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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

社労士とビジネスと人権

2023-04-09 21:19:30 | 労働法

今週はILOと連合会が行う「ビジネスと人権」の研修を2日間受講しました。これは2月の研修に引続くもので、今回でだいぶ理解が進んだと思います。社労士会が取り組むビジネスと人権はこれからなのですが、企業に対してどのように支援していくか、実際にロールプレイをしてみると社労士にとってはほとんど日常的に企業に行っている業務内容の延長でとても親和的であると実感します。

そもそもビジネスと人権は1999年の国連グローバル・コンパクトの提唱、2008年の人権を保護する国家の義務・人権を尊重する企業の責任・救済へのアクセスをうたったジョンラギー国連事務総長特別代表の草案などかなり長い期間をかけて、2011年ビジネスと人権に関する指導原則が国連人権理事会で承認に至る、という歴史をたどってきました。それを踏まえて日本政府は2020年10月「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」を策定し、2022年9月に関係省庁が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」をしました。

ビジネスと人権に対する企業の取組みについては、企業は、その人権尊重責任を果たすため、①人権方針の策定②人権DDの実施③負の影響を引き起こし又は助長している場合の救済の実施の3つが柱です。その中で人権DDは、いわゆる労務DDと共通しますが、人権DD実施後の是正措置、評価、外部への公表まで含み、定期的に確認していくという特徴があります。

また、下請等のサプライチェーンの労働環境までカバーする必要があること、国内の労働法だけでなく国際労働基準も遵守の必要があること、ステークホルダーエンゲージメントが重視されることが大事な要素になります。

ビジネスと人権のリスクとしては、ハラスメント・長時間労働・差別(ジェンダー)などがありますが、一番のリスクは強制労働(今の技能実習生の制度は強制労働のリスクをはらみます)です。これらのリスクがないか、サプライチェーンまで確認していくのがビジネスと人権の人権DDということになります。

まだまだ理解が浅いところですが、特に技能実習生については4月3日に技能実習生が妊娠した際の対応について、技能実習の中断や中止ができない旨の注意喚起とお願い(※)が発出されました。技能実習生への海外からの視線は厳しく、今後法改正も予測され、今後社労士にとっても大きなテーマになると思うので、勉強していこうと思います。

(※)https://www.otit.go.jp/files/user/210713-71.pdf

やっと体調が通常に戻り、延期してもらった会食なども予定できるようになりました。今日は新たな年度の始まりに合わせて、服の整理や衣替えをしたのですが、外は思いがけずまだ寒いので油断は禁物です。

最近若手の社労士が来所されお話しする機会が多いのですが、それぞれ社労士としての「戦略」を模索していることを素晴らしいと感じます。手続・相談業務や給与計算というオーソドックスな社労士業務ではなく、システム開発や事業承継関連業務などテーマを持ち、また制度全体の底上げの必要性についても視野に入れていることに、これまでにないタイプの社労士が出てきたという期待感があります。

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