M・Y人事法務事務所ニュース

特定社会保険労務士 文 達司が提供する情報発信誌 

読書リスト「気張る男」(城山三郎著)

2005-03-28 20:08:17 | 読書リスト
15.「気張る男」(城山三郎著)

久々に城山三郎の本を読みました。これも文庫ですね。主人公の松本重太郎は、西の渋沢栄一と言われた関西の財界帝王。すざましい勢いで事業を拡大・多角化していきますが、晩年は倒産で私財放出の憂き目にあいます。この本も面白かったですが、確か学生の頃に読んだ同著の「雄気堂々」を読んだときとは随分と感激度合いが違う気がします。若さゆえ?ですかねえ。まあ、いづれにしても、著者の文体はどの著書も読みやすく、味わいがあって好きですね。

読書リスト「なぜ会社のお偉方は司馬遼太郎が好きなのか」(春日直樹著)

2005-03-25 11:36:51 | 読書リスト
14.「なぜ会社のお偉方は司馬遼太郎が好きなのか」(春日直樹著)

文化人類学者の著者のすすめる「カイシャ人類学」です。平易な表現でユーモラスたっぷりにカイシャにまつわる何故?」を考察しています。表題以外にも、「なぜカイシャ人は、カイシャのために一生懸命になるのか?」とか、「なぜカイシャ人は、年功給だの成果主義だの、サラリーのルールをコロコロ変えるのか?」などの根源的な問いに対して、著者なりの解説を行っています。なんとなくそうだと感じていたことを論理的に明文化しており、なかなかおもしろかったですね。

年俸制 1-10 全体のフレーム設計の前に(雇用管理の流れによる整理)

2005-03-25 11:18:31 | 年俸制について
1-10 全体のフレーム設計の前に(雇用管理の流れによる整理)


人材に対する基本的な考えを雇用管理の流れに沿って整理してみよう。①自社にとって優秀な社員をできるだけたくさん確保する。(=採用)②社員に成果を求め、優秀社員を自社から出て行かないようにし、業績を出してもらう。また、周りの社員の能力発揮の邪魔をしないようにしてもらう。③また、普通の社員を優秀な社員に変えていく環境を整備する。(=評価・給与・等級、異動・教育)④最後に、無能で皆の足を引っ張る社員には出て行ってもらう(=退職・代謝)。中には下位10%の社員を退職させる仕組みの会社もあると聞く。ここで「優秀」と書いたが、これは会社、職種、職場により「有能」「使える」「結果を出せる」「人脈・キャリアがある」「リーダーシップがある」「器用」「資質」「責任感がある」「努力家」などに置き換わる。この置き換わった言葉が会社独自の具体的な人材像であり、また、各職種や等級へブレイクダウンされて評価項目の基本となる。なお、ここでしばしば登場する人事制度という言葉は、主として等級、給与、評価の各制度のことをいう(これらの他に採用、教育、福利厚生、退職などを含めていうこともある)。この3者の関係は「等級に基づいて給与を支払う際に評価という行為が必要」という言い方もあれば、「評価のために必要なのが等級で評価に基づき給与を支払う」とも言える。


業績に貢献する優秀な人材の確保と育成が人事の目的

1.優秀な社員を採用できなければ、優秀な社員にして大切に扱う
2.高給取りで会社に寄りかかり・足を引っ張る社員は退かせる
3.「優秀」の定義を等級別、職種別に独自に作る
4.「等級、給与、評価」の各制度が決まれば人事の骨格ができる
5.等級は社内の序列づけであり、給与や評価のベースとなる

