雄一郎の半生
そんな訳で、女房が実家に帰っている
間に、次の女房となるN子と出合い
逢瀬を重ねていたが、これが女房に
分かってしまった。女房は、「私が
悪かった」と頭を下げてきたが、
意地でも分かれてやると思うほど
嫌気がさしていた。
それからが修羅場だった。
店を続ける気力もなくなっており、
N子と10日ほど、あてもなく
うろうろした。そして、
金銭的に底をつき帰ったが、
母から殴られた。
N子は祖母にもあったが、
祖母の見た目では、
「あの子はいい子じゃあ無いから
結婚はやめておいた方がいいよ」と
言われた。店に出るように何度も
言われたが、しばらく顔を出して
いないために出ずらくなっていた。
そして、仕方なく、神奈川県の
鶴巻に逃避行した。何も
持てずに10万円をN子の実家
から借りての駆け落ちというか
現状からの逃げだった。
駅前の不動産屋でアパートを探して
何とか、アパートは借りられたが、
食べるものや、布団などはない。
仕方なく、散歩しながらノビルや、
食べられそうな葉を取ってきて
やかんで茹でて食べた。
仕事も探さないといけなかったが、
偶然、近くの電気店で照明を買った
時に、店員として採用させてもらえる
ことになった。電気関係は多少だが
知識があり営業はできるという事での
採用だった。さっそく、営業や修理
配達など、仕事をしたが、同僚の
田丸さんにはお世話になった。
実家から貰ったというキャベツ
などを時々、持ってきてくれた。
同じ年代で優しい人だった。
電気店での仕事先で配達と設置が
終わり帰ろうとしたときに、
「良かったら夕飯を食べて行ってね」とラーメンを出してくれた
お客さんがいた。どう見ても
裕福そうには見えない家庭であったが、何故か、このラーメンが
懐かしく、また、温かい家庭の
雰囲気に涙が、出てしまった。
1か月ほど勤めて、営業でも
エアコンの注文を取ってきたりで、
みんなとも気が通じ合えるように
なっていた。が、すし店の板前が、
アパートに訪ねて来た。
「だんな。帰ってきなよ。
奥さん(自分の母)も自分の事は、
自分で整理し、N子さんとの結婚も
認めると言ってるから」と言う。
「いや、帰らない」と言って一度は
追い返したが、また、「奥さんに話を
したが、店を辞めても良い」と言っていたから。と、「とりあえずに、
帰って来なよ」とまた、尋ねて来た。
仕方なく、事情を電気店に話して、
辞めさせてもらった。
帰ってみると、仕方なく母は、店から
通える街でアパートを借りてくれるという。
店の転売をするので、次の店主に
協力して、一時店を手伝えというのだ。そして、転売先が見つかり
再開店で店の名前は変えずに、
営業が始まった。
そうしている内に、帰りを女房の
弟に尾行されていた。
アパートが、女房に分かって
しまった。その後に、女房は
長男を出産し、離婚の裁判を
起こされた。当然、離婚裁判に
出向いても調停員は、自分の
話など一切聞かない一方的に
女房の話を鵜呑みにしており
何を言っても無駄だった。
そして離婚となった。
次回につづく