雄一郎の半生
興信所に入り、3年の間は
一般調査のいわゆる、素行や
行動、信用調査を行っていた
のだが、その中でも始め度胸が
いるのが、発信機の取り付け
だった。対象者の車に電波
発信機取り付けするのだが、
当時の発信機は、性能が悪く
重く、大きいもので充電にも
時間が掛かるものだった。
ある調査の時、車に発信機を
付けて尾行したのだが、車が
止まっているのが、会社の
敷地内の駐車場に止めてあり、
尚且つ事務所の窓から見える
場所に駐車している車に
取り付けなければならなかった。
取付方法は極秘のため、詳細は
書けないが、何とか取りつけた。
午後5時過ぎに対象者が車に
乗り尾行が始まった。しかし、
交差点で信号が赤になり、
間隔が空いて見逃してしまった。
目視尾行から電波尾行と
なる。発信状態から方向を
確認し、尾行を続けたが
依頼内容とは別の場所に
停止している。おかしい。
停止している場所に着いても
車がいない。周りの家などの
駐車場にも車が確認できない。
電波の強い場所を、確認する
ために、ハンディ受信機を
持って、近辺を歩いていたら
何と、発信機が側溝に落ちていた。
重い発信機で強力な磁石で
金属部分にセットしていたが、
多分、車の振動ではずれた
のだろう。結果、この日は
尾行が失敗する。
しかし、この日の調査には
オチがあった。対象者は
依頼者の奥様で、浮気の
調査だったのだが、何と、会社に
出勤する前からずっと依頼者の
旦那様は奥様の車のリヤの
荷物室に隠れていたという。
何という執念なのだ。
私たちが、調査を開始して
尾行していたことも、分かっており
当日は、買い物をして奥様は
何事もなく帰ってきたという事
だった。継続の調査依頼が
入った。
次回につづく