年俸制 1-9 人事制度改革の実際、現状分析にあたってのポイント

2005-03-17 09:14:16 | 年俸制について
1-9 人事制度改革の実際、現状分析にあたってのポイント

人事制度には、制度の仕組みである総論と、個々人への評価、給与・賞与・昇格昇進等の具体的な適用という各論が並存する。各論は具体的な処遇である。その処遇に対して社員は一喜一憂する。それに対して正面きって自分の意見言わないタイプの人間も多く、社員のホンネがなかなか表面化しないこともある。人事制度がすべての社員の同意を得られないというのは、制度そのものに対する客観的な評価ではなく、むしろ実際の処遇に対する違和感から生じるからである。あからさまに上司に文句を言えないので、制度自体が悪いのだと、ほこ先が変わる。人事セクションは制度そのものの整合性にこだわるが、極端に言えば、社員の関心は制度の整合性より、各論である自分の処遇がどうなるかだけである。潰れかけた会社が人件費抑制名目の苦肉の策として新しい人事制度を打ち出したとたん、サーッと潮が引くように社員が逃げて行く場面を経験したことがある。会社には、社員1人1人の希望・願い・不満、上司、部下、同僚との利害関係、受け持つ仕事に対する考えなどが複雑に絡み合っている。利害や、欲・願い・不満を調整し、文句がでないよう、そして要望を叶えるのが人事制度である。理屈では回らないこともしばしばだし、政治的で泥臭い部分もある。時間と金と犠牲を伴うのが通常で、順風スマートに事が運ぶことは稀である。よほどストレス耐性が強くないとやっていけないかもしれない。さて、人事制度の構築にあたっては、よくB評価でボリュームゾーンの普通の出来の社員のモチベーション管理がメインであると言われる。(併せて、成績上位層には流出防止策、成績下位層には早期退出策を講じるというものである。)しかし、特に人事制度の現状分析にあたっては、ベル型の正規分布にのらないような、継続的に大変優秀な成績をあげる社員や、逆に非常に成績の芳しくない社員に注目し、よくよく観察する視点も大事ではなかろうか。前者は高業績達成のノウハウと行動をさぐり、更に共有化すらできる可能性があるし、また会社の将来を半歩先取りする指針となりうる。後者には、現状の人事制度の構造的な問題点を浮かびあがらせることになるかもしれない。
         
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人事制度は各論反対 何らかの犠牲を伴う まさに政治そのもの

1.各論の反対意見を押し殺すだけでは制度改革が前へ進まない
2.意見を受け止め、取捨選択・吟味し、改革へ生かす
3.現状分析等では、先頭集団と最後尾に注目することも必要

読書リスト「仕事に活かす<論理思考>」(本田有明著)

2005-03-09 00:05:43 | 読書リスト
13.「仕事に活かす<論理思考>」(本田有明著)

本書は、いわゆるビジネスハウツー・自己啓発本ですが、ある意味語りつくされたようなビジネスの個人的な問題点を、哲学科出身の著者ならではの論理性と斬新な視点で捉えなおしているところに新鮮味を感じます。特に気に入っている箇所は、マズローの欲求5段階説を仕事に置き換えている箇所です。仕事の5段階とは①苦役(単に食べるため)②労働(日々の生活の安定のため)③生産(チームで一定の満足感を伴う)④奉仕(顧客サービスで生きがいをもつ)⑤創造(自己実現の手段として)であり、それぞれマズローの①物質欲求②安全欲求③社会的欲求④尊敬欲求⑤自己実現欲求に対比させています。マズローの説は異論もありますが、感覚的にしっくりするところがあり、自分自身の仕事に対する考え方を整理する上でも参考になります。まあ、この本でも朝早く仕事することの効用を説いていますが、これができそうでなかなかできないんですけどね。

年俸制 1-8 いわゆる一人前になること及び学習曲線について

2005-03-08 08:33:00 | 年俸制について
1-8 いわゆる一人前になること及び学習曲線について


一人前になるとは、ある職種や業務について必要とされる技能を有し、一定の自立性をもって業務を遂行し、相応の業績を上げられることである。もちろん技能面だけでなく、人間性としての側面も問われる。自社で一人前である場合、「自社で通用する技能」を有し、他社でも通用するのが、いわゆるポータブルスキルである。
一人前となる過程で人は様々な技能を習得する。この学習行為については、いわゆる学習曲線というものがある。これは、ある職務について、一定レベルに達するまでの習熟度をみると、立ち上がりが早く、やがてその伸びが鈍化して、停滞していくというものである。職務によりその習熟期間は異なるが、一般職層に比べ、監督職層や管理職層に行くに従って難易度が高まるので、習熟期間は長くなる。また、一人前にも、いわば実行部隊として実務を極めていく先の姿として、①組織をまとめ管理していく方向と②より専門化していく方向へ分かれる。このように、自社における等級の設計、給与カーブの基調を決める際に、自社なりの一人前の考え方とレベル、及び学習曲線を参考にするとよい。

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自社の職種別の一人前の定義と習熟期間を描いてみる

1.一人前には「自社で一人前」と「他社でも一人前」がある
2.その方向性は、大きく管理職と専門職の2つに行き着く
3.企業規模、業種、職種により一人前の期間、到達レベルは様々
4.技能の習得、経験、人間関係のやりとりを通じて一人前になる
5.学習曲線の傾向は、給与制度のモデル作りのヒントとなる

読書リスト「食に幸あり」(小泉武夫著)

2005-03-05 23:02:26 | 読書リスト
12.「食に幸あり」(小泉武夫著)

現在も日経新聞の夕刊に連載されている食エッセイ集です。著者は東京農大の先生ですが、普通目を背けたくなるような食材まで世界レベルで食い荒らしており、尊敬しております。この本で紹介されている料理は、主に一人前の分量のB級素材を使ったスピード料理であり、すぐにでも試したくなるものばかりです。特に著者の魚に対する敬愛の念は相当なものがあり、私などは、同紙朝刊連載の官能小説より感じたりします。