めることができるので、声がかかれば、喜んで泊めてもらう。このような場合、現場の人は何も言わないが、2~3千円位の現金を、翌朝事務担当者に食事代として渡すのがマナーだ。受け取りを拒まれたら、素直にお礼を述べて、引っ込めればよい。

 保安教育で現場に来た時は、お客さん扱いになるので、このような場合は、逆に
ビール券などを、お礼としていただくことがある。大体10枚だ。現場で泊まった場合の欠点は、朝寝坊は出来ないことだ。現場の職員は朝が早い。6時には起きている。夜も遅くまで事務作業をしている。トンネル現場では昼夜稼動しているので、深夜でもデータと整理したりしている。猛烈に働く集団なのだ。

 一郎は、弘前プリンスホテルの道路を挟んだ向かい側にある、さくら亭という小ざっぱりした日本料理店で、カオリと何度か食事をしたことがある。

 カオリの夫は、横浜に長期出稼ぎに行っている。子供のいないカオリは、夜はかなり自由だ。両親と同居していたが、仕事の帰りに、食事する位だから、特に問題はない。ただ車で通っているので、お酒は飲めない。食事しながら、あれやこれやと話が広がるのだった。

 カオリの夫はもう5年位前から、弘前には戻っていないようだった。東北では、仕事はあっても、給料が安いので、家族を残して、首都圏などへ出稼ぎにいってい
る男は多いが、盆、正月、五月連休は自宅に帰るのが普通だ。冬場だけ出稼ぎに行って、春から秋までは農作業を行う主も多い。しかし出稼ぎが長くなると、色々な事情から、帰らなくなる男が出てくる。多くの場合は、その影に女が見え隠れするが、経済的な事情もある。いずれにしても東北の人々の生活、人生は今も厳しさに晒されている。これは、北海道や四国、九州、北陸なども同じかもしれない。

9.岩木山

2009年04月20日 | 不忍通り物語
 岩木山は津軽平野のどこからも、その雄姿を見上げることができる。近くに展望台もあるが、わざわざ行かなくても、充分堪能できる。富士山のような形をしている。山は、どこでもそうだが、地域のシンボルだ。富士山は無論、山形の鳥海山、
岩手の岩手山、福島の磐梯山、安達太良山、富山の白山、長野のアルプス、浅間山群馬の赤城山などなどだ。

 岩木山の麓の3合目くらいのところに、津軽カントリークラブというゴルフ場がある。広くて、見晴らしがよく、距離があるコースだ。上りコースが多いので、初心者にはちょっときつい。冬季はもちろんクローズになるが、5月から10月の初めまではとても気持ち良くプレーができる。10月の後半になると、天気次第では
みぞれ交じりの雨が降ることもあり、要注意だ。関東平野とはちょっと違う。

 二庄内ダムでは、毎月近隣のゴルフ場で親睦のゴルフのコンペが行われた。このゴルフ場は、割合多く会場として利用された。一郎も計7、8回は参加した。毎月は参加できないので、2回か3回に1回参加した。ゴルフの為だけに青森まで出張と言うわけにはいかないので、仕事を計画して、最後の日がゴルフになるようにした。

 9時スタートのコンペだと、7時に弘前市内のビジネスホテルを出て、8時ころには、会場に着くように向うのが、一郎のパターンだ。遅刻する事が、嫌いな性分なので、何をするにつけても、1時間前には着くようにしている。

 参加人数は30人から40人位が多い。プレーが終了するのが午後3時ころで、それから1時間程度会食して、解散となる。レンタカーで弘前駅に着くのが17時ころ。それから高速バスに乗り、盛岡に着くのが20時近い。そこから新幹線で東京に向うと11時ころにやっと東京駅だ。さらに自宅に着くころは12時近くなる。帰りのことを考えると、ゴルフも楽ではない。

 コンペの賞品は大体、レンタカー屋さんの、カオリさんにプレゼントしていた。この現場のコンペは、全員が5,000円相当の物を各自が持参して、それを参加賞として渡すルールになっていた。しかし持ち帰るのに向かない嵩張る賞品もあるので、明らかに紳士物の品物以外は、レンタカーの清算の時、さり気なく渡していた。歓心を買うつもりは特になかったが、最初は取り合えづ、誰かにプレゼントしないと、荷物になって困るという気持ちが強かった。ある時、女性用の衣類のような賞品だったので、ちょうどいいと思って渡したら、次回中身が派手な下着だったことを告げられ、赤面してしまった。しかしそのときから、急に垣根が取り払われたような空気が二人の間に生まれ、何でも話す間柄になった。

