奥村政則の部屋

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病弱教育理科最終章その1

2014-01-19 18:35:26 | 病虚弱児の教育
はじめに
このレポートは8月6日科学教育研究協議会全国大会ナイター(夜の研修会)で発表したものに補足して作成している。思い出せば大阪府立泉北養護学校時代から「泉北レポート」として昭和58年度よりほぼ間を空けず、羽曳野養護学校、羽曳野支援学校の「はびきの」にレポートを続けて書いてきた。今回は定年退職をふまえて36年のその集大成という訳でこれまでの経緯をお伝えして参考としたい。

1黎明期
私は昭和58年4月より肢体不自由児の養護学校より病虚弱の養護学校へ転勤して来た。
肢体不自由の養護学校で理科を教える中で知的障害を併せ持った生徒を指導していて悩み、仮説実験授業の授業書を使って指導したこともあったが、学習能力の差が大きい学級では、仮説や予想をできない生徒がいて十分に活用できない等の問題を引きずっていた。
病弱養護学校に転勤して、病気のために学習空白(最近では未学習という)のある子へは、説明だけで分かる子もいた。(でも、本当は体験させたい。)そしてここでも病気と知的障害を併せ持つ子の指導を行った。認知障がいをフロスティックの視知覚テストなどでどのあたりに落ち込みがあるか、確かめて、発達に落ち込みのある子へは具体物中心に学習すると言う方法を採った。
 
 2認識論と弁証法との出会い
これまでに影響を受けた書物について紹介する。
①「自然認識の発達と人格の形成」
新生出版より
 科学的認識の発達段階による自然認識について幼児教育・小学校前期・小学校後期・中学校・高校での活動、そしてそれを人格形成として結びつける。

②「弁証法はどういう科学か」
三浦つとむ著 講談社現代新書より
 弁証法は知っているだけではあまり役にも立たない。自分の各分野で3つの方法を駆使したとき初めて力を発揮する。
 A 量質転化
 B 対立物の相互浸透
 C 否定の否定
唯物論的弁証法
唯物論 ヘーゲルの弁証法ー事物のとらえ方。自分の観念から事物が存在する。を逆転した考え。外界の物→自分の脳に近似値的取り込む。
弁証法的な考え方
物事は流れて行く、移り変わって行く、という考え。法則もある範囲で正しいが、範囲を超えると適応されない。ニュートン力学~アインシュタイン力学~量子力学

③「人間の頭脳活動の本質」
岩波文庫 ディーツゲン著より
唯物論的弁証法の考えをもとに人間は外界をイメージとして脳に取り込んで思索活動は頭に取り入れたイメージを使って考える。

④認識の三段階連関理論
庄司和晃著 季節社
のぼりおりの理論より
子どもは小学校後期で具体物から抽象化して捕らえる力を付けてくるが、具体物から抽象物困難なこともある。そんなとき半具体物を入れると認識しやすい。

具体物 → 半具体物 → 抽象物
(ことわざ等) (文字・記号)
さらに、上り下りすることによって人間はもっと認識理解を強めることができ、考える時は意識せずこのパターンを行っている。
  抽象物
  ↑  ↓
  半具体物
  ↑  ↓
  具体物

⑤認識と言語の理論第1部
三浦つとむ著 勁草書房より
人間の観念的な自己分裂
「我々は限界を超えたり戻ったりする活動をしている」この考えが理論科学の認識につながっている。


3私の科学的認識論
まず、認識とは何か唯物論的観点に立ち認識の構造をつかむ。上の①~⑥までのことをふまえて。
科学とは現象を捉え仮説、実証する。具体物-半具体化-抽象化。上り下りし、それをツール化する。認識したイメージを使って時間、空間を越えて頭の中で見通し仮説を作る。認識の目作り。
体感認識-体全体で経験した方が残る。
瞬間認識-見通しができないとき。その場で認識し判断・記憶する。
認識と行動の理論
認識は行動に影響を及ぼす。
行動によって認識は作られる。
児童・生徒の指導においては、行動より認識の段階をつかみ対応をする。具体物の段階なのか、半具体物の段階なのか、抽象的に話しだけでも分かるのか、分かる場合でもできるだけ図示してわかりやすくし疲れないよう時間を上手に使う(特に病気の児童・生徒の指導には必要。)

4病弱教育の理科
病弱教育の理科は待ったなしでインパクトのある教材をタイムリーに集めアンカー(言葉のいかり)をうつことによって言葉を思い出すきっかけとなる。また、いろいろな知識を網目上に絡めることによって、新しいひらめきが生まれてくる。本物を見せることによるインパクトある教材の用意(これは病院の中では難しいことではあるが)にできるかぎりの努力をしてきたつもりである。「はじめからできないといわない」ように。これを信条にしてきた。また、「実際にやってみる」ことによってしかなかなか身につくような力はつかない
これも20代からの私の信念であった。
研究誌「はびきの」の中では、コンピュータを使って病院の中で実体験できない実験や観察を見て間接体験できるようにパソクンソフトやビデオ編集ソフト等による教材作成についての実践を述べてきた。Powerpointを使っての「日本の火山」の学習、miniDVD教材作り、ストリーミングソフトによる教材作り、時間的に近いところでは、はびきの第11号で「Windows Vistaを使ってビデオ編集とDVD教材作り」、はびきの第13号での「病院内分教室での恐竜の学習」の中で博物館で撮影したビデオやDVD教材など。
しかし、実体験できることは体験するに越したことはないのでできるだけ実験や観察は実践させるようにしていた。それは「やったー」という感動を大事にしたかったからだ。

5まとめ
以上が私がこれまで大事にしてきた考え方を短い言葉で述べたものだ。
病弱教育にとって理科だけでなくどの教科にも言えることではあるが、特に「本日ただ今が大切」なので、最後にこの言葉をしめの言葉としたい。それは、
チリーのノーベル賞詩人
ガブエサー・ミストラル女史 作
『我々が必要とするものは多いがそれは先にのばせる
しかし子どもは待てない今この瞬間も
子どもの骨格に形づくられその血肉は作られ知能は発達しつづける
子どもにとって明日はない
今日しかないのだ』
「母子保険総合医療センター母と子の庭」の石碑より
参考文献
「自然認識の発達と人格の形成」新生出版
「弁証法はどういう科学か」三浦つとむ著
講談社現代新書
「認識と言語の理論」三浦つとむ著
勁草書房
「人間の頭脳活動の本質」ディーツゲン著
岩波文庫
「認識の三段階連関理論」庄司和晃著
季節社








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