 コンペの参加費は3万円位だった。5万円位の現場も多かったので、安い方だった。勿論会社の経費で処理するので、自己負担はない。

8.株式会社ダイカ

2009年04月16日 | 不忍通り物語
 一郎の所属している会社はダイカという火薬の販売会社で、本社は大阪にあり、東京の神田に支店があった。その東京支店に25才で入社して、今日に至っている。営業マンだが、火薬の営業はかなり特殊で、一言で言えば、競争がほとんどない。ノルマもない。その代わり、商品の性質上ミスは許されない。事務能力や交渉力、折衝能力もかなり要求される。

 大阪に本社があるように、元々の社名は大阪火薬銃砲㈱といった。大阪の中心地の高麗橋のビルに事務所を構えていたが、不況でその後西区京町堀という小さいビルがひしめく場末に移転した。斜迎えにはたこ焼き屋があるような街だ。

 火薬商には火薬庫が必ず必要になるが、ダイカの本社の場合は大阪の北部の能勢町長谷というところにあった。ここは冬は雪が良く降る地域で、気候は山陰に近い。携帯電話も通じないような山中に事務所と火薬庫がある。野生のカモシカが用地内の林道を歩いているような山奥だ。用地内には、プラスチック工場も操業している。操業といっても市街化調整区域に無許可で操業しているので、違法操業ということになるのだろう。だから看板は倉庫と表示されている。幻の工場だ。岐阜プラスチック工業というメーカーの下請けをしている。ダイカの労務政策では、社長の気に入らない社員を退職に追い込む方法として、能勢火薬庫勤務(転勤)といことが時々行われている。新聞沙汰、裁判沙汰、労働争議になったこともある。

 東京支店の火薬庫は奥多摩町のダムの下流の杉林の中にある。途中つり橋を渡らないと行けないような不便な場所だ。ここには火薬はほとんど置いていない。営業許可を受けるための形式だけの火薬庫だ。

 大手の火薬商社はダイカ、オカニシ、日本商事、川口屋、三田商店と5社体制であったが、その後激しい淘汰があり、現在残っているのはダイカと三田商店だけだ。ほかの三社は吸収されて消滅した。残った二社の経営も今では青息吐息の現状だ。以前は五社でゼネコンを分け合っていたので、無競争状態で、価格も高値安定で、経営は安定していた。がつがつ働く社員は一人もいなかった。何となく腰掛のつもりで入社した一郎だが、そんな社風が気に入って、長く勤めることになった。ダイカの得意先は佐藤工業、大林組、間組、大成建設、奥村組、戸田建設、熊谷組、鉄建建設、フジタ、東急建設などだ。

S君のガンは局所再発になってしまいました。

2009年04月13日 | 癌との闘い、健康、病院
 甲状腺偶発未分化ガンの後遺症で左側声帯マヒで苦しんでいたS君ですが、4月13日駒込病院で、MRIの検査の結果再発しており、それもかなり拡大して、食道をほとんど押しつぶすくらいに進行していました。

 安心なタイプが多い甲状腺のガンですが未分化ガンだけは、微小未分化ガンとはいえとても怖いですね。S君はできるだけ手術で取って、放射線治療を希望しています。ところが15日の医者の判断では、今手術をすると、完全に取りきることは無理なので、3ヶ月以内には遠隔転移して治療不能となるので、抗がん剤でがん細胞を小さくして(効果はやってみないとわからないが)、小さくなったところで、手術をして、放射線を照射するとの結論でした。これまで医者の意見に懐疑的だったS君ですが、これからは医者の言うとおりにするつもりだそうです。

 入院は予定通り16日です。入院期間は延びそうです。会社には休職届を14日
に出しています。治療が長引いて,会社を退職することになっても、会社の加入している健康保険組合は18ヶ月間傷病手当が給与の約66%でますから、何とか生活はできそうです。

 それより、治療が優先です。抗がん剤の効果はまだ未知数ですので、夢に託すようなものです。これまでの常識では、甲状腺がんには抗がん剤は効果がないとされていました。日本の医学と製薬会社に賭けるしかありません。

7.火薬庫建設

2009年04月05日 | 不忍通り物語
 山岳地帯での大型土木工事には火薬庫が必要になる場合が多い。日本列島の地質構造では、平野は別として、山岳地域は1~2mも掘れば岩盤に達する。山を崩したり、大きな穴を開けるダムやトンネル工事では、岩盤を砕く方法としては、火薬に頼るしかない。

 大型の掘削機械も開発されているが、コストやスピードの点で、火薬の替わりにはならない。替わりになるケースは、集落に近く、火薬を使うことが危険な場合だけだ。

 火薬の欠点は、危険性だけだ。正しく使用されれば何ら危険なものではないが、誤った使用をした場合、あるいは不正な、あるいは犯罪などの目的で悪用されると危険極まりないものとなる。

 このような事情から、火薬は法律や規則などで、細かく規制されている。火薬庫もその最たるものだ。まず、県の火薬担当官に申請して、許可をもらってから建設を始め、完成すると検査を受けなければならない。完成後も定期的に検査を受ける。また、出納報告もしなければならない。保安責任者も2名選任しなければならない。

 青荷温泉側の林道から、工事用地内に入ると、すぐ左手にかなり広い平坦な土地がある。5km位先の現場事務所のプレハブ群が見下ろせる場所だ。ここが火薬庫建設予定地だ。すぐ前に広い巾の工事用道路が通っている。右方向に進むとダム建設に使用する岩石を取る原石山といわれる作業場、左方向が現場事務所だ。ダムの本体が建設される場所も左側の現場事務所の前だ。主に原石山で火薬は使用されるので、丁度いい場所だ。

 火薬庫はプレハブ式だ。厚み2mmくらいの厚い鉄板製のパネルを組み立てて造る。この現場に建設された火薬庫は10屯庫と2屯庫だが、付帯工事を含めても1週間は掛からない。

 火薬庫そのものは頑丈だが、肝心なところは、無線式警報機だ。内壁や天井に碁盤の目に張られた細い電線を切断した場合、警報機のスイッチを解除しないでドアを開けた場合、警報機や無線のアンテナを破壊した場合に警報機が作動して、火薬庫のサイレンが鳴り響くと同時に、数キロ離れた事務所のサイレンも鳴り響くことになる。

 鳴り出したサイレンは、スイッチをOFFにしない限りなり続ける。火薬の警報機の電源はソーラバッテリーになっているので、いつまも鳴り続ける。
 
 火薬庫建設には、県の許可が必要だが、二床内ダムの場合は青森県知事の許可が必要になる。窓口は県によって違う。青森県や秋田県のように県庁の部署で出す県もあるが、多くの県では出先機関で対応する。青森県だと県庁の鉱政保安課という部署になる。現場から約1時間30分だ。黒石インターから青森インターまで高速を使うのでこんなものだ。

 現場の所在地によっては5時間くらいかかる場合がある。秋田県の北東部の山中にある玉川温泉の強酸性の温泉水を中和するための施設を建設する工事(トンネル)では、現場から秋田県庁まで高速道路もなく、くねくねと曲がった道路を、大回りして行くしかなかったので片道5時間かかった。大曲まで約3時間かかる。そこから秋田市まで約2時間。このような場合、現場の所長が運転して、一郎が助手席に座る事が多い。雑談しながら向かうことになるが、片道5時間もかけて、書類に不備があって、県庁で受理されないようなことがあると、大変な責任になる。限られた時間で複雑な書類を全部作成して、無事受理してもらうことが、一郎の仕事になる。時間が迫って来ると、胃が痛くなる事もある。

 無事提出が終わると、現場まで一緒に戻らず、県庁近くの駅で降ろしてもらうことが多い。秋田駅とか青森駅だ。
 

       写真は三重県紀勢町で建設した大成建設㈱の20屯庫です。10屯
      庫はこの半分の大きさです。

東京大学附属病院

2009年04月02日 | 癌との闘い、健康、病院
 友人のSさんは、ガンの手術を駒込病院で受け、予定通り10日後に退院して、次の日から会社に通勤していますが、手術の後遺症で声帯が半分マヒして、大きい声が出にくくなり、仕事で苦労していたので、思い切って4月2日東大病院を受診しました。

 駒込病院はガンの治療は得意ですが、それ以外は一般の病院と同じです。声帯に関する専門の科もありません。

 東大病院には音声外来という専門の科があり、声帯マヒなどの治療に当たっています。Sさんの話では、東大病院は初めてだったそうですが、外観は古色蒼然としていますが、内部は近代的なゆったりとした空間、構造、設備で、システムも、対応もホスピタリティで感心したと言っていました。耳鼻科の医師だけでも10人くらいが同時に治療に当たっており、ほとんど待ち時間もなく、30分程度で初診の受診を終えたとのことです。

 これから何回か通院して、場合によっては、声を良くする手術をすることになりそうです。

 ちなみに、近所の耳鼻科で紹介状(自己負担900円くらい)を書いてもらい、予約して行ったので、初診料含めても3,000円くらいで済んだそうです。紹介状を持参しないと、他に5,250円支払うことになります。先端高度医療機関に指定されていますので、他より高いです。